美しき愚かものたちのタブロー

著者 :
  • 文藝春秋
4.04
  • (286)
  • (369)
  • (184)
  • (19)
  • (9)
本棚登録 : 3356
感想 : 365
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910260

作品紹介・あらすじ

第161回直木賞候補作!

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。
原田マハにしか書けない日本と西洋アートの巡りあいの物語!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読み終わって、感謝の思いが溢れてくる。
    未来の日本のために文化と芸術を見せようと志して集めた人。それを命をかけて守った人。
    たくさんの人の思いがつながって松方コレクションが存在している。
    そして、最後のページの参考文献と協力の多さに、この小説への熱い思いを感じる。

    ゴッホ『アルルの寝室』は本当に無念。いまはオルセー美術館にあるのかぁ。
    2019年松方コレクション展に向けてこの小説は書かれたんだろうなぁ。当時この本を読んで展覧会にも行きたかった。悔やまれる。つぎの松方コレクション展はいつになるだろうか。
    とりあえず近々国立西洋美術館には足を運ばねば!

  • 美術館巡りは割と好きで国内はもちろん、海外へ行った際もその国の主要な美術館へは行くようにしている。上野の国立西洋美術館は何度も行ったし、「松方コレクション」の事も知ってはいた(残念ながら2019年の松方コレクション展には行けなかったが)。

    本作はその「松方コレクション」に纏わる美術品に関する話でもあるし、戦後日本の敗戦国から立ち直る苦悩の歴史の話でもある。現在、私たちが上野で「松方コレクション」を気楽に見れるようになった裏側でこんなドラマがあったとは全く知らなかった。

    本作は美術に造詣の深い原田マハならではの想像を交えた小説として高い完成度を有しているが、ノンフィクションとしてNHK特集やプロジェクトX的な番組を制作しても十分面白くなるのではないか。ほとんどの人が名も知らずスポットライトも当たらない、日置釭三郎などの地上の星たちの並々ならぬ働きがあってこそ「松方コレクション」を私たちが楽しめるのだと分かって感動した。

    この作品を読んだ人は間違いなく国立西洋美術館へ行きたくなるはず(笑)
    私も今は何の企画展をやっているのだろうとwebでチェックして、GWは混むから行くなら5月の第2週目かな…などと思っているところだ。

  • 原田マハさんの作品は、いつも読み終わったあとに「この本に出会えて良かった」と思わせてくれる。
    芸術家だけじゃなくて、それを守る人たちも、とてつもない熱量で人生を賭けていたんだろうということがひしひしと伝わってきた。
    タブローの力、すごい。

  • 原田マハさんの本は素晴らしい!

    松方コレクションについて本で読むのは、初めて。
    絵の知識がなくても面白く惹き込まれてしまい、ドキドキする。西洋美術館に改めて足を運びたくなった。

    松方幸次郎というとっても魅力的な紳士。
    彼についても詳しく知りたくなった。

    日置さんブラボー!
    タブローを守り抜いてくださり感謝しかない。

  • 原田マハさんの作品13冊目になる読書。作品を読めば読むほどあの時代の空気感に馴染みが出てくるので、まるで1920年代〜1950年代を旅してきた気分になる。
    日本の美術館に松方コレクションの作品群があるのを知る人は少なくないだろう。どの作品が戻ってきて、どの作品が戻って来なかったのか、結論がわかった状態にも関わらず、ページをどんどんめくりたくなるマハさんの筆力はさすが。絵を検索して眺めながら読み進めるのも楽しい。
    史実に基づくフィクションとはいえ、大まかな事実はおさえており、まるで実話を見ているような感覚になる。
    戦争や火事で無くなってしまった多くの作品は残念だ。やはり戦争なんてろくでもない。
    美術館を作るため私財を投じた松方幸次郎さんにも、ナチス、ヒトラーから守ってくれた日置釭三郎さんにも感謝。
    非常に楽しい旅をありがとうございました。

  • こんなにもタブローの魅力に魅せられて、また松方幸次郎という人物に惹かれて、文字どおり命を賭して松方コレクションを守った人たちがいたこと、そこにものすごい情熱の物語があったとは。

    私は、絵画は芸術ともなると良し悪しは全く分からないし感性のある才能のあるひとたちだけが分かるものだと少し前は思っていた。ただ、意味もわからず絵が好きだったので、昔から美術館は好きな場所だった。けれど、最近になって、良し悪しは分からないかもしれないけれど、何か絵画から熱量がすごく伝わってくることに気付いた。もしかすると、そんな事が魅せられるきっかけになるのかもしれないなと、この作品を読んでいて少し思った。
    国立西洋美術館、是非とも訪れてみたい。

  • 横柄な物言いになるかも知れないですが、傑作。

    絵画作品にも想像力を膨らませてくれるし、登場人物もそれぞれのドラマがあり、連綿と続く『松方コレクション』を巡る歴史を追体験できました。

    絵画を見に行きたくなるし、何よりもまだ行った事の無い“国立西洋美術館”に行きたくなりました。

    アートは何故、人類にとって必要かというテーマに対して「アートは、時代の中で戦争や世界的な災害を乗り越えて、今の時代にも残り続けて来た」と、違う著作で取り上げていました。

    芸術作品に関連している他の物語も読んでいこうと思いました。

  • まさに献身的な方々ばかり。
    惹き寄せる方、親しまれる方とはなぜ魅力的なんでしょう。

    何故か自分の今の立ち位置を考えてしまいました。

    支えるものが在ることがハッピーなのかな。

  • 素晴らしいのひと言。日本で本物の西洋絵画を鑑賞できるようになるまで、どれだけの人々の苦労があったのかを感じた。

  • 1番心に残ったのは日置釘三郎さんのパートです。
    奥様が亡くなりお金もなく、周囲から孤立した状況でただタブローを守るために生きる。
    私にはとても出来そうにありません…本文にもありましたが、本当に"いっそ死んでしまったら"と思います。

    原田マハさんの作品は初めて読みましたが、とても良かったです。国立西洋美術館いつか行ってみたいですね。

全365件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×