小萩のかんざし いとま申して 3

  • 文藝春秋 (2018年4月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784163908229

作品紹介・あらすじ

作家・北村薫が、父の死後に遺されていた膨大な日記を考証、再生。ミステリ作家・本の達人としての腕を存分に振るいつつ、無名の一青年の目を通した昭和初期の歴史的シーンを繊細に愛情深く甦らせた三部作の完結編。



ドイツではヒトラー内閣が成立し、三月には東北三陸地方に大津波が押し寄せた昭和8年、父は慶応義塾大学を卒業するが、不景気の波が押し寄せる時代に就職口はない。文春の試験にも不合格し(池島信平が合格)、大学院に進むものの家の経済は苦しく、定期を買う金もない。崇拝する折口信夫から満足な評価を得る事もできず、国文学への情熱も断ち切るしかないのかと懊悩しながら東京、横浜をさまよう父の姿が哀切をもって描き出される。一方、文学史上の有名人物と折口信夫が敵対し、罵倒批判された数々の事件の真相に迫る著者の筆はスリリングかつ感動的。時代の背景と状況を踏まえ、文献、日記、関係者の随筆に散見される該当箇所を読み解きつき合わせることで、折口信夫の底知れぬ大きさと怖さ、師弟関係に潜む感情、国文学に生涯をかける人々の熱情と嫉妬があぶりだされる。横山重、佐々木信綱、池田弥三郎、祖父、父、学友たち-ー

あの時代を歩んだ有名・無名の人々の姿を捉える、感動の昭和史。

感想・レビュー・書評

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  •  文庫になったら買うつもりなので、後半はパラパラめくっただけ。1巻ででてきたはずの奈街三郎。今、名前を見るとなんだか見覚えのある名前…。あぁ、『はしの上のおおかみ』!?

  • 作者の父親の日記に基づく三部作の完結編。

    前二作の内容を余り憶えておらず、序盤の国文研究周辺の流れを掴むのに苦労したが、流れに乗ってしまえば、主人公の心の動きや時代の流れ、折口信夫周辺の動きなど、丁寧に掘り下げられていて、引き込まれる。

    三部作を書くに当たっては、関連する文献を克明に読み込んだのだろう。

    三冊をまとめて通読すれば、より深く感慨を覚えると思う。

  • 筆者の父の残した日記を軸に、折口信夫や横山重にまつわる記録をひもときながら過去を描写していく。100年も経っていないくらいのことでも、私のような昭和最後のころの生まれにとっては遠い遠い昔のようで想像を超えている。昭和初期の戦前期というのはそれだけ特異な時期だったのだろうか。本書の終盤は本当に急かされるように切なくなりながらページをめくった。結びに挙げられた、仏足石の歌が印象に残る。「御足跡(みあと)作る 石の響きは 天(あめ)に到り 地(つち)さへゆすれ 父母がために 諸人(もろびと)のために」。

  • 折口信夫を敬慕しながら取巻きとは認められなかった演彦氏の微妙な立ち位置を鮮明にするために、横山重が副主人公として描かれたのだろう。こんな人がいたのか。本、というより書籍と言った方がいいのか、その重みが違う。演彦さんの妹の友達とのお付き合い、恋と言っていいのかな、北村さんも作家ならば詳しく突っ込んで書くべきだろうが、やはり両親への遠慮があったのだろう。関東大震災に比べ太平洋戦争はあっさり流された感が。経済的に困っているのに、外食観劇旅行にお金を惜しまないとは、当時の都会のインテリとはそういうものか。兄嫁を責められない。新村氏のフルネームを明らかにしないのも配慮か。えんひこは少なくとも友には恵まれたな。

  • 作者の父の日記を基にした評伝風シリーズの第3弾で最終巻。

    慶応大学本科卒業から就職難のための院進、沖縄の教師としての就職で日記が終了するまでが中心です。
    作者の父、その恩師の折口信夫、その友人の横山重とその周囲の人物を描くことでこの時代のリアリティを感じさせてくれます。
    もちろん、慶応文学部の人たちなので一般的とは言えないと思いますが。
    特に作者の父が定期も買えないで学校にいけないほど困窮しているのに、鰻や天麩羅や鮨を普通に食していたり歌舞伎を見ることが辞めれないのは時代的な価格差はあるとはいえ、浮世離れはしているような感じがします。
    最終章は第二次世界大戦突入後の登場人物たちのその後が列伝的に述べられているのは素気ないような気がしますが、肝心の日記の記述がなくなったので仕方がないのでしょう。
    それにしても、小説でもなく、日記そのものでもない実験的な物語は自分も同時代を一緒に見たような感覚にする不思議な作品でした。
    塾生、塾員にはぜひ読んでほしい作品です。

  • 三部作完結。自由学園明日館は最近たまたま「吉田類の酒場放浪記」で観たところだったので驚いた。謎のシンクロ!

  • 折口信夫の名前は聞いたことがある。
    が、著作は読んだことがない。(一般教養どまり・・・)

    どの時代に生きた人かというところからよくわかっていなくて、この作品ではじめて、「あーこういうひとだったのか・・・」と、同時代人である、北村薫さんのお父様の日記を通してみた「折口信夫像」をとらえた。
    学説についてくわしく書いているわけではなく、人物像というか、あの時代の慶應義塾での折口教授の周囲の雰囲気が伝わってくる。

    個人的には、こんな教授には指導を頼みたくないわー・・・(苦笑)

    ただ、これはいまでいえば、BL的というか・・・学問のある分野での神様であるところから、こんなサロン的なものがうまれたのだろうかと。そういう嗜好を、作者はあからさまには書き立てないだけに、「あれ、これは・・」「これはもしや・・・?」と憶測が膨らみ、読み物として非常にスリリングでした。
    遺品の「小萩のかんざし」が出てくる歌舞伎の演目の内容から、養子との父子墓にいたったところで、すごく切なくなってしまった。
    ウィキペディアではこの嗜好ははっきりと書かれており、おおおー、LGBTの権利が認められていた現代にいたって、時代がようやく折口先生に追いついたんだなーと思うくらい。


    そして、登場人物の中で・・・って、登場させる必要があったのか?日記に従って書いていけば、直接は関係ないと思うんだけど。友人の勤め先ではあるけど。これは息子としてではなく作家としての北村薫がこのひとに魅力を感じたからではないだろうか。
    わたしも、いいなぁ~と思う。
    横山重。
    初めて知ったけど。
    その性格(出版社をはじめた動機がいい)
    学会での立場や、折口との関係、社員(?)との関係や夫人(このひとがまた素敵)とのエピソード、そしてその業績。
    知れば知るほど魅力的で、「こりゃ朝ドラになるな。いやNHKのドラマでもいいかも」とは思うものの、いかんせん、その仕事の内容が「古典籍を保護し、校正し活字にして世に広く残すこと」・・・となると、その重要性、意義は理解できても、映像にするとなると難しいかもなぁと・・・その辺をうまく料理できる脚本家さんがいるとしたらいいのに。

  • 【慶應を出たけれど、就職口なし。胸をうつ昭和史】昭和八年、慶應大学を卒業したが就職口はなく経済の逼迫に苦しむ父。巨人・折口信夫をめぐる真実に迫る感動の昭和史。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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