あなたのためなら 藍千堂菓子噺

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 91
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909608

作品紹介・あらすじ

「命さえ惜しくない愛に巡りあったとき人は――」おっとりした菓子職人の晴太郎と、商才に長けたしっかりもの幸次郎の兄弟は、年老いた茂市に手伝ってもらいながら、江戸の菓子司「藍千堂」を営んでいる。「菓子」一筋だった晴太郎が、佐菜に恋をして結婚。男所帯の藍千堂に、佐菜とその娘のさちが加わったことで、暮らし向きは華やかになった。人気シリーズ第3弾となる本作のテーマは、「命がけの愛」いとこのお糸の縁談が発端となり、彼女の実家「百瀬屋」が窮地におちいる。命をかけて愛する相手に出会ったがゆえに、絶望の淵に突き落とされた人々を、晴太郎兄弟は、和菓子で笑顔にできるのか。江戸菓子の魅力と、人情あふれる物語がたっぷりと詰まった時代小説短編集です。

感想・レビュー・書評

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  • <藍千堂菓子噺>シリーズ第三作。
    ただ前作までの詳細をかなり忘れていたので「晴太郎がいつのまにか結婚して子持ちになってる」とか、「この武家の女性だれだっけ?」などと疑問符だらけで読み始めた。ただ作品内でこれまでの物語を語られているのでその辺の疑問も解消、前作を読み返さなくても大丈夫だった。

    これまでは確か、悪どいやり方で晴太郎・幸次郎兄弟を店から追い出した汚い叔父の店<百瀬屋>vs<百瀬屋>の意地悪にも負けず自分たちなりの個性を出して少しずつ商売を起動に乗せていってる健気な兄弟の店<藍千堂>という構図だったのが、この作品では「百瀬屋」も少しずつ自分たちなりの商売に専念しあからさまな<藍千堂>に対する妨害もなくなってきていた。

    晴太郎の妻となった佐菜の連れ子・さちが何とも良い緩衝材になってくれている。これまでは茂吉がその役目を追っていたのだが、さちも加わってより賑やかに。
    終盤は<百瀬屋>のこれまでの悪行三昧(言い過ぎか?)が自らに返ってくるという皮肉な話。これがスカッとするのではなく、何とも哀しく苦い話になってしまうのは、唯一晴太郎・幸次郎兄弟とつながっていた従姉妹のお糸が大いに関わっていたから。
    しかしどの話も女性は強し。きっとお糸もこの逆境を跳ね返すだけの力を持っている筈。
    しかし呑気な晴太郎が先に世帯をもったと思ったら、幸次郎の方はなかなか…。

    田牧さんお得意の人情絡みではあるものの、個人的にはセンチメンタルが過ぎてちょっと胃もたれ気味。
    だが人によってはこのくらいが良いのかもしれない。

  • 因果応報とは言うけれど…お糸ちゃんが背負わなければならないのがあんまりで。しかも一人で。せっかく出会えた彦三郎とも悲しい結末だったし。ラストの和歌のところですごく泣けました。しかし、百瀬屋の内情がこんなにワンマンだとは思いもよらず、どうなるんだろう。もちろん晴太郎たちが何もしないわけがないと思いますが。とにかく、みんなが幸せになってほしいです。茂市っつぁんの過去の話も泣けました。今回はどの短編を読んでもじんとさせられました。さちちゃん、本当に優しくてかわいらしい子ですね。みんなのアイドル。晴太郎のラブラブぶりが微笑ましいというか、なんというか(笑)

  • 田牧さんらしい、爽やかさや、切なさや、推理が入り交じった作品。とても面白い。
    キャラに味があって、どの話も面白い。今回は、お糸と幸次郎の話が多いが、よくあるタイプのじれったさを感じさせずに、共感と好感が持てる。

