もう「はい」としか言えない

著者 :
  • 文藝春秋
2.89
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908588

作品紹介・あらすじ

浮気がばれて、パリへ逃げた。そこに悪夢が待っていた。もう笑うしかない……松尾スズキ、衝撃の最新小説!二年間の浮気が、キレイにばれた。別れたくない。二度目の結婚で、孤独な生活はこりごりだ。妻の黒いヒールスリッパの鼻先に、海馬五郎は土下座するしかなかった……。無条件降伏として、仕事場の解約と、毎日のセックスを、妻から宣言された。性に淡白な海馬五郎は、追い詰められて、死すら望むものの、死ねるはずもなく、がんじがらめの日々を過ごしている。半年ほど息苦しい生活を味わった頃、海馬五郎は、フランスのエドルアール・クレスト賞の受賞を知らされる。「世界を代表する5人の自由人のための賞……?」胡散臭いものだが、パリへの旅費と一週間の滞在費を支給してくれるらしい。飛行機が嫌いで、外国人が怖い海馬五郎も、一週間は妻とのセックスを休めるというので、その誘いにのった。これが悪夢の旅になったのである。表題作『もう「はい」としか言えない』の他、海馬五郎の恥ずかしい少年時代をヴィヴィッドに描いた『神様ノイローゼ』をカップリング。天才・松尾スズキのシュールでエンタテイメント精神にあふれる、まったく新しい小説世界へようこそ!〈著者プロフィール〉一九六二年、福岡県出身。一九八八年に「大人計画」を旗揚げする。主宰として多数の作・演出・出演を務めるほか、エッセイや小説の執筆、映画監督など、その活躍は多岐にわたる。一九九七年、岸田國士戯曲賞受賞。二〇〇一年、ゴールデン・アロー賞演劇賞受賞。二〇〇六年、小説『クワイエットルームにようこそ』が芥川賞にノミネート。二〇〇八年、映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の脚本で、日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。二〇一〇年、小説『老人賭博』が芥川賞にノミネート。二〇一八年、「大人計画」は三十周年を迎えた。

感想・レビュー・書評

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  • 松尾スズキの舞台みたいに、いろいろ混ぜこぜの世界が繰り広げられる。舞台もそうだが、この本も、わかんないなりに読み進めるうち、ストーリーはいつの間にかつながり、終わっていく。何かを投げ掛けられたんだけど、何なんだろ…と考えさせる。
    「神様ノイローゼ」は、作者の自伝?みたいでおもしろい。私にも思い当たる部分がある。みんなそうなのかな。子どもってけっこういろいろ考えているのかもね。

  • 浮気がバレた海馬。妻に許してもらうがいくつか条件があった。そんな中エドルアール・クレスト賞という賞の受賞を受け、厳しい条件を逃れるために、パリへ。「世界を代表する5人の自由人のための賞」という怪しげな賞。開放感と共に旅立った海馬は…やはり悪夢の旅となったのである。後半は、海馬の子供の頃のお話の『神様ノイローゼ』。
    こりゃ独特の表現の世界、シュールかなあ。人生思ったようにいかない、不思議な世界に直面して、でも面白おかしく生きてゆく。そんな世界。『神様ノイローゼ』の方が私は楽しめました、でもどちらも素晴らしくおかしさを、苦しさを、描いていました。癖がある文章かな。非凡さを感じますが。

  • 僕のような冒険しない人間にとって、不条理というものは結構遠くにあるものです。不条理がどんどん増幅して巻き込まれてもみくちゃにされ、それを見たり読んだりするのは非常に楽しいし、それがいい書き手だと猶更です。どちらかというと同じ主人公「海馬五郎」の子供時代を描いた「神様ノイローゼ」の方が笑えました。神様を欺くためにフェイントをかけて生活するとか、なんとなくわかる気がするんですよね。この辺の感覚をわざわざ表現できるのがすごい。

  • 何だよっ!松尾スズキ!おもしろ過ぎる(笑) あっちこっちと話題が飛ぶけど、それでこそ!松尾スズキ!浮気の話も笑えたけど、出てくる人が又、変な人達で( ̄▽ ̄;) 後半のP177はアタシも思う事だった。松尾スズキ同様、人生は笑い♪で生きてるので凄い一人・・・仲間感を感じた。面白かった~~

  • なにかを受賞したらしく、先入観をたっぷり持って読んだ。ストーリーは好き嫌いあるが文の転がし方やフレーズの使い方が上手いのは間違いない。頭に残るセンテンスがいくつも出てくるのを味わってもらいたい。

