鵜頭川村事件

  • 文藝春秋 (2018年6月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784163908281

作品紹介・あらすじ

父と娘は、閉ざされた村での狂乱から逃げられるのか――

狂気が狂気を呼ぶ、パニック・ミステリー!



一九七九年、夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ、一人の若者の死体が発見される。村の有力者・矢萩吉郎の息子で問題児の大助が犯人だと若者たちは息巻くが、矢萩家に誰も反抗できず、事件はうやむやとなる。抱えていた家同士の対立が顕在化し出し、若者たちは自警団を結成する。動き始めた狂気がさらなる狂気を生み、村は騒乱に巻き込まれていく――

感想・レビュー・書評

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  • 亡き妻の墓参りに鵜頭川村を訪れた岩森と娘の愛子。その夜に大雨から大規模な土砂崩れが起こり、村は孤立することになる。
    そんな中、村の1人の青年の刺殺された遺体が発見され、犯人捜しから村人同士の対立が始まる。
    閉鎖された空間の中で、都会に憧れながらも村を出ることを許されなかった、青年達の大人へ対する憎悪に、根深い男尊女卑。
    自分も田舎出身だが、ずっと地元に残っている同級生達を見ると、狭いコミュニティの中で学生時代の上下関係、いわゆるスクールカーストがいい歳した大人になってもまかり通る地域がある。
    子連れの元後輩に、帰省先のスーパーでペコペコ頭を下げられ、その場から逃げ出したくなった事がある。
    個々には親思いの良い青年達が、集団になり団結し我を忘れ牙を向く、逃げ場の無いパニックミステリー。
    青年達の憧れだった辰樹と、よそ者の岩森のバトルの描写が、自分の身体に痛みを感じるようで辛かった。やっぱり人が一番怖い!

  • #読了 #鵜頭川村事件 #櫛木理宇
    亡き妻の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた父娘。突如、豪雨に見舞われ一人の若者の死体が発見される…
    集団心理を利用してやすやすと暴動をおこす頭脳があるなら、何か解決策は無かったのか?と思ってしまうが、真相を聞くと同情もしてしまった。

  • ★3.5

    父と娘は、閉ざされた村での狂乱から逃げられるのか――
    狂気が狂気を呼ぶ、パニック・ミステリー!

    一九七九年、夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、
    三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。
    突如、山間の村は豪雨に見舞われ、一人の若者の死体が発見される。
    村の有力者・矢萩吉郎の息子で問題児の大助が犯人だと若者たちは息巻くが、
    矢萩家に誰も反抗できず、事件はうやむやとなる。
    抱えていた家同士の対立が顕在化し出し、若者たちは自警団を結成する。
    動き始めた狂気がさらなる狂気を生み、村は騒乱に巻き込まれていく――

    昭和54年、豪雨による土砂崩れで山間の村が孤立する。
    そんな中、一人の青年の刺殺死体が発見される。
    村で絶対的な力を持っている「矢萩一族」。
    それに従わなければ生きていけない「降谷一族」。
    孤立し、電気も水道も電話も使えなくなり救助もいつ来るかわからない。
    極限状態に陥った時、村人たちの不満は膨れ上がり、
    さらに大人と若者たちの間にも亀裂が入る。
    幼い娘を連れて妻の墓参りのために偶然村に居合わせた岩森は巻き込まれていく。

    読む度にどんよりとした気持ちにさせられる櫛木さんの作品。
    でもやっぱり読まずにはいられない櫛木さん…(笑)
    読み始めはいつも暗さがなく普通のミステリーの様で
    どうなるのか先が気になってワクワクしながら読んでいました。
    しかし、やはり読み進めれば進めるほどいつもの櫛木さんらしさがーー。
    閉鎖的な村における、人間の狂気や醜さをこれでもかって描いていた。
    田舎特有のいやらしさ。
    登場するほとんどの男性の嫌な事٩(๑òωó๑)۶腹の立つこと(*`Д´*)
    何なのこの男尊女卑(-`ェ´-怒)

    以前も櫛木さんの「避雷針の夏」でこんな町に絶対に暮らしたくない
    って思った事がありますが、
    今回もこんな村絶対に暮らしたくない。
    若者たちもそんなに不満を抱いていたのなら、
    村が嫌いなら出て行けばいいのにって思った。
    洗脳や集団心理って怖いね。

