Black Box

著者 :
  • 文藝春秋
3.85
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本棚登録 : 322
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907826

作品紹介・あらすじ

尊敬していた人物からの、思いもよらない行為。しかし、その事実を証明するには――密室、社会の受け入れ態勢、差し止められた逮捕状。あらゆるところに〝ブラックボックス〟があった。司法がこれを裁けないなら、何かを変えなければならない。レイプ被害にあったジャーナリストが、自ら被害者を取り巻く現状に迫る、圧倒的ノンフィクション。「この本を読んで、あなたにも想像してほしい。いつ、どこで、私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、だれにも予測はできないのだ。」(「はじめに」より)〈著者紹介〉伊藤詩織(いとう しおり)1989年生まれ。ジャーナリスト。フリーランスで、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信する。

感想・レビュー・書評

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  •  本書を読みもせずに最低の評価をつけている痴れ者がいるので最初に書いておくが、著者が本書を世に問うたのは、何よりも、この種の卑劣な罪を犯した者が正当に裁かれず、また、不幸にして同様の犯罪に巻き込まれた被害者が救済されない実情をなんとかして変えたいと思っているからである。そして、権力者やその強力な後ろ盾を持つ者が法の目をすり抜けていくこの国の姿を、正したいからである。山口敬之氏の名前は無論本を通して出てくるが、それは、彼の所業を広く伝えることが、著者が本書を通して目指す大きな目的のために必要だからである。だから本書のタイトルは「腐った卑劣漢」ではなく、「Black Box」なのだ。
     本書には、著者の生い立ちから、ジャーナリストを目指すに至った経緯、山口氏との出会い、その後の彼の行為、彼とやりとりしたメールの全文が書かれ、加えて、こうした犯罪に用いられるドラッグとその症状も具体的に紹介されている。これを読む限り、また、山口氏が公の場でまともに反論していない以上、著者がこのドラッグを使われたのは間違いないように思える。こうした薬物に対する注意がもっと喚起されてしかるべきだと実感させられた。
     更に本書では、こうした犯罪に対する日本と諸外国の対応の違い、それを参考に、被害者をわずかでも救済する手立てが提唱されている。これこそが、著者が最も訴えたかったことだろう。
     本書の表紙は、著者の顔写真である。被害者Aであることを拒否する凛とした姿勢と、Facebook等でお友達に向けての言い訳に終始し、公の場から逃げ回る山口氏の卑怯でみっともない姿は対照的である。そのFacebookにイイネ!などと反応する者もいる。確か、安倍昭恵とかいう名前の人だった。
     山口氏の逮捕は決まっていたにもかかわらず、警視庁刑事部長中村格氏の判断で、寸前で取りやめとなる。著者は中村氏に取材を試みるがうまくいかず、一度は出勤途中の中村氏に声をかけているが、中村氏は「凄い勢いで逃げた」。「人生で警察を追いかけることがあるとは思わなかった」と著者は言う。
     著者は自分が負った精神的な傷については筆致を抑え、必要最小限のことししか語っていないが、痛みの深さは行間から伝わってくる。山口氏と似た顔をみるだけで足がすくむ、こうした苦しみや悲しみを抱えたままで書いた本である。勇気、やさしさ、醜さ等、人のあらゆる要素が詰まった本である。襟を正して読みたい。そして、山口、中村両氏には、この本と真正面から向き合う責任がある。

  • 元TBSテレビ報道局ワシントン支局長、ジャーナリスト山口敬之氏は、二回会っただけの詩織さんを「ビザの件で」と呼び出し、二件付き合わせ、おそらく彼女の酒に薬を入れ、ホテルに連れ込みレイプした。

    会見を見、山口氏の本を読んで、「彼はそこまで悪い人には思えない」と私。
    彼女の悪い噂なども入ってくるし。

    でもこの本を読んで、この事件が事実であると確信しました。
    悪い噂の多くはデマ。
    詩織さんは正しく、山口は絶対に罰せられるべき。

    また中村格刑事部長(当時)、逃げていないで真実を話すべきです。
    中村氏に「私が山口氏を逮捕させなかった」と認めさせた、週刊新潮は素晴らしい!

