送り火

著者 :
  • 文藝春秋
2.84
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本棚登録 : 410
レビュー : 107
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908731

作品紹介・あらすじ

第159回芥川賞受賞作!

東京から山間の町に引っ越してきた中学三年生の歩。場所に馴染み、生徒数が少ない中学校で、すぐにクラスに溶け込んだはずだった。けれどもその閉鎖的な空間で、驚くべき陰湿ないじめ、暴力が秘められていることを悟る……。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに凄い作品だと感じた!やっぱり才能ありますねぇ。前回の高橋さんの作品では若いのによくまあ微細な部分まで知悉した文章が書けるものだなぁと感心したけど、この作品ではガラリと異なる印象を受けた。都会から 転勤の多い家庭の所為で東北の中学校3年に転校してきた主人公が廃校直前の生活に持ち前の人懐こしさで上手く馴染んで、のんびり来るべき次の都会へのUターンする積もりがいきなりの凄惨悲惨な渦中に❗このゆったりした流れと 途端な激しい終章の落差が凄いね。やっぱり並みの作家ではない♪

  • 暴力シーンの迫力ある描写に圧倒されました。
    凄惨で理不尽な暴力を、一切の感情を交えずに、微細に描く。
    時に眼を背けたくなるほどの迫真性を帯びています。
    いや、見事というほかありません。
    東京から青森に越してきた中3の歩が主人公。
    クラスには、リーダー格の晃を筆頭にやんちゃな男の子たちがいます。
    歩はすぐに打ち解けますが、物語はここから不穏さをまとっていきます。
    その不穏さの火元は、男の子たちが興じる遊び。
    不良の先輩たちから受け継いだらしい遊びには常に暴力の影が付きまとい、時にその片鱗を現します。
    物語は単線的に進みますが、読者はこの不穏さに憑りつかれて、ページを繰る手が止まらなくなります。
    そしてラスト。
    ついにその暴力があられもない姿を現し、歩をはじめ登場人物たちを喰うのです。
    もちろん、これは比喩。
    ただ、飼いならしていたはずの暴力が、当の飼い主に襲いかかることもあるのだと。
    私はそのように読みました。
    それにしても、作者の描写力は半端ではありません。
    いくつかインタビューを読んだ限りでは、著者は大学時代の一時期に読書に夢中になった程度とのこと。
    読書量は並以下ではないでしょうか。
    それでも、これだけ豊富な語彙を持ち、言葉を的確に運用できるのですから、これこそまさに天性の才能というものでしょう。
    芥川賞選評で島田雅彦が「言葉にコストを掛けている」と述べていました。
    言い得て妙。
    ショートピース並みのガツンと来る小説を読みたい方は、ぜひ。

  • 救いのない暴力を描き切ったと賞賛された受賞作。

    以下はネタバレあります。

    選考委員で唯一受賞に反対したのが高樹のぶ子氏です。

    その選評では「作者の的確な文章力は、鋭利な彫刻刀として見事に機能している。その彫刻刀が彫りだしたものに、私はいかなる感動も感嘆も覚えず、むしろ優れた彫刻の力を認める故、こんな人間の醜悪な姿をなぜ、と不愉快だった。文学が読者を不快にしてもかまわない。その必要があるかないかだ。読み終わり、目を背けながら、それで何?と呟いた。それで何?の答えが無ければ、この暴力は文学ではなく警察に任せれば良いことになる」

    選考委員の中に普通の感覚を持った人がいたことが唯一の救いですが、それにしてもこの作品が伝えたいメッセージって何だったんだろうという疑問が私にも最後までわかりませんでした。

    堀江敏幸氏は「では、主人公の受難と陰惨な場面の先に何があるのか。それを問うことは、この作品においてあまり意味がない。異界のなかで索敵を終えた主人公の、血みどろになって遠のいていく意識の中で、シャンシン、シャンシンというチャッパの音を聴きとることができれば、それでいいのだ」と都合よく賛美しています。

    小川洋子氏に至っては、「(納屋で見つかった木槌に彫られていた言葉)豊かな沈黙という一言が本作についてのすべてを語っているといっていい。語り手の視線には豊かな沈黙が満ちている。あらかじめ用意された言葉ではなく、純粋な無言によって世界があぶりだされていく。ラストの暴力シーンでさえ、奥底に沈む沈黙の方がより明らかな響きを持っている。言葉を発することと無言でいることが、この小説では矛盾しない。作者の言葉は、言葉の届かない場所へ読者を運ぶ。そこは小説でしかたどり着けない場所なのだ」と自己流の勝手な発見に喜んでいる始末。

    そもそもラストシーンでの、なぜいじめっ子ではなく主人公に殺意を抱いていたのかという肝心な説明さえ省略されているのでは、言葉の届かない無意味な場所に読者は右往左往するばかり。

    小説がどんなメッセージを読者に伝えたいのかという最低限の務めを放棄したら、それは「散文」であって「小説」ではないと思う。

    いつから芥川賞は、選考委員の思い入れだけで起承転結のない小説の方をより評価するようになったのだろう?

