百花

著者 :
  • 文藝春秋
3.56
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本棚登録 : 921
レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910031

作品紹介・あらすじ

「あなたは誰?」息子を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子。ふたりには忘れることのできない“事件”があったーー。現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』の著者、待望の最新刊!【内容紹介】大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく日々の始まりだった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても忘れることができない出来事があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすーー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。

感想・レビュー・書評

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  • 『百花』川村元気さん
    1.出会い
    世界から猫が消えたなら
    億男
    四月になれば彼女は
    理系に学ぶ
    と読んできました。
    好きな作家さんのひとりです。

    2.百花を読み終えて
    どの小説とも違う読了感です。
    題材が、高齢に伴うアルツハイマーだからであるかもしれません。
    いえ、最後に記載ありますが、川村さんの祖母との思い出、歩みを想いながらの執筆だからかもしれません。

    近くの人。
    愛する人。
    その人がアルツハイマーになったとき、周りはどのように受け止めていくのか?
    そして、その人が願う、最期かもしれない願いにどのように寄り添えるのか?

    遠くに離れていたら、やはり、進行に気づけないのかもしれません。
    また、本人は、認めたくないために、声もあげないのかもしれません。

    そして、忘れるのは、その当人だけではなくて、周りの人たちも、少しずつ大切な何かを失っているのかもしれません。

    だからこそ、今を生きる。
    この一瞬を一遇として生きる。

    そんな想いになりました。

  • 川村元気という人をあまり知らない。
    「億男」からの2冊目
    題名と、本の美しさに惹かれて
    借りたもののなかなか読む気にならなかった。

    本にはいつも白紙で向き合う〜
    読後中村元気の肩書に驚き

    映画監督、脚本家、絵本作家
    はたまた題名を知っている作品多々。

    アルツハイマー
    最近このテーマが多くない?
    葛西百合子「母」
    葛西泉「息子」
    だんだん母が若くして認知症になる

    認知になる症状のリアルさに
    恐ろしく、悲しかった。

    泉の好きな味噌汁を作ってるよと
    そこには鍋の中には広告だとか紙がちぎられ
    お味噌汁の具になっていた。

    これだけではなく、
    ネタバレになるので書けないが
    シングルマザーで誰にも頼らず
    ピアノ教師をしながら生きてきた百合子に起こったことがあるー
    このことを自分は許せなかった、

    息子の泉が許して生きてることをーどうしても
    許せない。自分の潔癖性、真っ直ぐすぎる
    融通のつかないところ。
    本を通して自分の狭さに「なんだろう〜」と傷ついた。

    作品はよくできてる
    さすが変化に、テーマに
    泉自身が親になることへの戸惑い。

    しかし、器用に作られてる
    うますぎることにもう一つ信用できない?
    他の作品をまだまだ読めばわかるのだろうか
    出来過ぎ感が否めない。
    器用にこなしてる。
    映画やテレビにすればおそらくヒットするだろう〜
    この不信感はなんだろう〜
    いつか
    この思いに詫びる時があるのかないのか?

    本文よりー
    医者が言うには
    もともと50年も生きることができなかった人間が
    長生きするようになって
    ガン患者が出てきた
    ガンが治せるようになりさらに長生きできるようになったら
    アルツハイマーが増えた、どこまでいっても、人間はなにかと戦わなくてはならないんです。」

  • 認知症の母と息子・泉。母認知症で全てを忘れてゆく、息子さえも。泉は母との思い出を掘り起こす。
    いくら自分がそうなりたくないと思っていても、否応なく記憶を消してしまうかもしれない。泉にとって母にとって辛い出来事があったとしても、最後まで二人は親子でした。自分にも訪れるかもしれない結末。誰にでもあるであろう物語。実際認知症の方と生活を共にするのは大変ハードなことと思いますが、こちらは愛を主軸に書かれたもので、親子の愛に満たされました。楽しいことばかりではなく、辛いこともあったし、でも親子にはしっかりとした絆がありました。そこに自分自身のことと重なり心が揺さぶりますね。この物語では、花火のところが印象に残ります。忘れるから素敵である、か。哀しいね。

