牧水の恋

  • 文藝春秋 (2018年8月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784163908885

作品紹介・あらすじ

この秋、没後90年を迎える歌人・若山牧水。その短歌は教科書にも取り上げられ、ひろく愛誦されている。



白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く

幾山河越えさりゆかば寂しさのはてなむ国ぞけふも旅ゆく



これらの名歌が生まれた背景には、小枝子という女性との痛切な恋があった。

早稲田大学の学生だった牧水が若き日をささげた恋人には、秘密があった。彼女は実はすでに人妻で、郷里に二人の子どもまでいたのである。

恋の絶頂から疑惑、別れまでの秀歌を、高校時代から牧水の短歌に共感し、影響を受けてきた人気歌人が味わいつくす、スリリングな評伝文学。

感想・レビュー・書評

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  • ややさんの本棚から♪   白鳥は…素敵な歌ですね。   俵万智さんが、こんな本を出していたとは。なんだかスリリングな本みたいですね。

  • 山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇を君

     主に、青年期の熱烈な恋愛を短歌作品の評釈、手紙などの資料を交え、牧水の恋の行方を辿っていくというもの。
      晩年、酒を愛し、旅を愛した若山牧水。

    幾山河越え去り行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
     
     エピローグに、この歌がでてくるのも切ないというか、なんだか頷ける。

  • まさに一生一度の恋
    人妻ということを隠していたために
    牧水との最後の一線を超えるまでが
    長い長い・・・ 
    髪をかきむしってもだえる牧水の姿が
    歌から見えて可哀想
    その突っ走りぶり 
    嫉妬や苦悩に たじたじとなります

  • 少年のゆめのころもはぬがれたりまこと男のかなしみに入る     若山牧水

    酒と旅と自然を愛した歌人、若山牧水。宮崎から上京して早稲田大学で学び、明治末期には、石川啄木の最期をみとった人物としても知られている。歌人の俵万智は、この度、そんな牧水の学生時代の恋愛に着目した評伝を執筆した。
    若き日の恋人・小枝子は、牧水に次々と恋の歌を詠ませた女性である。

    山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇【くち】を君

    対句を用い、女性の魅力的な「唇」をクローズアップさせた秀歌だ。このような情熱的な恋歌が生まれながらも、二人の関係は、悲恋に終わった。牧水のすぐ傍らに添いながら、「唇」をなかなか許さなかった小枝子には、ある事情があったのだ。
    その事情は、大悟法【だいごぼう】利雄が粘り強い取材で真相に迫っており、本書ではその先行研究も生々しく引用されている。実は小枝子は、2人の子どもがいる人妻であり、牧水と恋仲になった後、さらにほかの男性の影もあった、等々―
    悲恋を経て、牧水は歌集が評価され、歌人として着実に歩んでいった。掲出歌には、「少年」の甘やかな夢から脱し、「男」として大地を踏みしめた質感がある。成人男性の悲しみとともに、精神的な自立も得たのだろう。小枝子への恋心は、晩年も消え去らず、43年の生涯を終えたという。
    さて、本書では、俵万智の初期作品に牧水の影響が大きかったことが明かされている。自作の秘密を評伝の中にとけこませるとは、粋【いき】な趣向と思う。
    (2018年10月7日掲載)

  • 20240414読了

  • 【番外編】
    ミニコメント
    旅と酒の歌人、若山牧水は、恋の歌人でもあった。若き日々をささげた恋人の持つ秘密とは。

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/620420

  • この前に1980年代の評伝を読んでいたため最近のも読みたいと思い購入。前者が生涯に渡ってだったのに対し園田小枝子との恋にフォーカスし、その時に発表された作品をからめながら牧水の心情に迫るので此方も色々と感じるものがありました。
    短歌鑑賞に疎いため、読み方や受けとり方を説いてくれて評伝と一緒に牧水の歌もよく理解して読めてよかったです。筆者の俵万智先生の素直な感想、「私自身も椅子から転げ落ちるかというくらい驚いた」「惚れてまうやろ!」に「そうそう!」と共感しながら楽しんで読めました。

    にしてもなかなかな……なかなかな恋でした……

  • 牧水のヘタレ具合に幻滅した。

  • 読了日 2019/10/14

    急に若山牧水に惚れたのですが、
    まずは牧水を白うと思って全集を借り、
    詩歌の読み方がわからずたどり着いた一冊。

    歌人・俵万智による、牧水の「園田小枝子」への恋を解説した一冊。


    牧水の素直な歌もいいけど、
    四章「牧水と私」に出てくる俵万智の歌もよかった。

    気づくのは何故か女の役目にて 愛だけで人生きてゆけない
    (八月の朝 俵万智)

  • 面白かったです。若山牧水の恋について赤裸々な部分についても論じられているのが凄い。

    あの青い中に居る白鳥は二羽か三羽なんだろうなって後半読んでいてはっとさせられました。

    恋に破れ酒に溺れ旅に逃げて
    数々の歌が出来たのだと考えると
    短歌を味わうことが出来る私達は幸福ですが
    やはりもっと幸せな出会いがなかっただろうかと
    考えさせられました。

    人生とは恋とは複雑なものですね。

    俵万智さんの文章はとても読みやすい。

    若山牧水が気になる人は是非お買い求めください。

  • 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずにただよふ、好き。

  • 恋に溺れ、酒に溺れ、その酒に体を蝕まれ、43歳でこの世を去った若山牧水。この著作はそんな牧水の恋に焦点を当て、彼の創った短歌とともに、手紙や研究書から、その喜びと苦悩をひも解いていく。

