レオナルド・ダ・ヴィンチ 下

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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910000

感想・レビュー・書評

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  •  上巻があまりにも興味深い内容だったため、下巻も読みました。結論としては下巻も最高の一冊でした。今回も上巻に引き続きレオナルドという天才に近づくためにレオナルドがどんな性格だったのか、どんな人間だったかを注目して読み進めました。  
     レオナルドといえば芸術家であるイメージがあるかと思いますが、レオナルドは絵画でしか評価されない状況を嫌いフィレンツェからミラノへ拠点を移しました。また、お金を積まれても興味がなければ絵を描かなかったそうです。大きな才能を持っていてもそれに縋るのではなく、本当にやりたい事をやり続ける。ただお金のために絵を描き続けるのではなく、より良い絵を描くために生物の構造を学び、水の流れを研究し、解剖を続ける。本当の意味で学びが好きな人物であると改めて実感しました。  

     また、上巻で十分数多くの学問において才能を学んできたつもりでしたが、下巻ではこれまで知らなかった分野についても秀でていたことが学べました。さらにレオナルドは〇〇という考え方、概念がない時代にこれを作りだす天才、つまり0から1を生み出す天才であると感じました。コペルニクスやガリレオより早く地球が平坦でないと考え、微積分がない時代に連続量を扱いました。そして化石をもとに地層の研究を行う生痕学の祖であったというから驚きです。生痕学が主流になるのはレオナルドの死後300年後であるため、例えるなら、江戸時代にAIの研究をしていた商人がいたようなものだと私は考えました。  

     最後に、私は本書を読み進めるにあたり、ただレオナルドの歴史を学ぶのではなく、自分がレオナルドに近づくには何をしたらいいのかを主軸にしていました。本書の最後にはレオナルドに学ぶべきことが20個ほど述べられています。人類史の中でも指折りの天才から学びを得れる。本書は私がこれまで読んだどの書籍よりも説得力がありました。

  • 下巻は上巻からの引き続きでミラノからのスタート
    このあとレオナルドは
    ミラノ→フィレンツェ→ミラノ→ローマ→フランス
    と移動し、最後はフランスで生涯を終えることになる
    順次追っていくことにする

    ■ミラノ公より『最後の晩餐』の依頼
    公開制作となった
    相変わらず夢中で作品に没頭したかと思えば何も描かず絵の前まで考え込む…
    という姿をも公開(笑)
    絵の大きさ及び部屋のさまざまな位置から見られることになることを想定し、自然な遠近法と人工的な遠近法を組み合わせ、宮殿での舞台演出家として培った知恵や創造性とか補完し合う作品に 
    ~現物を見たことある日本人の方は多いですよね
     残念ながら教会内に入っておらず…(いつか必ず!)

    ■50代でフィレンツェへ
    美しく着飾り、伊達男としてふるまい、人とと違う生き方を心がけた
    自分とサライの衣装にお金をかけていた模様(この頃サライは24歳)

    常に誰をパトロンとすべきか、いつ乗り換えるべきか巧みに判断していたのでは…
    また俗事に頓着しないようで、実は権力に惹かれるところがあったようだ
    この頃軍事技術者かつイノベーターとして残虐なチェーザレ・ボルジアに仕えるものの結局チェーザレの残虐さに嫌気を指す
    また20年以上も軍事技術者になることを夢見てきた(平和主義思想で不和や戦闘はごめんだと言っているのに、武術に興味があるという葛藤)
    画家に飽き飽きしている時期か

    そして…
    vsミケランジェロ
    1500年頃のフィレンツェに二人は居た!
    ミケランジェロ25歳
    レオナルド48歳
    不仲(有名ですね)
    ☆ミケランジェロの人となり☆
    ・人を侮辱して顔面殴られ鼻が潰れる
    ・猫背で垢抜けない身なり
    ・他の芸術家に敵愾心を燃やす
    ・病的なほど内向的
    ・激しく、だらしなく、癇癪持ち
    ・親しい友人や弟子は少ない
    ・敬虔なクリスチャン
    ・同性愛であることを悩んでいた
    ・格好も振る舞いも禁欲的
    見事に対照的な二人である
    自然な魅力、優雅さ、洗練、親しみやすい物腰、美しいことを愛する心持ち、そして無宗教であったレオナルドをミケランジェロが嫉妬し、嫌悪するのは当然

