正しい女たち

  • 文藝春秋 (2018年6月11日発売)
3.33
  • (25)
  • (103)
  • (165)
  • (33)
  • (5)
本棚登録 : 1232
感想 : 127
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784163908533

作品紹介・あらすじ

日常には、空洞になっているものがある。

頭の片隅では意識しているのに、はっきりとは言葉にしないもの。

偏見や差別、女性の年齢や容姿、金銭状況、家庭の事情、セックス。

安易に触れてしまうとヤバいもの。

ヤバいけれど、ヤバいだけあって、みんな本当は興味津々ーー。

(本文より)



セックス、結婚、プライド、老い…。



話題にしにく、でも最大の関心事。

その正しい姿をモチーフに描かれた、覗き見したい六つの物語。



「温室の友情」

「海辺の先生」

「偽物のセックス」

「幸福な離婚」

「桃のプライド」

「描かれた若さ」

みんなの感想まとめ

日常の中で触れにくいテーマを巧みに描いた短編集で、女性たちの生き方や考え方が多様に表現されています。登場する六人の女性は、友情や恋愛、結婚、老いといった身近な課題に向き合いながら、それぞれの正しさを見...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あなたは、『正しくないセックスなんて、窮屈で嫌だわ』と言われたとしたら、どう思うでしょうか?

    『正しい』という言葉には強い説得力があります。あなたは普段の生活を送る中で、『正しい』と思わない選択をすることがあるでしょうか?家族との時間の中で、友達との時間の中で、そして仕事の場面で、私たちは常に無数の選択を求められ、そのそれぞれの場面でその時『正しい』と思った選択を繰り返して生きていると思います。しかし、その時『正しい』と思った選択も後になって間違っていた、そんな風に感じることもあると思います。

    また、もっと大きな感覚として自分自身の中で『正しい』と思う事ごとだってあるでしょう。それは、主義主張のようなものでもあるかもしれません。そんな『正しい』と思う考えを前提に私たちは日々を生きています。しかし、それだって、後になって誤りだったと感じ、考え方をあらためる事だってあると思います。なかなかに『正しさ』ということは突き詰めていくと難しいものです。また、人によってそんな『正しさ』も変化するものだと思います。

    さて、ここに「正しい女たち」という作品があります。六つの短編から構成されたこの作品。さまざまな境遇の女性たちがそれぞれの思いの中に生きるのを見るこの作品。それは、『正しさ』という言葉の意味を読者があらためて感じることになる物語です。

    では、そんな中から冒頭の短編〈温室の友情〉をいつもの さてさて流でご紹介しましょう。

    『最初、わたしたちは四人だった』と、『私立の中等部』で出会った『わたしと環(たまき)と麻美と恵奈』のことを思うのは主人公の遼子。そんな遼子は四人のことを『太っても痩せてもなく、目立って愚図でも飛びぬけて優秀でもない普通の女の子』だと認識しています。『わたしたちが好きだったことはお喋りと雑誌や漫画のまわし読み』という中学時代を送る四人は校舎裏にある空き家を『秘密の館』と名づけて過ごしたりもしました。一方で『わたしは一人っ子だった』という遼子は、『過保護すぎる』母親を『ママとは友達にはなれない』『冗談じゃない』と遠ざけるようになります。そして、高校時代になり、『わたしたちには彼氏ができた』という四人は『彼氏のセックスの癖からペニスの形状まで』なんでも語り合います。やがて大学に入り、同棲を始めた麻美、『芸能事務所に入って』『タレント活動を始めた』環の一方で遼子と恵奈は語学留学へ赴くなどそれぞれの道を歩みますが『集まれば際限なくお喋り』をするのでした。そして、『卒業、就職を経て、わたしたちは同じ都会でばらばらになった』という四人。そんな今までを振り返る今の遼子は『地下鉄に揺られながら恵奈にメッセージ』を送ります。たわいもないやり取りの中で『涙を流す白熊のスタンプ』が押されて手が止まる遼子は『あいつの影響か』と二ヶ月前に紹介された五十前の男のことを思い出します。『悪びれもせず左手の薬指に指輪をしていた』その男を『気持ち悪い』と感じている遼子。そして、別の日、環と恵奈と三人でレストランへと赴いた遼子。そんな中『恵奈はまだ不倫してんの?』と『空気を読まず環が訊』きました。『深みにはまる前にやめたほうがいいよ』と続ける環。そして、分かれた三人ですが、夜中に恵奈からの電話が遼子にかかってきました。そして玄関のチャイムも鳴り扉を開けると『肩を震わせている』恵奈の姿がそこにありました。そして…と続く短編〈温室の友情〉。『私立の中等部』の仲良し四人組の中でも似た者通しだった遼子と恵奈の友情に光を当てた物語が展開する好編でした。