  • おっとりした菓子職人の晴太郎と、商才に長けたしっかりもの幸次郎の兄弟は、職人の茂市と共に江戸の菓子司「藍千堂」を営んでいる。菓子一筋の晴太郎が結婚し、男所帯の藍千堂に妻の佐菜とその娘のさちが加わったことで店は温かくも華やぐ。そんな中、幸次郎に想いを寄せ続ける従姉妹のお糸に縁談が持ち上がるが…藍千堂シリーズ第三弾。「遣らずの雨」「袖笠雨」「狐の嫁入り」「通り雨」「逆さ虹」収録。

    さちが「父様」と呼ぶまでが切ないわ可愛いわで…恋女房である佐菜とさちと晴太郎が家族になっていく姿が心温まるけれど、今回はお糸ちゃんの試練…事情はあったにしろかつて百瀬屋にされた仕打ちを思うと雪解けしつつあるとはいっても晴太郎幸次郎兄弟は人が好いなぁ…と思ってしまう…そういうところがいいのですが。

    お糸ちゃんと彦三郎の仲もせつないのですが、茂市っつあん目線の思い出話「通り雨」も良かった…登場人物みんなが幸せなると良いなぁ…と思う良いシリーズです。

  • 連続5話の最初の2話は2017年「オール讀物」初出で、続きは書き下ろし。シリーズ3作目。

    田牧大和は上手くなった。
    兄弟で営む上菓子屋「藍千堂」の互いに慈しむ人間模様に何度も泣かされたし、読み終えるのがもったいなかった。

    兄の晴太郎と恋女房佐菜の連れ子さちが親子になっていく様子が微笑ましいが、メインのストーリーは兄弟の父が始め、その死後弟が主人になっている菓子屋百瀬屋がらみ。
    叔父はまだ少年だった兄弟を追い出し不仲になるが、娘の糸だけは弟幸次郎を慕っている。そのお糸の婿候補が怪しい。やたら内情に詳く、お糸は店の行く末について真剣に語り合う。他方お糸は町廻同心に探索を頼むと、なんと盗賊の片割れだと発覚!(でもどうしてそんなことがわかるんだ?)
    このあたりはミステリーっぽくハラハラさせられるが、糸の凛々しいこと。しかし悲しい結末でお糸は傷つき、父親は卒中で倒れ、晴太郎は叔父の店の窮地を救う。

    みんないい人過ぎて、幸せになって欲しいと思ってしまう。次はどういう展開になるのだろう。

  • お糸にクローズアップしていて、お糸の良さが良く分かる。
    そして切ない。
    藍千堂の皆が良い感じに纏まっているので、どんな形でも輪の中に入っていって欲しいなと思います。

  • 命さえ惜しくない愛に巡りあったとき人は―いとこのお糸の危機を救うべく奔走するお菓子職人の晴太郎と幸次郎。たとえ、絶望の淵に突き落とされても人を笑顔にする和菓子がある!

  • お糸の成長が著しい。
    でも、どうやって百瀬屋を背負っていくつもりなんだろう。

    それにしても、彦三郎って一体何者?

  • 藍千堂菓子噺シリーズの3作目。
    いい本だ。読んでいると本当に気持ちがよくなる。
    ただ字が小さいので、読むのに疲れる。

  • 前半は家族っていいな、と思わせるいい話。後半は百瀬屋の非道のとばっちりが、追い出された兄弟だけでなく取引先や娘にまで及ぶ辛い話だった。ひっくるめて、全部いい話!

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著者プロフィール

田牧 大和(たまき やまと)
1966年、東京都生まれの小説家。明星大学人文学部英語英文学科卒業。市場調査会社に勤務しながら、ウェブ上で時代小説を発表していた。2007年『色には出でじ、風に牽牛』(『花合せ』)で第2回小説現代長編新人賞を受賞。
代表作に、『花合せ 濱次お役者双六』などの「濱次シリーズ」、『鯖猫長屋ふしぎ草紙』の「鯖猫長屋シリーズ」などがある。

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