    レオナルドのミケランジェロに対する批判
    ・人の裸体を優雅さのかけらもない材木のように描いている
    ・体のすべての筋肉をはっきり描きすぎだ
     (若きミケランジェロが男性の体に夢中であるのとがわかる)
    ・絵が彫刻的ではっきりとした線を使って形をとらえている

    ~ミケランジェロの人物像を初めて知ったので結構驚いた!
     作品から勝手なイメージできちんとした品のあるタイプかと想像していた(でも確かに潔癖な感じは出てるかも)
     この性格から相当な葛藤や迷いや悩みを抱えながら作品に取り組んだのだろうと思うとなかなか感動的ではある
     それにしてもレオナルドとあまりにも対照的で面白い

    ■ミラノへ
    なぜ戻ったか
    ・華やかで知的多様性がある
     知的環境が整っている
    ・フィレンツェはルネサンスの芸術の中心地
     絵画でしか評価されない有名画家としての人生から逃れようとした?
    ・自分を訴えてくる腹違いの兄弟もいない(非嫡出子の悲しき運命)

    ミラノ滞在中
    レオナルド55歳頃
    フランチェスコ・メルツィ14歳の美少年を養子に
    レオナルドが亡くなるまでそばに居た
    才能と事務処理能力に恵まれ、情緒も安定していたフランチェスコは、レオナルドにとって大切な存在

    〜良かったぁ
    サライでは平穏な日々が過ごせないんじゃないかと心配していた だってもう55歳!
    残りの人生、そろそろ家族とか作って穏やかに暮らしたいはず!

    再び解剖への情熱
    病院で言葉を交わした100歳の男性が亡くなり、解剖
    動脈硬化の発生プロセスを発見
    防腐剤のない時代、一晩中遺体と向き合うにあたっての解剖をしようとする人々への注意書きなんかがある(腐敗していく遺体と向き合うって、かなり苦労しただろうなぁ)
    唇と微笑を研究(ここからあのモナリザの微笑みが誕生)

    ■新天地ローマへ
    ここでも絵筆を握ろうとしない
    ドイツ人との諍いや、取り巻く環境の変化からローマを離れる

    ■64歳にしてイタリアを離れ、最後の地フランスへ
    フランス王フランソワ1世に口説かれる
    フランソワ1世は、カリスマ性と勇気を持つ人物
    教養と良識を持ち合わせる
    貪欲に知識を求めその関心の広さはレオナルドに匹敵するほど
    フランソワはレオナルドにとっても完璧なパトロンだった
    心からレオナルドを尊敬し絵画を完成させろとせっつく事はなく、工学や建築の研究にのめり込むのを温かく見守り、心地の良い住まいを与えて定期的に報酬を支払った
    この年になってようやくパトロンから認められ、安住の地に腰を落ち着けることができた
    その頃36歳となったサライとは別れる
    67歳で亡くなる

    ~フランソワ1世からとても厚遇を受けたようで本当に良かった
    今までなかなかパトロンから認められ、定期的な収入を得られていないようだった
    (まぁ仕事もコンスタントに完了させていないレオナルドが悪いんだけど…なかなか先行投資できないよね)
    フランソワとはお互い尊敬しあえる相思相愛的な良い関係だったよう
    64歳で異国に行くって結構大変なことだよなぁ(今の64歳とも違う気がするし)
    でもそこで良い待遇をうけ、何人かの弟子や養子にしたフランチェスコ・メルツィと立派な居住で安泰に暮らせたのではなかろうか


    ■モナリザ
    リザ・デル・ジョコンド
    ・家族ぐるみの付き合いのあった絹商人の妻
    ・もちろん美しかったと思うが、ただ単純に描きたいから描いた作品では?説
    ・あくなき好奇心、あるテーマから別のテーマえと絶え間なく変化し続ける探究心が統合されている
    ・科学的知識、画家としての才能、自然への尽きない興味、人間心理への洞察の全てがあまりに完璧に調和しているので、一見すると気づかないほどだ
    ・風景がリザの体に流れ込むようなイメージは、レオナルドの好んだ地球と言う大宇宙と人間と言う小宇宙のアナロジーの究極の表現
    ・風景は生きて呼吸をし、地球の体を表している 川は側はその血管であり、道は腱、岩は骨だ
    地球は単なる背景ではなく、リザの体に流れ込む
    ・見つめられた気分になり、しかも衣装が揺れ動く
    ・空間周波数の高い画像より低い画像の方が微笑ははるかに鮮明に見える
     口元をじっと見るより視線をわずかにずらし他の部分を見ると目の端で口元をとらえることになる
     口元を直接見ていない方が微笑んでいるように見える
    ・モナリザの微笑は捉え難くはあるが、時を超えた英知をたたてている
    ・その症状は人間の内なる自我とのつながり、そして宇宙とのつながりを見事に表現している
    ・見るものが彼女と感情的つながりを感じる
    ・見るものに複雑な心理的反応を引き起こし、自らも同じように複雑な感情を見せる
    ・我々鑑賞者と自分自身を意識してるように見える
    ・我々の内なる営みの外面への表れについて、また我々と宇宙とのつながりについて、レオナルドが蓄積した英知が凝縮された普遍的存在となった
    ・人間とは何かと言うレオナルドの深い洞察を体現している

