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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784163909745
作品紹介・あらすじ
2018年の超話題作『極夜行』の“エピソード1”といえる、本番前に要した3年間の準備の旅。
2018年、ノンフィクション界の話題をさらった『極夜行』。太陽の昇らない冬の北極を一匹の犬とともに旅をし、4か月ぶりに太陽を見るという誰も真似できない大冒険を描いた作品でした。新作『極夜行前』はその名の通り、『極夜行』を完遂させるために要したプロセスを描いたものです。角幡さんは言います。何事にもプロセスが大事なんだと。本番の旅を迎えるためには3年の月日がかかりました。その間、毎年北極に行き、自分が計画している極夜の旅が実現可能なものなのか、様々な面から試行しました。いよいよ本番と位置付けた年の春~夏には、事前に自分と犬の食料や燃料をカヌーで遠くのいくつかの小屋に運びました。その過程ではセイウチ(海象)に襲われて危機一髪の局面もありました。この3年に何があったのかもぜひ皆さんに知ってもらいたい。そしてこの準備があったから『極夜行』が書けたのだということも。
『極夜行』と同様、一度読みだしたら止まりません。
感想・レビュー・書評
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今作品は前作「極夜行」の前日譚の作品になる。
一冬の極夜生活の為に要した準備期間が約三年、その過程と経緯が描かれている作品。この準備期間が無ければ「極夜行」はもっと過酷さを極めたのだろうが、準備そのものですら極めて過酷だなと思わされた。
自分の経営する居酒屋の常連さんにキャンプやフェス(フジロック、サマーソニック)等のイベント好きな方がいる。
その方も何事にも装備と準備と段取りが大事で重要だと言う。そしてその準備をしている時が一番楽しいとも言っていた。
最新性能の物や機能が進歩した物や新たな便利な物等々を色々ネットで調べ手にとってみて色々シミュレートし、自分にフィットしたものを選りすぐるその時間が何よりもとても楽しいらしい。
作者も今回の旅をプラニングする最中きっとそういう楽しい気持ちもあったのでは?と想像して読んでいた。
改めて「極夜行」「極夜行前」合わせて読んでみて、やはり極夜明けのその太陽がもたらしてくれた壮大な光が作者を鮮明に照らし2冊を執筆させ、それを同じなのだが別物に感じる太陽の下自分が読んでいるという不思議な感覚を味わっている。
とても同じ太陽だと思えないのは自分自身がその恩恵を知識として知っているだけで、身体の隅々まで骨の髄までしっかりと感じた事がないからだろう。
その時の太陽「御来光」は作者にとってたった1度きりの天の光だとつくづく思わされた。
そういう経験ができて凄く羨ましいと思う反面、いざ自分もとまでは到底思えない、初端から諦めている。
作者の企画力、行動力、感性、そして執筆力、その時作者が目にした太陽のように神がかっている神々しさを感じさせれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「極夜行」に至るまでのシオラパルクでの準備、行軍練習の記録。
1部:2012.12.18~2013.1.18 カナダケント半島からカナダビクトリア島ケンブルッジベイ 地図から
2部:2014.2.11~3.22 シオラパルクから内陸部に左回りで戻る。地図から。
p131 1.16にシオラパルクに着く。一日中明るくなることはなかった。同じ極夜でもカナダ・ケンブリッジベイとは様相が違う。比較的緯度が低いケンブリッジベイでは太陽が地平の上に顔をだすことはなくても近くまでは登ってくるため午前11時から午後2時頃までは昼間のように明るくなる。が、シオラパルクではそういうことはなかっ
た。
p132 文化的な面でもシオラパルクとカナダとでは大きな隔たりがあった。シオラパルクでは衰退したとはいえまだ伝統的な狩猟文化がまだしっかりと生活に根ざしている感じをうける。狩りに出る男たちはカリブーの防寒着や白熊のズボンを着こみ、各家の前には櫓がありそこに解体された海豹や海象(セイウチ)の肉塊が無造作に放り投げられている。