    まぁ、こんな人近くにいたらひくな、といったタイプの人です。恋は盲目、みたいな感じを文字通り突っ走ったわけで、このような生き方はうらやましいと思う反面、多くの人は「ここまでは無理」と感じるのではないでしょうか。

    しかしながらですね、そうしたある意味直情的であり、彼が恋した小枝子という女性に病的にどっぷりはまってしまったからこそ、多くの短歌の傑作が生まれたといえるのでしょうね。例えば作曲家のモーツァルト、社会規範にとらわれず性格的に破綻していた彼だからこそ、この世のものとは思えない極上の音楽を生めたように。

    短歌に触れたのは、正直中学高校の国語の授業以来で、こうした作者の実生活、実像とともに作品を眺めると、やはり味わい深いというか、面白いというか、牧水の場合共感とまでいかないまでも、その胸のうちがよりこちらに迫ってきました。特に後半期、小枝子との恋にやぶれてからの歌の方が、なんだか普遍性みたいなものを感じて、じわっとくる感じが強くありました。

  • 若き日の若山牧水と恋人小枝子との恋を、歌人である俵万智さんが綴った評伝文学。牧水の評伝とは少し離れ、俵万智さんと牧水との出会いを語っている、第四章の「牧水と私」をいちばん興味深く読むことができた。

  • 歌人俵万智による、若山牧水の評伝。

    恋の歌を詠む酒好きの放浪の歌人として、ピュアなイメージのあった牧水。学生時代、夫も子どももいる女性と出会い翻弄され、それを生涯引きずる姿は、どこか哀れだ。自らの恋愛を赤裸々に歌にしているが、手に入らずに思いを募らせていた時期が、いちばん幸せだったのかもしれない。

    社会現象にもなった歌集『サラダ記念日』から、はや30年。作者と同世代の私は、きらきらと弾ける恋心の詰まった歌集も好きだったので、自身の歌のところどころに牧水の影響が見えるという自己分析も興味深かった。作者の文章は、評伝でも相変わらず親しみやすい。
    普段、小説以外はほとんど読まないため、このような評伝を読むと、学生時代にレポートや卒論のために資料を読み漁っていた頃を思い出す。さらには、作品に登場した佐々木幸綱先生にもお世話になっていたため、懐かしい気分を味わいながらの読書となった。

  • 若山牧水の基礎情報がないまま読んだため分かりづらい部分もあるが、歌の解説としても楽しい。
    白鳥は・・・くらいしか知らなかったけれど、背景を知るとより牧水が好きになる。単なる酒飲みじゃなかった。

    読み終えた後、恋はいつ終わるのだろうか、という問いに胸が締めつけられる。

  • 本誌で読んだ章もあり。とても色っぽい!

  • 俵さんの文章がわかりやすくてよかった。この一冊を書くためにはたくさんの資料を集めた調査が必要だったと思います。その情熱も併せて値打ちのある一冊です。

  • ”白鳥は哀しからずや~”で有名な歌と、宮崎出身というぐらいしか知らなかった若山牧水。
    この本を読み終えた時はにわかに牧水に詳しくなっている自分がいたよ。
    てか、どんだけ初恋の小枝子に執着してんだか…
    多分、会った瞬間から(かなりの美貌だったらしい)死ぬまでずっと想いを断ち切れなかったんだろな…。
    その恋の歌のほとんどが小枝子を想って作られたのだろう。
    しかも、その相手が既婚で子どももいるとは知らずに…
    房総の根本海岸に泊りがけの旅行に行った日々はこの恋の絶頂期だったとすればあまりにも短い。
    後にこの旅行はふたりだけでなく従弟の庸三も一緒だったと知った時は著者も書いてるように椅子から転び落ちそうになるくらい驚いた。
    この頃から三角関係の兆しはあったのだ。いやそれ以前からかも。(のちに小枝子と庸三は結婚している、その事実を知らずに逝った牧水はまだ幸せだったのかもしれない)
    いやぁ、それにしても小枝子は魔性すぎる。
    焦らして、焦らして、ミステリアスな部分もあり(既婚、子持ちを隠していたのだから)やっと根本海岸で結ばれた想ったら、庸三の存在に嫉妬させられ、つかずはなれずの関係が続き…。
    でもこの小枝子がいたからこそ、こんだけ後世に残る短歌を作れたのだろうし…
    でもその死因さえ肝硬変で小枝子に出会わなければあんなに浴びるほど、お酒を飲まなかったのではと思うと
    やはり切ない。
    救いは、妻となった喜志子が理解ある聡明な女性と結婚できたことか。
    でも結婚後も小枝子に未練たらたらの牧水なのであった。
    死んだあと娘に”お父さんは世界中で、一番淋しくて淋しくていた人ではないかと思う。”と書かれている。

  • “旅と酒の歌人”若山牧水の恋をたどった評伝

      白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

    人口に膾炙したこの短歌には牧水の恋した小枝子という女性がかかわっていた

      山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇を君

    成就したかに見えた恋も小枝子の抱える重大な秘密によって暗転

      なほ耐ふるわれの身体をつらにくみ骨もとけよと酒をむさぼる
      海底に眼のなか魚の棲むといふ眼の無き魚の恋しかりけり

    小枝子への思いが断ち切れぬ牧水は酒と女におぼれていく

      白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり

    そして“この一杯にたどりつくまでの葛藤と悲しみ”(俵)が凝縮された歌に結実する

    『文學界』2017年5月号~2018年5月号の連載を単行本化
    実作者ならではの視点で牧水を読み解いた好著

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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