VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学

  • 文藝春秋 (2018年8月8日発売)
3.89
  • (17)
  • (27)
  • (12)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 378
感想 : 31
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784163908847

作品紹介・あらすじ

◆心理学✕テクノロジー、仮想現実の最前線◆

・VR内での体験を、脳は現実の出来事として扱ってしまう
・VR内で第三の腕を生やしたり、動物の身体に〝移転〟しても、脳はすぐさまその変化に適応し、新たな身体を使いこなす
・イラク戦争後、〝バーチャル・イラク〟を体験するVR療法により、PTSDに苦しんでいた二〇〇〇人以上の元兵士が回復した
・VRで一人称視点の暴力ゲームをプレイすると、相手が仮想人間だとわかっていても生々しい罪悪感を覚える
・仮想世界で一日過ごすと現実と非現実の違いがわからなくなる
・VRユーザーの身体や視線の細かな動きは、正確にデータ化できる
・そこからその人の精神状態、感情、自己認識がダイレクトに読み取れる

【目次】

■序 章 なぜフェイスブックはVRに賭けたのか?
私は二〇年にわたり、認知心理学の観点からVRを研究してきた。今のVRブームは、
二〇一四年にフェイスブックが「オキュラス」を二〇億ドル超で買収したことから始
まったが、実はその数週間前、マーク・ザッカーバーグは私の研究室を訪れていた。

■第1章 一流はバーチャル空間で練習する
VR内での経験は、現実の経験と同様の生理学的反応を脳にもたらす。VRは人類の
歴史上、最も強い心理的効果を持つメディアなのだ。では、これを学習に応用したら
なにが起きるだろうか。NFLのチームで行った実験は、驚愕の結果をもたらした。

■第2章 その没入感は脳を変える
VRでは一人称視点の暴力ゲームを作らない――ゲーム開発者は早々にこの結論に至
った。ゲームであってもVR内の殺人はあまりに生々しく、罪悪感を残すからだ。V
Rは脳へ強烈な影響を与える。仮想世界で二五時間過ごした男にもある変化が起きた。

■第3章 人類は初めて新たな身体を手に入れる
特殊な〝鏡〟を使えば、人間の脳はいとも簡単に仮想の身体を自分自身だと思いこむ。
これをVRと組み合わせれば、年齢や人種の異なる人間はもちろん、別の動物の身体
に移転することも可能だ。人類史上初めての事態に、我々の脳は対応しきれるのか?

■第4章 消費活動の中心は仮想世界へ
宇宙から海底まで、誰でも簡単に旅ができるVRが普及することで、世界の消費活動
は一変する。既に仮想世界で遊ぶための衣服・不動産・船などにあらゆる階層の人々
が多額を投じ、巨大な経済圏が生まれている。これを軽視すると未来を見誤るだろう。

■第5章 二〇〇〇人のPTSD患者を救ったVRソフト
同時多発テロ後、多くの人がPTSDに苦しんだ。治療にはトラウマの再現が有効だ
が、本人の記憶に頼る従来の手法ではあまり効果はなかった。そこである専門医は、
テロ当日を緻密に再現したVRを作製。患者を再度、九月一一日のNYに送り出した。
<

みんなの感想まとめ

VRの可能性とその影響について深く掘り下げた本書は、仮想現実がどのように私たちの脳や行動に影響を及ぼすかを様々な視点から探求しています。特に、PTSDの治療や教育におけるVRの有効性が具体的な事例を通...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • VRは、仮想ではない。現実そのものだ。

    とりわけ、PTRDや認知症の治療や
    教育効果を高める可能性などの有益な未来を
    知ることが出来た。

    しかし、これはダイナマイトや原子力と同様、
    使い方次第で、最悪な道具にもなり得る。

    有益性と猛毒性の両面を様々な実例で
    実感させてくれる興味深い書籍。

  • VRの可能性と危険性について知ることができた。単なるエンタメの道具と思っていたが、インターネットと同等あるいはそれ以上に人間の行動を変えるインパクトがあることを知り、VRを早く体験してみたいと思った。

  • 本書はスタンフォード大学の心理学者でVR研究に長年携わってきた先生による本です。大変面白かったですが、日本語の題名にあるような「VRは脳をどう変えるか」という質問に答えている本ではありません。著者が本書内で述べているように、脳にどういう影響を及ぼすかはよくわかっていない、というのが結論ですので、日本語のタイトルの答えを求めている人は気を付けたほうがいいと思います。むしろVRがどのような領域で活用されつつあるのか、それはどんなインパクト(脳というよりも人間の行動や健康状態などのアウトカムに対して)をもたらしているのか、ということで、原題にありますように「Experience on demand」(オンデマンドの体験)を提供するのがVRの重要な役割ということが、豊富な事例や研究をもとに紹介されています。

