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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784163909028
作品紹介・あらすじ
愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
みんなの感想まとめ
テーマは人間関係やアイデンティティの探求であり、深い思索を促す作品です。再婚相手の死をきっかけに、主人公が義理の兄と対話をすることで、過去と現在の関係性に疑問を持ち始めます。物語は一見犯罪の匂いを漂わ...
感想・レビュー・書評
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平野啓一郎さんの文章は品がありますね。
とても落ち着いた大人の物語だなぁ、と感じました。
再婚相手が事故で亡くなり、今まで関わりを持たなかった義理の兄に連絡を取ってみると、弟とは別人であると告げられる。では、自分が三年九ヶ月共に暮らしてきた男は一体誰なのか?
あらすじだけ読むと犯罪の匂いがプンプンしていたけれど、読み終わると全く別の印象でした。とても落ち着いた文学作品だな、と思いました。
人に対する時、過去はどこまで気になるものだろうか?今、目の前にいるその人が全てではないのか?
私たちは人を判断する時、その人自身ではなく、バックグラウンドを含めた人物像を作り上げて見ているということを突きつけられました。
そんなつもりはなくても、少なからず、親や出自に関することは、その人を語る上で影響を与えてしまっているのだと思います。
他人を愛するというのはどういうことなのか。他人のことはどこまで理解することができるのか。
考えさせられる一冊でした。
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平野啓一郎を読むのは初めてだ。はっきり言って、辛気臭い小説だなあ。再婚した女性が幸せな日々を送るが、3年後に夫が事故で死んでしまう。その兄が写真を見て、本人じゃないという。じゃあ、一体誰だったのか。それを調べることになった在日韓国人3世の弁護士が主人公だ。この弁護士の妻との関係が危うくなっているし、在日韓国人ということにももやもやがある。いろんなことが絡んで、弁護士は調査にのめりこんでいくが、どうも戸籍の交換ということが浮かんでくる。そこで、彼はいろいろなことを考えるのだが、なんだろうなあ、この辺の所が観念的で迫ってこないのだ。戸籍の交換を依頼者に報告した後のことや、妻との関係や、調査の過程で関わった女性との関係も、なんだか浅くて通俗的だ。ちょっと期待外れだった。平野氏の考える分人て何?
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【感想】
「人が他人になりきる」という点において、宮部みゆきの「火車」を彷彿とさせる作品でした。
ちょっと文学的なアプローチが多い作品で、「なんかキザだなー」と読んでいて思う箇所も数多くあったので読み終えるのに難儀しましたが、ストーリー全体の完成度や登場人物たちの思考などの緻密さは、やっぱり「名作」といって過言ではないと思いました。
(余談ですが、自身の以前の勤務地でもある宮崎県が本作品の舞台となっていたことが、なんだか親近感があって嬉しかったです。)
作中通じて、主人公である弁護士の城戸の思案の深さと人としての脆さ、そして登場人物各々の心情などが台詞の一つ一つで垣間見る事が出来て、月並みな感想だけど何てゆうか本当に「人の考える事って十人十色なんだなー」と読んでいてしみじみと感じることが出来ました。
ただ、城戸みたいに何事に対してもあんなにデリケートかつ奥深く受け止めたりする習慣が自分にないなと思って、読んでいてなんだか歯痒さを感じた。
(僕自身考えが浅くポジティブな人間なので、ネガティブで思慮深い考えを持っている人の描写は、あまり受け付ける事ができない・・・笑)
また、下記引用にも挙げているように、「国家は、この一人の国民の人生の不運に対して、不作為だった」という考え方に関しては、今までそんな考えを思いつかなかったなと新鮮に感じ、そういった意味でも本当に人によって色んな考え方があって興味深いなとも思いました。
さて、結局この本が一番伝えたかった事が何なのか?
