平成くん、さようなら

著者 :
  • 文藝春秋
3.65
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本棚登録 : 870
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909233

作品紹介・あらすじ

社会学者・古市憲寿、初小説。安楽死が合法化された現代日本のパラレルワールドを舞台に、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直す、意欲作!平成時代を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る平成は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人に告げる。彼女はなぜ彼が安楽死をしたいかわからない、受け入れらないまま、二人は安楽死の現場を見たり、ペットの猫の死を通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく――。

感想・レビュー・書評

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  • 社会学者である古市憲寿さんが書いた小説です。
    以前からテレビでみかける度におもしろいコメントをする方だなぁーと好感を抱いていて、独特な価値観にもめちゃくちゃ共感できる同じにおいの人間だと思ってました。
    初の単行本がでるとのことで、とても興味深く心待ちにしていましたが、これが大当たりでした。

    舞台はまさに平成が終わろうとしている日本。実在する有名人やテレビ番組、ファッションブランド、サービスや製品の名前がたくさん出て、現代のトレンドが嫌でもよく分かる。
    しかしこの世界では安楽死が制度として認められており、パラレルワールド、あるいは近未来のような日本だった。
    1989年1月8日生まれで「平成(ひとなり)」という名前をもつ平成くん。ゆとり世代やさとり世代といった"平成の代表"としてマスコミでひっぱりだこの彼は、「平成の終わり=自分の終わり」という考えから安楽死しようとしている。
    そうして安楽死の現場へも精力的に取材に出かける平成くんを、同棲中の彼女(平成くんは彼女と認めたがらない)である愛が、どうにか説得して食い止めようとする話です。

    安楽死が合法化されている日本、素晴らしいな。静岡にあるという安楽死のためのエンターテイメント施設"ファンタジーキャッスル"、行ってみたい。童話の世界の中に登場するようなお城の中で、パーティーを開くように死んでいけるって最高じゃない?死ってもっとハッピーなものであるべきだって私もずっと思ってた。
    クールで合理的でつかみどころのない平成くんが、嬉々としてその様子を語る姿がとても可愛かった。そんな平成くんを大好きで死んで欲しくないと思い悩む愛ちゃんも可愛い。
    というかこの小説全体が可愛い。チームラボボーダレスの表紙も可愛いし。性癖どストライクすぎた。
    Google Homeとスマートスピーカーという平成を代表するようなトレンドアイテムが、この小説の重要な鍵になっているのにも完成度の高さを感じた。
    「ねえ平成くん、」とどうしても呼びかけたくなる。

    平成生まれの私は、"平成最後の"という今年連日くりかえされる枕詞が嫌いだった。
    平成最後の夏って何?平成最後の夏だから何なの?毎年毎年の夏が二度と巡ってこない最後の夏なんだが?と思っていた。平成最後がナンボのもんじゃいと。
    だけどこれを読み終わって"平成最後の"が、どういうものなのか少し分かった気がした。時代が、終わるのだ。"平成"という時代として終わり、残り、保存され、歴史となって、語り継がれていく。
    平成という時代が、まさに終わるときに、平成という時代として、生まれるのかもしれないと思った。

  • 物語の舞台は現代日本のパラレルワールド、
    安楽死が合法化された社会。
    平成の終わりとともに安楽死を望む彼氏・平成くんが、その思いを彼女・愛に打ち明けるところから物語が始まる。

    作品のテーマは安楽死。
    どんどん深い話になっていくのかなと思いきや、安楽死にまつまる倫理観、問題点…などは軽く触れられるだけで、どちらかというと彼女の愛ちゃんの「死んで欲しくない、考え直して」という思いとその行動により重点が置かれた物語という印象だった。
    そういう点では切ない物語だな思うけど、安楽死の問題を考える、という視点で読むと浅く感じるのはそのためかもしれない。

    あまり文学賞には詳しくないけど、え、芥川賞…?という印象は残った(^^;)

    現代を象徴するような最新技術や、有名人、ファッションブランド、番組名、商品名、事件などの固有名詞がバンバンでてくるのが新鮮だった。
    でも平成くんが身に付けているファッションブランドをほとんど知らなかったのには自分でも驚いた…笑。もし知ってたら平成くんという人をよりイメージしやすかったかな。

  • 私には妙にフィットした
    あの古市さんがこんなにも心の機微を丁寧に繊細に書く事は、やっぱりだなと思う 繊細な人
    この近未来的世界は 安楽死が合法化している
    平成くんの「愛ちゃん」と呼ぶところが優しさにあふれている

  • 著者が出演しているアナザースカイを見て、著者に対する印象は良くなり、この作品も日に日に読みたくなってきて、ドーナツを買うという理由で家を出て閉店間際の本屋に買いに行った。

    冒頭からわからない単語が出てきたが、内容として興味深いものだったので入り込みやすかった。
    今どきのフレーズや話題がてんこ盛りなので、どこまでが現実でどこまでがフィクションなのか考えさせられたが、そこも楽しめたかな。でも、ファッションブランドとかが頻出しすぎでちょっとうんざりした。
    自分も安楽死肯定派だし、平成くんには同意する部分もあったけど、ミライのことはさすがにやりすぎ。
    来世があると考えたほうが合理的だという発想は自分には無かったので新鮮だった。