    特に印象に残ったのはアメフトのシミュレーションで使われたところクォーターバックの成績が大いに向上したこと、またPTSD(心的外傷後ストレス障害)治療で一定の成果を上げているといったことでした。またVRが進化することで、人間の移動はおそらくコロナ禍直前ほどには戻らないだろうなという印象も強く持ちました。1つの打ち合わせだけのために数時間かけて出張する、といった行為は減るからです。

    個人的には、VRが生み出す体験産業の存在が気になります。メタバースもその一環かもしれませんが、これはかなりの一大産業になるのではないか、もしかすると第3次産業と呼ばれているサービス業の次の第4次産業の座に座るのは体験業ではないか、という予感もしました。なぜなら体験業は、サービス業が満たす欲求とは違う、より上位の欲求(マズローでいうところの自己実現欲求)を満たすからです。VRはじめXRと呼ばれる技術動向を学ぶための良書でした。

    1点苦言を呈するなら、アマゾンの本書のページを見ると、著者のところに、訳者の日本人のプロフィールが掲載されていますが、これは著者に大変失礼でしょう。著者のジェレミー・ベイレンソン氏のプロフィールに差し替えるべきです。

  • VRをどのように使っていくか知りたい人におすすめ

    【概要】
    ●VRを用いたスポーツ選手の練習
    ●マイナスの影響
    ●仮想の身体
    ●エコツーリズム
    ●医療、教育への活用
    ●アバターの効果
    ●優れたVRコンテンツの三条件

    【感想】
    ●今後、躍進するであろうVRについて詳しく書かれている。
    ●VRによって得られる効果が具体的に書かれているだけでなく、VRのデメリットや、作成に当たってどんなことに注意しなければならないかが示されているのは勉強になった。

  • 米国のVR研究者が書いた本。細かな研究内容が紹介されている点は示唆に富む。ただし、ビジネス視点はあまり無いので、これからどのように発展していくかなど、夢を感じさせる内容は少ないです。これは本のコンセプトに依るところなので、理解した上で手に取る分には良書と思います。

  • VRの没入感は他のどのメディアよりも優れている。第三者視点で経験するのではなく、(ほぼ)実体験として経験できるからだ。

    VR活用例①
    スポーツの教育。テニスとか身体の動きを説明するのに最もふさわしいメディアになりうる。アメフトのQBの練習。即座の判断を鍛えられる。現実と同じような心理的状況にできるため、緊張感や視野、音とか動画を見るのとは全く異なるものを味わえる。
    実際に身体を動かすため、身体化認知にも期待できる。

    活用例②
    環境・地球に対する意識の変化。
    宇宙飛行士は宇宙から地球を眺めることで、地球規模の意識が芽生える。世界の現状に不満を感じ、問題解決のためにアクションを起こさなければと感じる→これをオーバービュー効果という
    VRを使えばこの効果の再現が可能では?

    活用例③
    PTSD患者への暴露療法の一環として

    活用例④
    やけどをしている患者の治療の際に気をVRの方にそらすなどして、痛みを緩和するために活用する。

    VRの活用法⑤
    エンターテイメント。
    舞台での劇を固定カメラで撮影(ノーカット、編集なし)→編集やカット→カメラの動き→…今。
    映画は初めから今ある形になったわけではなく、上のような形で右往左往しつつ進化してきた。VRも徐々にその活用が広がっていくのでは。今は草創期。
    現段階での問題点→ストーリー展開に不可欠な伏線とVRの持つインタラクティブな特長のバランス。伏線が見逃される可能性がある。
    →基本戦略1 すべての動きを1箇所に集中させる(VRでやる必要はない)
    →基本戦略2 360度の空間を生かし、四方八方で大事な動きを発生させる⇆VR体験に夢中で、ナレーションが耳に入らないかも
    音や動きで注意を引かせるという案もある。立体音響。
    1つのストーリーの中に様々なエピソードがあり、本筋から離れてもまたストーリーに戻って来られる仕組み。

    VR活用例⑥
    教育現場。
    社会見学など、あらゆる人が普段行けないところに行って体験できる。ただプレーヤーがその体験そのものに夢中になり、学習すべき内容が疎かにになってしまう可能性がある。ナレーションや事実説明が全く不要のVR体験を制作するのも1つの方法。
    VRにより、生徒の動作のすべてをリアルタイムで計測できるので、授業への集中度なども測れる。→その人にあったバーチャル教師