と考えたところ、「愛に過去は必要なのだろうか?」という問いに帰結するのではないでしょうか。
その問いの対象がこの本では、「ある男」というこの本のタイトルでもある「大祐(=原誠)」という一人の男でしたが、濃淡はあるにしろ、人には誰だって表立って他人に言えない過去を抱えて生きているモノだと思いました。
そして同じく、濃淡はあるにせよ、人を愛するためにその相手の過去が気になってしまうのは人間の性なのかなと思います。
そういった大義的な意味で、本書の重点的なテーマである「愛に過去は必要なのだろうか?」という問いはほとんどの人が過去に直面してきた問題だと思うし、そのときの状況や受け手によって回答が変わってくるんだろうなーと思考しました。
そしてこの本のラストでは、「過去よりもその人と過ごした(=その人を愛した)時間やこれからの未来が続くだけで幸せなのではないだろうか」という結論に至るわけですが、そう思える家族がいるだけで、周りの人にそう思われながら悼んでもらえるだけで、自分の人生は幸福に満ちているのではないかなーと感慨深くなりました。
前述の通り、やや文学的なアプローチが多くてちょっと蛇足が多いのじゃないかとヤキモキもしましたが、本当に読み応えがあり共感する箇所を多く、全体的に非常に完成度の高い1冊でした!
【あらすじ】
愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。
長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。
悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
【引用】
1.スティグマ:人の差別や悪感情や攻撃の材料にされるような特徴のこと
2.マコトはチャンピオンになりたかったわけじゃないの。ただ、普通の人間になりたかったんですよ。
フツーに、静かに生きたかったの。誰からも注目されずに、ただ平凡に。心の底からそう思ってた。
けど、会長が一生懸命なのも知ってたし、辛かったと思う。
彼はもう一度、机の上の里枝と一緒に写っている原誠の写真に手を伸ばした。
「早死にしたのはかわいそうだけど、最後に幸せになって、良かったな」
「心配してたみたいに、人を傷つけることもなく一生を終えて、それも本当に良かった。俺の言った通りだろうって、言ってやりたいですよ。
・・・あいつと今、話したいこと、いっぱいありますよ。会長も、きっと。」
3.国家は、この一人の国民の人生の不運に対して、不作為だった。
にも拘らず、国家が、その法秩序からの逸脱を理由に死刑によって排除し、現実があるべき姿をしているかのように取り澄ます態度を城戸は間違っていると思っていた。
立法と行政の失敗を、司法が、逸脱者の存在自体をなかったことにすることで帳消しにするというのは、欺瞞以外のなにものでもない。
もしそれが罷り通るなら、国家が堕落すればするほど、荒廃した国民はますます死刑によって排除されねばならないという悪循環に陥ってしまう。
4.突き詰めれば、どれもこれも具体的に取り組むべき問題だよ。
だけど、考えだすと、具合が悪くなるんだよ。自分の存在が、全く保障されていないみたいな苦しさを感じる。
だけど、さっき話した人のことを調べてる間は、気が紛れるんだよ、なぜか。
自分でもわからないけど、とにかく、他人の人生を通じて、間接的になら、自分の人生に触れられるんだ。
「みんな、自分の苦悩をただ自分だけでは処理できないだろう?誰か、心情を仮託する他人を求めてる」
5.ルネ・ジラール「三角形的欲望」:人間は一対一で欲望するのではなく、ライヴァルがいるからこそ自分もその相手をいいと思う感情。
【メモ】
p37
「息子さん?・・・あ、いや、そっちじゃなくて、こっちです。大祐の遺影は、ないんですか?」
「・・・それですけど。」
恭一は、眉間に皺を寄せて、「ハ?」という顔をした。そして、もう一度写真に目をやって、不審らしく里枝の顔を見上げた。
「これは大祐じゃないですよ」
恭一は呆れたような、腹を立てているような眼で、里枝と母を交互に見た。そして、頬を引き攣らせながら笑った。
「変わってるとか、そういうんじゃなくて、全然別人ですよ、コレ。」
p85
人生は、他人と入れ替える事ができる。
そんな事は、夢にも思ったことがなかったが、彼女の夫は実際そうしていたのだった。別人の人生を生きていた。
しかし、死は?
