安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909578

作品紹介・あらすじ

なぜ放送されないんだ!政権を揺るがす「森友事件」の報道の最前線で活躍したNHKのエース記者が突如退職した。何があったのか?著者は「森友事件」の発覚当初から事件を追い続けたNHK大阪放送局の司法担当キャップだった。次々に特ダネをつかむも、書いた原稿は「安倍官邸とのつながり」を薄めるように書き換えられていく。NHKでも検察でも東京vs.大阪のせめぎ合いが続く中、ついに著者は記者職からの異動を命じられた。記者であり続けるために職を辞した著者が、事件の核心、取材の裏側、そして歪められる報道の現在を赤裸々に明かす、渾身のノンフィクション。はじめに第1章森友報道は「忖度」で始まった第2章一転して大報道合戦~小学校認可の行方~第3章クロ現製作ですったもんだ~けんかの末に仲間に~第4章注目を集めた籠池理事長夫妻の人物像第5章国有地問題から補助金詐欺へ~焦点を移す検察の捜査~第6章背任の実態に迫る特ダネに報道局長激怒第7章籠池前理事長逮捕の舞台裏第8章取材体制変更で担当を外された私第9章森友事件追及弁護団(仮称・阪口弁護団)の活躍第10章 近畿財務局職員の自殺が残した謎第11章「口裏合わせ」の特ダネに圧力再び~プロの記者はこうして取材する~第12章 強者記者列伝~5本の指に入る記者+と、もう一人の優れもの記者~第13章 個性豊かな検事たちとの愉快なやり取り第14章 急転直下の検察捜査、財務省は全員不起訴 ~そして私は記者を外された~終章 NHKから大阪日日新聞へ~森友事件の取材は続く~あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 民主党政権崩壊以来この方、ますます目立ってきたマスコミの劣化ぶりはもう見過ごすことができない水準まで高まって溢れんばかりだ!と、改めて認識させてくれたドキュメントです。相澤冬樹という1人の「記者」が記者であり続けられることを願っていますし、彼のように志、気骨のある報道人が少しでも増えていってくれたらいいな、と心から願うものです。

  • 一人でもできる政治参加の手段として、国会中継を見るようにしている。
    当然(!)森友の問題が国会で初めて質問された時も見ていたし、安倍さんの「私や私の妻が関係してたら…」の発言もはっきり覚えている。(「私の事務所も無関係」だと強調してたのも印象的)
    ほかにもTBSのラジオインタビュー、幼稚園での記者会見、菅野氏のネット中継や小学校建設地でインタビューに答える様子や証人喚問当日は全中継をリアルタイムで見たので、本書を読んで改めて当時の政府側答弁の矛盾点が蘇って来た。ぜひ、続編を!

  • 森友事件が国家ぐるみの隠ぺい工作の中で幕を閉じ、一部報道機関、とりわけNHKもそれに加担したことがよくわかる。
    その中でも一匹狼のように反旗を翻し、報道を続けた記者がいたこと、どうやら検察の中でも捜査を続けようとした人がいただけでも救いか。著者は実質フリーのようになったようだが、どうか真の報道を続けて欲しいと思う。
    「安倍官邸 vs. NHK」という名は実を表していないが、報道番組がどのように作られているのか、取材・報道現場の実情がわかるのも良かった。

  • 興味があれば、と、貸していただいたので読んでみました。

    マイナス評価を書き残すのは好きじゃないけど、敢えて率直な感想。

    自己顕示、自己陶酔的な文章に少々辟易。組織を去った人が書く裏話系の本によくある感じ。
    記者だから、個人商店的に仕事をする面もあるのだろうけれど、報道番組を作る過程はこの本を読む限り、多くの人とのチームワークであるはず。

    「この人は自分を理解してくれている(バトルの末に理解者になった)」と所々で紹介されている何人かとのメールや電話のやりとりは、相手方が、扱いにくいチームメンバー(著者)にいかに周囲へのダメージなく働いてもらうか苦心しながら紡いだ言葉に思えてならない。著者が組織を飛び出すにはそれなりの理由もあったのだろうけれど、それにしても、この著者をメンバーの一人としてチームをビルドしなければならない立場の人は、大変だったろうなぁ。

    奇しくも、著者は、自分が関わった同僚記者たちの中でも特に優秀だと思う数人について言及する場面で、『「私はこんなに頑張ってます。こんなに成果を上げてます」と自己アピールに走る記者が目につく中、そういうことを一切せず、黙々と自分の仕事に励む』『彼女の特徴は自分の仕事を誇示しないことである。本当の優れものは仕事を誇示しない』と書いています。…そうそう同感、それなのに…?