    これ以上、芥川賞を貶めないためにも、選考委員の総入れ替えも検討してほしいものです。

  • 第159回芥川賞受賞作。転勤族の父、青森に引っ越してきた中学3年生、歩。ひたひたと感じる悪、最後に圧倒的な暴力。青森の風景、数少ないクラスメートとのやりとり、遊び、文化、無駄なく、緊張を孕んででよく書かれている。読んでて決して気持ちの良いものではないけれど流れは素晴らしい。緊張感持続で読了。純文学だねえ。

  • 芥川賞とは相性悪し。

    田舎に転校した中学生と、そのクラスメイトがする結構危ない遊びの話。
    ちょっと暴力的で最後もやり過ぎ感があった。

    正直、何を表現したいのかさっぱりわからず、ほぼ読み飛ばし。
    全く面白くない。

    こういう本に賞をあげるから、読者が減るんだよなー。

    あまり読む価値はないと思います。

  • 美しい田園風景や、昔話の中から出て来たかのような老人、四季の移ろいと
    日本の故郷を絵に描いたような美しい描写が続く。
    東京からそんな土地へと転校をした主人公は、
    新しい生活にもすぐ馴染み、学校でも居場所を見つけることができた。
    しかし読み進める心の中にはどんどん不安が広がっていく。
    途中からは漂う不穏な空気で、息苦しささえ感じるくらいに。

    中学生男子特有の危機的な心理状態と
    決して綺麗ごとでは済まされない閉鎖された過疎の村の実態。
    一時の田舎暮らしをうまくこなしている主人公の
    人付き合いの旨さと、鳥瞰的な視点。
    まるで無関係と思われたその二つが、実は一枚のコインの裏表であったことを理解した頃には
    もう事態は取り返しのつかないことになっている。
    油断も隙も救いもない物語なのである。

  • 芥川賞受賞おめでとうございます!
    読み進めてすぐに、その不穏な空気感と緻密な情景描写に惹きつけられました。
    高橋弘希さんは小説執筆のとき、まず鮮明な映像が頭に浮かびそれをただ文字に起こしていく、っておっしゃっているのを聞いてたので「作者本人と同じ景色をみている」という感慨が強かった。

    東京から青森にひっこしてきた中学3年生の歩。これまでに何度も転校してきたが、今回は過疎により次年度での廃校がきまっている中学校で、最後の卒業生となる学年だった。
    クラスにはリーダー格の晃がおり、燕雀(えんじゃん)という花札のようなゲームで負けた者が罰を受けるという遊びがあった。
    歩は持ち前の処世術でそれらを切り抜けるが、標的になるのはいつもどんくさい稔であることに気付く。
    夏休み、集落の"習わし"が行われるその日、グループのみんなでカラオケに出かけようと誘われた歩だったが、連れていかれたのは、暗い森の中を進んだ先にある錆びたトタン小屋で……。

    圧倒的なほどの暴力。読み終えて動悸がしていた。
    意識が朧ろで生死の境をさまよっているようなラストのつくりかたは「指の骨」を思い出した。好き。
    トタン小屋の数日前、晃と歩が銭湯でバッタリ会ってそのまま川沿いの道を村外れまで散歩するシーンもやけに印象に焼き付いている。
    まさに孵化せんとしている蝉の幼虫。エメラルド色の柔らかな薄翅。静止。二つの小豆色の複眼。晃の変貌。
    たまらなく純文学!でした。

  • 第159回芥川賞受賞作。
    新潮新人賞受賞作から追い続けてきた読者としては、嬉しい限り。
    「指の骨」にせよ「朝顔の日」にせよ芥川賞選考委員たちは、その描写力に面喰いつつまだ新人だからという理由を隠蔽するために「あの時代を現在書く理由がわからない」などとほざいていたが、現代を舞台にあの時代(疎開児童が田舎を観察する)のニュアンスを描くという、時代錯誤なんだか離れ業なんだかをした著者の、復讐劇としても、おもしろい。

