人口減少社会の未来学

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908328

作品紹介・あらすじ

21世紀末、日本の人口は約半数に――。人口減少社会の「不都合な真実」をえぐり出し、文明史的スケールの問題に挑む〝生き残るため〟の論考集。各ジャンルを代表する第一級の知性が贈る、新しい処方箋がここに。目次・序論 文明史的スケールの問題を前にした未来予測 内田樹・ホモ・サピエンス史から考える人口動態と種の生存戦略 池田清彦・頭脳資本主義の到来 ――AI時代における少子化よりも深刻な問題 井上智洋・日本の“人口減少”の実相と、その先の希望・シンプルな統計数字により、「空気」の支配を脱する 藻谷浩介・人口減少がもたらすモラル大転換の時代 平川克美・縮小社会は楽しくなんかない ブレイディみかこ・武士よさらば ――あったかくてぐちゃぐちゃと、街をイジル 隈 研吾・若い女性に好まれない自治体は滅びる ――「文化による社会包摂」のすすめ 平田オリザ・都市と地方をかき混ぜ、「関係人口」を創出する 高橋博之・少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」 小田嶋 隆・「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン 姜尚中

感想・レビュー・書評

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  • 複数名の論客がそれぞれの視点で人口減少について語るという内容。

    序論において少子化や高齢化が進行しているということは頻繁に耳にするものの、出口戦略を持った議論が不足しているという指摘があった。さらに、これに対して日本人は最悪の事態を想定して対策を講じるという習慣がなく、明らかに問題が深刻化しているのに責任を取りたくないから問題の解決を放棄する性格があるという。実際そうかはともかく耳が痛くなったが、確かに問題だと大騒ぎするだけでなく、場合によっては(むしろこちらの方がありそうだが)敗戦処理的な内容になることも受け入れて具体的な対策を講じないと今以上の大問題がやってくるのは目に見えている。

    個人的には統計データに基づいてなんとなくでしかなかったイメージを更新できた藻谷浩介さんと、緊縮財政を進めてきたイギリスに住んだ人の目線で縮小社会は楽しくないと述べるブレイディみかこさんの章が印象に残った。

    この本では最終的な結論に至ろうとしているわけではなく、多角的な意見を交えて議論する土壌を作る契機としたいという狙いはよく伝わってきた。ただもう少し各章に紙面が多くあっても良かったのではないかとも思う。

  • ブレイディみかこさんは「縮小社会はたのしくなんかない」という一文を寄せている。日本で縮小社会への本に「楽しい」とか「怖くない」などの枕詞がついている本があるが、イギリスに住む身としては、かつての「ゆりかごから墓場まで」の社会はどこへやら、緊縮財政のなか、生活保護の打ち切りや失業者はあえぐ現状、それは「楽しく」も「怖くない」なんてこともない、という。
    (調べると「楽しい縮小社会」2017.6筑摩書房 があった)

    氏の別な本でも公共投資も縮小され、保育園がフードバンクになったり、図書館が閉鎖され福祉施設になったりする現状が語られていいた。それはとりもなおさず子供たちの学習の場を奪うことになり、「未来のために借金を残さない」政策が逆に増やしている、と述べる。

    紹介されていた映画「パーディーで女の子に話しかけるには」2017 ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の内容がすごい。主人公の女の子は遠い惑星から来た宇宙人という設定。この惑星では「ペアレント・ティーチャー」と呼ばれる指導者が若者を率いて「コロニー」を作っているが、種族の保存のためには子供たちは親に食べられてしまう、というのだ。(大人たちの思想的物質的)現状維持のためにはそうやるのがいいという考え。日本版パンフレットに氏は文を寄せ、この映画は緊縮財政に対する警鐘だと思ったので、パンフレットにはそう書いた、という。ただ原作には親が子を食べるというのはないそう。70年代後半が舞台の著者の半自伝的小説らしい。

