世にも危険な医療の世界史

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910178

作品紹介・あらすじ

◆先生、本当にこれで治るんですか?◆生まれる時代が違ったら、あなたも受けていたかもしれない――。科学を知らない人類が試みた、ぞっとする医療の数々!・リンカーン……水銀入りの頭痛薬を服用、重金属中毒になって症状はさらに悪化・ダーウィン……強壮剤としてヒ素を飲み続け、肌が浅黒くなるもやめられない・ヒトラー……猛毒ストリキニーネでできた整腸剤を9年間服用し、危うく致死量に・エジソン……コカイン入りワインを愛し、ハイになりながら徹夜で実験を重ねる・モーツァルト……体調不良の最中2リットルもの血を抜かれ意識喪失、翌日死亡・ルイ14世……生涯に2000回も浣腸を行ない、フランスに浣腸ブームをもたらす現代医療を生み出した試行錯誤、その〝危険な〟全歴史!【目次】■第一部 元素第1章 水銀――始皇帝に愛された秘薬第2章 アンチモン――嘔吐で強制デトックス第3章 ヒ素――パンにつけて召し上がれ第4章 金――輝かしい性病治療第5章 ラジウムとラドン――健康〝被曝〟飲料ブームトンデモ医療1 女性の健康編■第二部 植物と土第6章 アヘン――子どもの夜泣きはこれで解決第7章 ストリキニーネ――ヒトラーの常備薬第8章 タバコ――吸ってはならない浣腸パイプ第9章 コカイン――欧州を席巻したエナジードリンク第10章 アルコール――妊婦の静脈にブランデーを注射第11章 土――死刑囚が挑んだ土食実験トンデモ医療2 解毒剤編■第三部 器具第12章 瀉血――モーツァルトは2リットル抜かれた第13章 ロボトミー――史上最悪のノーベル賞第14章 焼灼法――皮膚を強火であぶる医師第15章 浣腸――エジプト王に仕えた「肛門の守り人」第16章 水治療法――それは拷問か、矯正か第17章 外科手術――1度の手術で3人殺した名医第18章 麻酔――一か八か吸ってみたトンデモ医療3 男性の健康編■第四部 動物第19章 ヒル――300本の歯で臓器をガブリ第20章 食人――剣闘士の生レバー第21章 動物の身体――ヤギの睾丸を移植した男たち第22章 セックス――18キロの医療用バイブレーター第23章 断食――飢餓ハイツへようこそトンデモ医療4 ダイエット編■第五部 神秘的な力第24章 電気――内臓を刺激する感電風呂第25章 動物磁気――詐欺医師が放ったハンドパワー第26章 光――光線セラピーで何が起きるか?第27章 ラジオニクス――個人情報ダダ漏れの〝体内周波数〟第28章 ローヤルタッチ――ルイ9世の白骨化した腕トンデモ医療5 目の健康編トンデモ医療6 がん治療編

感想・レビュー・書評

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  • 「生まれる時代が違ったら
    あなたも受けていたかもしれない…
    科学を知らない人類が試みた、ぞっとする医療の数々」
    と書かれている通り
    「トンデモ医療」の歴史がぎゅっと詰まった本

    梅毒にも効く~!秦の始皇帝も愛した秘薬「水銀」
    嘔吐で強制デトックス~!専用杯もあった「アンチモン」
    あなたもすぐに美しく!パンに塗ってどうぞ~「ヒ素」
    夜の性生活が不安!?すぐに解決「ストリキニーネ」
    ペストになったら聖なる土を食べて健康に!「土食」
    体調不良ならこれ!ヒルを肛門に突っ込んで内臓から瀉血
    怪我をした?すぐにこれを塗ればOK!「人間の脂」
    若くなりたい?ではヤギの睾丸を移植
    子供が挙動不審?すぐに脳を切り取りましょう「ロボトミー手術」
    断食で全ての体調不良を解決!

