昨日がなければ明日もない

著者 :
  • 文藝春秋
3.84
  • (75)
  • (185)
  • (108)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1206
レビュー : 176
  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909301

作品紹介・あらすじ

『希望荘』以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ第5弾となります。中篇3本を収録する本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。収録作品――あらすじ――「絶対零度」……杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、1ヵ月以上も面会ができまいままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。「華燭」……杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。「昨日がなければ明日もない」……事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。「子供の命がかかっている」問題だという。美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ★4.5

    『希望荘』以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ第5弾
    本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。
    自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、
    自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。


    ・「絶対零度」
    杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。
    一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、
    1ヵ月以上も面会ができまいままで、メールも繋がらないのだという。
    杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。

    ・「華燭」
    杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。
    小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、
    中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。
    会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。

    ・「昨日がなければ明日もない」
    事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。
    「子供の命がかかっている」問題だという。
    美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、
    しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。


    2年振りの杉村三郎シリーズ。
    待ってました~読める事がとても幸せでした

  • 杉村三郎シリーズ第五作。
    帯に「杉村三郎vsちょっと困った女たち」とあるらしい。(図書館本なので帯がなくて知らなかった)

    そのフレーズ通り、今回は女性が主役の三編を収録。
    自殺未遂の末、夫が親族に会わせない女性。
    過去に姉の婚約者を奪った女性の娘の結婚式での因縁トラブル。
    何でも自分の都合の良いように解釈し攻撃する女性。

    宮部さんは、特にこのシリーズではよくぞここまでと思うほど人の悪意を描いてくれる。
    その点、若竹七海さんの葉村晶シリーズと似ている部分があるのだが、違うのは晶がもう身も心も文字通りボロボロになりながら容赦なく真実を顕にするのに対し、杉村三郎はどこか余裕がある。
    二人とも何度もピンチに陥ったりとことん辛い目に遭ったりしているのにこの違いはなんだろう。

    読んでいるだけでもこの悪意に毒されそうで、読み終えた途端に疲れがドッと来るような作品なのに、直にその悪意に触れたはずの杉村三郎がいつもと変わらぬ涼しい顔というのはそのメンタルに恐れ入る。
    勿論、内なる部分では打ちひしがれているし悲しみも怒りも後悔もあるのだけど、悪意に中てられることなく通常運転が出来るというのはすごいことだと思う。
    その辺りは男性と女性との違いなのか、人生の来し方の違いなのか。

    ここまで非常識なことが、こんなありえないことが、と思いながら読み進めつつ、現実に起こる事件を思い起こしても「こんなありえないことが」起こるから事件に至るわけで、こういうこともないとは言えない。
    勿論無いほうが良いのだけど。

    この作品から登場する立科警部補、これから杉村の良いコンビになるのか、はたまたライバルとなるのか。

  • 中編3作品、逆玉の輿から離婚で放たれ今やたまの娘との再会だけが楽しみな杉村三郎探偵の物語。宮部さんには読者の見る目も期待度もハードルが高い昨今ですね。2編目までは☆3つかなぁ?と思いつつ読んでいたけど、3作目の タイトルにもなっている作品で俄然評点が上がりました!やはり上手い。

  • 杉村三郎シリーズ。前作「希望荘」に比べると、操作手段などは、格段に探偵らしくなっていて、驚きますが、探偵として働くのだから、身についていかないとということでもありますね。最初の3作の辺りの手探り感も味だったので、ちょっと寂しい感じもあります。
    3編中2編は、小規模な事件かと思いきや、発展していくという感じで、これまでと少し毛色が変わったように感じました。しかし、このシリーズ特徴の、人の持つ悪意がキーになることと、杉村の解明していく謎が、依頼人に対して、よい展開にならないと言ったところは、これまで通りで、個人的にこのシリーズの好きなところでもあります。

    「絶対零度」
    終盤に明らかになる元々の依頼の元となる事件自体は、ひどい話としか言いようがない。
    しかし、周辺にチラチラとある過干渉や、盲目的な関係なども、何気に怖さを感じる。


    「華燭」
    3編の中では事件性は低いが、根本にある妬みなどの心情が重い。ドロドロの怨嗟の一端に触れた加奈ちゃんが気になった。

    「昨日がなければ明日もない」
    単純に怖い考えをする人の話かと思っていると、最後にガーンとくる。人の悪意が呼んだ悲劇なんだろうが、ここでも、その悪意になかで育った子が、この後どうなっていくのかと気になった。冒頭や途中では、巻き込まれてしまった感があったのに、最後は同じように悪意を持ってしまったようだったので。

    なかなかスッキリした解決感がないのが、良いところだと思っているが、今回もそこはしっかりと感じられました。

  • このシリーズは決して読み心地が良くないと重々わかっていたはずで、心して読んだのだけど、いやあこれはつらかった…。

    最初の「絶対零度」冒頭からあっという間にひきこまれて、これはまずいよ、いやな展開になる気がするよと思いながらも、ページをめくる手が止まらず、明かされた真相のむごさに打ちのめされてしまった。続く「華燭」にはそこまでのダメージは受けなかったが、最後のタイトル作で決定的に沈没。うう、しばらく立ち直れないかも。