    VRのマイナスの影響
    ・暴力の行動モデリング
    精神面への悪影響や暴力への感覚麻痺
    ・現実逃避
    ・過度の利用
    ・注意力の低下
    対象をデジタルで表現することで、現実世界の本物にはある欠点を消してしまう(例えば不便とか)。このため仮想世界への逃避は現実を正しく認識する能力を失わせ、モノそのものの真価を味わう能力やリアルな物質を相手に作業する能力を弱めてしまいかねない

    VRの特徴である没入感は他社の経験を共有し、じぶんと違う人々の生活を理解するのにうってつけである。他者の一人称視点に立つことで、その人の理解が深まる。例えば高齢者の視点に立つこと。他人には思いやりがあり、自分には厳しいうつ病患者が他者の立場に立つことで、自分に対する思いやりを取り戻すなど。


    バーチャル空間での人々の交流
    実用が難しいわけ→人々の会話には同期性というものがある。会話に参加している人が会話の中の非言語行動と呼ばれる仕草や表情の変化などを共有することが同期性。それをバーチャル空間で再現するのが難しい。
    また会話の中で思わず出る肉体的反応も再現が難しい。顔の赤らみや心からの純粋な笑顔など、生理機能の変化をともなうものはどうすれば良いか。
    電話用アバター。癖や表情の変化を反映したアバターを用いたチャットアプリ。画面に映るのは本人ではなくその表情をリアルタイムで再現するアバター。
    →問題点、データ送信のラッシュアワーが起きると考えられる。またそれがどのタイミングか予測が難しい→インフラの仕組みづくり

    危険性inジャーナリズム
    ・VRの没入感は他のメディアを上回り、プロパガンダに悪用され得る
    ・いくらでも改竄・加工ができる


    優れたVRコンテンツの3条件
    ・VRである必要があるのか
    現実では不可能な体験や現実で危険な行為を危険なく体験するなど
    ・ユーザーを酔わせてはならない
    ・安全を最優先する

  • ソーシャル共有型ストーリーの可能性に期待を持てた一冊。AIを駆使してストーリーを発見するエンターテイメントになるかも?
    コンテンツを作る前に、「VRコンテンツである必然性」を考えるのが大切なんだな。

  • ふむ

  • VRの影響について実験をいくつも紹介している本であった。VRの施設を利用することができれば、学部学生も実験ができるであろう。 
     多くの本はVRの説明に終始しているが、一歩進んだVRの本である。AIについてのこうした本が出てくれることを望む。

  • VRは楽しむものという意識しかなかったが、ある一定の調査から様々な活用についての示唆があった。
    特に、2次元の動画に比べ、心に残るという点が学びになった。その上で使い方やコンテンツを考えていこうと思う。

  • 一瞬wiredのITポルノ本の類かと思うんだけど、意外とちゃんとしている見た目はいかにもヘビメタ好きなスタンフォードでテニエを手に入れることに成功した心理学の教授の書く極めてまともな本。VRコンテンツは、現実として作用するので、ストーリーメイキングという主流のコンテンツ作成の手法が機能しない。たぶん、作家性とかもだめ。とか。トラウマを消すためには再度同じ体験をしてそこで配線をし直すとかなり有効。とか。ためになる。で、とても危険。VRがよくなると、多かれ少なかれ現実の多重化ということをみんなが合点してしまうわけだから、世の中変わるよね。現実は一つだというストーリーが完全に崩れる。

  • VRの可能性にわくわく。VRの怖さに恐々。道具は使い方次第。
    経験する、させる道具。
    大人の社会科見学コンテンツつくりたいな。
    カウンセリング教材はどうつくるかな。