    読めば必ず「ひ~!」となる治療方法が盛りだくさん
    人類のこんな失敗を繰り返して医療って発達してきたんだね~

    この本読んで本当に今の時代に生きていることに感謝!
    なんて思うなかれ!
    よくよく読んでいると、そんなに遠くない時代まで実行されていたこともあるし、「インチキ医療」なのに効くと信じられて実行されているものもあったりするのよ~。
    例えば浣腸
    宿便とかなんとかブームになった時に「コーヒー浣腸」ってしてる人もいたし、今も断食道場って人気だし…
    汚れた血液をきれいにする「血液クレンジング」とかもアンチエイジングとかでひそかに施術している人もいたりする。

    「●●が新型コロナに効く」やら「効かん」やらウワサも色々あるけれど、信じるも信じないもあなたしだい!

    で、そこに共通してあるのは「病気が治るという希望」
    それ考えると「インチキ医療」と宗教は似ている
    なんてこと言うと非難されるかもだけど…

    まあこの本を読んで「さあ!水銀風呂に入ろう!」なんて人はいないとは思うけど…

    で、この本
    訳者がすごく上手い!
    きっと原文もおもしろいんだろうけどそのニュアンスを日本語でもわかりやすく伝えていて素晴らしい!!
    しゃれたジョークなども交えてテンポよくてとっても読みやすい。

    訳者あとがきも見逃せない~!

  • 生き延びたいという欲求のため、人は長い時間をかけて医療を発展させ、怪我や病気に対処する方法を手に入れてきた。ところが、悲しいかな健康に生きていたいという願いは技術革新だけでなくインチキ療法という形でも現れた。この本はそんなインチキ療法の見本市とでも言うべきもので、著者の皮肉の効いたツッコミを読んでいるうちにページがどんどん進む。水銀や飲用金(言うまでもなく猛毒)を飲んでみたり、放射性飲料水(!)を作ってみたり、ハンドパワーに頼ってみたりとこの本で紹介されている数々の医療行為と称された何かの全てが詐欺目的なのではなく、善意を持って行われたものも多くあるのが複雑な気持ちにさせられる。

    往々にして歴史は繰り返すと言われるが、それはインチキ医療にも当てはまるようだ。というのも、何か目新しいものが生み出されるたび、それが「万能薬」として宣伝され、多くの人が飛びつく(そしてしばらくして支持を失い忘れ去られる)という流れが頻出するからだ。確かにどんな病気にも効く薬があったら素晴らしいとは思うし、あったら是非ほしいところだが、現実はそんなに単純ではないということを再確認した。

    何よりも最近でもこの手のトンデモな話はいくらでもあり(尻を日光浴させる人たちがいたそうで…)、過ぎ去った過去のことではない。「にせ医者の口車に乗りたくなければ、人間の身体や病気の仕組みについて理解を深める必要がある。新しい治療法や延命法が見つかった時に備えて、オープンマインドを維持する必要もある。それから警戒心を持ち続けることも大切」という『はじめに』に書かれている至極もっともなことを説得力を持って読ませる良書だった。

