- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163909233
作品紹介・あらすじ
社会学者・古市憲寿、初小説。
安楽死が合法化された現代日本のパラレルワールドを舞台に、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直す、意欲作!
平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。
愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。
なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。
『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る!
感想・レビュー・書評
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社会学者である古市憲寿さんが書いた小説です。
以前からテレビでみかける度におもしろいコメントをする方だなぁーと好感を抱いていて、独特な価値観にもめちゃくちゃ共感できる同じにおいの人間だと思ってました。
初の単行本がでるとのことで、とても興味深く心待ちにしていましたが、これが大当たりでした。
舞台はまさに平成が終わろうとしている日本。実在する有名人やテレビ番組、ファッションブランド、サービスや製品の名前がたくさん出て、現代のトレンドが嫌でもよく分かる。
しかしこの世界では安楽死が制度として認められており、パラレルワールド、あるいは近未来のような日本だった。
1989年1月8日生まれで「平成(ひとなり)」という名前をもつ平成くん。ゆとり世代やさとり世代といった"平成の代表"としてマスコミでひっぱりだこの彼は、「平成の終わり=自分の終わり」という考えから安楽死しようとしている。
そうして安楽死の現場へも精力的に取材に出かける平成くんを、同棲中の彼女(平成くんは彼女と認めたがらない)である愛が、どうにか説得して食い止めようとする話です。
安楽死が合法化されている日本、素晴らしいな。静岡にあるという安楽死のためのエンターテイメント施設"ファンタジーキャッスル"、行ってみたい。童話の世界の中に登場するようなお城の中で、パーティーを開くように死んでいけるって最高じゃない?死ってもっとハッピーなものであるべきだって私もずっと思ってた。
クールで合理的でつかみどころのない平成くんが、嬉々としてその様子を語る姿がとても可愛かった。そんな平成くんを大好きで死んで欲しくないと思い悩む愛ちゃんも可愛い。
というかこの小説全体が可愛い。チームラボボーダレスの表紙も可愛いし。性癖どストライクすぎた。
Google Homeとスマートスピーカーという平成を代表するようなトレンドアイテムが、この小説の重要な鍵になっているのにも完成度の高さを感じた。
「ねえ平成くん、」とどうしても呼びかけたくなる。
平成生まれの私は、"平成最後の"という今年連日くりかえされる枕詞が嫌いだった。
平成最後の夏って何?平成最後の夏だから何なの?毎年毎年の夏が二度と巡ってこない最後の夏なんだが?と思っていた。平成最後がナンボのもんじゃいと。
だけどこれを読み終わって"平成最後の"が、どういうものなのか少し分かった気がした。時代が、終わるのだ。"平成"という時代として終わり、残り、保存され、歴史となって、語り継がれていく。
平成という時代が、まさに終わるときに、平成という時代として、生まれるのかもしれないと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平成くんは安易に安楽死を求めているのではなく,事情があり,それが彼女との行為を嫌う理由でもある。猫の死も辛いのに恋人の死はなおさら耐え難い。残されたスマートスピーカーの声が虚しい。
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テレビで見る飄々とした古市さんにしてやられた感!胸がぎゅっとなるラスト。恋愛小説としても素敵な作品。
安楽死の是非を問うている。
死の選択は、いつ、どの親から生まれるのかを選べないのと同じで、本人だけで決定できないものだ。
生と死は、当人のあずかり知らぬところの領域。
医療が発達し超高齢化を迎えたこの時代に、だれもが対峙しなければならない問題を提起している。
都会的に、軽やかに。
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古市さんってこんな文章書くんだなって思った。TikTokやTwitter、OneDriveなど、現代(平成?)を象徴するような単語が使われていた。内容は面白かった。性描写がいかついのでばあちゃんに貸そうと思ってたけどやめます。
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女子に半ば無理やり渡されて読んだ。
まさかのエロ要素に安楽死要素。
どう解釈していいか色んな意味で分からなかった。 -
安楽死をテーマに書かれた本の1つとして、ずっと読んでみたくて、やっと読めた。
話の最後の終わり方が悲しかった。
でもそういう生き方もありなのかもしれない。 -
テレビではよくお見かけするけど、はじめて古市さんの本を読んでみた。
平成くんから安楽死を考えていると打ち明けられるところから始まる。色んな場合に「安楽死」が法的に認められている日本という設定は興味深かった。でもかなり不気味でこんな世界にはなってほしくないな。
途中まで面白かったけど、終わりに行くにつれてストーリーが散らかってしまっているような印象があった。 -
社会学者である古市憲寿さんのデビュー小説。第160回芥川賞候補作で、『ニムロッド』や『1R1分34秒』に敗れている。
安楽死の認められる平行世界の日本で、社会的な成功を収めているものの、若くして死を希望する平成(ひとなり)君。彼は平成とともに生まれ、平成時代の終わりと共にこの世を去ろうとする。その彼女である「私」が平成君を死なないようにと説得する。はたして平成君はどうするのか。
安楽死がひとつのテーマで、死を扱うわりにはタッチが軽かった。都会的で洗練された暮らしをさらりと描いたのかもしれないが、死と真正面から向き合っているかというと、どうだろう。薄めたビールみたいだと思った。
なにかわからないけど何かが足りない。 -
最後のシーンがとても非現実的でしかも未来的で綺麗で良かった
著者プロフィール
古市憲寿の作品