  • https://note.mu/matchyy/n/n617a06531786

    (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
    ○彼はメリーランド大学テラピンズの奇襲作戦に慣れていたからだ。ホーガンは彼らの奇襲作戦をQBの視点で数え切れないほど経験していた。スタンフォード大学がシーズン開幕当初から導入した、VR練習プログラムの中で。(P.28)
    ○他人のプレイしているビデオを観たり、図解やOHPを見るのよりもはるかにVRは役に立つ。……間違いなく練習になっているし、非常に複雑な作戦を覚える手助けになる。しかも短い時間で覚えられる。(P.33)
    ○VRによる訓練の効果はビデオより25%も高かった(P.44)
    ○「身体化認知」とは次のような考え方だ。認知を行う知性はもちろん脳にあるのだが、実は身体の別の器官も認知に影響を与えている。筋肉の動きやその他の感覚も、自分の周囲の世界を理解するのに一役買っているのだ。(P.60)
    ○ダンサーたちは自分の専門分野のダンス映像を見ているときは、脳の”ミラー・システム”が活発になるが、専門出ないほうのダンスを見ているときはそれほど活発にならなかった。言い換えると、それまでの人生で何千回となく繰り返し演じてきた動きを見ているときは、実際にそれを演じているときと同じように脳が活性化されたということだ。(P.60)
    ○VR経験は現実のように感じられ、人はそこから実際の経験に近い影響を受ける。従ってVR経験は、たんなるメディア経験ではなく実際の経験だと理解したほうがいい場合が多い。実際の経験と同じく我々の態度や行動を変えうるのだと。(P.70)
    ○「マクベス効果」「殺人を犯した罪悪感から自分の手を執拗に洗い流そうとしたマクベス夫人に由来する」だと考えている。これは、自分の論理的は正しさが危機に瀕すると、自分を洗い清めたくなるという心理的効果を指す。我々の実験では、被験者がHMDをはずした後でポンプ式の石けんを使うように勧め、彼らが難解ポンプするか考えた。すると、VRで非論理的な出来事を見た被験者は、論理的に正しい出来事を見た被験者と比べて平均的に多くの石けんを使った。(P.75)
    ○ゲームデザイナーの多くはVRゲームを作り始めてすぐに気づいたのだ。二次元のTVモニターの中で人を撃ち殺すのと、VRの世界で人を撃ち殺すのでは、まったく感じ方が違うことに。(P.91)
    ○2014年、徹底的な監視体制のもと、ハンブルグ大学のドイツ人心理学者が24時間をVRルームで過ごし、その結果わかったことを学術誌に発表した。結論部分ではVR研究者に向けて次のように述べられている。「実験中、被験者は数回にわたり、自分がVE(仮想環境)にるのか現実世界にいるのか混乱をきたし、一部のモノや出来事についてもそれが仮想世界に属するのか現実世界に属するのか取り違えた」(P.102)
    ○左手の代理を務める義手と本物の左手を同時に絵筆でそっとなでる。両者を同じタイミングで同じ向きでなでているうちに、被験者は次第にゴム製の義手が自分の左手であると思い始めるようになるのだ。なぜそうだとわかるのかというと、例えば被験者に「自分の左手を(右手を)を指すように」と指示すると、ほとんどの被験者はテーブルの下にある本物の左手ではなく、ゴム製の義手を指さすのである。(P.122)
    ○”プロテウス効果(アバターを使うと人は意識せずともそのアバターの外見に合わせてふるまうようになる効果)”に関する内容だった。背の高いアバターを使うと交渉で強気になり、魅力的なアバターを使うと社交的な会話上手になり、高齢のアバターを使うと先々の心配をするようになる。(P.139)
    ●VR空間の仮想の子供と交流させ、うつ患者はその子供に優しく思いやりのある言葉をかける。このとき録音されている。今度は患者が仮想の子供となり、その言葉の録音を聞く。その場合と、別に対象群として第三者的な立場でその言葉の録音を聞く。どちらの条件でも患者の自己批判はやわらいだが、仮想の子供として聞いたほうが大幅に改善した。(P.144)
    視点を変えるという経験が、自分を取り巻く世界との精神的な関係んいいかに大きな変化をもたらしうるかを指摘するにとどめたい。(P.145)
    ○ユーザは例えば特定の貝を見つけるように指示される。貝を探して岩礁をあちこち移動するうちに、その貝がまとまって見つかるのは噴出孔から離れた場所ばかりだと気づく。こうして、酸性度の高いエリアには身体にカルシウム分の多い生物がいなくなるとわかる仕組みだ。(P.172)
    ○「人生の一部をなす記憶となるよう、新たに作り直すのです」とディフェーデは言う。「そうすれば、自ら望まないときにその記憶が心に侵入してくることはなくなります」(P.184)
    ○実験を始めてみると、被験者は平均して5分以内に第三の腕を使いこなせるようになった。5分を過ぎるとそれ以降ずっと、腕が3本あるアバターを使う被験者のほうが常に短期間でタスクを完了できた。第三の腕を生やすと生産性が向上したのである。(P.220)
    ○心理学用語でこれを「自己効力感」という。ある目標を達成するには、自分にそれができるという思い込みが不可欠である。前向きな視覚化が治療の大きな助けになることは医学の文献からも明らかだ。だが、激痛に苦しんでいる患者に対し、もっと足が動かせるという視覚化を認知させるのは難しい。だからこそVR治療で大きく足が動くアバターの姿を見せる意味がある。(P.223)
    ○2009年にスタンフォード大学の研究者グループが行った実験がそれを証明している。実験では非言語行動の同期をコントロールするため、被験者を二グループに分けて異なる歩き方をさせた。一つのグループはみんなで歩調を合わせて歩き、もう一つのグループはそれぞれが普通に歩いた。その結果、歩調を合わせたグループのほうが協力し合い、お互いに寛容になった。非言語行動の同期は集団の結束力を高め、集団の生産性を高めるのである。(P.243)
    ○小さなことに思えるかもしれないが、実際に使ってみると使い勝手がまるで違う。(P.261)
    ○今は新しいメディアの草創期にあたるわけですから、研究開発と製品化を同時進行しなければなりません。この時期の最大の課題は、実際に市場を生み出すことだと思います(P.286)
    ○監督に求められるのは、観客が気づく程度には伏線を目立たせつつも、後の意外な展開が読めるほどあからさまにはしないことである。ところがこの大原則がVRではうまくいかない。伏線がさりげなければユーザーはなかなか気づいてくれない。さりげなく置かれた近くのツルハシには注目せず、視線は遠くにある別の独房に向けられるかもしれない。(P.291)
    ○「それはVRである必要性があるのか」と自問しよう(P.331)
    ○仮想世界のドライブがなぜそれほどユーザーの五感に負担を与えるのか--。これまで何十万年も変わらず、人が動くときには三つのことが起きている。まず最初にオプティックフロー(網膜上の運動パターンの流れ)が変化する。これは、岩に近づくと視界の中でその岩が大きくなることを凝った言い方で表現しただけだ。次に内耳前庭器官が反応する。この器官は非常に敏感で、自分の動きに合わせて内耳で振動し、自分が動いていることを脳に伝える。第三に、自分の皮膚から固有受容覚(身体の位置や動き、加えた力を感じる感覚)を受け取る。例えば歩いているときに足の裏が感じる床からの圧力も固有受容覚である。(P.336-337)