死だけは、誰も取り替える事が出来ないはずだった。
p146
「普通の町で、日本人と同じように育ってきたから、いじめられた経験もないし。自分の出自を、最近までスティグマとしても大して意識してなかったんです」
「・・・スティグマって、何でしたっけ?」
「あぁ、スティグマって、人の差別や悪感情や攻撃の材料にされるような特徴のことですよ。
それ自体は別に悪いことじゃないにしても。例えば、顔のあざとか、犯罪歴とか、生まれ育ちとか」
「スティグマが強調されると、その人の持ってる他の色んな面が無視されちゃうでしょう?
人間は、本来は多面的なのに、在日っていう出自がスティグマ化されると、もう何でもかんでもそれですよ。
正直僕は、在日の同胞に、俺たち在日だしなって肩を組まれるのも好きじゃないんです。それは、俺たち石川県人だもんな、でも同じですよ。
弁護士だろうとか、日本人だろうとか、何でもそうです。アイデンティティを一つの何かに括り付けられて、そこを他人に握りしめられるってのは、堪らないですよ」
p243
「会長は、マコトをどうしてもチャンピオンにしてやりたかったんですよ。辛い人生だっただけに、それを変えてやりたかったの。自信もつくでしょう?」
「ええ。」
「けど、マコトはチャンピオンになりたかったわけじゃないの。ただ、普通の人間になりたかったんですよ。」
「・・・。」
「フツーに、静かーに生きたかったの。誰からも注目されずに、ただ平凡に。心の底からそう思ってた。ホントに。けど、会長が一生懸命なのも知ってたし、辛かったと思う。」
(中略)
彼はもう一度、机の上の里枝と一緒に写っている原誠の写真に手を伸ばした。
「早死にしたのはかわいそうだけど、最後に幸せになって、良かったな」
「心配してたみたいに、人を傷つけることもなく一生を終えて、それも本当に良かった。俺の言った通りだろうって、言ってやりたいですよ。うん・・・あいつと今、話したいこと、いっぱいありますよ。会長と、きっと。」
p252
彼には責任があるのだとは、城戸も当然に考える。
彼は、個人の自由意思を一切認めないといった極端な立場にまで、どうしても立つことが出来ない。
しかし、小林謙吉の生育環境が悲惨であることは事実であり、彼の人生の破綻が、大いにその出自に由来していることは明白だった。
国家は、この一人の国民の人生の不運に対して、不作為だった。
にも拘らず、国家が、その法秩序からの逸脱を理由に、彼を死刑によって排除し、宛らに、現実があるべき姿をしているかのように取り澄ます態度を、城戸は間違っていると思っていた。
立法と行政の失敗を、司法が、逸脱者の存在自体をなかったことにすることで帳消しにするというのは、欺瞞以外のなにものでもなかった。
もしそれが罷り通るなら、国家が堕落すればするほど、荒廃した国民は、ますます死刑によって排除されねばならないという悪循環に陥ってしまう。
p270
「数奇な運命だけど・・・彼の人生が、あなたにとって何なの?」
城戸は、妻らしい身も蓋もない問いかけに、自嘲的に言った。
「さぁ、最初は何でもなかったんだよ。ただ依頼者の境遇が不憫で引き受けた仕事ってだけで。そのうちに、他人の人生を生きるってことに興味をそそられていって、彼が捨てたかった人生のことを想像して・・・現実逃避かな」
p272
「突き詰めれば、どれもこれも具体的に取り組むべき問題だよ。だけど、考えだすと、具合が悪くなるんだよ。自分の存在が、全く保障されていないみたいな苦しさを感じる。
だけど、さっき話した人のことを調べてる間は、気が紛れるんだよ、なぜか。自分でもわからないけど、とにかく、他人の人生を通じて、間接的になら、自分の人生に触れられるんだ。」
「みんな、自分の苦悩をただ自分だけでは処理できないだろう?誰か、心情を仮託する他人を求めてる」
p294
ルネ・ジラール「三角形的欲望」
人間は一対一で欲望するのではなく、ライヴァルがいるからこそ自分もその相手をいいと思う感情。
p347
一体、愛に過去は必要なのだろうか?