    次に六つの短編のそれぞれをご紹介したいと思いますが、この作品の六つの短編は大きく二つに分けられます。そして、それらは〈温室の友情〉と連作短編となるものとそれ以外が連続するではなくバラバラに置かれているという不思議な構成になっています。正直なところどうしてそのように分けられたのか、収録の順番の意図は読み終えても理解できませんでした。しかし、不思議なのは連作短編となる短編とそれ以外の短編が思った以上に分け隔てられることなく共通の雰囲気感の中に展開される点です。では、一編ずつ簡単に見てみたいと思います。

    ・〈温室の友情〉: 『私立の中等部』で出会った四人組が『卒業、就職を経て、わたしたちは同じ都会でばらばらになった』という物語を、主に遼子と恵美の関わりを中心に描いていきます。連作短編の起点ともなる物語は、『恵奈はまだ不倫してんの?』という側面に光が当てられます。

    ・〈海辺の先生〉: 『うちはスナックだった』と『海沿いの田舎町』で十代を母親と二人で過ごした向田美優が主人公。自分の名前を店の名前につけられ、客から好奇の目で見られる鬱屈とした日々の中で、店に客として訪れた『先生』との出会いが美優の未来を大きく変化させていきます。

    ・〈偽物のセックス〉: 〈温室の友情〉の連作短編。四人組の中で早々に結婚した麻美の夫が主人公。麻美との『セックスレス』な日々に引っ掛かりを感じる『俺』は、同じマンションの『508号室の女』のことが気になりだします。ついには、『女の後をつけるのが癖になった』と展開する物語。

    ・〈幸福な離婚〉: 『泣いたり罵りあったりの日々』を過ごしていたミヤとイツキの夫婦。『悪いのはわたしだった』とミヤのあることをきっかけに離婚が決まります。しかし『最後くらい楽しく暮らそうか』と意見が一致すると離婚までの日々が『かけがえのない』ものに変化していきます。

    ・〈桃のプライド〉: 〈温室の友情〉の連作短編。四人組の中でただ一人芸能界にデビューするも、早々に『しがみつくしかない』という落ち目の日々を送る環が主人公。『いままではあたしがみんなより先にいっていた』と過去の栄光を振り返る環は自身の『プライド』と対峙します。

    ・〈描かれた若さ〉: 『婚約指輪の代わりに肖像画が欲しいの』と言われた清水は、紗耶香の指示に従って『廃校を買い取って住んでいる』という画家の津野春の元へと自身の絵を描いてもらいに赴きます。しかし、そこにいたのは『全員がこちらを見て笑ってい』る二十人以上の『女子高生』たちでした。

