【2019年本屋大賞 大賞】そして、バトンは渡された

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 662
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907956

感想・レビュー・書評

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  • 瀬尾まいこさんの書くことばは、世の中をみる視点は、いつもやさしくて愛に満ちている。
    そんな、瀬尾さんの魅力が詰まりに詰まった一冊、という感じだった。
    にんげんの後ろ暗いところを書き出すことの方が、いまはとても簡単で、愛やら絆やら、ありふれた綺麗ごととして世の中の冷笑に踏み潰されてしまいそうなテーマの方が、実はすごく伝えるのが難しいように思う。
    そこから、逃げずに、真正面からどんと向き合っている。やさしく穏やかに、でも力強く。
    そんな気がした。

  • 優子に対する親権だとか扶助義務だとか、そんなのがバトンなのかと思ってた。そうであればタイトルとして、彼女をたらい回しにしているようで嫌だなと。でも、どうやら彼女の親たち、そして夫それぞれが彼女と出会い、育て、ときに離れる時間の流れにおいて、自分の人生の転機を見極めて未来の自分に現在の自分がバトンを渡すってことなのかも。バトンは培った経験かもしれないし、たとえば「自分らしさ」ならば、環境が変わってもしっかりと継いでいかなければいけない。そして人の数だけバトンがある。もちろん優子もバトンを持っている。親になるって、自分だけでなく子どもの数だけ明日が増える、自分より可能性と未来を含んだ明日が増えるって内容のフレーズ、よかった。

  • 主人公が大人に振り回されながら経験する、様々な形の家族。物分かりのよい子どもでいたはずなのに、やっぱりそんなことはなかった、高校生の主人公。
    「友達は一番の優先事項ではない」
    そんな、主人公の考えに一票。
    その時の「一番の優先事」を読み違えてはいけないのだ。
    いま、リアルに中高生である子どもたちに気づいてほしい。

  • 温かく胸がぎゅっとなりました。
    自然と涙が溢れるお話です。

  • 「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」

    母と死別。父の再婚。それ以降、継母に引き取られ、継母の裕福な再婚相手に引き取られ、、、。
    17才の今は37才の継母の再婚相手と二人で暮らしている高校生の優子。

    環境は複雑だか、彼女はみんなに愛されて、彼女もみんなを愛している。

    女子高生ならではの陰湿な無視などもさらっとかわし、たくましく楽しく生きていく。

    幸せな結婚式には胸が熱くなった

  • 食べ物だけでは味気ないし、こころばかり強くても仕方がない。
    でもその2つが一緒にあって、それでも少し物足りないような、そんな感覚は誰かと食べる事で満たされる。
    読む前は少し重たい話なのかと思ったけど、そんな事なくて、読んだ後とても幸せな気分になった。

  • 「自分のために生きるって難しいよな。何をしたら自分が満たされるかさえわからないんだから。金や勉強や仕事や恋や、どれも正解のようで、どれもどこか違う。でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。」
    森宮さん、かっこよすぎるよ。

  • 父が三人、母が二人いるという優子の物語。1人目の父は聡明な実の父、2人目は資産家で器が大きい泉ケ原さん、3人目は東大出で賢明な森宮さん。特殊な家庭環境だが、先生が言ったように普通の家庭よりも親の愛情を受けた子供なのではないだろうか。

    森宮さんが作るオムレツやポテトサラダ入りの餃子、ゼリーとか、優子の勤務先で出される玉子焼きや煮物など、料理を食べる描写が多く、どれも美味しそうに描かれているのでお腹が空いてしまった。

    学期の始まりなだけなのにカツ丼、クラス全員にハブられたと聞くと精をつけなきゃだと餃子を食卓に並べる森宮さんは、一般的な父親とずれていて面白かった。

    優子が大人びてどこか冷めた子供なのは、実の親と一緒にいる期間が短く、早熟にならざるを得ない状況にあったからなのではないだろうか。しかし他人と呼ぶにはあまりに深すぎる愛情を持つ親たちに育てられた優子は幸せだなと感じた。

    梨花さんが「優子ちゃんの母親になってから明日が二つになった」と、自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるという言葉が印象的だった。

  • 2019.7.1.読了

    とてもネタバレしていますので未読の方は読まないでください。

    2人の母親と3人の父親を持つ優子。困った。全然不幸ではないのだ。すこしでもやっかいなことや困難を抱えていればいいのだけれど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況に申し訳なくなってしまう。とは、冒頭の優子のセリフ。

    優子の境遇であれば当然不幸だと思う周囲の大人たちの感覚に反して、優子は全く不幸感はない。それぞれの母親、父親は優子を心から愛してくれてきた。そんな優子の成長が温かく描かれていく。