わからなかった。
ただ、事実は、彼の嘘のお陰で、自分たちは愛し合い、花という子供を授かったのだということだった。
「亡くなられた原誠さんは、里枝さんと一緒に過ごした3年9ヶ月の間に、初めて幸福を知ったのだと思います。彼はその間、本当に幸せだったでしょう。短い時間でしたが、それが彼の人生の全てだったと思います」
p351
里枝は顔を上げると、食器棚に飾られた父と遼の遺影を見つめ、家族4人の写真に目をやった。
彼はもういない。そして、遺された2人の子供は随分と大きくなった。
その思い出と、そこから続くものだけで、残りの人生はもう十分なのではないか。
と、感じるほどに、自分にとっても、あの3年9ヶ月は幸福だったのだと、里枝は思った。 -
読みたかった本。平野さん初読み。この人の書く人物たちは実在するような、読んでる自分も感情移入とは違い本当にその人になったような不思議な気持ちになり一気に読んだ。濃い読書体験。その後の話も知りたい。
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2021/01/17
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2021/01/17
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『こんな人生』って、あるんだ。と、自分の今の生活の中では、想像の領域からもはみ出ている世界を知った気がした。想像すらできない世界、想像しなかった世界、そして本作の登場人物たちの心中を感じることで、自分の世界、視野、思考が広がった気がした。一方で、自分の置かれている境遇、世界がどんなに平穏なもので、それが素晴らしいかを改めて感じることもできた。その点で、私にとって本作は読書の凄さというのを改めて認識できる本であった。
「愛したはずの夫は、全くの別人であった」愛した夫は、別人でもなく自分の夫ではあるのだが、亡くなってから実は戸籍上でのその人ではなかったということがわかる。では、いったい自分は、誰と結婚していたのか?それが誰であろうが、出会ってからのその人、個人を愛したであろう。とは、思うものの、確かにその個として愛したものの、出所不明となると、その愛にも揺らぎが生じるかもしれない。読みながら批判をする自分と同意する自分を認める。
本作は戸籍を交換していた『ある男』の戸籍交換に至った経緯(と書くと、安直すぎるのだが)にたどり着く過程の中で、『その男』と『ある男』、その周りの人たちの心情を、綴った作品である。
いつも思うのであるが、この作者の作品には、主人公の内面的な暗さや、環境における疎外感を感じる。また、その表現が絵画を見ているような緻密な表現であり、頭の中でそれが絵となり、色となる感覚がある。緻密な表現とは、表現を同じ意味の言葉を同じ方向から重ねたり、違う方向から言い換えたりと、状況、心情の描写が緻密であるということで、時には言葉で遊びすぎている感があり、ついていけなくなる時もある。それは、言葉で遊んでいるのではなく、表現の多角的手法であって、単に私がついていけないだけかもしれない。(そしていつもなぜか国家、国民的レベルの描写が登場しているように感じるのは、気のせいなのだろうか。)
読後の満足感は高い作品であった。
(以下は、すごくまとまった作品紹介だったので、自分用の備忘録としてです。)
「弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。(文藝春秋BOOKS 作品紹介より)」
里枝の長男・悠人のことがずっと気になっていたところ、最後に里枝から悠人への説明があり、ホッとした。当然の流れではあるが、読者の心を読んでいるのがこの作者のらしいと思った。
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2021/07/20
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2021/07/20
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2021/07/20
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色々なレビューを読むと、ちょっと敷居が高い気がしていたのだが、興味深く最後まで読み進めた。
日頃モヤモヤと形にならないまま抱えていた思いに言葉を与え、文章にしてくれた、そんな小説だった。
社会的地位を得ている弁護士城戸が、Xを調べていく中でどこか不安定で揺らぐ気持ちを抱えていく状況は、想像するしかないのだが…日本人として向き合わなければならないことから目を逸らしている自分に気付かされる。
中でも、
「立法と行政の失敗を、司法が、逸脱者の存在自体をなかったことにすることで帳消しにする、というのは、欺瞞以外の何ものでもなかった。もしそれが罷り通るなら、国家が堕落すればするほど、荒廃した国民は、ますます死刑によって排除されねばならないという悪循環に陥ってしまう。」252p
というくだりには、ハッとさせられた。
2023.9 -
大好きな作家さん。
雑誌にこの本が一挙掲載された時、すぐに書店に走って購入したにもかかわらず、ここまで温めてしまった(笑)
何故なら、平野先生は大好きな作家さんなのだが、私の頭がバカ過ぎて、読むのに苦労するから(^_^;)
そうこうしているうちに単行本が出てしまい、単行本を購入。
やっと読み始めました(笑)
この本はそこまで気合いを入れなくても、十分読みやすい作品だった。
愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
さすがの平野先生。
壮絶な物語だった。
様々なテーマが入り組んでいて、アイデンティティだったり、差別であったり、夫婦の問題であったり、まぁとにかくこの先生の小説を読んだ後はいつも頭がいい意味でショートします(^_^)
読後に色々考えすぎてしまうからなのかな?