  • タイトルと妻から与えられたお仕置きが秀逸。

  • それなりに顔のしれた俳優、海馬五郎(松尾スズキのような俳優)。二度目の結婚。
    妻に浮気がばれた。好評されたら昨今の状況から仕事を失う
    土下座しする。1時間毎に自分の写メを背景付で送る
    毎晩のSEX。これを守らないと携帯GPSを妻のPCと連携。
    フランスの実業家から手紙が届く。海馬の20代の作品に対して賞を授与。フランスまでの旅費+賞金5000EURO。
    妻との生活から解放されるので渡仏。通訳として母フランス人、父日本人の斎藤聖(ひじり)25才。CG会社の激務で精神を病み退社。岡山の親戚宅で農業+Webデザインをほそぼそとしている。新しいタイプの若者。海馬と聖のフランス珍道中。社長は体長不良。日本人女性が対応乾。帰国子女で日本になじめずフランスで働く。社長欠席の食事会で不倫中、今日で最後にする予定と普通に話す。二日目も表彰式延期
    聖は母に会いに。海馬は一人でタクシー観光。黒人しかいない場所で降ろされる。子供のスリにバッグを取られる、警官が追いつき事なきを得る。パスポートが入っているかと思っていたら入っていない。警官から問われる。そのスキに子供スリが逃げる。警官が追う。子供が逃げ切れるように
    ホテルに戻ると聖と予想通りの美人母が会う。海馬が行きたかった場所に行っていた。夕食に誘われるが外人タイムはもういいので断る。
    翌日、乾がホテルに出迎え。不倫相手は社長。夫人が副社長なのでクビです。
    目隠しされたまま7時間ドライブ。途中でまずいランチ
    到着した場所はスイス。薄暗いビルの中ではゲイのなりきりナイト。とんでもない仮装パーティ。
    美男子聖は注目される。
    社長登場。末期癌で安楽死を希望、スイスは安楽死が認められている。安楽死に手伝いで、何を聞かれても「はい」と回答するのが受賞の条件。
    海馬は付き合う
    聖は未成年がいたので大画面を消しにいきもめた
    聖は久しぶりに会った母と暮らしてみる
    海馬は関係の修復しない妻の元へ帰る

    神様ノイローゼ
    海馬の少年時代の話 北九州の町。炭鉱の町の近く
    クラスには生活保護でクラス家庭は二つ 父親は屋根から落ち、母親は工場で切られた指を見せる
    ガタルカナルの生還者の教師が狂人。やたと殴る
    ついに一人が切れて教室を飛び出し校庭を走り回る
    驚きもせずに授業を続けた
    部門の不正を見抜けず元武士の祖父が切腹した級友
    いつもハナタレのダメ級友
    水泳教室でダメ級友に負けた時、水死体のふりをした

  • 個人の好みもあるけど、なぜ本作が第159回芥川龍之介賞候補作品に選出されたのか不思議だ。
    本屋大賞もだが、話題性と売れればいいという出版界のやらせ感がヒシヒシと感じられて残念。

    海馬五郎がリリーフランキーに脳内変換されてしまう。

  • ものすごくシュールな本だった。なぜか読んだ端から主人公の海馬五郎に俳優の古舘寛治さんをイメージしてしまいその後の海馬は古舘さんが演じてくださった。ちなみに聖は栗原類さん。非現実的だけどどこか現実にありそうな感じでおもしろかった。

  • これをこねくり回して映画にもしたんだなぁ。

  • 「もうはいとしか言えない」/松尾スズキ

    今まであまり読んだことのないジャンル。
    結局主人公は精神病みたいな感じだったのかな?

    前半はひたすら奥さん怖いみたいな感じで、主人公ちょっとかわいそうだなぁって思ってた。
    でも読み進めていくにつれてだんだんそうじゃなくて、
    主人公が、どこか普通とは違うのかなと思い始めた。
    で、その原因が後半で明らかになっていくのかなあと思っていたら幼少時代からどこか狂っていた。

    猟奇殺人的な生々しいグロシーンは無いけど、所々出てくる主人公のぐちゃぐちゃな感情の書き方がすごくグロかった。
    思春期の人間の感情ってこういうことなんだろうな。

    どっかすっきりしない感じが若干残った

  • 最初はテンポよく読んでいけたが、最後は結局なんだかなあって感じ、もう一編はもはや苦痛。

  • 表題作の主人公は役者・シナリオライターで、離婚した後に再婚。母は重度の介護を必要とする状態。エッセイ『東京の夫婦』に書かれた、松尾スズキ本人の近況と設定が似ている。なので、この小説は現実を膨らませたり捻じ曲げたりして書いたのではないかと想像する。今の奥さんに浮気バレした経験があるのではないか。母を見ていて安楽死というものを想像せざるを得なかったのではないか。

    ちょうど先日デスカフェに参加して安楽死・尊厳死が話題に上ったのでタイムリーな読書だった。安楽死とか尊厳死といったことについて、まだ私はリアリティを持てない。というか、死そのものについてリアリティを持てない。ただ、安楽死ということになると、関わった人間は何かを抱えてしまうのだと思う。安楽死に限らず、死んでいく人間が最後にかける迷惑というものがあるのだろう。後世に何らかの形で自分を刻み付けておきたい、という迷惑もあるかもしれない。「迷惑でしょうが~放っておいてください~」とは言っても、生き死にが関わるとそうも言ってられない。