ここに伝統文化が残ったのは、南のメルヴィル氷河、東を広大な内陸氷床、西をエルズミアとの海峡と、周囲を突破不能な自然の障壁に囲まれ、グリーンランドの中でも陸の孤島として歴史的独自の文化をはぐくんできた。
p134 チューレ地区のエスキモーは19世紀中頃、ロス探検隊が立ち寄った頃には絶滅しカヤックを作る技術も失っていた。が、1850年代にカナダ・バフィン島のエスキモーがチューレにたどり着き、伝統文化を再び伝えた。
p136 現在のチューレ地区には、カナック(650人前後)、シオラパルク(50人)、ケケッタ、サヴィシヴィックといった集落がある。
p153 かつてシオラパルクには毎年春になると犬橇でイヌアフィシュアク(シオラパルクより北)まで行く家族が3家族ほどいて、ひと夏の間同地にとどまりカリブー狩をしていた。が1990年代中頃、政府によりそこをカリブー狩猟禁止区域に指定され、行くのはやめになった。
3部:2015.6.21~7.8、2015.7.22~8.31(カヤックで)、2015.8.16~8.21(徒歩ルート) 地図から
p222 現代の冒険は、先に物資を運んでおく~デポ はあまり肯定的にとらえられていない。が、しかしGPSなどで救助をしてもらう、ということが前提。これって矛盾か、と角幡氏はのべている。
p250 チューレ地区ののイヌイットは現代でもカヤックで鯨猟を行うが、シオラパルクの人だけはカヤックでなくモーターボートで猟をする。現地のイラングアさんに聞くと、「シオラパルクから北ではそれこそたくさんいる。湾から出たらもう海象だらけさ」との話。
p306
「待つ」ことの意味。 獲物、日の出、風、など
2部、3部 とも大島さんとはよく会って話を聞いている。大島さんからはウサギの毛皮25枚、大島さんの奥さんからは靴を、お金を払って作ってもらったとあった。
初出「オール読物」2013.8~11月号、2014.12--~2015.2月号、2016.4~8月号
単行本にあたり加筆修正。
2019.2.15第1刷 図書館
大島さんの記述があるページ
p125,p126、p127昨年3月にスミス海峡近くにまで猟に出かけた。白熊も多い。p147大島さんの地下毛皮保管庫には、ビニール袋に詰め込まれた兎の毛皮、柱に吊るされた狐の毛皮、何枚も積み上げられたジャコウウシやカリブーといった大型動物の毛皮があった。これは大島さんが自分で狩猟し化学薬品で鞣したもの。大島さんから兎の毛皮25枚を購入し、自分で毛皮服を縫った。奥さんには海豹の毛皮でカミック靴を有料でつくってもらった。ほかに大島さんから海豹(あざらし)のミトンを作ってもらう。
p156 イキナ氷河の登高ルートは大島さんから詳しく聞いていた。
p226 翌19日、氷河を登り切り氷床にあがると、白熊狩から村に戻る大島さんとばったり出会った。シオラパルクの人たちは伝統的に氷床を越えてアウンナットからイヌアフィシュアク一帯(シオラパルク北の海沿い)で狩をする。68才になる大島さんはこれが最後の白熊狩だと思っているらしく、橇には日本から取材にきた新聞記者が同行していた。首尾よくアウンナットで白熊1頭をしとめたようだ。・・プラス角旗氏のイヌアフィシュアクのデポにおいたドックフードが無くなっていたと知らされる。
三部
p247 デポを運ぶのに気象について大島さんに話をきく
。「こっちの人は氷が割れてからスミス海峡に行くようなことはしないね」
p249海象が船の下にもぐりこむ、と言う話を大島さんから聞いた話を思い出す。
p252 サビシヴィックで先日漁師が海象に襲われた事件について大島さんに聞くと、「氷の上から海象を銃で撃って、まだ生きているのに、カヤックで銛を撃ちに行った。60代のベテラン漁師だったんだけど、なんでそんなことしたのかねぇ」と話す。「襲ってくるのは若いやつ。人間でいえば何をするかわからないティーンエイジャーさ。・・まあ、気を付けるっていってもどう気を付けたらいいか分からないけどね」恐ろしい話なのに、大島さんはいつものようにとても楽しそうに話した。
p277 大島かんから英国体のデポは公共の小屋の隣の民家の入り口にあると聞いていた。(英国隊のメンバーと話をつけ使う許可を得ていた)
p338 9.23大島さんから旅行者でも狩猟の許可を取得できるかもしれないという話をきいて、カナック警察に電話をかける
