海を抱いて月に眠る

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908120

感想・レビュー・書評

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  • 第2次世界大戦後、密航して日本に渡り偽名で生きた韓国人の話。
    今現在の娘たちの話と亡くなった父親の手記が交互に語られる。
    韓国の戦後史をよくは知らないので新しい話がいっぱいあった。
    歴史を知らないなあと思う。
    父親の不器用な生き方がなんとも切ない。

  • 戦後、日本に来た韓国の青年たちの人生。故郷を思いながら異国で暮らしていく葛藤や苦しさが心に残った。

  • 己の無知さが嫌になった。ちゃんと歴史を知らないといけない。

  • 偏屈で家族から疎まれていた在日韓国人の父親が死に、遺品整理のときに見つけたノートから今まで知らなかった父の人生が明らかになっていく話。

    まるで大河ドラマのような壮大さ。国も背景はだいぶ違うけど、なかにし礼の「赤い月」を思い出す。満州を背景にした話は何冊か読んだことがあったけど韓国の話は初めて。

    日本人の私は自分の国や言葉などにここまでのこだわりを持っていない。日本に住みながら韓国人であることの誇り、韓国の名前、韓国語で話せることの喜び、今まで奪われてきたからここまで大切に感じるのかな。国籍や見た目で偏見のない、おかしな上下のない世の中になるといいな。

    面白かった、あっという間に読破。

  • 著者の父親の経歴をもとにした小説。梨愛の父親が死んだ。90歳だったので世間的には大往生だ。秋夕(추석)の餅菓子(송편)を喉に詰まらせて亡くなったという。いつも早く食べて喉に詰まらせる癖があった父だ。韓国のしきたりにはうるさい父だったが、外に対しては日本人としてふるまってきた。そして文山徳允の通称名で生きてきた。父の葬儀に見知らぬ美しい女性が来て泣いていた。いったい誰だろう?父との関係は?また葬儀の終わりごろに80歳は過ぎているような老人が柩に取りついて泣いていた。アイゴー(아이고)、アイゴー。韓国語で、日本人にされちまって!と喚き散らしていた。一体あの女性は誰なのか?この老人は誰なのか?知っていた父とは違う父がいたのだろうか?梨愛は、まず弔問に来ていた女性に連絡を取ってみた…。そして自分たちの知らない父の半生が見えてくる。祖国と日本との間で翻弄され、過酷な半生を生きてきた在日一世の人生。

  • 在日朝鮮人の視点からみた戦後史。

  • 気難しかった在日韓国人の父の葬儀の際に、父の死を悲しむ見ず知らずの女性と、棺にすがりつくように泣く老人の姿があった。
    彼らは誰なのか。
    家族の知らなかった父の本当の姿とは。…

    在日韓国人の著者の父の経験を元にした作品とのこと。
    驚きと感動と、自分の不勉強とで、複雑な気持ちになりました。

    不器用なお父さんが生きているうちに、2人の子供が事実を知れれば良かったのにと思いましたが、実際には、著者がお父様の話を聞くことが出来た為この作品が生まれたのですから、そこは良かったのですね。

    朝鮮半島や在日韓国人の歴史など、私自身がまだまだ知らなけらばいけないことはたくさんあると思いました。

  • とってつけたような従軍慰安婦を匂わすエピソードに違和感というか不快感をおぼえはしたが、全体としては、胸を打つ内容である。

  • 著者のルーツである在日韓国人。
    差別されても、虐げられても日本で生きていくしかなかった。
    だが、日本人も韓国人も同じ人間である。
    親が子を思う気持ち、子が親を思う気持ちは、誰でも同じだ。
    日本人も韓国人も同じ人間だと思う気持ちは、駄目なのだろうか。
    父から子への深い深い愛情に涙が溢れてくる。

  • 頑固で気難しくて家族からずっと嫌われていた父には、想像を絶する苦難に満ちた半生が実はあった、という話。娘の側から始まった話が、急に時代が飛んで3人の男性の話になり、なんだ?と最初混乱させられるが、読み進めていくうちに、現代と先の大戦直後という、2つの時間軸を交錯させながら進むストーリーなんだと理解する。この構成は巧みであり、読み終えてみると、この物語にとって、これ以上のやり方はないと思われた。

    韓国や北朝鮮は、日本にとって距離的にも歴史的にももっとも身近な外国であり、特に韓国は食べ物や音楽など、最近は外国とも思えないぐらい近さを感じてきた。言葉の勉強さえしたいと思っているぐらいだ。

    しかし、戦後、朝鮮半島で何が起きたのか、またいろんな理由で日本に来ることになった朝鮮半島生まれの人たちのことを、自分がほとんど知らなかったことを読み終えて改めて深く自覚した。勉強になったなどという言い方は非常に不適切であるかも知れないが、少しでも戦後の朝鮮半島をめぐる事情と、それに振りまわされ、大変な苦労を経験せざるを得なかった人たちのことを知ることができて、よかったと思う。

    多額の賠償金を払い続けてきた日本の罪の清算については、今でも両国の間では決着をみないし、慰安婦問題など様々な問題は続いている。これについてはなんにも言いようがなく、ただ歴史の複雑さはあまりに深くて、容易に解決できることではないと思うしかない。

    トランプ大統領の行動によって韓国と北朝鮮の関係は今まで以上に緊密になっている。せめてまずは両国が一つの国として平和的に一緒になれる日が一日でも早く来るのを期待したい。

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著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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