    六つの短編は連作短編の形式をとる三つの短編を含め女性の強さを強く感じる物語に仕上がっています。〈偽物のセックス〉と〈描かれた若さ〉は男性が主人公となりますが、女性の強さを感じさせる印象は全く変わりません。そんなこの作品は書名にもある『正しい』ということにこだわります。『正しさって何かを考えてほしくて書きました』と語る千早茜さん。そんな千早さんは『正しさって結局あとからわかる。人に「これが今の正しいもの」と提示されても必ず反発するはずで、自分で見つけなければいけないものだなって思う』と続けられます。この作品では登場する女性たちの立場や境遇はさまざまです。しかし、そんな彼女たちは何かしら自分が『正しい』と思うものを持っていました。そのことが一番極端に表出するのが〈偽物のセックス〉に登場する『508号室の女』です。住民に『ここのマンションって壁が薄いの、ご存じ?』と暗に情事の声が漏れ伝わっていることを指摘されるも『夫婦がセックスするなんて当たり前のこと』と意に介しません。しかし、そんな女は『俺』に対して『正しくないセックスには興味がない』と言い切って突き放します。また、連作短編の〈温室の友情〉の主人公・遼子は、『恵奈がすべてを打ち明けてくれるのはわたしだけだ』と恵奈のことを大切に思う中、『恵奈を傷つけるなんて、ほんと最低』と恵奈が不倫をしている相手に対して冷ややかな思いを抱いていきます。そして、離婚が決まってから『最後くらい楽しく暮らそうか』とそれまでが嘘のように仲睦まじい日々を過ごしていくミヤが主人公の〈幸福な離婚〉では、『すべての瞬間が鮮やかで澄んでいて、かけがえのないものに思われた』と穏やかな日々を送ることを『正しい』ことと感じ暮らしていく二人の姿が描かれていました。千早さんがおっしゃる通り、これらの短編を読んでも『正しさ』とは何かというのは極めて難しい問題だと感じます。各短編に登場したそれぞれの女性たちの『正しさ』は確かに一本筋が通っていると感じられるものです。しかし、それが極端に表出することで、そんな女性に対峙する相手にとってそれが必ずしも『正しい』こととは受け止められないことも多いと思います。これは現実世界だって同じことです。あなたも私もその時その時において最善の行動をとって生きているはずです。どんな瞬間にも選択というものがあるのであれば、必ず『正しい』と思った方を選択して生きている、それが私たちだと思います。しかし、それが第三者的にどう見えるかは別物である、もしくは疑義を呈される場合もある、そんな状況があることがこの作品では提示されていました。千早さんのおっしゃるとおり、『あとからわかる』というのが『正しい』ということ。でも、それでも自分が『正しい』と思うものをその時その時で選んで生きていかなければならない、それが私たちの人生の大変さでもある。『正しさ』という一言に凝縮された人の行動のあり方をふと考えさせてくれた、この作品はそういった奥深さを秘めた作品だと思いました。

    『正しくないセックスなんて、窮屈で嫌だわ』という言葉の先に見る『正しさ』の感情。それは、その人が生きていく中で決して曲げられない思いに由来するものでもありました。この作品では登場する女性たちがそれぞれの生き様の中で『正しい』と感じること、『正しい』と信じること、そして『正しい』と譲れないことを守り通していく力強い姿が描かれていました。価値観の一つでもある『正しい』という感情に光を当てたこの作品。とても読みやすい物語の中に千早さんの熱い思いを感じた、そんな作品でした。

  • 生き方も考え方も違う六人の女の短編集。
    それぞれの観点で語られるストーリー。
    ・・・興味深い。

    まず登場するのは、四人の女子中学生。
    学校の隣の敷地にある温室を秘密基地に
    毎日おしゃべりに花を咲かせていた。
    そして、それぞれ社会人になり…。
    早く結婚して母親になる者。
    容姿に恵まれアイドルへの道を歩む者。
    キャリアと結婚の両方を手にする者。
    不倫する友人を正しい道へと導くため
    密かに行動を起こす者。

    学生時代に仲が良くても
    環境が変われば関係性が変化するって、
    あるある、ですね。
    時々ランチを共にする機会があっても
    立場が違って微妙な雰囲気になったり、
    空気の読めない発言にピリピリしたり。

    「いない人を否定したら、女の友情はひびが入り出す」
    「正論を言ってはだめなのだ。
    伝わらないし、溝をくっきりさせるだけになる」
    おっと!! ドキリとさせられる。

    四つ目の短編『幸福な離婚』。
    30過ぎの妻は、自分の転勤を機に
    地元を離れる気のない夫との離婚を決意。
    別れることが決まった途端、
    ありふれた日常に真新しさを感じる。
    残りの時間を丁寧に暮らす二人。
    終わりを意識するって、大切なのかも。

