9つの脳の不思議な物語

  • 文藝春秋 (2019年1月30日発売)
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909646

作品紹介・あらすじ

◎それは奇跡か、それとも病か?◎

かつて大学で脳を研究し、科学ジャーナリストとなった著者。彼女の趣味は「人とは違
う脳」を持った人々について書かれた医学論文を収集し、読み漁ること。だが、論文を
読むだけでは、患者の人となりは全く見えてこない。ある日、十年間集め続けた論文の
山の前で彼女は思った。「世界中で普通の人々に奇妙な事が起こっている。彼らはどん
な生活をしているのだろう?」――それが、「奇妙な脳」の持ち主たちを巡る旅の始ま
りだった。


【目次】

■序 章 「奇妙な脳」を探す旅へ出よう
大学で脳を研究していた私は、卒業後にある衝撃的な論文と出会う。この世にはどんな
命令にも必ず従ってしまう“ジャンパー”と呼ばれる人々がいるというのだ。彼らの脳
では一体何が起きているのか。それがこの旅の始まりだった。

■第1章 完璧な記憶を操る
──過去を一日も忘れない“完全記憶者”ボブ
これまでの人生の全ての日を覚えている。ごくまれに、そんな記憶力を持つ人々がい
る。その秘密を探るべく、私はボブを訪ねた。彼に最も古い記憶を尋ねると、なんと生
後九ヶ月の時の記憶があると言う。そんなことはありえるのか。

■第2章 脳内地図の喪失
──自宅で道に迷う“究極の方向音痴”シャロン
方向感覚は脳が生み出す最も高度な能力の一つだ。では、それを失うと人はどうなるの
か。それを教えてくれるのがシャロンだ。彼女は自宅のトイレからキッチンへ行こうと
して迷子になる。脳内ではどんなエラーが起きているのか。

■第3章 オーラが見える男
──鮮やかな色彩を知る“色盲の共感覚者”ルーベン
特定の数字に色を見たり、特定の音で味を感じる。こうした共感覚は四%の人に備わっ
ているとされる。中には特殊なものもあり、ルーベンは出会う人の多くにカラフルなオ
ーラが見えるという。だが不思議なことに、彼は色盲なのだ。

■第4章 何が性格を決めるのか?
──一夜で人格が入れ替わった“元詐欺師の聖人”トミー
「ドラッグ、窃盗、けんか。全部やったよ」と過去を振り返るトミーは、ある夜を境に
虫も殺せない穏やかな性格へと激変し、家族を戸惑わせた。人の性格は脳が決める。そ
の鍵は左脳と右脳ではなく、上脳と下脳のバランスにあった。

■第5章 脳内iPodが止まらない
──“幻聴を聞く絶対音感保持者”シルビア
幻覚は精神疾患の症状だとされることが多いが、実は誰しもピンポン玉とヘッドフォン
を使えば幻覚を体験できる。なぜ脳は幻覚を生み出すのか。絶え間ない幻聴に悩まされ
ているシルビアの脳をスキャンすると、答えが見えてきた。

■第6章 狼化妄想症という病
──発作と戦う“トラに変身する男”マター
自分が

感想・レビュー・書評

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  • 脳の話を読むのが好き。自分の知らない自分の脳のスペックに「へ〜」を連発したり、意外な不確かさと頼りなさに人ごとのように呆れたり。

    自宅ですら迷子になったり、オーラが見えたり、人の痛みをリアルに感じ取れたり、登場する9人の特殊な能力は、脳のエラーから得られたもの。ということは、彼らは私と全く違う存在なわけではなくて、何かが過剰なだけ。そう思うと、9人の脳だけじゃなく、全ての脳が、やっぱり摩訶不思議で興味深い。

    自分の人生の全ての日の出来事を記憶しているのは、記憶力が優れているわけではなく、記憶の取り出し方が優れているという話。つまり、私の脳にも、私の人生の出来事が保存されているんだ!と思うと、くらくらする。
    そして彼の、「その人のことをとてもはっきり覚えているから、本当に失ったような気がしない」という言葉。その人のことを何度も何度も思い出し考えて記憶を強化すること。それは私にもできることだ。
    これ、推しについても言えるかも。実体がそばにいなくても、いろんな姿を何度も思い出すことで、脳を騙して、しあわせを感じてるのかもね。

  • 脳に何らかの障害を持つ人々にインタビューし、その事例から脳の不思議さを紹介する。著者がインタビューイに寄り添って共感を保ちながら、見て聞いて経験したことを素直に紹介している。脳についてがっつりと知りたい人には物足りないかもしれないが、不思議な物語を読んで、どこか自分にも同じような症状がありそうだと共感できるところが面白いところだ。自分の周辺にいる人々の行動を思い出して、もしかすると前頭葉のこの部分に何らかの異常があるのではないかと想像するのも楽しい。

