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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163908007
作品紹介・あらすじ
あの人たち、あの娘たちは今
どうしているのだろうか――
すずらんの香水、首筋に感じる風、
数多の映画の情景、幾度となく紡ぎ直される物語。
'50年代の記憶を精緻に編みこんだ
切なく甘い最新長編小説。
彼女はスタアになれるのか?
『スタア誕生』公開にちなみ、地方都市の映画館で
ニューフェース審査会が開かれる。
揺れながらカーテンが引かれ、シャンデリアは虹色に輝き、
まばゆい光のスクリーンで、私たちの〈金魚の娘〉は
はなやかに泳ぎまわるだろうか……
傑作「噂の娘」(講談社)から16年を経ての姉妹篇。
作家生活50周年記念刊行。
感想・レビュー・書評
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これはなんと「噂の娘」を受けたもの。途中までそれに気づかず、誰が語っているのかなかなかわからなかった。大体、著者の小説は、人物の関係などを親切に説明してくれたりはしないが、本作ではその傾向が強くて、誰が誰でどういう関係かずいぶん読まないとつかめない(もしかして私だけ?)。
しかしまあ、いつものことながら、うねるような文章の流れに翻弄されつつ、行きつ戻りつ読み進めていく、この快感。まったく他では味わえない読書体験なのだった。語り手は自在に入れ替わり、時は前後し、記憶の輪郭はどんどんぼやけていく。それでいて、着ていたブラウスの襟の刺繍であったり、寝転んだ畳のひんやりした感触であったり、そういう細部はくっきり鮮明に浮かんでくる。まったく「過去」ってこういうものだなあとしみじみ思う。
これは、ストーリー展開の面白さや、わかりやすく共感を誘うような描き方で読者を引きつける小説とはまったく違う、別の場所にあるものだ。読んでいると、これこそが小説なのではないかという気になってくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『噂の娘』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4062749513)の姉妹篇。昭和30年代、美容室モナミに弟と一緒に預けられていた「私」の小学生時代の回想、とりとめもなく語られる思い出の断片。
母親の同級生の姉であるモナミのマダム・フジコ、その娘の三姉妹(出戻り長女、オールドミスの次女、これから結婚→出産する三女)、元京都の撮影所の結髪だったおばあちゃん、住み込みの美容師見習いの少女たち、近所の○○屋の娘や息子、町内から女優になった丘江里子などなど、噂の的になる登場人物たちは『噂の娘』とほぼ同じ。
今回の軸になるのは「私」が「金魚の娘」と呼んでいる、みぞおちに金魚の形の赤いアザのある住み込みの見習い美容師みっちゃん。女優を夢見ていたみっちゃんが、大映ニューフェイスのオーディションを受け、受かり、美容室を出て俳優養成所に入って、近況をモナミの面々に手紙で知らせてくるようになるまで。
「私」の母方の祖父が愛人にしていた女優の話など、映画や映画館、女優、俳優の話題が豊富で、みっちゃんはもちろん実在しないけれど昭和30年代の映画の世界の空気などが伝わってくる。
なんにせよ金井美恵子なのでとにかく細部、どこから始まってどこで終わってるのかわからなくなるほど長い長い一文の、そのとりとめもなさこそが醍醐味。それとなく切ろうとしても喋りつづける母親からの電話みたいな、いつ終わるの!?と思いながらも聞き続けてしまうあの感じ。
美容室という場所柄流行に敏感な女性たちの語る当時の女性のファッションや髪形など、昭和ノスタルジーも楽しめる。そして最後の最後に現代の「私」が現れて急に夢から覚まされるような瞬間のあの切なさ。弟との記憶の齟齬、思い込みや思い違いも含めて幸福だった子供時代への懐かしさに胸を締め付けられる。 -
例えば〈薄いピンクで厚地のデシン風のカーテン〉とそこに〈丁度、星空のようにちりばめて縫いつけて〉ある〈ガラス玉〉に、〈夕日かそれとも朝日に染って淡い透明なバラ色に薄く光っている空の下にある池の噴水からとびちる水の飛沫に光線があたって、透きとおるまばゆい七色に輝いている様子を連想すべきなのかもしれない〉空間。或いはその〈無数のガラス玉〉の振りまく〈光の飛沫〉(〈天井や壁の照明を反射させて透明に輝く青や紫や赤やオレンジの…〉)と、〈光の飛沫〉が開いて行くスクリーンの白い輝き、〈シネマスコープの深紅色の絹地を背景に〉〈濃いブルー、紫、輝く黄色、緑色、濡れたような赤、透明な光線のようなオレンジ色にきらめきながら次々と音もなく、宙をゆっくりと舞う雪のように〉降りしきりふりつもる〈イミテーションのガラス玉のダイヤ〉…。それらを読むことで、と言うか、読みつつそれらを生きることで、自分はまず、かつて作者から映画へと捧げられた一冊の本、『愉しみはTVの彼方に』のことを思い出すのだし、その書物が〈ささやかな映画へのオマージュ〉として書かれ、作られたものであるのだということ、かの書物それ自体がまさに映画へのオマージュであるのだということをも当然、思い出すのだし、また今一度、鮮烈に思い知らされもするのだ。甘く、痛切なオマージュ。映画という魅惑に対する、その魅惑を生きるという体験に対する。愛であり、実践であり、オマージュそのものとして、書かれることになった書物と、小説のこと。その息苦しいまでの快楽について。(…〈バラ色〉は例えば〈薄い水色とごく薄い灰色と白の濁った空に輝いている〉雲のものであれば、それは〈短い束の間の時間、幸福感で充たされる美しさで、私を呆然とさせてしまう〉色でもあるはずだ。)
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文体が好き。噂話調が好き。読むのが快感。
「噂の娘」すっかり忘れているので、読み返したい。 -
途中で離脱。苦行のような文体。私には向いていなかった。
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1文が非常に長く、内容が理解出来なかった。何が言いたいのかよくわからず、私には難しすぎました。
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金井美恵子の最新作。
『噂の娘』の続編でもあるが、特に前作を読んでいなくても問題はない(そもそも件の〝噂の娘〟の文庫本、今、新刊で入手可能なのだろうか……)。
久しぶりに金井美恵子の文章を読んで、なんとなくすっきりした。こういう饒舌な文体って最近はなかなか無いんだよね〜。 -
【あの人たち、あの娘たちは今どうしているのだろうか――】すずらんの香水、首筋に感じる風、数多の映画の情景、幾度も紡ぎ直される物語。50年代の記憶を精緻に編みこんだ切なく甘い長編小説
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