  • あんまり面白そうではなかったので目次と気になったところだけ読みました。

    わたし自身VRの威力はPSVRで体験しました。たしかに今まではメディアとは質の違うものであると思います。
    でも、そんな心配はいらないでしょう。根拠ないけどネ☆

  • 著者ジェレミー・ベイレンソンはスタンフォード大学の認知心理学、脳、知覚、記憶、理解に関して研究している。
    その中でVRの影響について研究している。

    VRとはバーチャルリアリティのことでその歴史は古くフライトシミュレーターがある。これは実際のトレーニングでかかるコストを抑えている。
    またゲームで錯覚を使ったものは多い。セカンドライフもその一つだ。
    私は2007年ごろセカンドライフプロジェクトでバーチャル神戸の街づくりのディレクションに加わった。大手の企業が真っ先に参入し、仮想空間メディアの可能性を探っいた。私もアバターとなりバーチャル空間で瞬時に移動したり空を飛んだり知り合うはずのなかった人と会話した。ビジネスに繋がる可能性はあった。

    現実ではありえない価格、数円で高級車を手に入れることで満たされる・・・。この経験でVRは現実の消費行動(旅行、買い物)に影響を与えると知る。「自宅に帰ってから仮想現実で過ごす」という趣味の影響はその思考を変えることにある。これが進めば出勤や出張も旅行も減る。例えば、バーチャルスキューバダイニングはライセンスも保険もガソリンもいらない。もちろん現実とは違うがVRで満足する人も出てくることが大きい。

    ザッカーバーグがオキュラスを買収したことの意味はVRのソーシャル利用だ。

    この本では現時点でわかった事例からゲーム以外の利用、どこが限界か、教育現場での前向きな利用(VR社会見学)、よりリアルに災害などを体験することによって共感を得て社会問題を解決することについて。記事、エピソード、統計データとVRを比較メディアとしどれが視点交換しやすかについて。没入感が及ぼす痛みの軽減、痛みから気を外らせること。そのことで薬への依存度も下がる。認知心理学者らしい考察が興味深い。