  • 治りたい~治したい。医療の発達は紆余曲折の繰り返し。
    “科学”を知らない時代に人々が試みた医療の数々とは?
    第一部 元素・・・水銀、アンモチン、ヒ素、金、ラジウムとラドン
    第二部 植物と土・・・アヘン、ストリキニーネ、タバコ、コカイン、
             アルコール、土
    第三部 器具・・・瀉血、ロボトミー、焼灼法、浣腸、水治療法、
           外科手術、麻酔
    第四部 動物・・・ヒル、食人、動物の身体、セックス、断食
    第五部 神秘的な力・・・電気、動物磁気、光、ラジオニクス、
              ローヤルタッチ
    ・トンデモ医療1~6
    遥か太古の昔から、病気と怪我に悩まされてきた人類。
    治したい者がいれば、治したい者もいる。
    しかし、その克服への道のりは迷走の歴史でもあります。
    その中で登場する新しい・・・というか珍奇な材料や器具の数々。
    試みる姿勢には医療への真摯な態度もみられますが・・・。
    古代医学への妄信、綿々と続く四体液説の功罪、
    誤った認識、不衛生。自家中毒って何?
    そして怪しい業者、薬剤師、療法師、医師。
    それは欲望。金、名誉。公開手術はショータイム!
    果てしない数の死と、後遺症や副作用、中毒と依存症。
    それらの犠牲の上に、現在の医療があるんだと、しみじみ。
    また、現代にもそれらの名残が良い部分で残っている事実。
    詳しく、かつ、悍ましい内容ながら、ちょいと挟むユーモアと
    図版はブラックで面白い。翻訳の手腕も冴えています。
    現在、死因が伝わっている偉人たちも、モーツァルトのように、
    医療が誘因、いや要因だった者も多いのでは?

  • 誰もが病気になる。
    しかし病気にはなりたくない。
    だから新しい治療法が発見されればそれを試したいと思うし、効くと言われれば試したくなるのが人間の性だ。

    現代の私たちは、本書を読んで過去に生まれなくてよかったと思うに違いない。
    なぜなら本書に扱われている医療行為は、医療行為とは思えないものばかりだからだ。
    とは言え、私たちが受けている治療法も、あと50年後、100年後にはとんでもない治療法だと言われるかもしれないが。

    子供の夜泣きにはいつもゲンナリさせられる。
    ちゃんと寝てくれればいいのに!
    それは過去であっても同じこと。
    さぁ、そんなうるさい子供を黙らせるためにはどうする? 
    100年前ならこうした。
    鎮静シロップ万能薬!テッテレー
    子供に飲ませる、その原材料はモルヒネ、アヘン。
    親たちは、あの騒々しい子供たちの鳴き声から永遠に解放されるのだ!
    なぜなら、二度と子供たちは目覚めないから。

     今でもたまに酸素水・水素水なる若干怪しげな水が売られている。
    それは200年前も同じ。
    どんな病も治す、泥水!テッテレー
    いやいや、おかしいでしょ。
    200年前のことでしょと笑っているあなた方!
    なんと1992年には飲水療法としてベストセラーになっている。
    痛みを伴う多くの変性疾患アレルギー高血圧肥満さらにはうつ病まで治る!
    そんな怪しげな療法について筆者は、水から酸素を抽出する事は人間にはできないと断言する。
    それでも酸素をもっと取り込みたい人のために簡単な方法を本書では紹介している。
    それは、深呼吸。

    他にも発汗ダイエットや断食療法その他関連風呂などとんでもない治療法ばかりが載っている。
    実は人間は今でも大して変わっていないのではないだろうか。
    今までの医療に対して全く効果がないと思い込んでしまえば、民間療法や怪しげなカルト宗教に簡単にはまってしまう。
    本書を笑い話として読むのではなくて、理性を保つこと焦らないこと、インターネットの書かれていることを安易に信じ込まないこと、それが大事なのではないだろうか。
    しかしそうはいっても自分自身が不治の病におかされてしまったら、簡単にこういった怪しげな情報に引っかかってしまうかもしれない。
    危険な医療を妄信することは、誰もがあり得ることなのだ。

