Black Box

著者 :
  • 文藝春秋
3.91
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本棚登録 : 671
レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907826

作品紹介・あらすじ

尊敬していた人物からの、思いもよらない行為。しかし、その事実を証明するには――密室、社会の受け入れ態勢、差し止められた逮捕状。あらゆるところに〝ブラックボックス〟があった。司法がこれを裁けないなら、何かを変えなければならない。レイプ被害にあったジャーナリストが、自ら被害者を取り巻く現状に迫る、圧倒的ノンフィクション。「この本を読んで、あなたにも想像してほしい。いつ、どこで、私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、だれにも予測はできないのだ。」(「はじめに」より)〈著者紹介〉伊藤詩織(いとう しおり)1989年生まれ。ジャーナリスト。フリーランスで、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信する。

感想・レビュー・書評

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  •  本書を読みもせずに最低の評価をつけている痴れ者がいるので最初に書いておくが、著者が本書を世に問うたのは、何よりも、この種の卑劣な罪を犯した者が正当に裁かれず、また、不幸にして同様の犯罪に巻き込まれた被害者が救済されない実情をなんとかして変えたいと思っているからである。そして、権力者やその強力な後ろ盾を持つ者が法の目をすり抜けていくこの国の姿を、正したいからである。山口敬之氏の名前は無論本を通して出てくるが、それは、彼の所業を広く伝えることが、著者が本書を通して目指す大きな目的のために必要だからである。だから本書のタイトルは「腐った卑劣漢」ではなく、「Black Box」なのだ。
     本書には、著者の生い立ちから、ジャーナリストを目指すに至った経緯、山口氏との出会い、その後の彼の行為、彼とやりとりしたメールの全文が書かれ、加えて、こうした犯罪に用いられるドラッグとその症状も具体的に紹介されている。これを読む限り、また、山口氏が公の場でまともに反論していない以上、著者がこのドラッグを使われたのは間違いないように思える。こうした薬物に対する注意がもっと喚起されてしかるべきだと実感させられた。
     更に本書では、こうした犯罪に対する日本と諸外国の対応の違い、それを参考に、被害者をわずかでも救済する手立てが提唱されている。これこそが、著者が最も訴えたかったことだろう。
     本書の表紙は、著者の顔写真である。被害者Aであることを拒否する凛とした姿勢と、Facebook等でお友達に向けての言い訳に終始し、公の場から逃げ回る山口氏の卑怯でみっともない姿は対照的である。そのFacebookにイイネ!などと反応する者もいる。確か、安倍昭恵とかいう名前の人だった。
     山口氏の逮捕は決まっていたにもかかわらず、警視庁刑事部長中村格氏の判断で、寸前で取りやめとなる。著者は中村氏に取材を試みるがうまくいかず、一度は出勤途中の中村氏に声をかけているが、中村氏は「凄い勢いで逃げた」。「人生で警察を追いかけることがあるとは思わなかった」と著者は言う。
     著者は自分が負った精神的な傷については筆致を抑え、必要最小限のことししか語っていないが、痛みの深さは行間から伝わってくる。山口氏と似た顔をみるだけで足がすくむ、こうした苦しみや悲しみを抱えたままで書いた本である。勇気、やさしさ、醜さ等、人のあらゆる要素が詰まった本である。襟を正して読みたい。そして、山口、中村両氏には、この本と真正面から向き合う責任がある。

  • 元TBSテレビ報道局ワシントン支局長、ジャーナリスト山口敬之氏は、二回会っただけの詩織さんを「ビザの件で」と呼び出し、二件付き合わせ、おそらく彼女の酒に薬を入れ、ホテルに連れ込みレイプした。

    会見を見、山口氏の本を読んで、「彼はそこまで悪い人には思えない」と私。
    彼女の悪い噂なども入ってくるし。

    でもこの本を読んで、この事件が事実であると確信しました。
    悪い噂の多くはデマ。
    詩織さんは正しく、山口は絶対に罰せられるべき。

    また中村格刑事部長(当時)、逃げていないで真実を話すべきです。
    中村氏に「私が山口氏を逮捕させなかった」と認めさせた、週刊新潮は素晴らしい!

    ただ、レイプされただけでも傷ついている女性が、ここまで顔をさらして真実をさらすのは、並大抵のことではありません。
    会見で堂々として見えたけど、相当なストレスにやられているのがよくわかりました。
    それはそうでしょう。

    でも詩織さん、あなたに勇気をもらいました。

    「レイプはどの国でも、どんな組織でも起こり得る。組織は権力を持つ犯罪者を守り、「事実」は歪められる。キャリーさん(上司にレイプされ命を絶った女性)の身に起こったことは、決して珍しいことではない。
    今までに一体、何人の人が、心を押し潰されたまま生きることを強いられたのだろう。
    一体何人の人たちが、彼女と同じように命を絶ったのだろう。
    事件後、私も同じ選択をしようとしたことが、何度となくあった。自分の内側がすでに殺されてしまったような気がしていた。
    どんなに努力しても、戻りたくても、もう昔の自分には戻れず、残された抜け殻だけで生きていた。
    しかし、死ぬなら、変えなければいけないと感じている問題点と死ぬ気で向き合って、すべてやり切って、自分の命を使い切ってからでも遅くはない。この(キャリーさんの)写真に出会って、伝えることの重要さを再確認し、そう思いとどまった。
    キャリーさんの口からは、もう何も語られることはない。だが、一人のフォトジャーナリストのカメラを通して、彼女は強いメッセージを残した。私にはまだ話せる口があり、この写真の前に立てる体がある。だから、このままで終わらせては絶対にいけない。
    私自身が声を挙げよう。それしか道はないのだ。伝えることが仕事なのだ。沈黙しては、この犯罪を容認してしまうことになる。」