  • 特別な脳による特別な症状を持つ人々について報告した本です。論文のような味気ない感じではなく、それぞれの所へ訪れる際の描写や、それぞれの人の生活や内観などを聞き出しており、物語のようになっています。オリバーサックスの本のような作りです。いくつかは聞いたことがある話でしたが、発達性の脳内地図の喪失、トラに変身したと思い込む狼化妄想症、ミラーニューロンの抑制が不十分で他者の痛みを強く体で感じる例は、初めて聞いて興味深かった。脳がいろんなバランスの上に成り立っていて、特殊に見える例が多くあること、みんな自分の世界を当然と思っているけど、人それぞれで感じている世界が違う可能性があることが、よくわかった。

  • とても興味深い話ばかり。
    だが、いったん読むのをやめにする。
    改めて読むことにする。
    一旦、返却。

  • ・数字に色が見える人。色と感情がリングしてる人
    共感覚
    関連する脳領域が同時に覚醒する

    ・すべてを記憶してる人
    記憶を保存する能力は一般人と同じだが、記憶を探し出すのが上手い。
     嫌な記憶を鮮明に覚えているため、具体的に反省ができる。

    ・共感性羞恥
    他人の動きを見るだけで、あたかも自分がやっているときと同じように活動するミラーニューロンがより活性化されている。本来は感覚神経がミラーニューロンの活動を抑制するが、抑制できないと共感性が高まる。

  • ・脳が我々にも理解できるぐらいに単純であったら、我々は単純すぎて脳を理解できない。
    ・我々の現実というのは、感覚によって制御されている、コントロールされた幻覚にすぎない。
    ・脳は混乱を嫌う。矛盾する情報が入ってくると、脳は新しいシナリオを作ってなんとか理屈を通そうとし、異常な体験をだいたい最も単純なストーリーにはめ込もうとする。
    ・二人の人間を分けるものは皮膚の層しかないということを学ぶと、とても自分の小ささを感じる。

  • 文章中の論文の関係者に教えたら、
    全然論文の意図と違う
    使い方をされていたらしく、
    全体への信頼感が一気にダウン。

  • 人間の脳の複雑な機能
    膨大な数の人間がいる中で、特別な脳の動きをする人たちがいて
    個々人の脳の働きによって、よくも悪くもいろんな人格の人間がいるのは、しょうがないんだと思えた(苦笑)


    序章から
    世界を旅して、特別な脳を持つ人たちに会って、
    我々の脳がどう機能しているかを理解する事ができた。彼らの話を通して、脳があるときは素晴らしく、あるときは予想もできないような危険なやり方で我々の人生を形作っていることを知った。同時に消えない記憶を持つ方法や、迷子にならない方法や、死ぬときの感覚などもわかった。さらに一瞬で幸せな気分になれる方法も、幻覚を見る方法も、良い判断をする方法も教わった。ゴム手袋を自分の手だと感じる方法も、自分の現実を直視する方法も、さらには自分が生きていることを確認する方法まで学んだ。

    第1章 過去を一日も忘れない“完全記憶者”ボブ
    第2章 自宅で道に迷う“究極の方向音痴”シャロン
    第3章 鮮やかな色彩を知る“色盲の共感覚者”ルーベン
    第4章 一夜で人格が入れ替わった“元詐欺師の聖人”トミー
    第5章 “幻聴を聞く絶対音感保持者”シルビア
    第6章 発作と戦う“トラに変身する男”マター
    第7章 孤独を生きる“離人症のママ”ルイーズ
    第8章 “三年間の「死」から生還した中年”グラハム
    第9章 “他者の触覚とシンクロする医師”ジョエル
    終章 ジャンピング・フレンチマンを求めて


    ホムンクルス感覚図

  • 実話とはにわかに信じ難い、9人の特殊な感覚が語られている。脳の一部の些細な違いが大きな影響を及ぼすらしい。通常の人に働く脳の動作とは異なった動きで様々な現象が立ち上がるようだ。脳が精神を含む身体を支配している謎は解明されないだろう。本書の中にある言葉で、'脳が人にも理解できるぐらい単純なら、人はその単純すぎる脳では脳を理解できない'は言い得て妙である。タイトルは、原題の'Unthinkable'の方が深みがある。

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著者プロフィール

フリーランスライター。『ニュー・サイエンティスト』のコンサルタント。『ガーディアン』『ニューヨーク・タイムズ』『ネイチャー』「BBC」などにも寄稿、ジャーナリストとしてさまざまな賞を受賞している。著書『9つの脳の不思議な物語』(文藝春秋)で、2018年に『タイムズ』のブック・オブ・ザ・イヤーを受賞。神経科学の学士号、サイエンスコミュニケーションの修士号をもつ。ロンドン在住。

「2023年 『人生修復大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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