    まったくこういうのを書かせたらみゆき姉さんはうますぎる。心のどこか柔らかいところにやすりがかけられているような気持ちになる。本当にほっとする温かさもまたあるのだが、それがかえって痛みを強くするようにも思ったり。

    信じがたいほどイヤなヤツ(本当にひどい!)が出てきて、強烈なパンチを食らうのだけど、それよりむしろずーんと重いボディブローのようにきいてくるのが、ごく普通の人たちが見せる悪意や自分本位の行動だ。たとえば「絶対零度」に出てくる、むごい犯罪に加担した娘を「巻き込まれただけ」と思う母親。こんなにイヤな気持ちになるのは、たぶん自分にも同じような面があると感じるからなんだろう。そう思わせるところが、宮部みゆきと凡百のイヤミスとの違いだと思うが、その真実味の分、痛みは深いのだった。

  • 私立探偵・杉村三郎シリーズ。中編ということで、前作よりも各話の厚みが増し、より事件性の強い案件に対峙する杉村の手腕が読みどころ。

    あらすじにもあるように、「困った女性たち」が中心となって杉村を振り回していく展開。ありがちな女性キャラだと思って読んでいたら、実はなかなかヘヴィーな結末だったというギャップに困惑しきり。

    相変わらず巧みな人物造形でぐいぐい読ませてくれるけど、悪役がクズすぎて逆に興覚めしてしまった感がある。わかりやすいクズぶりに噓臭さを覚えてしまい、人情味溢れる脇役キャラとは嚙み合わない雰囲気は、静と動のストーリーが並走しているようで、なーんかバランスが悪かった。とは言え、読後にじんわり虚しさを感じる独特の余韻はさすが宮部作品。

    今回、杉村はある人物と知り合うのだが、この人物の存在が今後の探偵稼業にどう影響してくるのかが見もの。

  • 探偵杉村シリーズ、3編。
    ・「絶対零度」結婚した娘が自殺を図りメンタルクリニックに入院しているが、面会できない状態だという。杉村は調べると凄惨な事件が…。
    ・「華燭」近所に住む小崎さん。小崎さんの姪の結婚式に出席することになる。小崎さんは姪のお母さん(小崎さんの妹)と絶縁している。結婚式の謎はその姉妹の問題があり…。
    ・「昨日がなければ明日もない」大家さんの知り合いで、自己中心的なシングルマザー(朽田)の依頼を受けることになる。別れた男に親権があるという子供が事故に巻き込まれ、子供の命がかかっているという。朽田の対応に周りも手を焼き、取り巻く問題を解決したが…。
    どれも後味が悪かったね。しかし、社会的な大きな悪ではなく、普段の生活の陰にありそうな悪を解決する、描いているところがいいと思います。朽田さんのような方が身近にいたら困りますが…。今回も地道に生きている杉村さんをみれて良かったです。探偵っぽくないこの路線で続けて欲しいところです。

  • 杉村三郎シリーズもう5作目になるのですね。杉村あるところに事件あり。そうそう一度は結婚してたんですよね。
    三作品ですが、どれも重く後味が悪い物語。探偵杉村の人柄なのでしょう。すぐ周りの人はみんないい人なんですけれども。
    絶対零度は途中から読むのが辛かった。だんだん読むペースが落ちてしまいました。
    華燭は意外な展開でした。こういう心境になる人々の気持ちはやはりわからないですけれども。
    表題作は最後が救いでもあり残念な部分でもあるのかもしれません。
    タイトルが救いの名言です。フレーズ登録しました。

  • 杉村三郎シリーズ第5弾。
    このシリーズは、いつも杉村三郎の人柄に救われる。彼自身の生活も天変地異を経ているのだが、ダメージを受けながらもどこか自分を静観していて、堅実な歩みを止めない。
    寛容さが失われつつある今の社会。ごくごく普通で真っ当な杉村三郎…名前からしてインパクトがない…の考えや行動にハッとさせられ、ホッとするのだ。

    三編収録の本作。最初の絶対零度は正直、胸くそ悪くなる(失礼)。だが、これが今の世の人の現実なのだろう。最後の表題作も、ハッピーエンドにして欲しかったなぁとどこかで思ってしまうのだが、甘くはないのだ。

    その時々の社会問題をタイムリーに物語に紡いで我々に投げかけるこのシリーズ、次も期待している。2019.1.31

  • 主人公の探偵がキレキレの名探偵じゃないところが好感が持てる。一度解決したかに見える調査が後日不穏な予兆と共にどんでん返しを生む。という構図も単調ながらわかりやすい。

全176件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

宮部みゆきの作品

昨日がなければ明日もないを本棚に登録しているひと

ツイートする