- 本 ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163908731
作品紹介・あらすじ
第159回芥川賞受賞作!
春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。
新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。
クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を繰り返した歩は、この土地でも、場所に馴染み、学級に溶け込み、小さな集団に属することができた、と信じていた。
夏休み、歩は家族でねぶた祭りを見に行った。晃からは、河へ火を流す地元の習わしにも誘われる。
「河へ火を流す、急流の中を、集落の若衆が三艘の葦船を引いていく。葦船の帆柱には、火が灯されている」
しかし、晃との約束の場所にいたのは、数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった。やがて始まる、上級生からの伝統といういじめの遊戯。
歩にはもう、目の前の光景が暴力にも見えない。黄色い眩暈の中で、ただよく分からない人間たちが蠢き、よく分からない遊戯に熱狂し、辺りが血液で汚れていく。
豊かな自然の中で、すくすくと成長していくはずだった
少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――
「圧倒的な文章力がある」「完成度の高い作品」と高く評価された中篇小説。
感想・レビュー・書評
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東北の田舎に転校した男子中学生、閉鎖的な人間関係の中で暴力の連鎖に飲み込まれていく。
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久しぶりに凄い作品だと感じた!やっぱり才能ありますねぇ。前回の高橋さんの作品では若いのによくまあ微細な部分まで知悉した文章が書けるものだなぁと感心したけど、この作品ではガラリと異なる印象を受けた。都会から 転勤の多い家庭の所為で東北の中学校3年に転校してきた主人公が廃校直前の生活に持ち前の人懐こしさで上手く馴染んで、のんびり来るべき次の都会へのUターンする積もりがいきなりの凄惨悲惨な渦中に❗このゆったりした流れと 途端な激しい終章の落差が凄いね。やっぱり並みの作家ではない♪
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暴力シーンの迫力ある描写に圧倒されました。
凄惨で理不尽な暴力を、一切の感情を交えずに、微細に描く。
時に眼を背けたくなるほどの迫真性を帯びています。
いや、見事というほかありません。
東京から青森に越してきた中3の歩が主人公。
クラスには、リーダー格の晃を筆頭にやんちゃな男の子たちがいます。
歩はすぐに打ち解けますが、物語はここから不穏さをまとっていきます。
その不穏さの火元は、男の子たちが興じる遊び。
不良の先輩たちから受け継いだらしい遊びには常に暴力の影が付きまとい、時にその片鱗を現します。
物語は単線的に進みますが、読者はこの不穏さに憑りつかれて、ページを繰る手が止まらなくなります。
そしてラスト。
ついにその暴力があられもない姿を現し、歩をはじめ登場人物たちを喰うのです。
もちろん、これは比喩。
ただ、飼いならしていたはずの暴力が、当の飼い主に襲いかかることもあるのだと。
私はそのように読みました。
それにしても、作者の描写力は半端ではありません。
いくつかインタビューを読んだ限りでは、著者は大学時代の一時期に読書に夢中になった程度とのこと。
読書量は並以下ではないでしょうか。
それでも、これだけ豊富な語彙を持ち、言葉を的確に運用できるのですから、これこそまさに天性の才能というものでしょう。
芥川賞選評で島田雅彦が「言葉にコストを掛けている」と述べていました。
言い得て妙。
ショートピース並みのガツンと来る小説を読みたい方は、ぜひ。 -
芥川賞受賞おめでとうございます!
読み進めてすぐに、その不穏な空気感と緻密な情景描写に惹きつけられました。
高橋弘希さんは小説執筆のとき、まず鮮明な映像が頭に浮かびそれをただ文字に起こしていく、っておっしゃっているのを聞いてたので「作者本人と同じ景色をみている」という感慨が強かった。
東京から青森にひっこしてきた中学3年生の歩。これまでに何度も転校してきたが、今回は過疎により次年度での廃校がきまっている中学校で、最後の卒業生となる学年だった。
クラスにはリーダー格の晃がおり、燕雀(えんじゃん)という花札のようなゲームで負けた者が罰を受けるという遊びがあった。
歩は持ち前の処世術でそれらを切り抜けるが、標的になるのはいつもどんくさい稔であることに気付く。
夏休み、集落の"習わし"が行われるその日、グループのみんなでカラオケに出かけようと誘われた歩だったが、連れていかれたのは、暗い森の中を進んだ先にある錆びたトタン小屋で……。
圧倒的なほどの暴力。読み終えて動悸がしていた。
意識が朧ろで生死の境をさまよっているようなラストのつくりかたは「指の骨」を思い出した。好き。
トタン小屋の数日前、晃と歩が銭湯でバッタリ会ってそのまま川沿いの道を村外れまで散歩するシーンもやけに印象に焼き付いている。
まさに孵化せんとしている蝉の幼虫。エメラルド色の柔らかな薄翅。静止。二つの小豆色の複眼。晃の変貌。
たまらなく純文学!でした。
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第159回芥川賞受賞作。転勤族の父、青森に引っ越してきた中学3年生、歩。ひたひたと感じる悪、最後に圧倒的な暴力。青森の風景、数少ないクラスメートとのやりとり、遊び、文化、無駄なく、緊張を孕んででよく書かれている。読んでて決して気持ちの良いものではないけれど流れは素晴らしい。緊張感持続で読了。純文学だねえ。
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「白飯と娯楽をよこせ」
美しく豊かな自然と凄惨な人間たち。外から来た傍観者は許されない。ホラー純文学。
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いじめから恨みに変わる心境
「いじめの実態」、それはいつもいじめを先導する奴、いつも虐められる奴、いつもヤジ側になるやつがおり、友達・先輩の付き合いも「ほど」があるが、一線を越えると周りも同調し最悪の事態になる。この小説では最後に被害者がこのヤジ側にいた奴を標的とすることだ。「側にいながら止めようとしない輩が一番憎い」の心理が噴出する。映画「プログラミング ヤングウーマン」を思い出させた。 -
何者も人生の傍観者ではいられない
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芥川賞ってこんなに面白かったんだ
スコップで顔を叩いた部分だけ泥が落ちて化粧みたいだった
的な描写、実際に見た経験なしで書いてたとしたらマジで信じられない
実際に見ていたとしても信じられない
凄すぎる
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