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Amazon.co.jp ・本 (584ページ) / ISBN・EAN: 9784163908953
感想・レビュー・書評
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「いのちなりけり」「花や散るらん」に続く、雨宮蔵人・咲弥夫婦を巡る物語のシリーズ完結編。
前作で赤穂浪士事件に関わることになった蔵人・咲弥。
それから六年。九歳になった香也とともに鞍馬山で穏やかな暮らしをしていた家族の元に、吉良家の家人という冬木清四郎が訪ねてきたことから、再び家族は政争に巻き込まれていく…。
完結編だけあって前二作よりはるかに危険度もその頻度も上がりホッとする間もない。
だがその分、これまでは腕の立つ仲間と言えば清厳くらいだったのが、今回は女忍<ののう>を率いる千代が加わる。
本来敵方であるはずの公儀隠密集団を率いる磯貝藤左衛門も要所要所で手助けしてくれている。
タイトルの「影」とは愛しい人、大切な人の面影という意味ではあるが、シリーズを通して見ると、歴史の影に埋もれた人々にスポットを当てるという意味もあるのかなと思えてきた。
歴史は表舞台に名前が出ている人だけで作られているわけではないし、むしろその影に隠れた人々の様々な思惑や信念や命で作られているものかも知れない。
前作でやりたい放題だった将軍綱吉と老中柳沢吉保の後、『正徳の治』という理想を掲げて正しき政を行おうとする将軍家宣とその影でどんな裏仕事も引き受けようとする弟・越智右近(松平清武)。
世間の声でアッサリと手の平を返した公儀のために遠い諏訪の地でひっそりと亡くなった吉良上野介の息子・佐兵衛への忠義を果たすため仇討ちを画策する清四郎。
それぞれの政争の影で暗躍する隠密たちや武人たち。
娘・香也の許嫁となった清四郎のために命がけで彼を救おうとする蔵人と彼に付き従う清厳。
先日読んだ、吉永南央さんの「黄色い実」のレビューでも書いたが、正しいことを正しいと信じて突き進んでいるのに、その道の先には何と苦しいことがたくさんあることか。正しいことを成すためにどれほどの人々の命が消えなければならないのか。それは本当に正しいことなのか。
『正徳の治』が正しいのか、蔵人のいう『武士の情け』『人としての情け』が正しいのか。
浅野家家臣の討ち入りは忠義と見られるのに、吉良家家臣の仇討ちは許されないのか。
中盤まで江戸と京、大坂を行ったり来たりで物語が落ち着かない。柳沢側と対峙したかと思ったら、越智右近、右近が去ったと思ったら萩原重秀、根来衆やら柳生やら大忙し。
大石内蔵助の元妻・りくと遺児・大三郎を守る役目を担ったかと思うと咲弥と香也が狙われる。
前二作に比べるとテンポが良いとは言えず読みづらかったが終盤のラスボス・越智右近との対峙シーンからは一気だった。
第一作で蔵人が十七年をかけて咲弥に届けた和歌に対する返歌にもグッと来た。
出版の日付を見ると、葉室さんが亡くなられた後に出た作品のようで、遺作ということになるのだろうか。
惜しい作家さんがまた一人去っていった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いのちなりけりの三部作の最終作。
忠臣蔵で討ち入りされた後、吉良家の跡継ぎは田舎に流されて、病に倒れてしまう。
最後に吉良家の血を引く香也に会いたいという事で、香也を連れて吉良家に行くというところから始まります。
吉良家と大石家のなんとも言えない出会いがあったりします。
正徳の治を治めるためと言いますが、秘密を知った人を片っ端から殺そうとする政治に、正徳なんてあるのか?と。
お願いだから、これ以上、蔵人と咲夜夫婦を巻き込むな!と思いながら読みました。(なんでこの夫婦は色々と巻き込まれてしまうのだろう) -
蔵人と咲弥の夫婦を繋ぐ和歌の一部が題名の、『いのちなりけり』『花や散るらん』に続く三部作の最終巻。
本作でも、「色の香も昔の濃さに匂えども植ゑけむ人の影や恋しき」の和歌が、折々の場面で詠まれ、雅な華を添えている。
忠臣蔵異説ともいえる前作に続き、本作はその後日譚となっている。吉良家の家人が主の仇討をせんと登場する。
五代将軍綱吉から六代将軍家宣への世継ぎ問題を背景に、幕府内部の権力争闘、幕府と朝廷との争いが絡み、ますます物語の行方は混とんとしてくる。
名だたる歴史上の人物に、幕府隠密、女忍など架空の者たちが加わり、剣豪小説、忍者小説の趣きも。
そして何よりも、蔵人と咲弥に娘の香也を加えた家族愛、盟友清厳との絆が高らかに謳われ、彼らの運命はいかにと、いよいよ目が離せない。
敵役が「およそ、おのれを偽ることを知らぬ漢にございます。いかなる栄耀栄華を与えようとも、あるいは地獄の責め苦に遭おうとも、おのれを偽らぬ強情者にございます」と評し、自らは「天地に仕える武士でありたいと願って」いる蔵人の活躍を、まだまだ見たいものだが、果たせぬ願望である。 -
読みやすかったが、登場人物が多彩で、善人悪人と混迷しているので、展開についていけないと理解しづらい。
後半は各自の立ち位置がはっきりしてくるので、テンポよく読めた。
