百花

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 472
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910031

作品紹介・あらすじ

「あなたは誰?」息子を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子。ふたりには忘れることのできない“事件”があったーー。現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』の著者、待望の最新刊!【内容紹介】大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく日々の始まりだった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても忘れることができない出来事があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすーー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。

感想・レビュー・書評

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  • 認知症の母と息子・泉。母認知症で全てを忘れてゆく、息子さえも。泉は母との思い出を掘り起こす。
    いくら自分がそうなりたくないと思っていても、否応なく記憶を消してしまうかもしれない。泉にとって母にとって辛い出来事があったとしても、最後まで二人は親子でした。自分にも訪れるかもしれない結末。誰にでもあるであろう物語。実際認知症の方と生活を共にするのは大変ハードなことと思いますが、こちらは愛を主軸に書かれたもので、親子の愛に満たされました。楽しいことばかりではなく、辛いこともあったし、でも親子にはしっかりとした絆がありました。そこに自分自身のことと重なり心が揺さぶりますね。この物語では、花火のところが印象に残ります。忘れるから素敵である、か。哀しいね。

  • 今や新海誠のプロヂューサーとして有名になってしまった著者であるが、自著も映画化されクオリティーも高い。本作は認知症となってしまった母親百合子さんの話が中心であり女のサガとそれと相容れない母性に揺れ動いた女性の半生でもある。これ映画で見てみたいなあ、新海誠思い切って大人アニメ作ってみないかしら、こういうのは岡田麿里の方が得意かな。しかし最近の小説はストーリーの面白さばかり追求してきたが、久しぶりに文学的感動を与えてもらった気がする。最近も中島京子の「長いお別れ」を読んで映画も見たが、高齢社会となってこういう作品は増えそうだ。

  • 貴方を思い出すとき、私は笑顔と色と数字を思い出します。八重歯と漆黒と誕生日。
    早く大人になりたかった。今は子供に還りたいのか、もうわからない。
    貴女はいつでも美しく、しゃんとした一輪挿しの白い花。だけれど一人が平気だなんて、本気で思わないでよね。思い出して欲しくて忘れたふりをしていた。探して欲しくて居なくなったりしてみた。
    一人で背負うと決めたときが、大人になるとわかったときでした。苦いと感じた味噌汁の味が、二度と手放さないと誓った後悔でした。
    半分に舞い散る夜空の花弁が、あの日確かに、少女が母親であったと告げていました。

  • 久々に小説を夢中で読んだ。だんだんと記憶を失っていく母と、えずくほど戸惑う息子。ちょうどそんな状況になりつつある自分と重なり胸を打たれた。
    失っていくことで得られるもの。最後まで色鮮やかに覚えているもの。表紙の、手前はぼやけて遠くにピントがあってる花が全てを物語っているような気がした。
    母とも今のうちにもう少し話しておこうと思ったと同時に、
    自分もまた息子達にそのようなことを思われるのかと、ちょうど自分が中間地点にいるような複雑な気持ちになった。
    映画になってほしいと思った。

  • 息子の泉の視点で書かれている事もあるが、最初から最後まで母親の百合子ではなく泉の視点で読んでいた。

    なので百合子が愛しているのは泉だという事に胸を撫で下ろす。親になるには必要な覚悟や責任があり、子供を愛しているだけで“親になった”とは言えないけれど、子供の方は誰にも教えられなくても、無条件で親を求め愛するもの。泉もそう。

    親子だから許せる事、許せない事はきっとある。その許せる、許せない記憶も思い出も、先に逝く者が遺される者の心にそっと置いて、何度も蘇り、やがて薄れ最後には消えて行く。百合子のような病ではなくても、少し寂しくてもいずれ人は。

    大切な事は記憶ではなく、間違えても後悔しても、たとえ忘れてしまったとしても、親になろうと精一杯生きたという事実なのではないかと思う。一緒にいさえすれば親子になれる…などと単純な事ではなく、“親子になる”のは実は結構難しい。

  • 母百合子と、息子泉との物語。
    母は認知症が進むほどに昔のことを話したり少女に戻っていく。泉は忘れていた記憶が母が亡くなって半年後に思い出す。「半分の花火」
    人の記憶は曖昧で忘れていく生き物だけど、それは生きていく上で必要なことだと思う。

  • 百花。
    川村元気さん。

    失っていくということが、大人になるということなのかもしれない。

    もし今自分が死んだら、
    母のことを誰が語るのだろうか?
    それらを知る人は、この世界にいなくなる。
    母は現実の死と同時に、記憶の中でも亡くなる。

    死。というもの。
    怖い、泣きたい、叫びたくなる。

    でも、
    身近に、優しくあたたかに感じることができた。

    余韻が残る本でした。




  • 気鋭のクリエイターが認知症をテーマに書いた小説なんて、ちょっとあざとい気がしながら読み始めた。主人公もレコード会社勤めでクリエイティブ系だし、きわめて映像的……さらにいえばアニメ的な設定に思えてならない(このあたり著者の経歴への偏見がまじっているかもしれないけど)。でもわりといい小説だと思って読み終えた。どうしても力量不足な感じもするんだけど、一方で著者なりに認知症の人や家族が出遭う状況を誠実に描こうとしている感じがした。(アニメ的でなく)小説らしかったのは、いまや認知症の母が一時期出奔していた時期があったということ。それと生まれ来るわが子のことを後半でそれぞれ軽く絡ませてきたのが読み応えを厚くしている。
    息子の介護というか認知症の母への接し方ってこんなもんでしょうね。会社じゃ一人前に仕事してるのにどうにも不器用。現実と向き合わずべったりかかわらないセンシティブな感じが、これがけっこうよく描けている。

  • 母子2人で育った泉が、大晦日帰省をすると、母は公園のブランコで佇んでいた。
    アルツハイマー型認知症を患った母とその息子の物語。…

    認知症をテーマとした話はいくつか読みましたが、今回は親子の歴史の中に忘れられない事件があったというもの。
    それを無かったことにして暮らしてきた2人でだったから、泉と百合子の間には僅かなわだかまりがあった。

    息子目線から見る母の病気、介護。
    胸が詰まるものがありました。
    多感な時期の息子を裏切った母を受け止めた息子と、一生をかけて償う決心をした母の思い出の半分の花火が、母の最後に見たかったものだったのですね。

    母の目線で読んでしまい、共感出来ない部分も多かったですが、最後のシーンは泣かされました。

  • 母の空白の一年間。母が母で無くなることを
    受け止めた息子に、ホッとする

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著者プロフィール

1979年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。18年、初監督映画『どちらを選んだのかはわからないがどちらかを選んだことははっきりしている』がカンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に選出。

「2019年 『ブレスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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