    結局、自分が納得するようにしか生きられない。
    色々な不都合があっても、明らかに不利でも。

    最後の『描かれた若さ』の舞台は、
    古い校舎と隣の敷地の温室。
    時間を経て最初の短編の場所に戻ったかのよう。
    そして、そこで語られるのは女の執念?!
    締めくくりは、怖い話。

  • 自分がこうと固く思い込んで貫くことは、正しいのだとする、女たちのお話。
    共感とも違う、女性の心の奥底にある他所に見られたくない感情や行いに、ざわざわと心を揺り動かされる。そういう視点もあるのか、人からは理解されなくても自分だけの正しさ。
    学生時代の友達4人組。ずっと同じ道を辿るわけではない。自分だけ道が外れる時期だってあってしかりだ。現実は期待や夢をどろどろ溶かしてゆくから。
    恵まれたものを手に入れている友人への羨望、焦り、どうしようもない心理がわかる。しかし、その先は長い。数十年後どうなっているか。その中途半端なプライドだって、糧となると思っている。「桃のプライド」
    ラストの章、年齢を重ねた女性や、若い女性の足りないとされる部分を軽視してきた男性が、女性から復讐される話。これは小気味よい。
    表紙の顔が怖い。目を反らしたくなるような、斜めから見られているような。

  • 女性同士の友情、容姿、結婚、性、年齢など、六篇に書かれているが、ある意味、ホラーっぽいものも・・。

    この作者さんは、最近、気になり出したけど、これは、感情移入できなかった・・かな。

  • あらすじと題名を読んだだけでも、離婚や偽物のセックス、不倫、プライド、偏見だの…うっ読みたくない…と逃げてしまいたくなるようなワードなのだけど、この作品は巧みに女性性が描かれているよう。またそれを取り巻く男と女、世間体や偏見が絶妙にストーリーに仕上がっていると思った。
    ドロッとしていそうなあらすじだと思ったけど、千早茜さんを信じて読んでよかったし、面白くて全然辛くなかったなあ。

    この短編集に出てくる女性たちはいくつか、繋がりがあって同じ登場人物が出てきたりした。
    その繋がりがあって尚更、短編集であるのにそのキャラクターが理解できたし、同じ女性としてもその気持ちがよーーーくわかってしまう。
    女である前に1人の人間である、そのセクシュアリティが千早茜さんの筆致によってとても面白く仕上がっていた。

    表題には「女」と言われているが、所々に男のキャラが主役で出てくる短編もあった。
    その男目線からのその女性の見られ方や気持ちも描かれていたから、それがまたよかった。

    『正しい女』は女性向けに見られそうだけど、ぜんぜん男性が読んでもいいと思う。むしろ読んでもらいたいなと思う作品だった。

  • タイトルに魅かれて、手に取った。

    女の正しさ、とはなんだろう。
    本人が正しいと思っていても、他人は理解できないことも、
    正しいと思って行動したことが、他人を気づけたり・・・

    「温室の友情」
    女子高校生の、青春真っ盛りの、友情と嫉妬と、大人になっても、心はその頃のまま。家族よりも彼氏よりも友情を重んじる、誰しも経験が多少あるだろう。

    「海辺の先生」
    離婚をして、スナックをしている母親が、
    先生にちゃんと家庭教師の代金を払ったり夜遅く帰ると心配したり、娘を思う気持ちはすごく「正しい」と思った。
    この短編が一番好き。

    「偽物のセックス」
    なんというどうしようもない男だ・・・

    「幸福な離婚」
    別れようと思ったとたんに、相手に優しくなれる、
    ホントは好き同士で一緒になったのだし。
    最後はほんわかと暖かい気持ちになった。