    よかった、瀬尾さんらしくてよかった。途方もなく現実感のない話だが、嫌な気分にはならずとても幸せに感じる不思議な話。でも釈然としないところがある。設定があまりに奇抜で現実感がないのは小説なのだから…と納得できるが、一番、釈然としないのは二人目の母、梨花の行動。最後に明かされる梨花と優子の最初の父親との間の秘密…あまりに梨花は勝手すぎないか。こんなことされたは優子は逆上して当然ではないかと私自身の心の中ではふつふつと怒りの感情が心の中でたぎるが、今まで幸せだったし、梨花さんは優子を心から愛してくれたんだからいいじゃん…という感じで梨花のしたことが流されるのがたまらなく腹が立った。私は幸せだと優子はいつも周囲に思わせ、自分でも思っている。でも、幸せって幸せだと自分に、周囲に言い聞かせないでいられるということこそが一番の幸せなのではないか。瀬尾さんが描く、家族にはいろいろな形があり、実の親に育てられることのみが幸せな家族の姿ではないというテーマ(かな?)には心から共感できる。特に3人目の父親森宮さんと優子の会話の軽妙さは楽しく、森宮さんという人物像を創造できたのは凄いと思い、最後、梨花が優子の実の父親にしたことが明かされるまではとても微笑ましく読んだ。実の父親のそれからを知った途端、途方もなくがっかりしてしまった。多分、実の父親を悪者にしたくなく、みんないい人で終わりたかっただろうし、私も実の父親はいったいどうしてしまったのか知りたかったのだか…。

    優子と早瀬君との間に芽生えたピアノを通じての恋愛感情は素敵で、早瀬君がひくピアノ曲を検索し温かい気持ちで聞いた。

    優子と森宮さんとの擬似家族関係、2人目の父親泉ヶ原さんとの父娘関係及び優子と早瀬君との恋愛物語は素晴らしく星5つ!優子と梨花さんとの母娘関係は理解しがたいというか梨花さんのエゴを許せず星1つで全体星3つという感想になった。

  • 2019年の本屋大賞の受賞作だというので、読む前に軽くレビューをみていたが想像していたのとは違った。
    血はつながらなくとも家族だし、何度親が変わってもたくさんの人に愛情を注がれて育ったのだから不幸ではない。
    それはそうなのだろう。だから読む前は主人公の優子は血のつながった身内はいないのかと思っていた。もしくは
    理由があって実の親が手放したのだろうと。
    理由はあった。が、腑に落ちない。

    実の母は幼少の頃に亡くなり、小学生の頃に継母が来る。
    継母はおしゃれで可愛くて父ともどもとても可愛がってくれている。
    継母が来る前は父方の祖父母に預けらることも多かったが、再婚後は没交渉。
    10歳で父と継母が離婚。父はブラジル転勤になり、どちらも引き取りたいともめた末に主人公に選ばせ、日本にいたいからと継母と暮らすことになる。
    二人の生活は継母の奔放さもあり貧乏(養育費はもらっている)。
    継母再婚→主人公を再婚宅に置いて家出(一応頻繁に会いに来ている)。
    継母、再婚相手と離婚→同級生と再々婚。
    再々婚相手の所に主人公を置いて出奔。
    因みにこの継母、主人公を取られるのを恐れて実の父との手紙をにぎりつぶす。

    いや、これ全ての元凶は継母なのではないだろうか。
    これが実の母親なら自由な母に振り回されたがみんな幸せになったね、と言えるのかもしれない。
    再々婚したのも再々婚相手の所に主人公を置いていったのも自分が病気になったから主人公の後を託すため。でも主人公はそんな事情は知らされない。

    そもそも実の父は可愛がっていたのだから離婚したなら自分がブラジルに連れていけばいいし、できないなら祖父母に預ければいい。
    祖父母と没交渉となったのは再婚のせいかもしれないし、離婚時には預けられない事情があったのかもしれないが。
    主人公が周りの人の感情や状況に鈍感すぎたり淡々としているのは本来の性格もあるだろうが、こういう境遇を聞かされたら「大人の都合で環境がたくさん変わったからなのだろう」と思われても仕方がないのではないだろうか。

    最初の方につらつらと主人公の高校でのいざこざがつづられている。
    原因は主人公を好きな男の子を友達が好きになったので取り持って、と呼び出し環境まで整える。
    しかし自分を好きだと言った人に他の女の子を勧めることができず、女子たちの反感を買うというような内容。
    主人公は悪いとは思わないし思ったことも正しいと思う。友達はそこまで段取りしたなら自分で告白すればいいのに。
    しかし周りの人間は主人公がさっさと言えばよかったのに、と言う。原因の男の子本人も。

    そんな調子で自分とはずれている感覚の人間しか出てこず、あまり楽しめなかった。
    ただ、最後の保護者となった森宮が父になる物語だと思えばいいのかもしれない。
    どこか欠けた人たちがそれぞれの場所を見つける話だと思えばいい終わり方のような気がする。

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著者プロフィール

瀬尾まいこ(せお まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2011年の退職までは、中学校で国語教諭として勤務する傍ら執筆活動を行っていた。2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。これまでに映画化された作品に、代表作『幸福な食卓』、『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』。『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位、「キノベス2019」1位に選出、さらに2019年本屋大賞を受賞。2019年6月13日、『優しい音楽』(新装版)を刊行。

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