  • タイトルそのまま危険すぎる医療に特化した世界史。
    今、この令和の時代でもSNS上でそんなはずないだろうとつっこみたくなるような
    とんでも医療、民間療法が当たり前かの如く定期的に湧いてくる。
    ここ最近あったのだと、血液を循環させて体内の血をクレンジングする?だとか
    世界的に大流行中のウイルスに効果のある石?だとか。
    そんなバカな!と思うけど人は希望や期待をし過ぎると、過度にバカになるんだなと改めて思った。
    医療の世界史だと昔々、血は抜いた方がいいとか
    潅腸必要以上にしまくるとか。
    水銀飲みまくるとか、ヒルに血を吸い取ってもらったりとか。
    わざと焼きごてで熱しまくってからウミを出すとか…他にも沢山。
    想像するだけでも身震いするような
    ただ、全てとんでもなわけでもなく今現代に通じる医学の基礎が生まれたのも
    このトンデモ医療があったからこそ…というなんとも言えないけど
    それがあるからこそ生かされてる命もあれば、トンデモ医療で命を落とした人も数知れず。
    今、簡単に情報だけ膨大で安易にネットや口コミが全てだと思ったら大間違いだ
    とにもかくにも、治るだとか奇跡だなんて安易になんでも信じてはいけない。

  • 説明やツッコミが面白いのでテンポ良く読める。
    ただこの本が面白いのは、自分には関係のない時代の話と思っているからであって、196○年や200○年と出たときにはさすがに笑えなかった。
    1900年代前半の話は山ほど出てくる。それは数百年代の間違いでは!?と疑いたくなるほど、馬鹿げたものも多い。

    こんなことを言っていても現代の医療も数百年後にはとんでも医療として紹介されるかもしれないのだけど。

  • 内科医(リディア・ケイン)とジャーナリスト(ネイト・ピーダーセン)の二人がタッグを組んで著した医療の歴史に関する本です。

    「トンデモ医療」「インチキ療法」と銘打たれてはいるものの、「未熟だった医療の過程がどのように発展してきたのか?」という面を見ることもでき、一方で「医療にかこつけて金儲けをたくらむ人々がどう生きてきたか?」という側面を見ることもできる一冊です。

    生きている間はできるだけ楽に過ごしたい。治療となれば一刻も早くと思う人間心理を巧みに突いてくる「流行の薬」や「英雄的医療」。
    読み進めるにつれ、人間の業渦巻く世界を上から眺めているような気持ちになりました(自分もその世界にいるにも関わらず……笑)。

    流行や時流に乗っかって儲けたい人達のトンデモ医療と、真面目に患者の病気を治癒させたいと願う(未熟な)医師たちの医療行為がごちゃ混ぜになっている歴史のある一点、そしてその経緯を拾い上げている本である。そんな風に思いながら読み進めているのに、ふとある瞬間から、「これって現代も同じかもしれないな」ということに気づきます。

    年代が進むにつれて、医師会や学術雑誌などがトンデモ療法を追い詰めていく様も記されていて、医療はどんどん進化しているなと感じさせられるのですが、その一方でいまだに形を変えて残っているトンデモ医療もぽつりぽつりと……がんに苦しむ人達にどんどん迫ってくる「個人の感想です」に縁どられた商品の数々や、今でも残っている、スピリチュアルな度合いの強い〇〇療法などに覚えがありませんか。
    そう、現代もまだまだ医療史は続いているというわけです。

    個人的には、コロナ禍の真っただ中に読んだことで、この本の意味合いは一層引き立ったように感じられました。「どうすれば用心深くて聡明でオープンマインドな消費者になれるのか?」という問いに答えている「はじめに」(p8~)の項目は必見です。

  • トンデモ医療というものは現在も存在しているが、医療の科学的知見が乏しかった時代には、目を覆いたくなる医療行為がたくさん(それも権威ある医師によって大真面目に!!)行われていた。本書はあまり電車の中で読まない方がいい。コミカルな表現も相まって、どうしても笑ってしまう。

    なかでも、重要な治療法とされていたのが瀉血(しゃけつ。血を抜くこと)だ。当時、病気の原因は、血液が多すぎて体内のバランスが悪いことだと考えられていた。なので、体調が悪い人からは、とりあえず血を抜いた。失恋で気が滅入った時は、心不全になるまで血を抜くことが良しとされた。極め付けに、怪我で大量出血した人からもやっぱり血を抜いたという。輸血用の血が恒常的に足りてない現代に分けて欲しい。
    瀉血は19世紀まで行われた。瀉血が行われなくなると、病院の致死率は下がったそうだ(そりゃそうだ)。ちなみに、モーツァルトも、初代米国大統領のリンカーンも、体調が悪い時にこの治療を行なっており、おそらくこれが決定打となって死んでいる。

