炯眼に候

  • 文藝春秋 (2019年2月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784163909684

作品紹介・あらすじ

異次元の「眼」を持つ男。

その名は、織田信長。



村木砦、桶狭間、長篠……

信長の勝利の裏側には常に、恐ろしいまでの合理的思考があった。



鉄砲をどう運用すべきか。

毛利水軍に勝てる船とは何か。

どうすれば、天候を予測できるか。



天下統一までの道にちりばめられた謎を、信長だけが解き明かしていく。

この時代、もっとも先を見据えていた男が最後に導き出したのは――

自らの死後、明智を破るための秘策だった。



史実を踏まえつつ、独自の着眼で

これまでの信長像を大きく飛躍させる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 家臣等身近な人物による「織田信長像」をまとめた連作短編集。
    炯眼=物事をはっきりと見抜く力、鋭い眼力のある信長。
    確かにこれ程世の行く末を見極めた武将はなかなかいない。

    炯眼によりテッペンまであと少しの所まで登り詰め、家来からの信頼も厚かった信長。
    けれど一方で、炯眼であったが故に敵も多かったこともまた事実。
    男の嫉妬は表に出しづらいため、知らず知らずの内に根深くなっていくものだ、と改めて知る。
    あの時代であると吐き出す場もなかっただろう。
    男達の悲哀…普段強がっているだけに一層哀れに思う。

    けれどラストの描き方はしてやったり、とちょっといい気分。
    未だに謎めいた信長の最期も、こういう結末だといいのだけれど。
    『弾丸』『首級』が良かった。

  • 炯眼に候。

    織田信長って帯にでかでかと書いてあるが、
    周辺から見た織田信長という感じ。

    だから面白いのか。
    歴史は全然詳しくないが、
    そんな私でも楽しめた。

    水鏡はいまいちぴんとこなかったが、
    偽首あたりでかなり面白くなり、
    そこからはほとんど一気読みだ。

    今週は仕事上でいろいろ立て込んでいたこともあり
    読書タイムが決して多かったわけではない。
    その中で、この本を読むことが
    かなり癒しタイムになった。
    感謝。

    信長の首のありかは諸説あるようだが、
    この切り口はまた斬新で、
    前後の話と整合性をとれるように
    してあるのもさすがだなあ。

    自分の歴史に対する浅はかな知識のために
    この本のよさを充分に語れないのが残念。

  • 信長家臣太田牛一の著した『信長公記』の一節を手掛かりに、著者の想像力と創造力で信長の「炯眼」を描き出した連作短編集。
    どこまでが史実で、どこからがフィクションなのか、考えるのも楽しい。
    「運ハ天二在リ、死ハ定メ」と兜に前立をつけた武者、合戦で奪った大将首で左右される手柄、鉄砲の威力を知らしめる秘策等々、信長の近辺の人物の動向を描写することにより、信長の炯眼を表出させる。
    最終章『首級』では、黒人奴隷を主役に本能寺の変を語り、信長の首の謎を解き明かしている。
    光秀の謀反も、彼が信長に仕える前からの宿願と捉えていて、「本能寺の変」の新しい解釈かと。
    信長については、つい最近、垣根涼介著『信長の原理』を読んだばかりだが、宮本昌孝著の文庫本も刊行されたようなので、読み比べてみよう。

  • 「宇喜多の捨て嫁」でファンになった木下さんの作品。
    仏罰すら恐れない信長にまつわる、様々なエピソードを木下流に合理的に読み解くとこうなる、という連作集。

    己の姿が映らねば三年以内に死ぬという言い伝えのある井戸の水鏡
    今川義元の首を巡る、服部兄弟と毛利兄弟の争い
    信長を狙撃した罪で自らは惨殺されたものの、なぜか妻子は許されたその理由
    ”呪われた一族”である山中の猿を軍師にまで重用した信長の思惑とは
    浮くはずのない鉄甲船を海戦で使う木下藤吉郎の秘策とは
    武田軍を次々と撃破した鉄砲運用の仕方
    そして信長最大の謎、本能寺の変で消えた信長の首級の行方