    ~「モナリザ」を自由に心ゆくまで観ることなんて一般人では無理だろう
     ルーブルの人混みから窮屈な姿勢でなんとか数分観ることができるのがせいぜい
     上記のような観点でじっくり観るのは普通は無理
     1回しか観ていないけど、思った以上に小さく、思った以上に美しかった覚えがある 
     こちらの本でもカラーで「モナリザ」が載っているが、確かに唇を直視せず、他へ視線を移した方が微笑んで見えるのはわかる
     過去に何度でも「モナリザ」の素晴らしさや、価値を聞いたり、読んだり、TVの特集で見たりはしているものの、自分にはさっぱり理解できない
    上記にまとめたことは言っていることはわかるのだが…
    そう「モナリザ」の凄さを知りたいのもあって、この本を読んだのだが、まだ現段階の自分には残念ながら無理らしい
    いつか何かわかるようになるといいな…と楽しみにはしている


    ■最後に著者による「レオナルドに学ぶこと」
    ・飽くなき好奇心を持つ
    ・学ぶこと自体を目的とする
    ・子供のように不思議に思う気持ちを保つ
    ・観察する
    ・細部から始める
    ・見えないものを見る
    ・熱に浮かされる
    ・脱線する
    ・事実を重んじる
    ・先延ばしする
    ・「完璧は善の敵」で結構
    ・視覚的に考える
    ・タコツボ化を避ける
    ・届かないものに手を伸ばす
    ・空想を楽しむ
    ・パトロンの為だけでなく、自らのために創作する
    ・他者と協力する
    ・リストを作る
    ・紙にメモを取る
    ・謎のまま受け入れる



    なかなかのボリュームだった
    途中で挫折したらどうしようかと不安だったが、読み出せば進むし、暫く離れて再開しても特に問題ない
    意外と気楽に読める内容であった
    とにかくレオナルドダヴィンチを残されたメモから徹底的に洗い出す
    というのが特徴的な内容
    カラーのレオナルドのメモや絵が多数あるので、視覚的にも楽しめる
    レオナルドの落書きなんかもあって人間くさく面白い
    まだまだ解明されていないこの不思議な天才のことは今後も多くの方面から研究され続けるだろう
    楽しみである

  • 好奇心、観察力、
    そして、未完成で終わった絵画、発明、研究書....が
    ダ・ヴィンチらしさ。
    未完成なのはまだまだ変わっていくものだと考えていたのだと思う。

  • 下巻はいよいよ最後の晩餐とモナリザが出てくる。有名な絵画だが知らない事が沢山。前にも思ったが、完成させた作品は少なかったかもしれないけど、一点でも素晴らしいものが残れば後世に名は残る。その時点ではだらしないとか評されるかもしれないが。この時代でもマキャベリやミケランジェロと同時代で交わっている。才能が集まった時代なんだな。スティーブジョブスはレオナルドが好きだった。だから書いたのかな、著者は。デカプリオによる映画化も楽しみ

  •  図書館の新着図書のコーナーでたまたま下巻が残っていたので迷うことなく借りた。
     レオナルド・ダ・ヴィンチの人間性がとても良くわかった。彼はモナ・リザ(ラ・ジョコンダ)を手元に置きながら最後まで加筆していたという。また、この時代に独学で解剖を行い緻密な解剖図を残したり、水の流れなどの自然を科学的な視点で理解しようとする科学者全とした我々が良く知る彼がいる。
     一方、最後の晩餐(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院、ミラノ)やアンギアーリの戦い(ヴェッキオ宮殿、フィレンツェ)では、彼が独自の手法を追究するあまりにフレスコで描くことを避けた結果、絵の本来の保存性が損なわれてしまったり、書きかけで完成しなかったりと合理的でない面も見られる。
     初めて知ったのだが、彼はローマ教皇の息子であるチェーザレ・ボルジア枢機卿の軍事技術者として招聘されたという。本当に多彩な能力を持った巨人である。