    パリの移民が多い地区の混沌とした描写はいかにも松尾スズキらしい気がした。安楽死と対照的な生の描写とも受けとれる。先日「団地と移民」を読んだのもタイムリーなことだった。小説の中の描写は大袈裟な気がするが、異国から来た旅行者の主観で描いたパリだと思えば、「団地と移民」とは別の角度から光を当てていると感じた。

    最後は、しょうもない、希望でも絶望でもない日常に帰っていく、という印象だけど、この旅を経て諦観が一回りした感じはする。

    『神様ノイローゼ』には、エッセイ『大人失格』等で書かれたエピソードのディテールが描かれている。松尾スズキ本人の少年期を振り返った私小説と言っていいだろう。これを読むと松尾スズキの創作の原点が少年期の体験にあることがよくわかる。松尾スズキ作品の重要なモチーフである「罪悪感」や「神」はここから来ているに違いない。それらから逃れる手段が「笑い」だ。

    以前にも思ったが、作家は子供の頃のことを、当時の自意識の在り方を含めて本当によく覚えている。自分もとっくに忘れていたが、痛い子供だったような気がする。私も死ぬほど運動が苦手だった。スイミングスクールにも行かされていたが、まともに泳げなかった。

    だっぱああん
    げはぁ!

    まるで当時の自分を俯瞰で見せつけられたような気持ちになる。読んでいて、その頃の記憶を掘り返されている気がして心が痒い。あんまり掘り返さないでくれよ松尾さん。しかし水死体になれずに負けを重ねた私は凡庸なダメ人間なのだろう。

  • 浮気がバレて、妻から 仕事場の解約と毎日のセックスを要求された主人公が、突然、謎の 自由人のための賞を受賞し、妻とのセックスから逃れるべくパリへ飛び立つ。しかし、そこでは悪夢のような出来事が待ち受けていたー。

    もう「はい」としか言えない、不自由な自由人である彼の姿に、「自由ってなんだろう?」という問いが頭をめぐり巡る。

    奇妙でシュール。そこはかとない暗がりに人間味が漂う。
    タイトルが秀逸であり、装画も然り。

    …なんなら「はい」すら言えない(汗)
    このシュールさ。さすが芥川賞候補作。

  • 松尾スズキ氏の作品は読みたいと思いつつ読めずにいた。
    なんとなく「だろうな」と思われたくないという変な意地が邪魔をして手を出せなかった。
    初読みなので比較もできないが、ひさしぶりに現代日本人作家の本を呼んだためだろうか、とても読みやすい。
    作品の中の空気がじっとりと伝わるような感覚になった。
    私も海外はこわくて行ったことがないし、そもそも旅行や観光を心から楽しめない。
    できることなら旅行や観光が楽しいと思っている人間に読んでもらいたいと思った。

    ちなみに主人公の持つ罪悪感は浮気や不倫だけではなく、誰しも持っている生きているだけで後ろめたい、という感情に近いのかと感じた。
    罪悪感に対抗できるのは強烈な印象だけなのかもしれない。

  • もっとはじけているかと思いきや、真面目な純文学でした。

  • 微妙!言い回しとかは上手いなと思うけど入り込んでいけるような話でもなく、特に何か面白いことが起こるでもなかった。

  • フランスの実業家が設立した「ルールに縛られない自由な精神」を実践して生きていると評価する世界の5人の文化人与える「世界を代表する5人の自由人のための賞の第1回受賞者に選ばれた、不自由な状態にある『海馬』。聞いたこともなく胡散臭いが、浮気の罪から逃れるため、問題ありの通訳の青年を雇い渡仏することに・・・。

    とにかく変わり者の主人公。俳優もしていて一見それなりにステータスのある人物のようだが、極度の心配性で妄想癖があり、自意識の塊で故に人目を気にしすぎるあまり頓珍漢な行動に走ったりする。そんな男目線で進むのだから、ややこしく鬱陶しいのだが、段々とそれがクセになってくるというか。ストーリーもあってないようなものかと思っていたら、主催者の真の目的が判明しタイトルの秀逸さに気付く。
    それからもう一編、同じ『海馬五郎』の少年時代を綴った『神様ノイローゼ』。なるほど、この主人公はなるべくしてなったのだと。この中でやたらと引っ張られる「少年水死体事件」。結果、爆笑は獲れたのだろうかどうかが気になるところである。

  • もう笑うしかない。
    矛盾に満ち溢れているこの世界では。
    神経質なのに自分のペースを守る聖。
    ゆっくり安心できるはずの場所なのに寝れないベッド。
    いいえと言いたいのに「はい」しか言えない状況。
    妻から逃げてきたのに妻に話したいことが山ほどあるということ。

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著者プロフィール

作家・演出家・俳優

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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