    「桃のプライド」
    MORIの「食品サンプルみたいに完璧だよね」が、
    意味深に印象に残った。

    「描かれた若さ」
    廃校になった、最初の高校が舞台で、
    復讐劇というか、ホラーというか、
    少し怖くて、意味不明。

  • フォロワーさんが読んでいて、千早茜さんの著書が好きになり、さらにタイトルに惹かれて読んだ。

    学生時代からの女性4人組のそれぞれの視点からの話が中心にある、6篇の短編集。

    学生時代は同じレベルだと思っていても、あらゆる選択を経てみな変わっていく。
    初めから持っていた資質を擦り減らしていった者、努力しながら積み重ねていった者、自分になくなっていったものを他で補おうとした者。こういうはっきりと形で表せないものを話にしていくのは本当にすごいと思う。

  • 自分の中の正しさを信じる女たち。
    ホラー作品のようで、背筋がゾワっとして怖かった。
    女性が持っている、決して表には出さない虚栄心や傲慢さ、弱さ、欲深さ。そういった後ろ暗いリアルな部分を、無遠慮に晒して直視させられた感じ。
    『透明な夜の香り』と同じ作家の作品だとは思えない位世界観が全然違っていて、千早茜さんの別の顔を見せてもらった気がしたし、これはこれで好き!(辻村深月でいう「黒辻村」的な感じ)

    特に4編目の『幸福な離婚』がとても良かった。静かで冷たくて幸福な日々が、とてもせつなく苦しくて涙が出た。

    「正しさ」への「執着」。自分の中の正しさは自分だけのもので人に振りかざすものでも、理解してもらうものでもないのかも。正しさって一体誰のためなんだろう。
    誰かにとってのしょうもないことが、誰かにとっての正義や常識でもある。

    『透明な夜の香り』にも「正しい執着」というフレーズが出てくるし、千早茜さんは「正しさ」や「執着」とは?というテーマを追い求めているのかな。

  • 千早茜さん3冊目。
    こちらは連作短編です。前の短編で脇役で出てきた女が、後の方で主人公になって出てきたりして、全部つながっています。こういう短編集好き。1編ずつでもちゃんと楽しめて、全部読むとちゃんと深い。
    どの短編にも、自分は正しいと思っている(いた)女や、正論を言っている女たちが出てきます。でも本当に正しいかどうかはわからない。視点を変えれば、正しくない場合もあるし。

    私もいつも、「正しいことをしたいけど、正解がわからないよ~」と悩んでいるので笑、あんまり「正しさ」を求めない方がいいな、と思いました。
    人を羨んだり、ねたんだりする気持ちは誰にでもあるよね。それをちゃんと受け止めなきゃ。
    けっこうエロい編もあって、ドキドキした。「偽物のセックス」は、マンションの同じ階に住む女性に、異常に惹かれてしまう男性の話。ストーカーみたいになっちゃって、その女から「自分の妻と”正しいセックス”をすれば良いでしょう」と一喝されてしまう。妻とは、妊活で義務的にセックスをしていて欲情できない。だけど女に言われてムラムラ?(←語彙が貧弱やけど汗)して、家に帰るなり妻を押し倒す。これが正しかった!みたいな?
    夫婦の性って難しいよね。生活・子づくり・子育ての中で、性的な要素はどんどんなくなっていく。
    「幸福な離婚」では、とても良い関係を築けているように見える夫婦だけど、かつての妻の浮気に対して夫が「他の男に抱かれた女をこれから俺は抱かなければいけないのか」みたいなことを言って、完全に修復不可能になる。
    人生って、人間関係って、取り返しのつかないことがあるよね…。

  • 一番好きだったのは、「幸福な離婚」
    四か月半後に離婚予定の男女。残りの日々を過ごしていく中、女性が、「わたしが死ぬ瞬間、この静かで冷たくて幸福な日々を思い出す気がした。」と思うところが良い。

    小説全体に流れているのは、若さ、特に女性の若さを第一とする風潮への皮肉だと思う。
    今の若い女性も、若さに捉われて段々と生きづらくなっていくならば、悲しいことだと思う。
    私の頃と全く変わっていない。私自身は、遅い結婚をして、やっとその呪縛から解き放たれた。