    当時の人々からすれば不思議であったり、この世の理とは離れた、それこそ宗教的神秘的なものと思われるような事柄であっても、或いはとても人間業では成し遂げられないという事柄であっても、信長の『炯眼』にかかってはこの通り、見事その真相を解き明かし、その先を読むことが出来るという内容。
    現代の観点からすれば素人でも納得出来る内容だけに興味深い。ただところどころ強引な理由づけかなと思われるものもある。それもご愛嬌というところか。

    特に山中の猿の能力を把握した上での戦い方、信長のいくつかの戦で無謀とも言えるやり方が成功したのは、実はこういうことがあったのかもとも思える。

    仏罰神罰など恐れない、己の目で見て確かめたものでなければ信じない、合理的な信長の『炯眼』は確かに素晴らしいけれど、『天下布武のためならば命を種銭にすることも厭わない』というその徹底した論理が早すぎる死を呼び込んだのかも知れない。

  • 『信長公記』のエピソードを、独自の観点で描いた連作短編集。
    既成概念から外れた言動が、神がかったように思われがちな、織田信長。
    その根底にある、合理性、科学的視点が一貫して光る。

    人のいい毛利新介と、養子になった夜叉丸をえがいた「偽首」は、ぐっときた。
    本能寺の変をえがいた「首級」は、弥助視点がめずらしかった。

  • 信長の周囲の人のお話から信長を語る連作短編集。
    やっぱり木下昌輝はすごいや。歴史小説はあんまり興味のなかった私ですら確かにこの辺謎だわーって思ってたことを、こんなことあったかも!って思わせるし、読みやすいし登場人物達が生き生きしてるし。
    最後の話で綺麗にまとまって落ち着いた先も凄かった。
    解説の天野さんも書かれてるけど、手垢の着いた信長をここまですごい。
    信長かっこいいです。
    しかしこの信長ですら明智の謀反は読めなかったのね…この信長なら察知してそうな感じすらしてしまう笑

  • 織田信長、神仏を信じず「合理」を信じ、「炯眼」を持つ男。 
    6つのエピソードからその「炯眼」を浮き彫りにします。 
    最後の黒人奴隷『弥助』を語り部にしたエピソード「首級」が全エピソードを回収しているところが小気味よい。 
    見方を変える事によって、今まで見えなかったものが見えてくる。そんなお話です。 

  • 史書の記述をもとに独自の解釈で織田信長を描いた連作短編集。彼が登場する場面は少ないが、恐ろしいまでに先を見通す存在感がすごい。
    戦国時代に関しては高校の歴史で習ったくらいの知識しかないが、それでも十分面白かった。
    毛利水軍を迎え撃つ鉄船の話「鉄船」、明智光秀視点で長篠の戦いを描いた「鉄砲」、そしてラストの本能寺の変「首級」がベスト。

  • これぞ、木下昌輝の真骨頂。
    読み進める度に震えが止まらなくなる。
    『敵の名は、宮本武蔵』と同じように、織田信長を周囲の者たちの目線で描く。
    『宇喜多の捨て嫁』を初めて読んだときのような高揚感。
    木下昌輝が新たな名作を生み出した。

  • 信長礼讚!とは少し異なるように感じた。
    さまざまな状況で現れる信長が、印象深い言動を周囲の心に刻んでいく。

    耳にしたことのあるエピソードの裏に、こんなドラマが?
    おもわず声を上げたり、文字どおり息をのんだり。

    いちばんの衝撃は、最後の『首級』。
    必読!

  • 梟雄、謀将などの悪名を欲しいままにした男の内に潜む穏やかな側面を見事に炙り出した「宇喜多の捨て嫁」失礼ながらこのクラスの武将ですらここまでら鮮やかに人間性を描き出すのだからそのペン先がスーパーヒーロー織田信長に向くとなれば小説としての破壊力は凄まじいものになるのだろう。
    反面これまで書き尽くされてきた人物故の難しさもあるのだが連作のなかで信長を見詰める従者たちのマニアックな人選はもとより史実ばかりに拘る先生が目くじらを立てて怒りそうな大胆な発想で見事な歴史ファンタジーに仕立てている。
    謎多き戦国浪漫、答えは読む者それぞれの心の中にあって良い。