p327 最近デポの食糧を勝手に食べる人がカナックの若い連中にいる。そこで大島さんに相談すると、白熊狩が始まる前にカナックの漁師組合に手紙を出して、手を付けないよう正式に計らってくれると約束してくれた。「カヤックで運んだんだからね。ヘリで輸送したわけじゃあないから。そんなのがなくなったら、たまんないもんね」その言葉には感謝のひと言しかなかった。
p351 日本に戻っていた。朝9時大島さんから電話。沿岸警備隊のシリウス、「彼らがこの前、シオラパルクにやってきてね、普段はここまで来ることがないんだけど。その際にアウンナットの小屋に立ち寄ったんだって。そしたらね、おたくのデポが白熊に食い荒らされていたみたいね」「名前かなんか残しておいたでしょう。シリウスの連中がそれを見て遠征隊のデポだって分かったみたいで、それで連絡したほうがいいんじゃないかということで教えてくれたみたいね」
最後の謝辞にはお世話になったかたの名前に、大島育雄の名前が一番最初に、次に山崎哲秀さん、と続く。 -
『極夜行』を読んだあと、ブクログユーザーさんよりこれも良いよ!とおすすめされたので。
一大イベントは準備も大掛かりなのだな…と此方のほうが面白く読めたかも。
相棒の犬・ウヤミリックの出会いの話も良かった。ただ、日本の日常と違う文化や状況とはいえ、暴力の描写は辛かった…厳しい世界です。
でも未知の世界への広がりを知れる良い本だった。寒いのが苦手な自分はいかない世界だけども…。
おすすめ頂けて良かった、ありがとうございます! -
冒険家として文明機器は使わない。星で位置を確認し連絡を断つ自力で歩いて極寒に身を委ね死と隣り合わせなのは本当にすごいの一言。
こういう体験談が好きでのめり込んでしまう。 -
極夜行とカブる文章が散見されるのがご愛嬌だが、相変わらず彼ならではのパワーと努力には脱帽。
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1日中太陽が昇らない「極夜」の北極を
単独で、GPSも持たずに、星の位置から
自分の位置を導き出す「測量」で、横断
を果たした内容を綴ったノンフィクショ
ン作品「極夜行」の前日談です。
当然、測量方法の技術習得や、ソリを
曳く、犬の調達、さらに中継地点のデポ
への食料蔵置など、何日もかけて準備
する姿は素晴らしいです。
決して無謀な冒険ではなく、入念な準備
の上で成し遂げられた探検であり、それ
でも過酷な行程であったことを思い知ら
される一冊です。 -
冒険者・・・それは変態だ。
こんな生活、どうやって無理だー。
でも、人間が体力・経験値ともにフルで活動できるのは、
30代後半から40代前半だというのは、分かる。
その間に、どんな働きができるか。
自分自身を試してみたいんだろうなぁ。 -
数カ月間、太陽が昇らない暗闇の氷の世界、北極。そんな土地を、GPSや衛星電話、地図、コンパスなど文明の器具を使わずに旅をしたい。結婚し、娘も生まれたばかりで、こんな決断をすることにあきれつつも、著者の冒険心に感動。世界の果てを見たいという若い頃からの思いが著者を動かす。
本書は、極夜への冒険を目前に控えて、様々な準備に四苦八苦する著者の行動の記録。ちなみに本番の極夜記は本書より前に発表されている。
まずは何度も現地を訪れて、準備および旅のシミュレーション。現代の最先端ツールを自ら禁じたため、方角と現在地を知るために六分儀の使い方を学ぶ。荷物を運ぶための橇を木材から自作し、その橇を引っ張る犬を調教。現地で狩猟して、干し肉や毛皮を作ったり、旅の予想コースに物資を先行配置しておく。
冒険前の準備だけで、相当な見せ場だらけで、過酷な現場。カヤックに乗っていてセイウチに追いかけられる。貯蔵していた食料を盗まれる。動物愛護団体が絶句しそうな犬への調教もある。本番前に遭難しそうなエピソードばかり。
そんなこんなで準備完了、あとは極夜の時期を待つだけ。しかし、その直前に意外な展開。ここからどうやって「極夜行」につながるのだろうか。そんな疑問を感じながら、本書は唐突なエンディング。 -
『極夜行』の準備期間の数年を描いた一冊。『極夜行』の中で、折に触れて登場する、準備期間のいろいろな検討や事件などが詳しく記載されていて楽しいです。
また、『極夜行』は基本的に単独行だったけど、こちらのほうはタッグを組んで旅をしていたり、シオラパルクの人たちとのいろいろなやりとりもあったりして、それも楽しいところかなと思います。