    ここ数年豪雨被害が多く、孤立集落って言葉を良く耳にします。
    そして数日前には村八分があるって新聞の記事を読みました。
    こういう村、ここまでいかなくっても似た様な村あるのかもしれない。
    そんな風に感じました。

  • 閉ざされた環境で、まさに生きるか死ぬかの極限状態。よそ者の岩森さんやエツ子さんがいたのが救い。ちょうど大雨で、余計怖かった。
    読むのに、すごく時間がかかった。

  • 本当にあった話かと思うくらいリアル。そして、残酷な描写も多く、本当にリアルでゾッとする。
    人間の狂気がすごく見事に描かれています。
    エツ子さん、愛子、港人の存在だけが唯一の心の救い。

  • 主な登場人物の多くが30歳以下なのに、面白くて一気読みしたのは、舞台が1979年(昭和54年)だからでしょうか。ホラーと言うより、令和の横溝正史かと思いました。WOWOWでドラマ化するそうですが、役者さん方は大変なのではないかしら。

  • 人って怖いなーって思える作品。
    群集心理とそれを操る方法と。
    今もこういう村があるのかもしれないって思えるくらいに日本の閉鎖的な部分が濃く出てる。
    話も昭和の話だしね。
    最後は暴力的な方向へ進んで。
    読後の爽快感はなし。
    所々の新聞描写。
    裏ではこんな事があったんだってのは記事からは伝わらない。
    それが一番怖いってちょっと思った。

  • 主人公は妻を亡くし、まだ幼い一人娘を男手ひとつで育てている男性。
    彼は妻の墓参りのため、久しぶりに妻の故郷である鵜頭川村を訪れる。
    妻の生家はその村では有力者の家で、村全体が男尊女卑な風潮の上に、その家の男たちは輪をかけて横暴だった。
    それは、嫁だけでなく、使用人として使う村の人々に対しても同様で、村には一家への反感が募っていた。
    そんな折、一人の男性が村で殺されるという事件が起きる。
    容疑者として浮かび上がったのは一家の末っ子である男。
    だが、その事件の容疑者は有耶無耶にされかかった、それと時を同じくして大水害による土砂崩れにより村は孤立状態となってしまう。
    その後、商店では売り惜しみが始まり、村の若者たちは自警団を結成。
    その自警団は団長の男の扇動により、狂暴な方向へと向かう。
    その矛先は日頃の憤懣を抱える先、村を支配する一家へと向かう。

    何となく読んでいて入りこめない本で、読んでいる途中にすぐに寝てしまった。
    櫛木理宇さんの書いてる本にしては珍しい。
    たくさん登場人物がいるために心情が分散されたからかもしれない。
    夢中になって読むまではいかないけれど、考える所はある本だった。

    まず、読んでいて、この本に出てくる男共が嫌でしょうがなかった。
    横暴で、知性の感じられない言動、そのくせいざとなると弱い人間。
    それと比べて主人公の子供の愛らしいこと。
    醜い男共の中にいて、その無邪気さや健気さが却って際立って見えた。
    さらに、最初からおかしいのがもっとおかしくなっていく男共の中において、理性的にふるまう主人公男性や他の青年の姿。
    自分の中の獣に負けてしまう人間とそうでない人間が見事に描かれていた。

    それと、読んでいて自然と思ったのは学生運動について。
    この物語の時代設定は昭和50年代。
    学生運動の記憶がまだ生々しく残る時代でもあり、それがこの村の人々にも影響を与えている。
    私は昔から学生運動の事がどうにもよく分からなかった。
    何であの時代の若者があんな事をしたのか、概要を聞かされてもさっぱり理解できない。
    よほど頭が悪いからだと思っていたら歳をとって何となく分かってきた・・・が、やはり何であんな事をしたのか分からない。
    ただ、集団心理って恐いと思う。
    責任の所在がはっきりしない状況では人間は獣になりやすい。
    それも自分は「正しい」という根拠ない信念があればさらに・・・。

