渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909875

感想・レビュー・書評

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  • あまりなじみのない全編通しての関西弁に最初は戸惑いつつ、読み進めていくうちに慣れました。

  • 操浄瑠璃の世界に魅入られた 人間たちの物語と思いながら上方のことばも楽しく読み進めると、芝居の世界も道頓堀よりまだ広く深い人間世界の有象無象の中かから生まれて、読んでいる自分もまた取り込まれていくようだった。

  • 流れるような関西弁の文体に飲み込まれるかのように読みました。
    浄瑠璃や歌舞伎などの世界の根底に流れているものに、魅入られ渦に巻き込まれていく人々の生き様を感じたような気がします。タイトルの「渦」の意味にも納得しました。

  • 近松門左衛門や曽根崎心中は有名だが、近松半二や妹背山婦女庭訓なるものは、フィクションだと思い込んで読み進めていたが、やけにリアルだなと思い、調べてみたら実在の人物であることにビックリ。
    歌舞伎は表現する演者とストーリーで評価が決まるのに対して浄瑠璃はほぼストーリーが重要だと思う。
    だから同じ古典であっても歌舞伎は今なお進歩しているが、浄瑠璃は無形文化財として生き残っているに留まる、ように思う。
    でも現代の映画と同じような位置付けだから、新作を生み続ける作家は大変だったろうな。

  • 近松門左衛門の硯が、きっかけとなり、芝居小屋に入り浸る事になる近松半二。
    歌舞伎、操人形浄瑠璃。
    一つの作品が出来上がるまでの情熱。
    それは一つの渦となり、世界を尚も広げてゆく。
    まさに傑作。

  • 今年の五月,国立劇場で妹背山婦女庭訓をみたとき,プログラムに大島真寿美さんが一文を寄せていて,この小説を知った.直木賞受賞後に読む機会が巡ってきた.
    妹背山婦女庭訓の作者近松半二の一代記.芝居狂いだった少年時代から,浄瑠璃作者になって,代表作,妹背山婦女庭訓を書き上げる.三輪の酒屋に嫁いだお末が第4段のお三輪になって蘇るエピソードは秀逸.そういう意味では妹背山を見たことのある人の方が楽しめるだろう.

    同じ著者の「ピエタ」を読んだ時も思ったが,小説になりそうもない人物を主人公にして,ちゃんと小説にしてしまうのがおもしろい.

  • 星5つでは足りまへんな。

  • 人形浄瑠璃作家、近松半二の生涯が描かれています。浄瑠璃は見たことがないのですが、浄瑠璃でなくても自分が好きなものがあれば、半二のように浸かりきりになるときの気持ちはわかります。半二が魅せられ、なくては生きていけないほどのものとはどんなものなのか、見てみたくなりました。人形だからこそ、“見ようによっては生身の人間よりも人間らしい(p13)”ということも、あるんだろうなあと思います。

    『妹背山婦人庭訓』を半二が生み出していくところは、情熱を感じて、私まで熱い気持ちになりました。当時客席にいた若い女性たちの性根と繋がっているお三輪は、今でも素敵な女性なのでしょう。

  • 江戸中期、人形浄瑠璃と歌舞伎か巷の人気を奪いあってた道頓堀。
    主人公は、父親に連れられて竹本座に出入りするうちに近松門左衛門に可愛がられた穂積半二。地味な主人公だけに、前半は多少かったるい感もあったが、「妹背山婦女庭訓」メイキング辺りは圧巻。モノ作りの冥利だわー。
    「伊賀越道中双六」「奥州安達原」「新版歌祭文」、丸本物だった。いずれも歌舞伎バージョンしか知らない。半蔵門の読書会に通ってた時代に国立劇場へ観に行けば良かったな。

  • 文楽、人形浄瑠璃、操浄瑠璃、漠然と「知ってはいる」その世界。
    そういえば確か金沢かどこかに旅行に行ったときに、一人で演じる人形浄瑠璃を見た覚えが…
    歌舞伎より歴史が古く世界文化遺産にもなっている、日本古来の演芸。それくらいの乏しい知識で読み始めたこの物語。
    いやぁ、もうどっぷりと浸ってしまいました、なんとも深く魅力的なこの世界に。
    浄瑠璃に魅せられた一人の男の、人生の物語であると同時に、これは「おんなを小さな世界に閉じ込め縛り付ける世間」や「おとこの身勝手さと生きざま」や「芸に魅せられる恐ろしさとその奥深さ」も描いている。そういう部分がこの物語に奥行きとなっている。
    ここだけど取り上げるともっと暗く重くじっとりとした物語になりそうなのに、なのに、なのに、どうだろう、この軽やかさは。
    会話や物語の展開のテンポの良さ、人間関係の深さとその強さは、もうなんというか、大島節とでも言おうか。
    大島さん自身が、楽しんで書いているのがよーくわかる。だから読んでいる方も、ものすごく楽しい。わくわくするのだ。
    道頓堀の浄瑠璃作者、近松半二が歌舞伎よりも上をいく物語を、今よりもっと素晴らしい物語を、と苦悩する姿も、なんというか、悲壮感がなくて楽しそうにみえる。いや、みんな命を削って物語をつむいでいるのだろうけど、それでもなんだろう、自分も同じようにその仲間に入りたくなってしまう。貧乏長屋に暮らしながら、あーだこーだと頭突き合わせて練りに練りたいね。
    いや、でも絶対に無理だ無理だ。物語ってそんなに簡単に生まれるものじゃない。
    物語を紡ぎ出すのは誰にでもできることじゃない。なんだろう、どうやってどこから物語は生まれてくるのだろう。
    近松半二が浄瑠璃の傑作「妹背山婦女庭訓結び」を紡ぎ出す途中で現れた「お三輪」の存在って、もしかすると大島さん自身にもあるものなんじゃないか、って気がする。
    自分の中にある「誰か」が自分とは別の視線でもって物語を紡ぎ出す。そんな経験が大島さんにもあるんじゃないんだろうか。
    なんて思いながら読むとわくわく感も一層増してくる。
    はぁ、しかしなんだろう、この読後感の良さは。
    とってもいい物語を体験した、そんな気になる。満足感に浸れる一冊でした。

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著者プロフィール

1962年名古屋市生まれ。92年「春の手品師」で文学界新人賞を受賞し同年『宙の家』で単行本デビュー。『三人姉妹』は2009年上半期本の雑誌ベスト2、2011年10月より『ビターシュガー』がNHKにて連続ドラマ化、2012年『ピエタ』で本屋大賞第3位。主な著作に『水の繭』『チョコリエッタ』『やがて目覚めない朝が来る』『戦友の恋』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など。2019年『妹背山婦女庭 魂結び』で直木賞を受賞。

「2021年 『モモコとうさぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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