    転勤族の父を持ち裕福、数年で関東に戻るストレンジャーとしての歩が、この土地に縛られた同級生5人が織りなす虐めの構造を目撃する。
    中心にいるのは晃。子供と大人の境界にあって、残酷や狂気一辺倒でもなく、優しさや正義を発揮するときもある。
    歩はたびたび、この田舎にあれば皆健康に育たないはずがない、いずれ少年っぽい戯れや冒険に過ぎなかったと回想できるのではないか、と夢想する。
    そう夢想できてしまうように、晃の針は電力計のように左右に振れているのだ。
    しかしある事件で、彼もまた卑小な少年に過ぎなかったと気づき、事後的に彼のヒロイックな行動を望んでいたことも判明する。(理不尽な暴力構造は、さらに大きな暴力構造に理不尽に囲まれている)

    唐突に「久しぶりに回転盤でもするべし」「退屈だはんで、久しぶりに彼岸様でもするべし」と提案される「遊び」の多様性。そして残酷さ。透明人間とか、サーカスとか。
    そういえば「指の骨」でも、地面に絵を描いたり、地図を描いたり、誕生日祝いをしたり、していたな。残酷と無邪気の紙一重。極限における遊び半分という感覚。
    また、本筋とは関係ない細部が輝いている。これはこの著者の持ち味だ。成長できなかった白い穂。母親がむんずと蝉をつかまえたり。えもいわれぬ風を雀色の風と思いついて名づけ、あとで辞書を調べたら雀色時という言葉があって嬉しくなるとか。羽化の瞬間に事切れた蝉の幼虫を、川に落とす、とか。
    さらにそういえば、書き出しにおいて朦朧と目を見開いたらこんな光景、ではどういう経緯で、という構成も。

    凡百の作家なら性を描くだろう。誰かの母親を強姦したり、ぬかるんだ地面に性器を突っ込んだり、虐めに同性強姦のニュアンスを込めたり。(岩井俊二「リリイ・シュシュのすべて」みたいに。あるいは中上健次「一番はじめの出来事」の数年後を素人が想像したら。さらには「スタンド・バイ・ミー」も連想したりして。)
    しかしこの作者は描かない、踏み越えない。
    ミニマムな枠を守るからこそ、緊張感は途切れない。
    この抑制。

  • 受賞作ということで手に取った。こういう作品を良いということが目が肥えていることなのか?長編だったら間違いなく途中棄権していただろう。

  • 変じゃない?いや、下手なのかも!~商社に勤める父親に伴って転校を繰り返す歩は、多分一年限定で、青森の平川市の第三中学校に来た。中三男子は6名で、親玉は100円銭湯で最初の晩に出会った晃だ。フォールディングナイフの万引きに付き合わされて、馴染むことができたが、肉屋の稔が“燕雀”で使われたいかさまで、首を絞められたり、奢らされたり、偽硫酸を頭から掛けられて、虐められている。その中心は晃だが、他の連中が虐めていると晃は猛烈に腹を立てる。1学期が終わり夏休みになって受験勉強を始め、盆を過ぎた或る日、カラオケに誘われて、廃校になった小学校に出向くと、作業服を着て煙草とシンナーの臭いにする先輩達に取り囲まれ、燕雀で犠牲となった稔が荒縄で後ろ手に縛られ玉乗りをする、通称サーカスで怪我を負いつつも継続を強要される。もう勘弁してくれと泣き叫ぶ稔を縛る縄が切れ、その手には円盤状に半分にゴムが被せられている肉切りの刃物を持ち、見えない目で標的に定めたのは……~中三の男の子が引っ越し先で父親に「もう友達できた?」って聞く?レジメンタル・タイってネクタイの種類を知っている?「撓む」って表現使う?--全部Noでしょ!それでも賞を上げちゃうのは新しい作家が出てこない所為でしょうか?ま、衝撃のラストは舞城王太郎の理不尽世界だったけど、それまでのリズムと違いすぎるので驚くだけで、伏線も感じられないよね。スコップで頬を打つのスコップって園芸用?突っ込みどころが満載で、実在の平川市の皆さんは、これを読んで良い気分にならないだろうにね。直木賞?芥川賞?

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著者プロフィール

高橋弘希(たかはし・ひろき)
1979年青森県十和田市生まれ。文教大学文学部卒業。予備校講師として勤務しながらミュージシャンとしても活動。2014年「指の骨」で第46回新潮新人賞受賞し、作家デビュー。同作で第152回芥川賞候補、第28回三島賞候補。2015年「朝顔の日」で第153回芥川賞候補。2016年「短冊流し」で、第155回芥川賞候補。同年『スイミングスクール』で第30回三島賞候補。2017年『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で第31回三島賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞。『送り火』は芥川賞4回目のノミネートで受賞に至った。
2015年「朝顔の日」で第153回芥川賞候補。2016年「短冊流し」で、第155回芥川賞候補。同年『スイミングスクール』で第30回三島賞候補。2017年『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で第31回三島賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞。2018年「送り火」で第159回芥川賞候補。

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