    折も折で、今オウムの教祖が死刑になり、外は大雨。
    この本を読むには絶好の条件が揃って読んだ本だったと思う。

  • 怖かったぁ。災害で陸の孤島と化した小さな村。家長制度が色濃く残っていて、良くも悪くも日本の風土や風習が人々をがんじがらめにしている。時代背景が昭和54年ということも相まって不気味さが増していました。ゾンビだとか未知の細菌でパニックに陥る話は良くあるけれど、これは普通の人間がいろいろな条件環境などで狂気を生み出していく。じわじわと怖くなっていって、早く逃げて逃げてと思いながら読み進めました。夢を諦めた青年は、自らの手で未来を変えようと思いそして未来を壊した。最後は可哀想だったな。

  •  亡き妻の墓参りのため、6歳の娘を連れて鵜頭川村を訪れた岩森。折しも豪雨による土砂崩れが発生し、村は陸の孤島と化す。
     なかなか来ない救援、停電、食料と水の不足。村に焦燥と悪意が漂い始め、ついに事件が。若者たちは自警団を結成し警戒に当たるが、以前からあった村の顔役・矢萩一族への反感は深まる一方で……。


     図書館本。
     表紙で何となくお察しの通り、ムナクソ系。
     パニックホラーというよりはバイオレンスと言った方がしっくり来る感じかな? かなり凄惨な描写もあるので、スプラッタとか苦手な人は読まない方が……。
     ミステリー要素はほんのオマケ程度で、真相はともかく、犯人がアレじゃないのは大体察しがつく人も多いはず。

     言っちゃ悪いが、読後に残るものの無い小説だった。
     序盤から嫌味とマウンティング、偏見、暴力のオンパレード。スッキリする展開は無い。
     これに加えて世代ウケを狙っているのか、昭和の懐かしキーワードがズラズラと登場。しかし、固有名詞を並べただけでその時代の空気は全く感じられず、懐かしさの押し売りとしか思えなかった。作者もよく知らないのかな?という印象。


     村の設定も甘く、ストーリー展開に都合の良い構造になっている。

    ・村には小学校も中学校も無い→救援ヘリが着陸できない(義務教育どこ行った?!)
    ・矢萩工業の重機は隣の鷺見市に置いてある→孤立状態を維持、矢萩一族の対抗手段を無くす
    (普通は街中に事務所、郊外に重機置き場となるのでは?)
    ・村にヤンキーやいじめのリーダー格がいない→辰樹が簡単にリーダーシップを取れる
    (権力を持っている方が村に残る率が高いと思う)
    ・村の規模のわりに店が多い→暴徒のターゲットとしてわかりやすい
    (人口900人程度の村に、小間物屋や乾物屋といった特化型の店はまず無いのでは?)

     そういう村なんだと言われればそれまでだが、幼児・児童がそれなりにいるのに小学校すら無い自治体って……。ちょっとあり得ないでしょ。


     主役級の元優等生・辰樹の設定もよくわからん。
     東京の大学に進学するはずだったのが、兄の死により急遽家を継ぐことになり、進学はお流れ。という気の毒な人物ではあるのだが。
     てっきり農家かと思ったら、父親は村にある矢萩工業の社員。亡くなった兄も矢萩工業。で、わざわざ進学を諦めた辰樹は……同じく矢萩工業勤務。後継ぎって?!
     むしろ進学させて士業にでも就いてもらった方が、収入も増えて将来安泰なんじゃないの??? 村で開業すれば後継ぎ問題も解決するし。
     また、村の若者の英雄としてカリスマ性を発揮する辰樹だが、弁が立ってもインテリ優等生って田舎じゃあまりウケないと思うんだけど。“勉強ができる”のは田舎じゃ大したステータスにはならんよ。使い道が無いんだもの。一緒にバカやってくれて、理屈をこねないタイプじゃないと敬遠される。

     終盤、鵜頭川村のオタク王・白鳥が自分のことを指して「オカルトやSFに傾倒して世をすねて、『犯罪に走りそう』と思われやすい人物」といった趣旨のセリフを吐く。
     しかし、創作物(主にアニメや漫画)の犯罪への影響が世間一般で取り沙汰されるようになったのは、もっと後では?
     それに早川SF文庫だと、田舎なら「難しい本を読んでる!」程度の扱いでしょ。下手すると“真面目な人”って言われちゃうよ。実際、私が経験済み(笑)。