    数年後に読んでいたら楽しめなかったかもしれないし、今の時代に読了できてよかったと思う。
    知らないフレーズが多くて、この先もこんな作品が増えていったら、読書も楽しめなくなると不安になった。
    時代についていかないと^^;

  • 現代の生や性について考えさせられました。また作者である古市憲寿さんの知識や感性が色濃く反映されている作品であると思いました。この本を読んだ後人間としてひとつ成長した気になれ、優しい気持ちになりました。平成が終わる前に必ず読んでおきたい一冊です。

  • テレビをあまり見ないので作者の方はよく知りませんが、とても頭の良い方なんだろうなと思いました。その頭の良さを見せびらかす感じは読んでいて感じられなかったです。

    ただ、自分が頭の良い事を理解した上でその意見や思想を表現しているだけの本に感じられました。独りよがりというか、自己完結しているものを押し付けられている気がします。

    文章が悪いわけでも下手な訳でもないのですが、引き込まれるところが全くありませんでした。

    平成くんの台詞や考え方など、考えさせられたり気づかされる部分は多いのは確かです。しかし、物語として読んだ時に魅力が感じられませんでした。

    読んだ後に嫌な気分になったり、読まなければよかったと思うことはありません。時間があればもう一度読んでみても良いと思っています。ただ、人に勧めることはないと思います。

    内容に関していえば、安楽死制度がある世界というアイデアは素晴らしいのでもっと掘り下げて欲しかったのと、主人公たちの生活が浮世離れしていたこと、平成くんが平成の象徴として描かれているが実際の平成に生きた人間の象徴とは思い難い部分が気になりました。

    • アキオ@視聴覚伝達ライターさん
      物足りなさが少し残る作品ですよね。

      悪くはない。むしろ良く書けている。けれど何かが欠けている……
      もしかしたら、生々しいような、泥臭いよう...
      物足りなさが少し残る作品ですよね。

      悪くはない。むしろ良く書けている。けれど何かが欠けている……
      もしかしたら、生々しいような、泥臭いような〝リアリティー〟が足りないのかもしれない。

      ……と、考えていたのですが。

      なるほど【自己完結の押し付け】というのもありますね〜。
      一つの視点として面白い作品ではありましたが、キレイにまとまり過ぎているのかもしれません。
      〝独りよがり〟に納得です!
      2019/02/04
  • 炎上を恐れず?率直すぎるコメントをメディアでされている著書がどんな小説を書くのかすごく興味があって読んだ。

    平成元年生まれの平成くん、こんな人いるかな…いるよなーと思いながら最後は愛同様、平成くんに生きてほしい!って願いながら読まずにいられなかった。

    でも、
    「生きてほしいって思うのは残される者のエゴ」みたいな平成くんの台詞、私も考えたことがあった。癌で亡くなった母の闘病中、私はどんな姿であっても母に生きていてほしいって強く願っていたけれど、母はそうじゃなかったと思う。私は母がこの世にいるってだけで、それだけでよかった。母は、苦しくて苦しくて痛くて、周りにも迷惑をかけて…早く楽になりたいって弱音を父にはこぼしてたと聞いた。弱っていく姿を家族に見せるよりも、元気だった明るい私を覚えていてほしいって。
    生きてほしいって願うこと、遺されるもののエゴなんかな…って当時考えて涙したことがあったっけ。

    そんなことを思い出しながら…
    ところどころ涙がこぼれた一冊だった。

    平成くんはどこで、今ごろ何してるのかな。

  • 話題の本を一応読む。最初はできの悪い村上春樹やSFに感じたけど、最後の終わり方が皮肉感があり読後まとまった感じがして良かった。

  • タイトルに惹かれて。

    セリフがいちいち古市節でおもしろい。本人がモデルなのかな?と思うほど。
    身に着けてるブランドも、全部古市さんでイメージできるんだよなあ。
    だけどこんな繊細な物語を書かれるということに、すごくギャップを感じた。良い意味で裏切られた。

    安楽死する側のエゴとされる側のエゴ。
    難しいテーマだけど、とても読みやすくおもしろかった。
    最後はちょっと泣いた。

  • 芥川賞にノミネートされてなければ
    もう少しよく思えたかも…。
    社会学者として時代をとらえることはもちろん
    人の心をつかむことも実は得意な人なのだろうか。
    私小説風の独特感が気になり、安楽死という
    死に対するテーマがあまりリアリティをもって感じられなかった。
    でも今時の空気をまとった、今時小説なのだと思う。AmazonやGoogleなどが生活と直結した感じなどは、平成に根付いた技術が遺憾なく発揮されまくっている。価値観を、塗り替えながら時代は変わっていくのだろう。生も死もその中にあたりまえにあるのだ。

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著者プロフィール

古市憲寿(ふるいち のりとし)
1985年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。株式会社ぽえち代表取締役。専攻は社会学。若者の生態を描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で注目される。大学院で若年起業家についての研究を進めるかたわら、マーケティングやIT戦略立案、執筆活動、メディア出演など、精力的に活動する。著書に、『誰も戦争を教えられない』(講談社+α文庫)、『保育園義務教育化』(小学館)、『だから日本はズレている』(新潮新書)、『希望難民ご一行様』(光文社新書)などがある。2018年から小説を書き始めている。小説作に「彼は本当は優しい」(『文學界』2018年4月号)。「平成くん、さようなら」で第160回芥川賞ノミネート。

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