  • 圧倒的な好奇心が成せる天才の技。ただ、近しいことは先人や同時代の人も考えており、歴史はつながっている、ということと、融合しあって創発されていくもので、1からすべてを創ったわけではないことが学び

  • 圧倒的好奇心で広範な知識を得ること、そしてそれを幅広く活用することは本当に見習いたい。レオナルド、ステキな人だと思った。最後の晩餐、モナリザはこの本を読んだ後は見方が変わる。伝記の面白さをあらためて知ることができて嬉しい

  • 上下巻通読。ダ・ヴィンチへの関心より、ジョブズ評伝を書いた人の作品という理由で読んだが、期待をまったく裏切らない内容。ダ・ヴィンチという有名人(の魅力)を自分はいかに知らなかったか気付かせてもくれる。彼の作品や事績の分析や評価は勿論、その基礎となった自筆ノートを本編の軸としているのが特徴。ダ・ヴィンチの発想や声や感情が直接伝わってくるのと、その圧倒的な奥深さと範囲とボリュームに読者が存分に浸れるのは、橋渡し役である著者の力量の賜物(またこの自筆ノートの全邦訳版があるなら是非見てみたい)。天賦の才能を高みに押し上げたのは、無尽蔵の好奇心と、緻密極まりない観察力で、絵画にも解剖にも力を発揮した手技(実技)と集中力がそれを支えたと思しい。本書で何度も指摘されるように、物事を完成までこぎつける執着心は欠けていたが、その分多方面へ視点が行き渡ったり、未完成ゆえに後の改善の余地を常に残したとも言え、根気の無さも善し悪しなのだろう。巨人ダ・ヴィンチを語る上で決定的と感じたのは紙の存在で、この手軽な記録媒体が存在しない又は高価な時代に彼が生まれていれば、湧き出る思索やアイデアを書き留め、それを反芻することも発展させることも適わず、後世の我々がその凄さを知ることすら出来なかった。彼が大変な才人だった事は確かだが、人類史にはそれに比する知られざる大天才が過去何人も居たに違いない。本作品と関係なく惜しまれるのが、原書と異なり、表紙をモナリザにした為、「ダ・ヴィンチコード」と見分けがつきにくい事。クオリティの高い本書が亜流扱いされかねず(自分は最初そう思った)、出版社の大きなミス。

  • 『最後の晩餐』はいかにもレオナルドらしい科学的遠近法と舞台のような自由な発想、知性と空想の融合した作品と言える
    『聖アンナと聖母子』で最も重要な点は、レオナルドの芸術を貫く主要なテーマである、地球と人間との精神的つながりと類似性が表現されていることだ
    絵画が得意なレオナルド、彫刻が得意なミケランジェロ
    人間の血管網は、オレンジのそれと同じ性質を持つ。つまり古くなるほど、皮が厚くなり、果肉は薄くなるのだ
    山から水が湧き出る原因は何か、なぜ谷が存在するのか、月が輝く原因は何か、化石はどうやって山頂に達したのか、水や空気の渦が発生するのはなぜか。そしてレオナルドを象徴する問もある。なぜ空は青いのか

  • 他に読みたい本がたくさんあってずいぶん間が空いてしまったけど、やっと読了した伝記の下巻。
    レオナルド・ダ・ヴィンチの名を不朽のものにした代表作「最後の晩餐」と「モナリザ」の製作工程と魅力、なお残る謎について述べられていて、上巻より興味深かった。
    最終章の第33章は余分だと思うが、歴史に残る天才でありながらどこか親しみを感じさせるレオナルドへの、著者の情熱と共感は伝わってきた。

著者プロフィール

ウォルター・アイザックソン【著者】Walter Isaacson
1952年生まれ。ハーバード大学で歴史と文学の学位を取得後、オックスフォード大学に進んで哲学、政治学、経済学の修士号を取得。英国『サンデー・タイムズ』紙、米国『TIME』誌編集長を経て、2001年にCNNのCEOに就任。ジャーナリストであるとともに伝記作家でもある。2003年よりアスペン研究所特別研究員。著書に世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』1・2、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』上下、『ベンジャミン・フランクリン伝』『アインシュタイン伝』『キッシンジャー伝』などがある。テュレーン大学歴史学教授。


「2019年 『イノベーターズ2 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウォルター・アイザックソンの作品

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