  • 感受性いっぱいの中に潔さがあり、ひきこまれた。「正しい女たち」というタイトルだが、(そのときどきで自分を)正しいと(信じたい)女たちが描かれている。最後の「描かれた若さ」、世の男たちに読んでもらいたい。まとめると悪いけど、これはたぶん女全員の共通の声が聞ける。胸がすく。

  • 最後、女子が歳(老)を意識する原因を男子に押し付けて、女側である私はスッキリできてしまったけど、フラットに考えると男子側もにも言い分はありそう。
    これだけジェンダーレスの時代になっても、性の違いというのは完全には拭いきれなくて、女の世界は生きていてとても苦しい。(もちろん男には男の世界があるのだと思うけど)

    ホンタメのあかりんが千早茜さんを推していて手に取った一冊。各章の登場人物が繋がっている(群像劇)ところもよくて、面白くて一気読み。次は代表作のひきなみにトライ。

  • 短編6つ。「女の価値は若さ」という価値を皮肉っていたり、そのことに自分自身がとらわれている男女の執着を表現していたりするのであろうが、何だかうっすらと嫌悪感が残る。29歳の女性に対して、「誰がお前みたいな年増をもらうか、もう卵子だって腐ってるだろ」なんて主人公に言わせている…。

    だがしかし、好きな話や表現もあった。
    【海辺の先生】
    「決められるのが嫌だったら、自分で決めないと何も変わらないですよ。」という言葉が好きだったな。

    【桃のプライド】
    MORIが「…あなたたちは求めるばかりで、求められることを考えていないから。あなたたちと同じことをしないために」SNSを見ること。

    【幸福な離婚】
    食べ物の趣味が合う2人。

  • 正しさってなんなんだろうと思う。けれどいち女としてしたたかに、自分なりのまっすぐさで生きていきたいのは変わらなかった。

  • 人間関係って、どうしても自分本位だったり打算的だったりする部分もあったりするかもしれないけど、そこに一欠片でも誠意があったなら、それは本当の友情だったり愛って呼んでもいいんじゃないかな。

    と、「私って親友いねーな」とアラフォーになってしみじみ思ってしまう最近の私です。


    短編集をおさめた本作に出てくる主人公達は、いずれも腹に一物も二物も抱えた市井の人々です。

    不倫に悩む友達のために、一世一代の演技に打って出る女。
    自分自身を諦めていた少女の、ある出会いからの成長。
    同じ階に住むマンションの住人に欲情する男が、物語の中で最後に選んだ相手。
    離婚を決意した夫婦に訪れた、終着のある幸福。
    女に対して残酷な男に、時を経て復讐を果たす女達。

    今の日常を受け入れながらも、どこか鬱屈としたモノを抱えている彼等に自分を重ねずにはいられません。ペルソナって言葉、流行ったよね…。

    友情とか家族愛とか夫婦愛とか、そんな一言でまとめられる関係性だけど、この世に二つとない色をそれぞれ持ってんだよねえと当たり前の事を改めて思わされた作品でした。

  • 3冊目は短編集『正しい女たち』
    女たちの胸の底にある不安や歪みをリアルな心理描写で抉り出している。

    わたしは間違っていない。恵奈のために嘘はついたけれど間違っていない。だって親友なのだから   
                  「温室の友情」

    お母さんは疑うじゃない!いつも何も訊いてくれないじゃない        「海辺の先生」

    ・・自分を正当化することは誰にもあるが、度を超えてしまうと怖い。

    どうして男って関係があったときのまま時間が止まるのだろう。都合のいい生き物だ               
                  「温室の友情」

    自分だけが歳を取らないとでも思っているんだろ。あるいは自分たち男だけはゆっくり老いるのだと。あんたらみたいな男のせいで女は早くから歳を意識させられるんだよ  「描かれた若さ」 
    ・・老婆の最後の言葉はあまりに辛辣!
    哀れだねえ、若い女と結婚することくらいしか勝つ方法がなかったんだね