    そういう意味で、私には読みやすい本ではなかった。

    ただ、世間を騒がせた事件について、関わっていた人たちそれぞれの人となりや、新聞やテレビなどの報道が、取材段階からどのような手続きを経て、私たち読者・視聴者のところに届けられるのか、といったことが垣間見えた部分については、なかなか興味深かったです。

    キラキラに装飾せず、著者がこれまで向き合ってきた事実を淡々と語ってくれたほうが、迫力あるドキュメント本になったろうに。
    そして。本のタイトルにある安倍官邸とNHKの対決については、ん?官邸のこと、どこに書いてあった?副題が本来のタイトルという感じ。これまで的確な短文速報ニュースを流して来た記者なら、もっと内容に合ったタイトルを付けて欲しかったなぁ。

  • 森友事件で世間がざわついていたであろう2017年2018年は、私は介護を始めとする私事で手一杯だった為、無関心だったわけではないのだけれど、問題をよく知らなかった。

    (本書ではA氏となっているが現在では明らかになっているから、私が今ここに赤木さんと書いても差し障りはないだろうと思う)赤木さんの手記が赤木さんの奥さんと相澤冬樹氏とにより公表された2020年3月は、今度はコロナ禍初期の各テレビ局の放送内容が酷い有様であることに嫌気がさして私はテレビをぱったりと観なくなった頃なので、これまたその件について知らずにいた。

    2021年2月に相澤冬樹氏の『私は真実が知りたい』をたまたまブクログで知り、図書館に蔵書が有ったから、なんとなく読んだ。
    この時、初めて相澤冬樹氏を知り、森友事件の詳細も遅ればせながら知りたくなったので、先に出版されていた本書も読んでみたいと思った。

    今回本書を図書館で借りてきた。
    読み始める前に、なんとなく本書のブクログのレビューを拝見したところ、相澤冬樹氏に対してあまり良い印象を受けなかったので、読まずに返却してしまおうかなと思った。
    そこで一応『私は真実が知りたい』の自分の感想を読み返してみることにした。
    もう随分前に読んだような気がしていたのだが、なんと今年の2月に読んだばかりだということが判明した。
    その後70冊近く挟んでしまったということもあり、薄情なようで申し訳ないが、赤木さんが「いつ、どのような改ざんをさせられたんだっけ?」ということは、すっかり忘れてしまっている。
    しかし相澤冬樹氏のことを、その時の私はとても褒めていた。

    私の中ではこういう時系列があって、やっと本書を読んだのである。

    【ここから本書について】
    ★まず本書の題名、これは他の方々が書かれているように、私も「違うんじゃない?」と思う。
    読めば、どういうルートや圧力や忖度でこうなったのかとか、本当の問題点は何かとか、凡人の私にも見えてはくるし想像もできるけれど、具体的かつ直接的に官邸がNHKに圧をかけたという記述はひとつも無いわけだし、NHKがそれに負けずに戦ったというわけでもない。
    だが、この題名ではあたかも官邸に対してNHKが立ち向かったかのように見えてしまう。
    「事件の本丸+そこを攻めることのできないNHK上層部 vs. 相澤冬樹氏+他数名」の図式だから、『森友事件 〜私がNHKを辞めた理由〜』で良かったのでは?

    ★背任罪ってこうやって誰かが(この場合は弁護団を結成して)訴訟を起こさないと、調べたり逮捕したり裁いたりしないんだ…ということを凡人の私は初めて知った。
    勉強になった。

    ★もうちょっと時系列通りに書いて欲しかった。
    メモりながら読んだのだが、しばしば前の日付に戻ったりするので困った。
    また、どこかで「3月の背任罪の告発」と振り返りで書いてあったが、それまでの部分には書かれていなくて、そこで初めて出てきたように思う。
    私は「え?今までのところに、そんなこと書いてあった?」と戻って探したのだが見つけられなかった。
    私の見落とし、勘違いだろうか?
    書いてあったかな?

    ★1章の相澤氏の元原稿とデスクが直した原稿とを比較してあるところ。
    どこがどのように書き換えられてしまったのか、私はじっくり読み比べた。
    デスクの原稿に、相澤氏が不満に思うような意図や誤魔化しは私には感じられなかった。
    むしろスッキリわかりやすく、論説文問題の添削ビフォアアフターを見ているような感じ。
    ただ、発言者(この場合は籠池氏)のセリフのたった一言を削ってしまうだけで、全く違うニュアンスになってしまう怖さは感じた。
    『国が開示するかどうかを尋ねてきたので「選択できるなら、開示されない方がいい」と答えた』籠池氏なのに、デスクが直した原稿では「選択できるなら」が削られているのだ。
    「選択できるなら、開示されない方がいい」と「開示されない方がいい」とでは全然違う。
    これは籠池氏が可哀想だ。

    ★本文を読んでいると、相澤氏は随分と自分より後輩の「上司」が多い(つまり出世において抜かされている)んだなという印象を受けたが、15年間一度も昇進昇給しなかったという事実とその原因について後ろの方に正直に書いていらっしゃる。

    ★本書で相澤氏は女性は女性と書き分けているので、女性とは書かれていなかったH記者のことをずっと男性だと思って読んでいたのが、最後の方で初めて「彼女」と書いてあって私の脳内イメージは混乱した。