    いまではゾッとする治療法をもうひとつ。水銀治療だ。水俣病の原因にもなった水銀。もちろん猛毒だ。さて水銀を服用するとどうなるか。まずトイレから溢れるほど便が出る。そして口からもよだれがドバドバ出てくる。犬の比ではない。リットル単位だ。が、これがいいのだ。(!?)さっきの瀉血の原理と似ているが、体液を体から出すことで毒素が出て、体調が良くなると考えられていた。水銀治療がよく用いられたのは梅毒患者(性病のひとつ)だ。患者たちは水銀の蒸し風呂に入ったという。たしかにこの方法だと水銀の吸収は高まるのだが。。。

    これらの治療法の根底にあるのは、古代ローマ時代のガノレスが提唱した「四体液説」である。人間の体液は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4種類あり、これらのバランスが崩れると病気になるとする説だ。現代医療が発展するまで、かなり長い間この説が信じられていた。いま聞くと、滑稽な説だが、この考え方はある程度現代人の間にも浸透しているのではないかと思った。サウナで汗をかく「デトックス」や、腸内洗浄、血液クレンジングといった療法は程度の差こそあれこれに近いのではないか。

    新型コロナウイルス対策でも、いろんな言説が飛び交っている。本書に出てくるほどのヤバいやつは流石にないが、この本を読んで「こんなバカなことしてたのwww」と笑い飛ばすだけでいいのか、現代人に問いたい。

  • 目眩がするような危険医療のオンパレード。ホラー小説の何倍も恐ろしい事実を紹介する本です。医療と称した拷問の歴史ともいえるかもしれません。もしかしたら我々がいま受けている治療も危険医療なのでは?と想像してしまいました。

  • 瀉血を始まりに、毒物や麻薬、電気や磁気、肉を焼いたり脳みそをかき回し、ついには人肉を薬にする。その一部は現代にも伝わっている。
    近世から近代にかけて未検証の医療措置がいかに行われていたのか。途中やや体がムズムズする…
    10頁くらいの面白い文章が読み易く楽しめる。
    四体液説や身体の電磁的バランスなど、思考の基本のところはやや見えてくる。良書。

  • 瀉血やヒ素など、今日ではトンデモ医療とわかっているものでも、昔はこんな風に有り難がられていたのだと紹介されている。何となく知っていたものもあったけど、全然知らないものもたくさん載っていたので、とても興味深かった。トンデモ医療のトンデモな内容もさることながら、それをいち早く詐欺に利用する目端の利く人はいつの世もいるんだなあ、と…。あと、何のエビデンスもないのに企業が大々的に「病気が治ります!」と広告を打ったりしていたという、今では考えられないことも載っていて、こちらも非常に面白かった。

    内容は思った以上にボリューミー。文章はそれほど難しくはないけど、翻訳ものによくある時々ちょっとシニカルな洋画のような語り口なので、若干人を選ぶかも。

  • ユーモアが多く知的好奇心が満たされ,非常にスラスラと読めてしまう.


    今の医療や衛生など,人の命に関わるノウハウや技術は昔の(とは言っても近いものでは数十年)無茶苦茶な発想・行為,その結果(失敗,即ち死・重大な副作用,依存症etc)の積み重ねによって成り立っているんだなあ.
    失敗を糧にする,まさに反脆弱性である.

    数十年後には現代では当たり前になっている医療行為が笑われているかもしれない.

    昔の人はとんでもないことを(水銀を飲むとか)して重大な副作用が出ても,それが治療の現れだということで受け入れていたみたい.目に見える効果に注目してしまうのは仕方がない.

