神さまを待っている

著者 :
  • 文藝春秋
3.49
  • (7)
  • (29)
  • (34)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 245
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909080

作品紹介・あらすじ

誰にも「助けて」と言えない。圧倒的リアリティで描かれる貧困女子の現実。文房具メーカーで派遣社員として働く二十六歳の水越愛。派遣期間の終了とともに正社員になるはずだったが、会社の業績悪化で職自体を失う。失業保険を受けながら求職活動をするがうまくいかない。家賃よりも食費を選び、ついにホームレスになってしまう。漫画喫茶に寝泊まりしながら日雇いの仕事でお金を稼ぎ、また前の生活に戻ることを目指して日々をやり過ごす愛だったが、同じ境遇の女性に誘われ「出会い喫茶」に行くことで、自意識が揺らぎはじめる。生きるために「ワリキリ=売春」をやるべきなのか。ここまで追いこまれたのは、自己責任なのだろうか。普通に大学を卒業し、真面目に勤めていた女性が、またたくまに貧困に呑み込まれていき、抜け出せなくなる。貧困女子に必要なのは、お金だけなのか?自らの体験をもとにした、著者渾身の長篇小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 貧困、というとどうしてもアフリカやどこか遠い国のことをイメージしてしまう。
    でもこの小説に書かれているのは日本の、東京の、大卒の、26歳という若い女性の、貧困だという。
    正直ほとんど想像つかなかったのだが読んでみてなるほどと思った。就活が上手くいかずに派遣登録、契約更新されずに派遣切り。ハローワークの失業手当はすぐに切れ、選り好みばかりで次の仕事はみつからず、わずかな貯金も底をつけばあれよあれよという間に住む場所がなくなるのだ。
    主人公の水越愛は、親が離婚して母親と暮らしてきた。だがその母親も高校生のときに亡くなってしまい結局すでに再婚している父親とともに住むことになった。
    母と自分を捨てた父親に冷え冷えとした感情を抱いていた愛は、進学で上京して以来は実家に寄り付かず自分の力だけで生活してきた。そこにきての派遣切り。報われない人生で可哀想だったが、「これって誰にでも起こり得ることなのでは?」と気付いたら怖くなった。

    私にも覚えがある。機能不全家庭で育ったので、とにかく早く家を出たくて高校卒業後すぐ上京したのだ。
    無論お金のことも親には頼りたくなかった。高校3年間でバイトしまくってコツコツ貯めたお金で賃貸契約し、初期費用を払い、家具や家電をそろえた。そしたらあれだけあったはずの貯金はあっという間になくなったのだった。
    始めたばかりの仕事の給料は来月まで入らない。焦った私がしたのはキャバクラの体験入店で、日払いでもらえた6000円分の安堵感は未だに憶えてる。あぁ良かったこれで明日のご飯が買えると思った。
    あのときの私だって、出会い喫茶で日銭を稼ぐ愛となんら変わりはなかったと思う。家賃が払えなくなって漫画喫茶に住んでいたかもしれない。

    "貧困というのは、お金が無いことではない。
    頼れる人がいないことだ。"

    最後のここが全てだと思った。
    助けて欲しいときは、助けて欲しいと声に出さなければならない。
    主人公には雨宮がいて本当に良かった。
    私たちは、ただお金をくれるだけの人のことを「神さま」なんて呼ぶべきではないのだ。

  • 全く誰からも選ばれなかったわけじゃないからこそ、
    自意識が肥大に育って、
    その自意識によって支えられている反面、縛られる原因にもなっている。
    一つが叶えば全てが上手くいくはずと思ってしまうけど、
    多分問題はもっと複合的で
    何かが解決しても次の問題は出てくる。
    愛にとっての神さまは何かを与えてくれたり助けてくれたりする人ではなくて、いくら縋ってもそれを受け入れてくれる人であるように感じた。

  • 10代20代の貧困女性たちの話。畑野さんの作品の中にはこういうシビアな現実を突きつけられるものがある。若いから働けばいいのに、と単純に考えていた自分は読みながらどんどん居心地が悪くなるので、読後感はよくない。

  • 派遣切りにあった主人公が、あっという間にホームレスに陥り、貧困女子へと転落していく話。
    読んでいてずっと喉元を締め付けられる気分だった。
    主人公は、あと一歩踏み込んで誰かに助けを求めたら、もっと早く何とかなったのに、と思う場面がいくつもあって歯がゆい。

  • 「貧困というのは、お金がないことではない。頼れる人がいないことだ。」子供の頃はこれが普通と思っていた家庭環境が歳頃になると違うと気付く。その頃には自分の気持ちを自然と押し殺す術が身に付いていて、自己肯定が低く誰にも頼れなくなってしまう。最低限のお金がないと身も心も蝕まれていく。誰にでも起こり得るリアリティあるお話でした。愛ちゃんには雨宮くんが居て良かった。

  • とても読みやすい文章なのに辛くてなかなか読みすすめられなかった。

    実際にこういう方達もいるんだろう。

    周りにSOSを出せる性格、そしてそういう環境であるかどうか。
    家族や友人等、弱さを見せたり頼れる相手がいるかどうか。それが大事だと思う。

  • ちょっとイライラします…

  • 【圧倒的なリアリティで貧困女子を描く】職を失い、食べる物にも困るようになった二十六歳の女性。ホームレスとなり漫画喫茶で寝起きする彼女が直面した貧困の正体とは。

  • 【著者に訊け】畑野智美氏『神さまを待っている』|NEWSポストセブン
    https://www.news-postseven.com/archives/20181130_810553.html

    文藝春秋のPR
    誰にも「助けて」と言えない。
    圧倒的リアリティで描かれる貧困女子の現実。

    文房具メーカーで派遣社員として働く二十六歳の水越愛。
    派遣期間の終了とともに正社員になるはずだったが、会社の業績悪化で職自体を失う。
    失業保険を受けながら求職活動をするがうまくいかない。
    家賃よりも食費を選び、ついにホームレスになってしまう。

    漫画喫茶に寝泊まりしながら日雇いの仕事でお金を稼ぎ、また前の生活に戻ることを目指して日々をやり過ごす愛だったが、同じ境遇の女性に誘われ「出会い喫茶」に行くことで、自意識が揺らぎはじめる。
    生きるために「ワリキリ=売春」をやるべきなのか。
    ここまで追いこまれたのは、自己責任なのだろうか。

    普通に大学を卒業し、真面目に勤めていた女性が、またたくまに貧困に呑み込まれていき、抜け出せなくなる。
    貧困女子に必要なのは、お金だけなのか?
    自らの体験をもとにした、著者渾身の長篇小説。
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163909080

  • 2019.4.30
    表紙に惹かれて手に取った。さらっと読了。けど、中身は余韻を残す。

    「貧困というのは、お金がないことではない。頼れる人がいないことだ。」

全45件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。13年に『海の見える街』が、14年に『南部芸能事務所』がそれぞれ吉川英治文学新人賞候補となる。ほかの著書に『夏のバスプール』『感情8号線』『罪のあとさき』『タイムマシンでは、行けない明日』『家と庭』『消えない月』『シネマコンプレックス』『大人になったら、』などがある。

「2018年 『水槽の中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神さまを待っているのその他の作品

畑野智美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

神さまを待っているを本棚に登録しているひと

ツイートする