     そういった田舎の傾向などのリサーチも不十分に感じた。


     内容はさておき、状況描写をほどよく交えた文体はスッキリとしてテンポが良く、実に読みやすかった。
     私の場合「ゴールデンカムイ」くらいでしか接することのなかった新潟方言の会話も、味があって良かった。
     ホラー系ではなく、もうちょっと穏やかなストーリーの方が向いてそうな作家さんのように思うんだけど。

  • WOWOWでドラマ化(2022年10月から松田龍平主演)されているので読んでみる。筆者の作品はリームダスト・モンスターズは面白かったが、「チェインドッグ」は私好みの作品じゃなかったし、ホラーってことだったので覚悟はしていたが、ホラーじゃなくてヴァイオレンス小説やった。ホラー以上に苦手。雰囲気は横溝正史の村ものって感じだが、舞台が1979年で、出てくる若者と私の年が変わらないことが怖い。スターウォーズにインベーダーゲームだもんね。それが一番怖かった

  • もっと猟奇的な展開になるのかと思っていたけど案外でした。幼いこどもを連れた主人公がさほど苦しまず、真相も見つけるし、ちょっと解決が安易かな。
    ほんとの怖さは普通の人が狂ってしまうこと。新左翼的なアジで狂わせるのは物足りなさでいっぱい。

  • 2022.03.23

    古い因習が残る田舎の村に取り残された余所者…というシチュエーションは大好物なので図書館で借りてみた。
    大好物のシチュエーションではあったけど、前半部分が長すぎてややテンポ遅め。登場人物の関係も複雑でどっちがどっちか一回読んだだけじゃわからず混乱した。
    イッキ読みしたけどこの小説、好きじゃない…。
    人間関係といい、殺し方といい非常に胸くそ悪かったです(褒め言葉でもある)。

    森に入って逃げ惑うところは「クリムゾンの迷宮」や「バトルロワイヤル」にも似てたかな。
    土壇場で主人公のケンカ慣れしてるワケが明らかになったり、エツ子さんの電話が通じたり、ご都合主義っぽいところもあり。

    矢萩にもいろいろある…と文中にもあったけどよく主人公の奥さんはよくこんなところでまともに育ったな。
    愛子ちゃんはこんな殺戮シーンを目の当たりにさせられてさぞかしトラウマになっただったろうな…。

  • またまた徹夜読書してしまった。

    とにかく暗い。場面はずっと閉鎖的な村内で、ずっと雨が降ってる。
    出てくる村人たちほとんどが嫌な奴。
    そんな中でも高校生の友情や、村の血筋とは関係のないピアノさんはホッとするオアシス。
    後半1/3は息もつかせぬ展開で一気読み。

    田舎って本当に怖い。洗脳って怖い。
    同じような題材の本はをいくつか読んで
    田舎暮らしって、常人には出来ない高度なコミュ力が必要なんだなと毎回思う。

    現代は、子供のために子育ては田舎で。って考える人たちもいるけど、一長一短。
    本当に子供のためになるのかなんて分からない。
    要は、子供を縛りつけずに本人の意思を尊重して人生を選択させること。
    長男は跡取り息子、嫁を貰う上げる、隣組、一族、血
    生きていく上で、しがらみは沢山あるけど
    人間はモノじゃないし、子供は所有物ではないけど
    狭い田舎の村では、まだまだそういう考えの人がいるのかも。

  • なんでそんなに騒がれてたのかな?
    という読後感。
    一番悪いのは口の軽い人って事だとして、
    なぜゆみさんは全然訛ってないんだい。

  • リアリティがあるようなないような集団心理の恐ろしさ。こんな単純なの!?とも思うが、鬱屈した不満が集まって弾けると誰にも止められない勢いが簡単に生まれてしまうのだろう。
    子連れの逃避行はドキドキ。後半は櫛木さんお得意のバイオレンスの連続。港人と廉太郎の友情、ピアノさんの逞しさ…チラリと垣間見える良心もあるけれど、感情移入する登場人物がいなかったのと結局狩る側狩られる側どっちもどっちだったから、終わりはちょっと物足りなかった。
    耐えてばかりだった有美さんが爆発しちゃえば意外性もあってスッキリしたなと思う。