『極夜行』を読んだ後だから楽しめる部分も大きいと思うけど、『極夜行前』を読むとまた『極夜行』を読みたくなります。どっちから読んでも結局はとても面白いと思います。 -
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極夜行は数年前に読了。古本屋で本作を見かけたので読みました。
前作でさっくりと語られた六分儀による天測や、犬の躾、デポの様子がよくわかります。個人的にはこういう前段階の話のほうが好きだったりします。前日譚っていいよね。
2章の犬との旅のところはちょっとしんどいね。隠しておきたい後ろめたい事を書籍にきちんと書けるのはすごいが、読むのをやめたくなるくらいのインパクトはありました。
極夜行を読み返したくなりました。
出来るなら自分も猟や極地の生活を少ししてみたいなぁ。 -
極夜行の前日譚。苦労して六分儀を使いこなし、デポを設置していくのだが、当然様々なトラブルが発生する。
自分で装備を手作りをし自分でデポを運ぶ。それによる拡張感、憑依感は実際に行ったものにしか味わえない感覚だろう。こんな感覚を味わってみたいと思う。 -
2021年4月11日読了。
その名の通り、「極夜行」への準備を綴った本。
Amazonで買った六分儀を手にカナダ極北で、極夜を体験し、本番の「極夜行」の舞台を決め、グリーンランドのシオラパルクに行くこと数回、極夜行に向けて、食糧をデポしながらルート調査を行う。
「極夜」とは、冬の間太陽が出ないことを意味し、よく聞く白夜の逆である。
真っ暗な中、GPSを持たず天測で自らの位置を測り、全てをおいて自己の責任で探検する。
19世紀の探検家に近いかたちの探検だ。
何年にも渡り、膨大な準備をしたにもかかわらず、本番の開始時期にトラブルが発生するのは読んでのお楽しみとしておこう。
「極夜行」は数年前に読んだのだが、本作を踏まえ再読してみたくなった。 -
太陽が一日中出ない場所で、極夜に入ってから旅を始め、太陽が出るまでの数ヶ月旅をし続け、太陽を見ると言う途方もない旅をするための、"下準備をしている"ノンフィクションの小説。
詳細は下記。
https://note.com/t06901ky/n/nce1c3c5bf7ba -
「極夜行」の前、準備段階ノンフィクション。一日中日が差さない極夜を、GPSなし衛星電話なしの状態で旅しようとする。自分がいる場所は、六分儀で測り、移動は犬橇で。
星の位置と水平線によって自分の位置が分かる六分儀。今一つ原理は分からなかったけれど、こんな原始的なものを使うことの大変さは分かる。
犬橇用に選んだ犬と練習に旅するがうまくいかない。その過程で犬に暴力をふるってしまった。そのことを隠さずに書くのは勇気がいるだろうし、読んでて心が痛む。
興味がない人には全く面白くないだろうけれど、私のような「自分では探検しないけれど、探検するハウツーには興味がある」者にはとても面白かった。 -
六分儀で迷子編、犬を育てる編、カヌーでデポ準備編からなる冒険準備譚。当たり前といえばそうだが、本番より時間と労力がかけられているのだなあと思った。
六分儀を画像検索したら、テレビの海洋ドキュメントか何かで見たクラシックなものが現れた。いまだにこういった道具を提供できるメーカーがあることも驚きだった。 -
極夜行の話をだいぶ忘れたので、その前と言われてもあぁと思う部分もあったりなかったり…
でもいろいろと準備するのも大変だったんだなぁと思ったし、それも楽しめるからこそやれるんだよねこの人は…
文才があるから、すらすら読めるのもある
ところどころ想像できない景色もあるけど、極夜見てみたいなぁと思わせる
行かないけど -
極夜行に行く前の準備段階での六分儀、犬の手配、犬と一緒の夏の極地体験での犬との駆け引きなどが実に面白い。海象なる怪物との出会いと、必死の逃避行は凄い迫力だった。カヤックでのデポ拠点への物資補給も済ませ、いよいよ極夜に出発という前に、デンマーク政府からの入国期限切れ、国外立ち退き命令は急に現実に戻されたよう。実は今や全くの未開地なるものは存在しておらず、その中で探検もスポーツになってきている。それに抵抗している著者の意気込みが凄く分かる!
著者プロフィール
角幡唯介の作品
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