読めない漢字もあったし、調べた単語もたくさん。美しい表現がてんこ盛りで、とにかく上品。
綺麗な小説でした!! -
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こういう思索がぐるぐるする小説は好き。
音楽と絵が多く登場するにもかかわらず、モノトーンな感じも好きだ。
人を愛する意味を探索する物語。
答えに、たどり着けたようなたどり着けなかったような、モヤモヤ感が、この小説の良さだと思う。 -
平野啓一郎さんの本は初めて。以前100分de名著で三島由紀夫の「金閣寺」を解説していて、その時から気になっていた作家さんではあった。
その中でも見かけることのあったこちらの本を読んでみた。
タイトルの通り、"ある男"についての話なわけだが、こいつの正体がわからない。
この"ある男"が亡くなって、その兄が"ある男"の写真を見て「いや、これ弟じゃないです…」というなんとも不気味な、気持ち悪い一言をきっかけに、一人の弁護士がこの"ある男"の正体に迫っていくという物語。
とは言いつつも、あまりミステリー的な要素はない。ただただこの"ある男"の数奇な人生が不遇で、いたたまれない気持ちになる。
内容的には悪くないが、物語の中で語られる別の問題と言うか、作者の思想というか、そういった部分の描写が多く、個人的には少し冗長的に、テンポが悪く感じてしまった。
また、単純に難しいなと感じる部分が多く、決して読みやすいという本ではないが、重厚感のある作品を書く作家さんだなとは感じた。
これはぜひ映像化したものを…と思っていたらあるようなので見てみようと思う。 -
重厚な文学作品に、深く感動です。
どこから語ったらいいのか分からないくらい様々な要素が
混乱することなく整然と詰まっています。
あちこちにキラッと光る描写もあり、心を大きく揺さぶられました。
次男を亡くし 夫と離婚して、宮崎の実家に戻った里枝。
里枝は、その町によそからやって来た男と再婚する。
夫は事情があって家族とは縁を切っている。
たとえ自分に何かあっても実家には連絡するなと言っていた夫。
その夫が、ある日、事故で突然亡くなってしまう。
三年九か月の間、ともに幸せに暮らし、娘を授けてくれた夫。
連絡するなと言われていた実家に知らせると、夫の兄がやって来る。
そして 兄は、遺影を見てこれは自分の弟ではないと言う。
この作品はサスペンス? の要素もある。
チャプターひとつが15ページくらいなので読みやすく
次が知りたくて、どんどんページが進んでしまう。
ところが、ただのサスペンスではない。
様々な境遇の人物が登場する。
夫婦や家庭の問題、在日外国人、死刑の是非など
社会派の問題提起もされる。
読み込むうちに、あちこち深みにはまってしまうが、
底にあるのは 大きな二つの流れではないかと思う。
ひとつは「自分とは何か」というアイデンティティーの問題。
もうひとつは、人を愛するのに過去はどれくらい重要なのか
という根源的な「愛」についての問いかけ。
序章には、平野氏自身のような作家が登場して、その後の語りを進める。
そして、あちこちにちりばめられているジャズの曲も心地よい。
じっくり時間をかけて、味わいながら読みたい作品です。 -
とてもきれいな文章。
文がきれいで、単語が難しい・・・
分からない単語や漢字を書きだしながら読みました。
人生に歴史や過去が必要なのか?本当に疑問です。
私は里枝よりも悠人のほうに気持ちがいきました。
平野さんの他の本も読みたくなりました。 -
事故で亡くなった夫が、別人だった。本人の話していた過去とは別人だった夫の過去を妻は、かつて世話になった弁護士城戸に調査を依頼する。なぜ別人になったのか?その問いを探ることで、城戸は自分とも向き合っていくことになる。