    私ももう一度頑張る。決心しました。(レイプではないです)

    http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&id=4906919&from=home

  • 彼女に対するネガティブなコメントや報道を読んだ上で感想を述べる。「彼女の言葉は誠実で、発言は真実だ」
    本書の発刊から3年も経ってから、twitterで彼女を応援するハッシュタグに促されて、本書を手に取った。
    特にアマゾンのレビューで低評価をつけ、非難する人たちはなにがしたいのだろうか。
    それらの声に屈せず、本書を残してくれた彼女に敬意しかない。

  • 日本の性犯罪に対する現状を
    あらわにしたドキュメンタリー。
    レイプ被害にあったのは著者本人。
    あの記者会見の映像を私は覚えている。
    なんと美しい人か、なんと勇気のある人かと思った。

    性犯罪の被害者はもっと怒らなければならない、
    というより
    怒りを持っていいのだと、訴えていいのだと
    怒ることが当然なのだと、
    被害にあった人のサポート体制も含めて
    そういう国になってほしい。

    他国と比べても、
    先進国とは思えないお粗末さである。

    わたしにとって意味のある一冊であった。

    伊藤氏の勇気に感謝。

  • ここに書かれている被疑者が逮捕を免れていることはもちろん問題外のありえないことだが、この本の価値は、それを指摘することにとどまらない。多くの男にとって重要なことが書かれている。
    男はともすると、女性の尊厳を忘れ、知らずに傷つけていることがあるのではないか? 多くの男性が読むべき本である。

  • 話は重いが、文章が読みやすかった。メールのやり取りなど、事件の生々しさが伝わる内容だった。

    高橋まつりさんの事件のように、実名公表しなければ社会を動かせないと感じて、自分で動いたことは芯の強さを感じる。デートレイプドラッグについてや、合意の壁、組織、セカンドレイプ、自身や周りへの誹謗中傷など、彼女が戦った痕が書かれている。

    社会の感覚、法律を変えられるか。政府からの忖度か、報道ではあまり大きく取り上げられない事件。朝鮮人だとか共謀罪発言で政治色が出てきたとか、フェイクニュースっぽいのや切り取られてネットで色々言われてもいたが、そういうことではないし、仮にそうだとしても、一人の人権に対する事件。

  • 性犯罪の刑事事件としては不起訴処分になりながらも、先月、民事訴訟で勝訴を勝ち取った(上告の可能性もあるので係争中だが)タイミングで読み直してみた。改めて当事者視点というだけでなく、警察、検察、支援団体、関係機関の構造・仕組みの課題を明らかにする良書だと再確認。こういった類の著作にレビューはいらない。ただ、自身で触れてみて感じて、考えて欲しい...。

  • 傷つき、それから勇気を持って
    行動をおこしたのに
    権力に潰されたような感じ。

    仕事をもち、頑張っている女性を
    地位を武器に、性対象として見る男性が
    気持ち悪すぎる。
    そんな目でしかみられないのかと。
    食事にさそい、薬を飲み物に混ぜて、
    意識をとばしてと完全に計画的で
    ほんとに悪質極まりない。

  • こういう事件って諦める人絶対多いよなぁと思った。ジャーナリストって凄いんだなぁ。
     
    産婦人科に緊急でピルを貰いに来た人のためにレイプ被害を書き込めるようなチェックシートを作ったり、「レイプキット」というレイプ事件に必要な検査が受けられる証拠採取の道具一式を用意しておくという案が書いてあって良さそうだなと思った。こんなにしっかりしてて事情を話せる友達もいっぱいいる人でもどこに相談していいのかわからないってやばいよね。
    スウェーデンのレイプ被害者への対応のレベル高いなー。

  • 強姦というものをしたいと思う人は沢山いるのでしょうか。何食わぬ顔をしてその辺歩いている人の中にも強姦した事がある人がいるのでしょうか。気持ちの上では強姦をしたら死刑でいいんじゃないかなと思っています。
    強姦なのか和姦なのかという区分けが物凄く難しいというのは分かります。痴漢と同じで人を陥れるに便利な罪状であるのも確かですから。
    でもこの本で一番問題となっているのは、強姦をされた事を言い出せない社会的なシステム。男社会から脱却できない警察のセカンドレイプ。社会的地位によって警察や司法を使って握りつぶされる真実など、さまざまな障害が立ちはだかります。こんなにハードルが高くちゃ誰も言い出さないのも分かります。
    そんな世界に風穴を開ける書と言えれば良いのですが、本書の著者伊藤女史は何故か世間から叩かれまくって現在日本にいる事が出来ず、英国に居るようです。
    家族まで中傷されて相当に苦しい中、勇気をもって書かれた本書をもって解決となればよいのですが、まだまだ続いていく苦しみを思うと本当に胸が痛みます。

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著者プロフィール

1989年生まれ。ジャーナリスト。「アルジャジーラ」「エコノミスト」「ロイター」などの映像ニュースやドキュメンタリーなどの制作を行う。著書『ブラックボックス』(文藝春秋)

「2018年 『しゃべり尽くそう! 私たちの新フェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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