    ★他の方もレビューで書かれているが、いきなり「ガサ」と書かれているし、かっこ書きも無かった。
    まあ家宅捜査のことだろうとはわかるけれども、やはりそこはせめて初出のところだけでも(家宅捜査)と説明して欲しかった。

    ★混成チームの時のメールのやり取りでは、相澤氏は激怒したと言っているが、Uさんはものすごく相澤氏に気を遣っているし、間違ったことを言っていないと私は思う。
    これは相澤氏の長ったらしいイヤミなメールの方が、一緒に働く上でもうちょっとなんとかならないかなと…
    ただ、私は先に『私は真実が知りたい』を読んでいて、一般人である赤木夫人への相澤氏の対応がとても良かったことを知っている。

    ★本書では、(いつの間にか籠池氏にインタビューをしたい時にこの人達を通さなければならなくなっている)ある人達と相澤氏とのやり取りの箇所を読んで、相手の言っていることの方が最もであって、相澤氏の主張の方が強引で悪印象だった。
    しかし相手の人達を調べてみたらかなり特殊な方達のようだった。
    そんなことを相澤氏は全く書かず、むしろ私に相澤氏の方が強引だよねと思われるような書き方をしているということは、自分に都合の良いような書き方をしていないということだ。

    ★『私は真実が知りたい』に書かれていた赤木夫人からの接触があった時期を私は忘れてしまったのでなんとも言えないが、A氏(赤木氏のこと)に少し触れていて2018年12月発行の本書の執筆中、たぶん2018年からではなかったかと考える。
    まだまだ赤木夫人から赤木さんの手記を見せてもらえてはいない時期で、赤木夫人とのことを秘密にしておかなければならない時期だったと。
    しかし手記を持つ夫人との接点ができていたから、記者を外されたNHKを辞めて森友事件を追い続けようと決意したのではなかろうか。→【訂正:『私は真実が知りたい』を再度図書館から借りてきて検証したところ、相澤氏がNHKを辞める前には赤木夫人との接点は無かった。
    2018年8月末、相澤氏NHK退職→11/27赤木夫人の方から初めてコンタクトを取り、その日の内に2人は会い、相澤氏は「手記」を見せてもらった→12/13本書発売時点では赤木夫人のことはまだまだ秘密。そういう順番】

    ★私自身、本文の時系列に沿って書けなかったなぁ。
    本書を読んでみて、なんとなく相澤氏に対して厳しめなことを書いているようになってしまったが、そういうつもりは無い。
    事件を追及していって欲しいし、またまとめて書籍で出版してくれたら読みたいと思う。

  • 奇怪過ぎる森友問題の真相。昨今の報道姿勢に違和感が拭えないNHKの内実。そういったものに期待して手に取ったのだが…

    なにせ勢いが凄い。癖が強い。泥臭い。記者の現場仕事、現場魂を感じさせる。それが非常に読ませる。取材者とのコミュニケーションの取り方―立場上対立する相手との「信頼関係」の築き方、腹の探り合い…その生々しさが印象的。これにはいい意味で期待を裏切られた。

    部下・同僚・上司、他部署とのやり取りは組織人として共感するとともに、このキャラじゃ大企業はムリだろうなとも感じさせる(苦笑)

    その古巣NHK、苦しめられた上司に対しても、完全なるダメ出しはしない―と書くと一見手温い様に見えるだろうけど、上記を踏まえると、ここにもプロとしての記者の姿勢、仕事ぶりを感じさせる。

    とても不思議で面白い本。きっと著者もそうなんだろうな。

  • 昨日仰言られていた(別の方でしたが)、新しい著作愉しみにしております。

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    政権を揺るがす「森友事件」の報道の最前線で活躍したNHKのエース記者が突如退職した。何があったのか?
    著者は「森友事件」の発覚当初から事件を追い続けたNHK大阪放送局の司法担当キャップだった。次々に特ダネをつかむも、書いた原稿は「安倍官邸とのつながり」を薄めるように書き換えられていく。NHKでも検察でも東京vs.大阪のせめぎ合いが続く中、ついに著者は記者職からの異動を命じられた。記者であり続けるために職を辞した著者が、事件の核心、取材の裏側、そして歪められる報道の現在を赤裸々に明かす、渾身のノンフィクション。
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163909578

  • 色々と内情はわかり、「不自然だな」という“違和感”はありますが、最後まで“違和感”のまま。核心に迫ってないから、逆に怖いのかな?

  • 100%真実なんだろうけど、残念ながら負け犬の遠吠えにしか聞こえない…。

  • 森友疑惑のスクープで官邸の圧力を受け、退職を余儀なくされたNHK記者。

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著者プロフィール

1962年宮崎県生まれ。大阪日日新聞(新日本海新聞社)編集局長・記者。東京大学法学部卒業。87年、NHKに記者職で入局。山口放送局、東京報道局社会部記者などを経て、2012年より大阪放送局。森友事件の発生直後から追い続け、数々の特ダネをつかむ。18 年8月NHKを退職、同年9月より現職場。著書に『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(赤木雅子氏との共著、文藝春秋)。

「2021年 『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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