ファーストラヴ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1137
レビュー : 134
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908410

作品紹介・あらすじ

第159回直木賞受賞作!

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 第159回 直木賞受賞作

    夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
    彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
    環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
    環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
    なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
    臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、
    環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。
    そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?


    父親を殺した女子大生・環奈。
    事件に関するノンフィクションの執筆を依頼された臨床心理士・由紀。
    環奈の国選弁護人で由紀の義弟・迦葉。
    三人ともそれぞれが複雑で過酷な成育歴と家族。
    三人の親への思いが見え隠れする。
    三者それぞれの抱えてる葛藤…親への思い…家族の姿…。
    家族の物語。

    何故、環奈は父親を殺さなければならなかったのか?
    由紀と迦葉の間には過去に何があったのか?
    その二つの謎に引き込まれて行った。

    最近沢山の小説に登場している様々な形の毒親や性的虐待。
    この物語は、あー確かにこれも酷い性的虐待だって気付かせてくれた。
    読み進めれば進むほど虐待が作り出す心の傷の深さに
    何とも言えない気持ちなったが、これを文章にしてくれた事は良かった。
    わかり易いものではないけれど、年齢や形は違えども
    確かに嫌な気持ちになった事がある人が殆どではないかなぁ?
    環奈は本当に過酷で可哀相だった。
    もし自分の両親が環奈や由紀のようだったら耐えられない。
    家庭の中の闇を覗いた気持ちになりました。

    派手さはないが、行間にも静かな怒りを感じさせられました。
    家族って本当に難しいですね…。
    それぞれの家庭が普通って思っているかもしれないけど、
    それぞれ全く違ってて普通ってないと思う。

    最後に皆、ほのかに灯りがみえてホッと温かい気持ちになれました。

  • 何をレビューしても、割と深くネタバレになる話なので、読む側で選択を。



    娘の父殺しの真相サイドと。
    彼女の臨床心理士と弁護人の因縁サイドと。
    三人が抱える闇が、それぞれ作用し合っていく。

    娘は父親との、息子は母親との出来事を、昇華しきれないまま大人になっていく。
    その間、救われることのないまま経過してしまったのが娘の環菜で、ある一点において救われたのが臨床心理士の由紀だと言える。

    その意味で、由紀にとって弁護人・迦葉と我聞の兄弟との出会いは大きい。
    迦葉については、同じ傷を抱え過ぎて上手くいかないパターンなのだけど、多分それは必要なことだったんだろうな。
    傷付いた由紀を抱擁出来た我聞さんについては、ただただ、神!と言わんばかりの男。尚且つ、イケメンときた。
    つまり、王子様なのだと思う。

    んー。
    そう読むと、この小説って性的に傷付いた美男美女の話になってしまったりする。
    美しいからこそ、変な目に遭う機会が多いのでは?というのは、偏見。
    だけど、そう思わざるを得ない理不尽な仕組みが、この世界にはあるとも言える。

    これが「醜い」加害者と、「美しい」カウンセラーの話だったら?
    いや、反対に冠を付けたって構わないのだけど。
    そこに同じ女性としての共感はあっただろうか。

    そのことと当事者が負う心的外傷を、本来は結びつけるべきではないのかもしれない。
    そして、由紀と迦葉のように、傷付いた者同士であるから、開かれた道もある。
    それは分かる。
    でも、「君は背負い過ぎているよ」なんて言って、傷付いた妻を優しく包み込んでくれる我聞さんが、実は最も背負っていたんだという結末は、理想的で哀しくもあるよね。

  • これは聖山環菜の事件を通して、
    臨床心理士の真壁由紀と弁護士庵野迦葉の再生の話だったのだなと。

    同じ大学での複雑な関係、
    そして迦葉の兄我聞と結婚した由紀。
    気まずかった2人が1人の女性を救おうと協力し合い、お互いの気持ちも徐々に理解し合える。
    兄もそれに気づき、でも2人をきちんと理解してるから由紀を守れる我聞が優し過ぎて凄い。

    島本さんの本を今まで読む事がなかった。直木賞を受賞して読んでみようと思った。そういうきっかけで読みたい作家さんが増えていくのは嬉しい。

  • 第159回直木賞候補作品。女子大生の聖山環菜が父親を殺したという。理由は、わからないので見つけてほしい、とのこと。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、弁護士の迦葉(由紀とは大学時代からの仲であり、主人の血の繋がりのない弟)とともに、理由を探る。環菜の過去が、明らかにしてゆくとともに、迦葉と由紀の中もどういったものだか非常に気になって。引き込まれました。もう少し早く会っていれば…、子供の声をきく機会なく救えなかった。環菜の過去も辛すぎる。この物語でもだれか耳を傾けている人がいれば、だ。臨床心理士の由紀も家族との問題があり(どの家庭にも程度の差こそあれ問題はあると思うが)、その輪郭も含め全体的にドロドロしさがなく、でも心をしっかり書きつつ流れるように書いていたのが素晴らしかったな(事件の不快感は別として)。ファーストラブというのは、初恋ではなく、親からの愛か? 最後の方は環菜の強さが見えよかったです。

  • 登場人物に感情移入しすぎて苦しかった。一気に読んだ。
    本著のように、幼少期に負った傷を抱え込んだまま、それにすら気づかず、自分を責め続けている人が、1人でも多く自分を肯定できるようになってほしいと思う。