最後は爽やか。いつも葉室作品は、読後感がジンと胸に染みるようで、素晴らしい。 -
雨宮蔵人シリーズ3作目にして完結編ということですが、前2作品は読んでおらず。結果、読んだ方が楽しめるだろうけど、読んでなくても大丈夫でした。雨宮蔵人一家と取り巻く面々は、心爽やかで、微笑ましく、ストーリー的には前半は謎もありつつ、剣闘もありつつで飽きさせません。が、中盤くらいから同じような展開が続き、へそ曲がりなら都合が良すぎて、ちょい飽きモードになりかけるかも。しかし、それでも最後まで読ませてしまうのは、葉室麟氏の力ゆえか。
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雨宮蔵人三部作・完結編。
鞍馬で静かに暮らす雨宮一家が、またまた政争に巻き込まれてしまいます。
大変な状況の中でも、心映えの清々しい雨宮一家の姿は読んでいて気持ちが良いですね。香也も成長していて、許嫁の清四郎を慕う健気な心が胸を打ちます。
そして、今回から登場の“隠密らしくない公儀隠密”の藤左衛門と、女忍<ののう>の千代の関係も、微笑ましくて良かったです。
ラストの蔵人と右近のシーンは、とても爽やかな気持ちになりました。 -
展開や人物の行動に疑問多くて乗れなかった。
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スケールの大きな物語である。
なにしろ、五代将軍徳川綱吉を大奥で暗殺してしまうのだから。
史実では綱吉は麻疹で亡くなったことになっている。
「麻疹で死ぬのか」と思われるかもしれないが、当時は決して珍しいことではなかった。現在では予防接種の普及によって恐ろしい病気ではなくなったが、成人が罹患すると命に関わることも多かったのである。
しかし、綱吉暗殺の噂は当時から庶民の間に広く流布していた。綱吉が正室の鷹司信子と元来不仲であったこと、さらに綱吉の死後まもなく信子も亡くなったことなどが、そのような噂を生む背景となったらしい。
本書は、そうした巷の風聞に、さらに
赤穂事件を重ね合わせて物語を組み立てている。
綱吉に手をかけるのは、冬木清四郎という少年である。彼は吉良義央(吉良上野介)に仕える家人で、女装して大奥に潜り込むという大胆な行動に出る。
また、蔵人と咲弥の養女となる香也は、吉良上野介の孫娘という設定だ。
世間では吉良上野介といえば、極悪人の代名詞のように語られる。しかしそれは、松の廊下の刃傷事件に対する幕府の裁きが不公平であると感じた庶民の憤りの中で、次第に作り上げられていった人物像のようでもある。実際には、吉良を名君と評価する史料も残っている。
さて、本作の中心にあるのは、肥前小城藩の藩士・雨宮蔵人と、その妻咲弥との愛情物語である。だがそれだけではない。この物語を大作たらしめているのは、将軍綱吉と側用人柳沢吉保に対し、次期将軍徳川家宣と側近間部詮房が対峙する、幕府内部の権力闘争が緻密に描かれている点にある。 -
色も香も 昔の濃さに 匂へども 植ゑけむ人の 影ぞ恋しき
前作からの続き
咲弥と蔵人に会えた。
そして、香也ちゃん。 -
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9月-3。4.0点。
雨宮蔵人三部作の完結編。作者の遺著。
蔵人の元に、吉良の家臣である清四郎が訪れる。
世は綱吉から家宣へ代替わりし、蔵人はまたも政治に翻弄される。
面白い。600頁弱も一気読み。
蔵人と咲弥だけでなく、娘香也の恋愛、忍びの恋愛の話と、
「武士の矜持」がちりばめられている。
敵同士で斬り合った蔵人と将軍家側の武士が、最後は「友」と呼び合うのが感動。 -
2019.6.15
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長い10連休に長い物語をじっくり読んでたっぷり味わった。
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2019/3/24読了。長かったな。しかし、これが葉室ワールドかな。時代小説の武士の生き様にツヤがある。
最終章は、読んでまず納得。 -
生きたいように生きる
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初出 2016〜17年北海道新聞、中日新聞、東京新聞、西日本新聞
亡くなってから何冊も遺作が出たが、ずいぶん連載を書いていたものだ。
ただ、赤穂事件を巡る確執、幕府の中核を巡る権力闘争、という大きなスケールとチャンバラ劇いっぱいの物語は、あまり葉室燐らしくない。
将軍綱吉を暗殺させた、継嗣綱豊、弟の右近、真鍋詮房、新井白石らは、暗殺を実行させた元吉良家隠密を、秘密を隠蔽するため葬ろうとする。そこに、まっすぐ困っている人を見捨てない主人公雨宮蔵人が巻き込まれていく。まっすぐさの故に危地に陥り、まっすぐさの故にそれを脱出できる。
自分が犠牲になる覚悟で臨んだ黒幕との決闘で、傷を負った蔵人が生き残ってハッピーエンドになったのは、ちょっと驚きだった。 -
三部作の完結編
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