    第4章 消費活動の中心は仮想世界へ
    宇宙飛行士は経験を通して地球人としての意識が強くなる。
    大気の薄さや森林破壊や土壌浸食を見ると地球の脆弱性を心から理解し考えを変える。
    地球を見るコンテンツがあれば見たいと思う、一方で実生活を変えるまでに至るのかどうか疑問である。


    VRについての本であるが心理学、環境、気候変動、医療、薬物など今取り巻く問題について言及されている本である。

  • VR(仮想現実)が人の脳や心にどんな影響を与えるのか、この分野の第一人者が解説した。PTSDに苦しんでいた2000人以上の元兵士がVR療法で回復した、VRで暴力ゲームをプレイすると生々しい罪悪感を覚える…。VR内の体験が良くも悪くも実生活に大きな影響を与えることがわかりやすく示された稀有な書。

    序章 なぜフェイスブックはVRに賭けたのか?
    第1章 一流はバーチャル空間で練習する
    第2章 その没入感は脳を変える
    第3章 人類は初めて新たな身体を手に入れる
    第4章 消費活動の中心は仮想世界へ
    第5章 二〇〇〇人のPTSD患者を救ったVRソフト
    第6章 医療の現場が注目する〝痛みからの解放〟
    第7章 アバターは人間関係をいかに変えるか?
    第8章 映画とゲームを融合した新世代のエンタテイメント
    第9章 バーチャル教室で子供は学ぶ
    第10章 優れたVRコンテンツの三条件

  •  バーチャルリアリティが今後社会に普及していくのに伴い、どのような事態が生じるのかを論じている。著者はVRの制作者としての視点を持っており、全体的に甘い見通しがなされている。また、リスクの多い仕事のシミュレーションにしたり、身体的な痛みを紛らわせる治療法にも応用できるという。暴力を助長するとの懸念は当たらないとしている。あまりにも生々しい表現が抑止的に働くというのだ。
     確かにVRの描く世界には様々な可能性を。感じる。ただ今のところは様々な選択肢を考えておいた方がよいだろう。

  • 身体化認知 認知を行う知性はもちろん脳にあるのだが、実は身体の別の器官も認知に影響を与えている。筋肉の動きやその他の感覚も、自分の周囲の世界を理解するのに一役買っているのだ。実際、我々がなにかを考えるとき、脳の中でも身体の動きを司る部位が活発になっている

    アメフト STRIVR

    サイバーボール課題 三人にキャッチボールをさせ、趾第んい一人だけ排除する。すなわち残りの二人からまったくボールを投げてもらえなくなる状況にする手法。
    無視されたという被検者の感情は極めて強烈なことが判明している。この体験は痛みさえもたらす。fMRIを用いた実験で、痛みに関連する脳の部位が活性化する様子が何度も確認されている。実験によっては、痛みはなくただ悲しくなるという結果もでている

    PTSDの治療用VRソフト ブレイブマインド

    医療界が注目するVRディストラクション

    ディストラクションが痛みを和らげるのは、注意力が有限であるためだ。私達は限られた数の刺激にしか一度に注意を向けられない。そしてユーザの五感を囲い込んでカスタムメイドの体験をさせるメディアほど、激しく注意を奪い取るものはないだろう。すなわち、ユーザの心を仮想世界へと連れ去り、そちらの世界にいるよと思い込ませるVRには、ユーザを上の空にするという、医療に役立つ副作用があるのだ。仮想世界にいる間は、ユーザは自分の肉体を忘れる

    心理学用語 自己効力感 ある目標を達成するには、自分にはそれができるという思い込みが不可欠である。前向きな視覚化が大きな助けになることは医学の文献からも明らかだ。だが、激痛に苦しんでいる患者に対し、もっと足が動かせるという視覚化を認知させるのは難しい。だからこそVR治療で大きく足が動くアバターの姿を見せる意味がある。

  • 著者はVRの専門家。心理学の出身ということもあり、VRの技術的な側面より人間の心理や行動に与える影響を研究しているという。
    全身が没入してしまうVRは、画面で見るビデオとは次元が異なり、脳はあたかも現実の出来事のように感じるのだという。
    VRでの体験型教育や精神療法などのポジティブな可能性が論じられる反面、商業化され悪意を持って利用された時のリスクも比較にならない。あんな小さなスマホの画面にさえのめり込んでしまうことを思えば首肯できるリスクだ。
    VRを通して脳の認知の不思議さ、経験とは何かなど好奇心が刺激される。VRへの一辺倒の賛美にならずその限界、分かっていないことが冷静に論じられることにも共感を覚えた。

全22件中 1 - 20件を表示

ジェレミー・ベイレンソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×