    2018.4.30第1刷 図書館

  • 5分くらいしか時間がないので、再読の助けとなるようメモだけ。
    ●序論文明史的スケールの問題を前にした未来予測(内田樹)
    「後退戦」では、戦い方を根本的に変えなければなりません。
    あるいは戦うことからも降りなければならないかも。
    ●ホモ・サピエンス史から考える人口動態と種の生存戦略(池田清彦)
    本書の中では最も興味深く、面白かったです。
    ホモ・サピエンス史という大きな時間軸の中でとらえると、人口減少の見え方が違ってきます。
    ●頭脳資本主義の到来―AI時代における少子化よりも深刻な問題(井上智洋)
    AIに代表される第4次産業革命に乗り遅れるな、と筆者。
    「知力を軽視する国に未来はない」はその通りかと。
    ●日本の〝人口減少〟の実相と、その先の希望―シンプルな統計学数字により、「空気」の支配を脱する(藻谷浩介)
    ご存知、「ミスター人口減少」(と呼ばれているかどうかは不明)
    世に蔓延する人口減少の誤解を、統計を駆使して解いています。
    ●人口減少がもたらすモラル大転換の時代(平川克美)
    法律婚でなく事実婚を認めている欧州諸国では出生率が改善しています。
    日本はそれができるでしょうか。
    ●縮小社会は楽しくなんかない(ブレイディみかこ)
    英国在住の筆者。
    縮こまるのではなく、未来のために積極的に投資していこうという提言には一理。
    ●武士よさらば―あったかくてぐちゃぐちゃに、街をイジル(隈研吾)
    建設業を武士になぞらえる視点は新鮮。
    旧来の考え方から脱しないと。
    ●若い女性に好まれない自治体は滅びる―「文化による社会包摂」のすすめ(平田オリザ)
    平田さんの同趣旨の本は以前に読んだ。
    タイトルが全て、この国の首長の半分がこれを理解して施策を考えたら、日本は変わります。
    ●都市と地方をかきまぜ、「関係人口」を創出する(高橋博之)
    生産者と消費者を結びつける情報誌を発行する筆者。
    この「関係人口」をいかに増やすかがカギと提言。
    ●少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」(小田嶋隆)
    当代きってのコラムニストが斬る人口減少問題。
    笑って読ませます。
    ●「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン(姜尚中)
    ちょっと何言ってるかよく分かりませんでした。
    すみません。

  • 序文の内田樹の文章がそのとおりだよなあと思い、彼が声をかけた人の文、というのを意識して読んだ。
    色々な方向から書かれていることで、勉強にもなったし、自分のもやもやの言語化にもなった。

  • 人口減少について真剣に考えて来なかったから、確実に迫りくる未来の恐怖を感じた。意見の中には様々あって、何が正解か分からないけど、それでも思考停止をせずに問題と向き合って、どういう日本の未来を創って行くのが良いか考えて行かなきゃなと思った。

  • 内田樹
    人口減少に伴う雇用環境の変化によって、今後必要とされる職業とは。日本人は、起こり得る悪い結末についてのリスク評価や対応を考えることに対して消極的であり、そういった姿勢は世界大戦やリニア新幹線、五輪招致といった例に顕著に表れている。現状を冷静に分析し、後退戦においていかに生じる被害を最小限に抑えるかを考えることは、その時点で過去の行為に対する責任が発生するからこそ、自己の保身のために誰が見て見ぬ振りをする。今後の社会構造の劇的な変化によって生じる被害を最小限に抑えるために必要なことは思議である。

  • めちゃめちゃ面白かった。
    特に池田さんの生物学的観点から少子化の影響を説明してくれるような文章初めて読んだから、もやもやしてたことがすごくスッキリした!
    藻谷さんや平川さんの文章も社会学に不慣れな私でもわかるような丁寧な説明で面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712693

  • 読みたいところだけ読んだけど、わたし的には結構よかったなあ。
    東北食べる通信を知った!

  • 人口が減るから経済が成り立たなくなる、という常套句から、さらに人口減少社会の解像度を高まる良書。
    国民経済や制度論のイシューとしてではなく、その中で人はどうすれば豊かに生きることができるか、村落はどうあるべきかなどを「文化による社会包摂」「関係人口」「経営者目線」の否定など、いろんな切り口で考えさせてくれる。

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田清彦の作品

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