    ただ、レイプされただけでも傷ついている女性が、ここまで顔をさらして真実をさらすのは、並大抵のことではありません。
    会見で堂々として見えたけど、相当なストレスにやられているのがよくわかりました。
    それはそうでしょう。

    でも詩織さん、あなたに勇気をもらいました。

    「レイプはどの国でも、どんな組織でも起こり得る。組織は権力を持つ犯罪者を守り、「事実」は歪められる。キャリーさん(上司にレイプされ命を絶った女性)の身に起こったことは、決して珍しいことではない。
    今までに一体、何人の人が、心を押し潰されたまま生きることを強いられたのだろう。
    一体何人の人たちが、彼女と同じように命を絶ったのだろう。
    事件後、私も同じ選択をしようとしたことが、何度となくあった。自分の内側がすでに殺されてしまったような気がしていた。
    どんなに努力しても、戻りたくても、もう昔の自分には戻れず、残された抜け殻だけで生きていた。
    しかし、死ぬなら、変えなければいけないと感じている問題点と死ぬ気で向き合って、すべてやり切って、自分の命を使い切ってからでも遅くはない。この(キャリーさんの)写真に出会って、伝えることの重要さを再確認し、そう思いとどまった。
    キャリーさんの口からは、もう何も語られることはない。だが、一人のフォトジャーナリストのカメラを通して、彼女は強いメッセージを残した。私にはまだ話せる口があり、この写真の前に立てる体がある。だから、このままで終わらせては絶対にいけない。
    私自身が声を挙げよう。それしか道はないのだ。伝えることが仕事なのだ。沈黙しては、この犯罪を容認してしまうことになる。」

    私ももう一度頑張る。決心しました。(レイプではないです)

    http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&id=4906919&from=home

  • 話は重いが、文章が読みやすかった。メールのやり取りなど、事件の生々しさが伝わる内容だった。

    高橋まつりさんの事件のように、実名公表しなければ社会を動かせないと感じて、自分で動いたことは芯の強さを感じる。デートレイプドラッグについてや、合意の壁、組織、セカンドレイプ、自身や周りへの誹謗中傷など、彼女が戦った痕が書かれている。

    社会の感覚、法律を変えられるか。政府からの忖度か、報道ではあまり大きく取り上げられない事件。朝鮮人だとか共謀罪発言で政治色が出てきたとか、フェイクニュースっぽいのや切り取られてネットで色々言われてもいたが、そういうことではないし、仮にそうだとしても、一人の人権に対する事件。

  • 真実は、ここにある。
    なぜ、司法はこれを裁けないのか?

    レイプ被害を受けたジャーナリストが世に問う、 法と捜査、社会の現状。 尊敬していた人物からの、思いもよらない行為。
    しかし、その事実を証明するにはーー密室、社会の受け入れ態勢、差し止められた逮捕状。あらゆるところに〝ブラックボックス〟があった。

    司法がこれを裁けないなら、何かを変えなければならない。 レイプ被害にあったジャーナリストが、自ら被害者を取り巻く現状に迫る、圧倒的ノンフィクション。

    もし、自分の妹が、友達が、私と同じ目にあったら・・・そんなことは考えたくもないけれど、万が一の場合に備えて、伝えておかなければいけないことがあるーーー。

    痛々しいほどの切実さを持って、ジャーナリストとして、苦しみながら核心へと迫り、レイプ被害にまつわる法や社会体制の不備を教えてくれた詩織さんに頭が下がる思いである。

  • 勇気の一冊。ジャーナリストとして書くことを選んだんだろう、非常に辛いことながらも。警察、病院、法は性被害者にとって日本は厳しい。この詩織さんの勇気ある行動でより弱者が寄り添った社会になるように願う。

  • 同じ女性として、詩織さんの勇気ある決断に敬意と感謝を。そして私たちは、彼女の辛い経験から一体何を学ぶべきなのか?彼女が感情を圧し殺してまで伝えたかった未来への警鐘を、より多くの人が受け止め、受け入れ、その思いが伝わりますように。そして社会的、法的によりよいシステムができあがりますように。

  • 奇しくもジャーナリストが書いた真逆の本を同時に読んでいて、こちらは非常にシリアスでセンシティブな一冊
    読んでいて同じ女性の立場から気分が悪く、不条理極まりない内容です
    レイプではないですが、今の世の中はやはり男性が作ったもので女性はとても生きにくいということを実感させられます
    何故加害者が逮捕されるどころかある程度の有名人という事で不起訴になり、被害者が声をあげた事で更に攻撃されなければならないのか…
    今後の早期、且つスッキリした解決に期待します