    仕返しをした女たちの不気味な笑い声が耳に残る。"正しい"と言えば言うほど虚しい気持ちにさせられた。

  • 「温室の友情」「海辺の先生」「偽物のセックス」「幸福な離婚」「桃のプライド」「描かれた若さ」
    6篇収録の短編集。

    「温室の友情」は女ともだち (文春文庫)に「卵の殻」のタイトルで掲載されていて読了済でしたが再読してもやはり女性の執着にゾクゾクした。

    他の5篇も心に澱を抱えた登場人物達の心理描写が秀逸で、読みながら心がヒリヒリさせられた。

    「正しい」をキーワードに、セックス、離婚、老いなど、普段誰もがあえて口にしない、出来ない、心のダークな部分が微細に描かれ、ぴりりとした毒が散りばめられた作品で堪能しました。

  • どの女も正しいようで、

  • 2022.3
    「幸福な離婚」が心に残った。幸せそうな夫婦の話だけど、もう元に戻ることがないだろうから、この幸せが得られているというのが切ない。

    この章の中でどきっとした文章。少し身に覚えがある気がして、、
    …生活の底にいつも怒りがくすぶっていて、ちょっとしたことで爆発した。十年以上の付き合いだから、互いの痛いところは知りつくしていた。慣れは遠慮の無さを生み、過去のことを掘り返し、根本的な性格まで否定しあった。…

  • 『温室の友情』
    友だちの恋人には奥さんがいる。遼子は友達のフリをして奥さんに会いに行った。結果、彼の浮気はバレて、不倫関係は解消。何故そんなことをしたか。それは彼女たちが友だちだから。

    『海辺の先生』
    海沿いの田舎町、母が切り盛りするスナックの2階で暮らす高校生の女の子。彼女はその町を離れて東京の大学に行くため、スナックにやってきた”先生”風の男に勉強を教わる。

    『偽物のセックス』
    508号室の女が気になる。女とその夫のセックスの声はとても激しく、毎晩のように隣近所に響いているらしい。俺は女をつけまわす。女は俺に言う。「セックスがしたいなら奥様と別れて、わたしと結婚して」と。結婚していない間柄のセックスは正しくないらしい。俺は部屋に戻り、妻の身体を求めた。

    『幸福な離婚』
    わたしの転勤が決まり、喧嘩が続いた結婚生活は終わりにすることにした。新しい生活が始まる四月一日までの半年くらいの期間、二人は穏やかな時間を過ごす。無駄な時間、と人に言われても、幸福な時間を過ごす。

    『桃のプライド』
    女優といえば聞こえはいいが、三十歳を過ぎても環にはチョイ役しか回ってこない。正社員で働く道を選んだかつての同級生たちは賢くて無難だ。放送作家にはなめた扱いをされる。有名音楽プロデューサーMORIには試すように揺さぶりをかけられる。中途半端なプライドに持て余しているとき、母親からメールが届く。

    『描かれた若さ』
    マッチングサイトで出会った紗耶香は、俺の肖像画が欲しいと言う。彼女に言われるがまま、画家の元へ向かうと、そこにあったのは古い学校と数十人の女子高生たち。俺は彼女たちの視線と言葉責めに晒される。
    加齢を重ねた醜い中年男が描かれていた。それはまさに俺だった。そのすべては紗耶香の従姉、かつて俺が年増だと貶した舞の要望だった。

    ---------------------------------------

    全部の短編が素晴らしかった。
    自分の思い通りにしたいという、傲慢な感情は生活のなかでたびたび芽生えてしまう。ただ、それを人に打ち明けることはない。いやらしい人間だと思われてしまうから。
    本来は明るいところに出てくるはずのない、傲慢さや感情の醜い部分をよくもまあずらずらと並べてくれましたね、という感じ。圧巻だった。

全105件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1979年、北海道生まれ。幼少期をアフリカで過ごす。立命館大学文学部卒業。2008年『魚神』で第二一回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。翌年、同作にて第三七回泉鏡花文学賞を受賞。13年『あとかた』で第二〇回島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で第六回渡辺淳一文学賞、23年『しろがねの葉』で第一六八回直木賞を受賞

「2026年 『燻る骨の香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千早茜の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×