ファーストラヴ

著者 :
  • 文藝春秋
3.85
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本棚登録 : 715
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908410

作品紹介・あらすじ

第159回直木賞受賞作!

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 第159回直木賞候補作品。女子大生の聖山環菜が父親を殺したという。理由は、わからないので見つけてほしい、とのこと。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、弁護士の迦葉(由紀とは大学時代からの仲であり、主人の血の繋がりのない弟)とともに、理由を探る。環菜の過去が、明らかにしてゆくとともに、迦葉と由紀の中もどういったものだか非常に気になって。引き込まれました。もう少し早く会っていれば…、子供の声をきく機会なく救えなかった。環菜の過去も辛すぎる。この物語でもだれか耳を傾けている人がいれば、だ。臨床心理士の由紀も家族との問題があり(どの家庭にも程度の差こそあれ問題はあると思うが)、その輪郭も含め全体的にドロドロしさがなく、でも心をしっかり書きつつ流れるように書いていたのが素晴らしかったな(事件の不快感は別として)。ファーストラブというのは、初恋ではなく、親からの愛か? 最後の方は環菜の強さが見えよかったです。

  • 何をレビューしても、割と深くネタバレになる話なので、読む側で選択を。



    娘の父殺しの真相サイドと。
    彼女の臨床心理士と弁護人の因縁サイドと。
    三人が抱える闇が、それぞれ作用し合っていく。

    娘は父親との、息子は母親との出来事を、昇華しきれないまま大人になっていく。
    その間、救われることのないまま経過してしまったのが娘の環菜で、ある一点において救われたのが臨床心理士の由紀だと言える。

    その意味で、由紀にとって弁護人・迦葉と我聞の兄弟との出会いは大きい。
    迦葉については、同じ傷を抱え過ぎて上手くいかないパターンなのだけど、多分それは必要なことだったんだろうな。
    傷付いた由紀を抱擁出来た我聞さんについては、ただただ、神!と言わんばかりの男。尚且つ、イケメンときた。
    つまり、王子様なのだと思う。

    んー。
    そう読むと、この小説って性的に傷付いた美男美女の話になってしまったりする。
    美しいからこそ、変な目に遭う機会が多いのでは?というのは、偏見。
    だけど、そう思わざるを得ない理不尽な仕組みが、この世界にはあるとも言える。

    これが「醜い」加害者と、「美しい」カウンセラーの話だったら?
    いや、反対に冠を付けたって構わないのだけど。
    そこに同じ女性としての共感はあっただろうか。

    そのことと当事者が負う心的外傷を、本来は結びつけるべきではないのかもしれない。
    そして、由紀と迦葉のように、傷付いた者同士であるから、開かれた道もある。
    それは分かる。
    でも、「君は背負い過ぎているよ」なんて言って、傷付いた妻を優しく包み込んでくれる我聞さんが、実は最も背負っていたんだという結末は、理想的で哀しくもあるよね。

  • 「ナラタージュ」の原作にも、映画にも泣かされ、その映画に出演してた坂口健太郎のコメントが付いてたら、もう読むしかない!
    と、泣く気満々で読み始めたが、今作は就活中の女子大生・環奈が父親を殺した罪で逮捕され、「何故彼女は衝動的に父親を殺したのか?」と言う本を出す為に、彼女の心の奥にある真相を探る心理臨床士・由紀とのやり取りがメインで描かれる。
    勝手に切ない恋物語を期待していたけど、読み進めれば、読み進めるほど、虐待が作り出す心の傷の深さに私もいつしか由紀と同じように自分の過去を重ねていた。
    由紀と義理の弟で弁護士の迦葉の努力で、環奈が呪縛から解かれた様子にほっとしたし、本筋の中に見え隠れする由紀と迦葉の過去に「ナラタージュ」の切なさもしっかり含まれており、ラストの1ページで泣いた。
    由紀の旦那さんであり、迦葉の兄でもある我聞の一貫した優しさが物語のバランスを取っていた気がする。

  • 登場人物に感情移入しすぎて苦しかった。一気に読んだ。
    本著のように、幼少期に負った傷を抱え込んだまま、それにすら気づかず、自分を責め続けている人が、1人でも多く自分を肯定できるようになってほしいと思う。

  • タイトルとは裏腹になかなか重い内容でした。もっと青春の甘酸っぱい話かと思っていました。直木賞ですから、そう簡単にはいかないものでしょう(笑)。

    父親殺しの女子大生の話だけど、途中から2つの「ファーストラヴ」が姿を現してくる、そして最後に法廷シーンで(ここが一番素晴らしい)出来すぎ感が満載だけど、そうあってほしいと思わせちゃうかな。

    でも、出来すぎと言えば「我門さん」。それなのにメガネを取るとハンサムだなんて、これはペナルティものだなあ(笑)

  • トラウマを抱えた人たちの物語。
    でも我聞さんみたいな人は現実にはいないんだよ〜(>_<)

  • そうかな、それほどかなという感じ。
    章立てがないので途中でやめられず最後まで一気に読むしかなかったからそう思うのかも。
    もう一度読めば印象が変わるのかな。

  • 直木賞受賞作ということで手に取りました。

    環菜の過去を遡るたびに父親との奇妙な関係、母親との確執、
    付き合っていた男性など様々な周辺に人々が浮かび合うたびに
    普通の人ではないと思わされると同時に壮絶とは一言では
    言い尽くせない過去がありました。
    こんな理不尽な過去があったと思うと性格や人格までが
    自分とは違う方向に捻じ曲げられてしまうと思ってしまいました。
    よくここまで一人で生きてきたなとある意味関心をしてしまいました。