  •  ド田舎の積もり積もった鬱屈が暴動に至る。
     過去作の「避雷針の夏」を改題修正したような話だった。

     昭和五十年代、長雨による土砂崩れにより鵜頭川村は孤立状態となった。
     水害は県内全域に及んでいた影響で、救援も遅くなった。

     この村には道路拡張計画をめぐり賛成派と反対派に分かれていた。
     反対派の村長は昔からの地主であり、賛成派は農地解放後に農地を売った金を元手に成功した土建屋の一族だ。
     村民たちはほとんどがこの土建屋に従事しているため、この一族には逆らえずに鬱憤が溜まっていた。

     そしてこの長雨による水害のさなかに殺人事件が起きた。
     一人の若者が殺されたが、犯人と目されるのは土建屋一族の息子で、大人たちはそのことを指摘できなかった。
     自らの命は自らで守るしかない。
     自警団を呼びかけた若者もまた、心に鬱屈を抱えていた。

  • 旧弊で閉鎖的な村での暴動に巻き込まれた父娘の話。昭和を生きていないと伝わりにくいかもしれない。読み進めるほど嫌な感じが増してきて、荒唐無稽なようで、すごくリアルなようで、割と一気読みだった。

  • 昭和54年夏、亡き妻・節子の墓参りのため節子の田舎・鵜頭川村に3年ぶりにやってきた岩森明と娘・愛子。
    山間の村で50年に一度といわれる豪雨に見舞われ、土砂崩れで交通は分断、大規模な停電により外部との通信も途絶えた中、一人の若者の死体が発見される。
    旧態依然とした閉鎖的な村は、村の有力者・矢作家が力の全てをほしいままにし、虐げられた他家のものたちは従いながらも鬱屈をためていた。
    食料も水も尽きてくるなか、次第に大きくなる悪意と反発。日和見の大人たちに業を煮やし、友を殺された若者たちが自警団を発足する。極限下での略奪や暴力から女子供を守るための自警団のはずだった・・・

    ひゃ~、冒頭からホラーかと思うほどの怖さ。主人公の田舎の昔の事件からの導入はお見事。
    時代は昭和、場所は田舎の山間部、方言など、横溝正史の作品を彷彿とさせるなか、連日降り続く雨、雨、雨。
    たれ込める雨雲の下、渦巻く悪意と、鬱屈した思い。
    貧しさ故に村に縛られ、家のしがらみ、家長である父の横暴、酒乱、暴力に押さえつけられた女と子供たち。こんな村嫌だ!と誰もが思うだろう。

    自警団が暴走をするまでのリーダーによる洗脳ともいえるアジテート。人は、極限状態におかれるとこんなにも簡単に理性を捨ててしまえるものなのか。
    壊れていく若者たちのエネルギーが暴力という方向に向かう過程がただただ怖い。

    岩森と自警団のリーダーの最期の死闘が長く凄絶で、やりすぎ感はぬぐえないものの、ラストまで一気に読ませる櫛木さんのリーダビリティはさすが。櫛木さん、2作目だけどハズレなし。次も楽しみ。

  • 昭和の旧弊な村を舞台にしたサスペンス。村に漂う閉塞感と、豪雨により閉ざされた不安感、そしてやがて起こる暴動への緊迫感がどれをとってもたまりません。もうタイトルと表紙を見た時から嫌な予感しかしなかったのですが(笑)。全編嫌な雰囲気に満ちていて、それでもぐいぐい読ませられます。
    扇動される若者たちの姿がとにかく怖い。抑圧され続けた感情が爆発にいたる緊張が半端じゃなくって、先を読むのが恐ろしいのだけれど読む手が止まりません。起こった「事件」の真相も読みどころではあったのですが、とにかく主人公の命運が気になっていて、誰が犯人なのかとか考えるのは忘れていたかも。主人公の終盤の意外なほどの頑張りも応援したくなります。
    ああ、それにしてもこういう村ってやっぱり嫌だなあ。赤の他人よりもむしろ、こういう親戚ぐるみとかのほうがこじれると余計に厄介な気がします。だからこそ「よそ者」であるピアノさんの姿はすがすがしく感じられました。彼女のキャラ、いいなあ。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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