平野啓一郎作品は、はじめてで、何となく読んでいくのが難しいかなと思っていたが、実際に歯どんどん読み進めていくことができた。城戸の調査は、本人は引き込まれていくものの、本業の忙しさでけっこう間が空いた感じの調査だが、その中に城戸の出自もからめた問題の話が入ることで、より一層なぜ別人になったか、愛や関係性への過去の影響と言った点が、はっきりしていく感じだった。
別人になった理由が、最近読んだ本で取り上げられていたものだったり、過去を変えようとするのも、たまたまちょっと前に読んだ話に出てきていたので、話全体が興味深く読めた。気になったのが、息子が自分の父親の名前が違うことで、苗字が違っていたことから、自分は何者かを母に問いかけるシーン。一度離婚で苗字が変わってという背景もあるが、苗字が何回か変わること(余り自分には縁のないものに変わる)による喪失感について考えさせられた。名や性というものが持つアイデンティティーに対する影響は大きいということだろうか。
嘘の過去を話されていたこと、本当の過去を知ることで、相手に対しての想いがどうなるのか、自分に当てはめた時には、どうかわからない。冷淡な意味で受け入れそうな感じもあるが、やはり心のどこかでくすぶるのかなどと考えた。
ただ、城戸を巡る関係で最後の方で明らかになるものは、なぜここで入るか?という感じがした。全体を通しての意味はありそうなんだが、きっちり読み解けないだけなのか?ちょっとモヤッとした。-
「全体を通しての意味はありそうなんだが、きっちり読み解けないだけなのか?ちょっとモヤッとした。」我流の解釈で、小説は自分とあてはめながら読み...「全体を通しての意味はありそうなんだが、きっちり読み解けないだけなのか?ちょっとモヤッとした。」我流の解釈で、小説は自分とあてはめながら読みます。ですんで、きっちり読み解けてないという読後感はいつも残ります。2020/10/11
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戸籍って、絶対的なものだと思っていた。
自分が自分であることの、絶対的な証。
その前提が崩れると、何もかもが信じられなくなりそうだった。
普通の人間になりたい。普通の人生を送りたい。
自分ではない誰か別人としての生き方をしたい。
なんて切実な願いなんだろう。
愛に過去は、きっと必要ない。
そして、関東大震災と国籍差別。
恥ずかしながら「十五円五十銭」と発音させ、正しく言えなかった者は朝鮮人だとして殺すべき対象となる、そんなおぞましい事件があったことは全く知らず、驚愕した。
ネットで検索をすると、1番に作者の平野さんのツイートが出てきて、そんな一個人のツイートがトップに来るくらい、それについての説明は少なく、広まっていないのだなと感じた。
差別や偏見。
結局人は、自分の都合のいいように相手のことを信じたり疑ったりしてるんだなと思った。
タイトルにも納得。
「ある日本人」でも「ある弁護士」でも「ある○○○」でもなく、「ある男」。
そこにスティグマを付けない。一貫している。
ナルキッソスのエピソードが印象的。ギリシャ神話と結びつけるとは。
重厚で、重たい話だった。 -
決して難解なわけではないが、文学的表現を織り交ぜ哲学的な問いかけをしてくる。
主人公の出自の設定が謎だったが、アイデンティティ、自我、過去、愛について考えるにはベストなキャラクターだったのかと。
最後は残された家族のやり取りに感傷的な余韻と共に読了。
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その人の属性や過去は、基本的に本人の話を鵜呑みにしているんだなと、今更ながら気付かされた。
もし誰かと入れ替わっていても、まさかそんなことを疑わないし…と、まるで自分の身に起こっていることのように引きこまれながら読んだ。
人の本質を見抜けるような目を持っていたいなと思う。面白かった!
著者プロフィール
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