  • 信長にまつわるエピソードの謎に関する異説論集といった風情で、時代を追ってエピソードがまとめられていて、それが繋がっているので、読み進めるごとに、なるほどねとなる。構成と謎解きの両方楽しめる。目の付け所がさすがの木下氏の真骨頂で斬新なれど、謎解きが少し強引に感じる部分もあり、そこがちょっと物足りなさも感じるけど、十分物語として楽しめると思う。

  • 全7編、“信長公記”に出て来る逸話、人物に絡むそうだったかもストーリーでそれぞれの章の語り目線は違うのだけれど、全編通して信長公の物語。
    以下章と覚書
    水鏡/荒川新八郎と従者の甚弥(運ハ天ニ有リ死ハ定メ)
    偽首/毛利新介と斯波家の夜叉丸vs服部小平太、小藤太兄弟
    弾丸/杉谷善住坊(とその子孫の謎
    軍師/山中の猿と又助(太田牛一←信長公記著者
    鉄船/九鬼嘉隆と羽柴秀吉、石田佐吉、vs毛利水軍
    鉄砲/明智光秀、長篠の戦
    首級/黒人奴隷の弥助、本能寺の変

    着眼点と想像力がほんとにすごい、史実に残っているものからこういう物語が鮮やかに生み出される。信長がいかに慧眼を持っていたか、時代を突き抜けていた感覚と知能の持ち主であったか、こういう多方面からの切り口でひとりの人物像を浮かび上がらせるってすごいなあ、と。
    ラストの黒人弥助の視点で描かれたものがいちばんよかった、信長の首級が実は、、て物語は数あれど、これの独創力すごいし(これが事実という可能性もあるかもしれないけれど、この隠し方はすごい、)、世界史日本史の資料集などで、年表横並べして日本が安土桃山の頃はムガール帝国の侵略があった頃、、みたいな比較表はみたことがあっても、こういうものを縦につなぐ糸で展開したラストが、ちょっと感嘆の声が漏れましたね。面白かった。
    読み応え有、でした。

  • 織田信長にまつわるエピソードを、タイトルの通り「炯眼」に焦点を当てて語られる、7編からなる短編集。
    よく冷徹な人物として描かれる信長だが、とことん合理的に物事を考え、理にかなった事ならどんな反対も押し切って行動してしまう人物だからこそ、そのように見られてしまうという事がよく分かる逸話揃い。
    神や仏を敬いこそすれ、決して天罰、仏罰など信じず、そこには何か理由があることをつきとめ、更にそれを戦に生かすあたりは、読んでいて見事と思わず声を出しそうになったほど。
    また、印象的だったのは自身の最期を迎えるシーン、明智には決してかなわないと冷静に分析しつつ、「どうしても明智に一矢報いたい」と願う家臣に、またここも冷静に一計を案じる様は、最後まで理を重んじていた信長をよく表現していると感じた。
    こういった視点から信長を描く作品とても新鮮で面白かった。
    この信長の合理主義的な考え方、現代なら当たり前に思える事で、生まれたのがあまりに早過ぎたんだなぁとただただ思ってしまう作品でもあった。

  • 信長の革新性、常識に囚われない着眼での鋭さ…小説ゆえの信長の生き方が面白い!

  • 信長像には目新しさはなかったが各エピソードのミステリ的謎解きは面白かった。信長公記の著者を軸にした作品は読んだことがなかったのでその点では新しかった。

  • 2021年末の大掃除で発掘した本です、この本は2021年の間に読む本の様ですね。読みかけになっていたために、評価は「★一つ」にしております。内容が不満足だったわけではありません。

    2021年12月29日作成

  • 4

  •  本当に、信長は「で、あるか」とか言っていたのか?

  • 信長の首の行方

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著者プロフィール

木下 昌輝(きのした・まさき):1974年奈良県生まれ。2012年「宇喜多の捨て嫁」でオール讀物新人賞を受賞、14年単行本デビュー、15年歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、咲くやこの花賞を受賞。著書に『天下一の軽口男』『つわもの』『敵の名は、宮本武蔵』『戦国十二刻 始まりのとき』『応仁悪童伝』『剣、花に殉ず』『愚道一休』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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