  • 島本理生さんの作品は8割は拝読しています。
    遅ればせながら直木賞受賞おめでとうございます。

    この物語は就活中の女子大生の聖山環菜が父親の那雄人を刺殺したという事件を、環菜の半生を臨床心理士の真壁由紀が本にまとめるために取材をしていく話です。
    主な登場人物は他に由紀の夫で写真家の我聞。我聞の弟(実は養子)で由紀の大学の同級生で弁護士の迦葉。迦葉は環菜の事件で環菜の弁護を担当しています。由紀の母。あとは環菜の母親。環菜の友人の香子などがいます。

    由紀に「殺人の動機は自分でもわからないから、見つけてほしい」と言った環菜。
    てっきりこのストーリーは殺人の動機探しのミステリーだと思い読みすすめました。
    しかしこのストーリーは、最後まで読むと、ミステリーではなく、むしろラブストーリーだったように感じられました。『ファーストラブ』というのはもちろん環菜の事件の動機に関係するキーワードだと思って読んでいました。実際ストーリーの後半で、環菜の12歳の時に大学生だった元交際相手も登場します。

    ですが、私はこのストーリーは殺人事件の真相を探る型をかりた、由紀と迦葉、そして我聞のラブストーリーにも思えました。
    大学時代の由紀と迦葉の関係は最近読んだ、どの小説の男女の関係よりもせつないものでした。後に迦葉は「あれは恋愛ではなかった」と兄の我聞に語っていますが、二人の関係の方こそが「ファーストラブ」ではなかったのかと思いました。お互いに孤独を抱えていた二人は、一緒に逃げまわり、人に聞かれると「兄妹です」と答えていました。由紀と迦葉の関係はとてつもなくせつなく、反対に兄の我聞と由紀の関係は太陽の明るい陽射しのようにあたたかく感じられました。

    余談ですが、『初恋』というタイトルのアルバムを発表されたばかりの歌手の宇多田ヒカルさんが、某TV番組のインタビューで「私にとっての初恋は男性ではなく、肉親でした」と語られていたのを思い出しました。
    環菜は、血縁のない父親にも、実の母親にも全く愛されませんでしたが、環菜にとっては父と母が初めて接した人間であったことは間違いのない事実であったのでしょう。

  • 上半期の直木賞に輝いた作品 読み終わりました。面白かったけどテーマとしては私は少々苦手系です。展開にも多少 強引さと不自然さを感じてしまいました。
    何度も受賞候補の挙げ句の今回の直木賞だったのでホッとした と受賞の弁を述べておられたけど.....この作者ならではの視点やテーマなのでしょうか? ほかの作品も読んでみます。
    そんな訳で辛い採点になりました。

  • 「ナラタージュ」の原作にも、映画にも泣かされ、その映画に出演してた坂口健太郎のコメントが付いてたら、もう読むしかない!
    と、泣く気満々で読み始めたが、今作は就活中の女子大生・環奈が父親を殺した罪で逮捕され、「何故彼女は衝動的に父親を殺したのか?」と言う本を出す為に、彼女の心の奥にある真相を探る心理臨床士・由紀とのやり取りがメインで描かれる。
    勝手に切ない恋物語を期待していたけど、読み進めれば、読み進めるほど、虐待が作り出す心の傷の深さに私もいつしか由紀と同じように自分の過去を重ねていた。
    由紀と義理の弟で弁護士の迦葉の努力で、環奈が呪縛から解かれた様子にほっとしたし、本筋の中に見え隠れする由紀と迦葉の過去に「ナラタージュ」の切なさもしっかり含まれており、ラストの1ページで泣いた。
    由紀の旦那さんであり、迦葉の兄でもある我聞の一貫した優しさが物語のバランスを取っていた気がする。

  • 父親を殺した娘 聖山環菜と臨床心理士 真壁由紀。
    その由紀も担当弁護士と過去に何かあったらしい。
    家族という迷宮を描いているのはだんだんわかってくるが、どう決着をみるのか。
    重苦しい心理描写が淡々と綴られていくので、かなり読むほうもダメージを受けると思います。
    だんだん明らかになる真実。そしてラストへ。
    読み終わって、すっきりするのではなく、考えさせられてしまったというのが実感です。
    心の闇を見たい人にはお勧め。でも光はあります。

  • アナウンサー志望の女子大生が面接の途中で辞退し、父親を殺害してしまった事件の執筆を担当することになった由紀。
    事件を紐解いて行く中で、母親の歪んだ働きがけ、父親の教育、幼少期にうけた心理的な圧力が、少女 かんなの成長を妨げていたことがわかる。

    嘘と本当の狭間で真実は何か、本人もわかっていない心理を解いて行く。

    法廷での尋問の中で明らかになっていくこの事件の裏側や真実、かんなの口から語られるその時の心境が、紐解いていかれる様がすっきりした
    幼少期の教育がこれほどまでに大切なんだな

    かしょうとゆきの関係、それもまたかんなと関わっていく中であからかになっていく
    推理小説のような展開に引き込まれてしまった
    面白かった

    最後の我聞さんのお話もまた心温まり、晴れやかな気持ちになった。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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