    由紀と我聞さんの夫婦は素敵な夫婦だと思いますが、
    彼女の過去に迦葉との関係も意味深なことがあって、
    それも平行して楽しめて読めました。

    環菜にとってファーストラヴは両親の愛情なのか、
    それとも周囲からの愛情なのか。
    どちらの愛情が人生にとって重要になってくるのか、
    改めて家族の絆と愛情を考えさせられました。

    そして文中にあったように
    傷ついた者たちがいつか幸福になれるように。
    みんなそれぞれ抱えていたしがらみから
    解放されるようにと思ってしまいました。

    作品の前半部分を読むと恋愛小説なのかと思ってしまいますが、
    途中からミステリー小説のようにスリリングになっていくのでとても読みやすく興味深い作品でした。

  • ㊗️初小説㊗️ ※自分の記録用です

    はじめての小説がこの本で本当に良かった。

    いままで小説はほとんど読んだことがなく(幼少期にあまりおもしろいと思わなかったため)、自分を変えたくて自己啓発っぽい心理学的な本ばかり読んでいたので飽きがさし、たまには小説もと思ってAmazonで検索していたらすぐにこれが目に留まりました。直木賞受賞作というのと、写真のような絵のような不気味だけど美しい表紙、そして1番惹かれたのが題名はファーストラヴだけどそれはラブストーリーではなくて『なぜ娘は父親を殺さなければならなかったのか…』という家族問題を描いたものだったから。
    なんとなくなストーリーの想像をしながらも闇要素があるこの本にすごくワクワクして「あぁ、やっぱり自分はこうゆうのが好きなんなんだな」と思った。

    なんとなくの、想像はできた気がする。

    最初は小説っぽいなと淡々と読んだ。おバカなので読めない漢字がたくさんでてきたけど、一文字たりとも逃したくないくらい引き込まれる文章でアプリで調べながら読みました。

    小説初心者なのでモヤっとしていた登場人物の外見のイメージをすぐに固めようとしてたけどそれは必要ないことに気づいて読んでいくと 外見はイメージしにくくも内面が共感(?)というか当たり前のように入ってくる部分がたくさんあった。そうだったのか!っていう爽快感に似たものと、ガッカリする軽い絶望感が交互に押し寄せます。

    主人公の真壁由紀と殺人犯の聖山環奈には闇があって、私はこの2人、とくに聖山環奈と少し似たところがあった。この本がなかったら絶対に自分のその部分に気づいてなかった。環奈のような過去は持っていないけどそれでもどこか似てるところがたくさんあったり、同じだと思うところがたくさんあった。2人の複雑な闇の原因である幼少期の経験も、自分で闇だと気づくことさえ難しい、でもたった1人の自分しか感じ取れないような、でもえぐり取られるような闇でした。そのときの不快感や不信感が大人になっても自分の片隅にずっとへばりついていて、それによって心も体も動かされることもあって、その正体不明な恐ろしいなにかと一緒に生きていくのってすごく辛い。得体の知れないものが1番恐ろしいし、それに気づけた主人公と環奈は良かったけど気づけない人もたくさんいるんだろうな。気づけて初めて受け止められる。受け止めて初めて前を向ける。気付かなかったらずっと…。

    わたしもこの本を通してすごくたくさんの事を気づいた。それを気付かせるためにこの本はわたしの元へやってきたんだと思う。本当にありがとう!

    題名がなぜファーストラヴなのか謎という意見がたくさんあった。わたしも読み終えた直後はそう思った。でも説明は難しいけどこのタイトルはほんとにぴったりだと思う。この本は家族問題だけでなく色んな愛の形を描いています。ラブストーリーもあります。
    ラヴは純粋な「愛している」だけじゃなくて家族愛のような無償の愛情とか失恋とか初恋とか歪んだ愛とか憎しみとか、愛だと思っていたけど違ったものとか、本当の愛情とか、この本にでてくるたくさんの愛の形すべてをひっくるめての「ラヴ」で、それがみんなそれぞれ体験したことのないものだからファーストラヴなんだと思った。



    この本を読み終わって、自分の事がまたわかって
    でもそれは単なる性格だと思っていたけど中に闇をかかえた複雑なものだったのがわかって腑に落ちたというのもあるけど、呆然としてしまうのもある。
    この本がこれほど共感できると思うと環奈みたいに「わたしは少しおかしいのかな」とも思うけどこの小説が明るく終わってくれたおかげかそれも受け入れられるし、嫌な気持ちが残るというよりも、おだやかな前向きな気持ちになれたので作者さんには本当に感謝です。


    自分と照らし合わせて自分の事のように考えて読んでしまうので結構心を揺さぶられて読んでいてメンタルをやられてしまいそうになるけどまたいつか日常でモヤモヤしたときにこそ読みたいと思いました。


    ふつうの人が見たら、謎が解けていくことや次の展開が気になって楽しく読めると思うし、闇をか変えている人が読めば自分のことがわかったりなにか気づくことがある本だと思います。ぜひ読んでほしいです。

  • 主人公の由紀と被告人の環菜の対話を軸に、少しずつ事件の背景にある歪みの正体が明らかになっていく。由紀の過去も少しずつ明らかに。重たい話だけど、清々しい読後感。細かい言葉遣いひとつひとつに注意が払われていると感じた。

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プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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