  • 表紙の著者は凜とした表情でこちらを見ている。彼女は逃げも隠れもしていない。ただ自分に起きた事実を明らかにしたかっただけ。司法や捜査、性犯罪ホットラインなどのシステムの改善に、国会での法改正とともに取り組むべきだと主張した。自分のような被害者をこれ以上出さないために。

    それに比べて山口敬之氏のほうはどうだ。仲間が集う自分の庭のようなところから反論の手記のようなものを発表するだけ。メディアにも出ず会見も開かず、核心の質問にはまったく答えていない。これでは都合の悪いことを隠していると言われても仕方ない。

    山口氏の馴染みの寿司屋の店側の証言が、腑に落ちない印象なのはなぜか。詩織さんは自分では歩けず山口氏に抱きかかえられるようにしてホテルに入った。それを見ていたシャラトン都ホテルのスタッフは、なぜ一言声をかけなかったのか。「駅で降ろしてください」と詩織さんが何度も言ったと記憶しているタクシーの運転手の証言は、なぜ調書から消されたのか。逮捕の当日、捜査員が空港で山口氏の到着を待ち受けるさなか、中村格刑事部長の判断によって、逮捕状の執行が突如止められたのはなぜなのか。

    この本を読んで、デートレイプドラッグの存在と、準強姦事件ではそれを使った犯行が多いことを知った。アフターピル、スウェーデンにはレイプ緊急センターなるものがあること、レイプキットによる検査は被害後10日まで可能なこと、日本では開業医の婦人科ではなく、救急外来を受診すること、etc。

    レイプは人間の尊厳を踏みにじる行為だ。被害者は一生その傷を持ったまま生きることを強いられる。一方ほとんどの加害者は、罰を受けることもなく、おそらく罪の意識さえなく、のうのうと暮らしているのだろう。

    これは個人の事件ではない。法律、警察捜査の問題点、そこかしこに漂う官邸周辺からの圧力…。
    この国におけるあらゆるブラックボックスの存在を、この本は明らかにしてくれた。真実は何か。詩織さんに起こったことは、あなたやあなたの大切な人たち、誰に起こってもおかしくないのだから。

  • 日本の性犯罪に対する現状を
    あらわにしたドキュメンタリー。
    レイプ被害にあったのは著者本人。
    あの記者会見の映像を私は覚えている。
    なんと美しい人か、なんと勇気のある人かと思った。

    性犯罪の被害者はもっと怒らなければならない、
    というより
    怒りを持っていいのだと、訴えていいのだと
    怒ることが当然なのだと、
    被害にあった人のサポート体制も含めて
    そういう国になってほしい。

    他国と比べても、
    先進国とは思えないお粗末さである。

    わたしにとって意味のある一冊であった。

    伊藤氏の勇気に感謝。

  • 現代版「藪の中」騒動である。著者のセンセーショナルな記者会見やその反響、metoo運動などとの共振、それら大きなテーマを一旦脇においたときに見えるのは芥川龍之介が鋭敏な頭脳で小説にまとめ黒澤明が『羅生門』として見事な映画化をした、典型的なテーマである。若い女性が素顔をスポットライトに晒してみずからの「レイプ」事件を告発した。だからその内容は全て真実を受け取るべきだろうか。しかしその夜に本当に何があったのかは伊藤・山口両氏2人にしか分からない。いや本人ですらもはや分からない。
    私が気になったのは、その夜の事件の後、伊藤氏は何度か山口氏にメールでコンタクトしている理由である。
    伊藤氏は、告発の動きを悟られないように文面を友人に作ってもらいながら相手に謝罪を引き出したかった——こんなことを記しているが本当にそうだろうか。自分に突然起きた、この惨めな出来事をどう心理的に処理してよいか分からず、後付け的に合理化したかったのではないか。
    レイプされた人はその事実を認められず、いっそこの事態を飲み込んで事後的合理化を図ることがあるという。
    伊藤氏にもそんな心理機制が働いのではないか。

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著者プロフィール

伊藤詩織(いとう しおり)
1989年生まれ。ジャーナリスト。フリーランスで、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信する。

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