  • 母と息子の母子家庭、ピアノ教師してた母と今は音楽産業に携わる息子だが68になった母は少しずつ認知症が出始め壊れはじめ、息子は新米の父になろうとしている。
    そんな二人の辿ってきた道と歩んで行く道を静かに対比させながら、甘酸っぱくほろ苦かった母子関係を柱に物語が進む。静かでゆったりしたピアノ曲小品のような作品。
    衝撃的だった あの有吉佐和子の「恍惚の人」から遥かな時を経て、令和の今版「恍惚の人」は主人公も背景も社会状況も様変り ですねぇ♪

  • 人間の寿命は50歳程度であった。それが医療の発展で長生きできるようになると、癌という病気が人間を襲った。それでもまだまだ抗うと、痴呆が生まれた。すごく印象的だった。人間の歪さを感じた。自分の母親がアルツハイマーになることを想像してしまい、心が握り潰されそうになった。いつか、そういう日が来るのだろうか。そのとき自分は、どう感じ、何を考えるのだろう。この小説の特徴的なところは、アルツハイマーと出産を並行して描いて、記憶の生まれるところと消えていくところを表現しているところだ。なんかそれは、生と死よりも妙に人間臭い営みな感じだ。でも、母親がアルツハイマーで記憶が薄れていく以前に、泉がそうであったように、自分だって母親との記憶のいくつを忘れているんだろう。もっと、母親と話そう。今のうちに。今だからこそ。

  • 冒頭からヒヤッとする予感。
    老いる恐怖。いずれ自分もこうなってしまうのだろうか、という恐れを感じながら読み進めた。

    うちも息子が1人。百合子のような境遇ではないけど、息子に迷惑をかけたくない気持ち。

    泉と百合子の関係はれっきとした親子だけど、1年間空白がある。短いようでも心の中には大きな1年だと思う。

    なんか考えさせられるな~
    凄くいい小説だと思う。きっと忘れられないかも。老いが目の前にある身として。

  • 初読

    69歳の母がアルツハイマー認知症になる、
    という話なのだけど、
    綺麗過ぎるかな〜という部分は無いわけじゃないけど
    忘れゆく母の切なさと、子供側だって自分が小さい時の事を忘れていたりね、
    という輪は何か救われる思いだったり。

    ホームの人の
    ひとり歩きや暴力などは症状である、
    認知症を治す事は難しくても症状を抑える事は出来る
    に、なるほどな〜と。

    母が出奔してた期間の日記(あれ日記か?と若干思うけど)
    に泉の事が全然出てこないのには面喰らうけど、
    あーでもそういうことって多分あるんだよなぁ

    半分の花火、には
    あーそういうギミックはいいです…という気にも
    私はこの作者のこういう部分を警戒しているw

  • 母子家庭で育った泉がアルツハイマーになる母親との関係、父を知らない自分は父親になろうとしている、人間の生き様を息子視点で描く。
    仕事と介護と妻の出産と月日を重ねつつ、過去の母親の知らなかった側面を知ったりする。自分に重ねて読んでしまう。一気読み。

  • 母子家庭で、アルツハイマー型痴呆症が進んでいく母親の最期を看取ろうとする若い会社員の息子が主人公の物語。自分が結婚してちょうど子供が生まれる時に重なり、父親になることの葛藤、痴呆症の母を世話することの2つの苦労が伝わってくる。もともと母親のネグレクトがあった過去があり、その葛藤、苦労はより深刻だ。最終的には主人公の成長が救いとなって、読後感はよい。

  • ① この本を選んだ理由
    川村元気さんの作品ということで選びました。


    ②あらすじ 
    認知症と診断され、徐々にいろいろなことを忘れていく母と、その息子との物語。


    ③心に残ったこと
    認知症の物語はたくさんあるけど、どれもとても悲しいと感じてしまう。この物語も悲しさと、いつかそのようなことが周りにおこると思うと、恐怖でしかない。


    ④感想
    哀しい物語で心に寂しさが溢れた。

    親との別れはとても哀しいもので、泉と同じように、過去を思い出していました。記憶は断片的であり、強烈に覚えているつもりのものも、本当にそうであったか、今ではぼんやりしています。いつまでも忘れずにいることはできませんが、たまに思い出してみることが、人生には必要かもしれません。


    ⑤登場人物
    葛西泉
    葛西百合子 母 68歳

    葛西香織 妻
    浅葉

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著者プロフィール

1979年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。18年、初監督映画『どちらを選んだのかはわからないがどちらかを選んだことははっきりしている』がカンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に選出。

「2019年 『ブレスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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