    タバコ,アルコール,麻薬の類,放射線物質は発見当初は健康のための万能薬みたいな扱われ方しているところが共通しているのが興味深い.

  • 現代に生きていて良かったと感じられる本。現代の視点で見ると、昔の医療技術は悲惨なものだった。信仰、思い込み、妄想等々、助かりたいという気持ちが色々な毒物に手を出す結果となる。例えば、瀉血という行為は、つい最近まで治療の常識として行われていたらしい。また医者も消毒という考え方が無く、不潔な環境の中で手術を行っていた。とにかく、これでもかというくらい様々な事例が紹介されていて、時々気分が悪くなるような事例もあった、当時の最新療法で常識的なものであっても、効果は期待できないものが多かった。治療の情報が簡単に入手できる現代においても、相変わらず怪しい民間療法があるが、当時に比べるとまだマシかもしれない。逆に情報があり過ぎて、医者への信頼感が薄れているような感じがあるのも事実だ。過去の医療技術の歴史や教訓に学んで、多くの医療情報の中から、ある程度は自分で選択できるようになっておきたいと思った。
    この本を読んで、今の時代に生きる幸運を感じたが、でももしかすると100年後の人達も、現在の医療技術を見て同じ感想を持つかもしれない。

  • 事実自体興味深いし、著者のユーモアのセンスもよくて、面白く読めるのだが、一気読みしようとすると気持ち悪くなるので少しずつ読み進めることをオススメします。

    とんでもない治療を施す者は医者とも限らず、盲信や無知からくるものならまだしも、金儲け目当ての詐欺も多く、その時代にいきていた患者の苦しみは如何許りかと。
    殺人と病死の境がこれだけ曖昧だと、ミステリーとかいう以前の問題。いや、怖いです。痛そうだし。

    後半はいささか失速、というかネタ切れかな。

  • タイトル通り、なぜこんなことがと思える、危険でおぞましい医療行為の数々。
    中にはあからさまな詐欺によるものもあるが、その多くは科学とはかけ離れた思い込みや無知によるもの。現代でも誤った治療があるだろうが、このような犠牲の上に今の医療があることに感謝せざるを得ない。
    本を閉じなくなるような悲惨で気味の悪い事例が続くが、著者のちょっとしたユーモアに救われる。

  • とても面白かった。すごく好みで読みやすかった。
    インチキ医療から、当時の医者たちが本気で患者を治そうと試行錯誤(人体実験的な)を繰り返した結果のえげつない治療方法まで。色々な「危険な」医療の歴史を紹介してくれる。
    インチキ医療だけ、昔のトンチキな治療法だけと限定せずにどちらもほどよい(ブラックな)ユーモアを交えた紹介で読みやすくてとても楽しい。
    本気にせよ金儲け目当てのインチキにせよ、現代の医療行為を受けられることに感謝すること間違いなしの一冊。

  • Twitterで大きな話題に!引き寄せられる帯!
    かつて「常識」だった偽医療の歴史を探る、
    私たちの知性にも反省を投げかける一冊!

  • かつてはこういうものも『医療行為』だったのだ……という、なかなかユニークなノンフィクション。
    ちょっと皮肉っぽくツッコミまくっている訳文が良いスパイスになっていて面白い。それにしても、ここに書かれていることを最初に『医療行為』として大々的に始めた人間は、ものすっごいチャレンジャーだったのではないだろうか。

  • こういう本大好物。

    つい笑ってしまうようなとんでも医療の歴史が掲載されているが、現代にも数ある怪しい民間療法を思うと、歴史は繰り返されるが、その産物により医学が発展して来たというのもまた事実としてあるなと感じた。

    そんでもって後世の人に『2020年代のとんでも医療』とかいう本が出されるかも。

  • 医療従事者、医療関係学生、民間療法に関心のある人は読んで損なし

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