ストーカーとの七〇〇日戦争

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 473
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910284

作品紹介・あらすじ

ネットで知り合った男性との交際から8カ月。ありふれた別れ話から、恋人は突然ストーカーに豹変した――執拗なメール、ネットでの誹謗中傷……「週刊文春」連載時に大反響を呼んだ、戦慄のリアルドキュメント。誰にでも起こり得る、SNS時代特有のストーカー犯罪の実体験がここに。【本文より】Aは「俺をストーカー呼ばわりしたことは許せない」と言い募り、失うものはなにもないから、知り合いのライターに頼んでこれまでの交際を曝露してやると言いはじめた。さらにフェイスブックの中の友人にいいね!をつけていることから私がその男性と浮気をしていると決めつけた。(中略)鬱病になったのも私から暗い愚痴ばかり聞かされたからであり、損害賠償で訴えてやるとも。どうしよう。完全に正気じゃなくなってしまった。――「1 別れ話」【ストーカー規制法が定める「つきまとい等」の行為】・あなたを尾行し、つきまとう。・あなたの行動先(通勤途中、外出先等)で待ち伏せする。・面会や交際、復縁等義務のないことをあなたに求める。・あなたが拒否しているにもかかわらず、携帯電話や会社、自宅に何度も電話をかけてくる…etc別れ話がこじれて元恋人が「ストーカー化」した分かれ道とはストーカー被害にあったらまずどこに相談に行けばいいのかまだ傷害事件にはなっていない場合、警察はどこまで動いてくれるのか警察に被害届を出したらその後どういうプロセスを踏むのか示談交渉に持ち込まれたさいの様々な落とし穴ネットでの誹謗中傷の書き込みは消せるのか加害者の起訴・逮捕後に被害者がしなければならないことストーカー行為は医学的な治療でやめさせることができるのか?ストーカー対策の海外での先進的な実例知らないことだらけのストーカー被害の全容と問題の本質が理解できる、かつてない異色のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ストーカー事件を扱ったノンフィクション/フィクションの多くは、第三者が取材・調査に基づいて書いたものだ。
    それに対し、本書は被害者が優れた文筆家であったという偶然――著者にとっては不幸な偶然――が生んだ、当事者の視点から書かれた稀有なノンフィクションである。

    ストーキング被害者の苦しさを生々しく伝えるノンフィクションとしても、サスペンスフルな読み物としても一級品だ。
    そして同時に、「ストーカー被害者になると、警察や弁護士とのやりとり、裁判所でこんな目に遭う!」が詳細にわかる、ある種の実用書としても優れている。

    著者の被害ケース以後にストーカー対策法が改正されたこともあり、いまの警察対応は本書とは少しく異なっている(たとえば、当時はSNS上の書き込みは対策法の対象外だったが、いまは違う)。

    そうした微妙な違いはあれど、いまも十分実用書として役立つはず。
    とくに、〝ストーカーになりそうな人間が、いま周囲にいる〟というボヤ段階に置かれている人にとっては、それを大火事にしないための対策が、本書を読むとわかるだろう。

    本書終盤の大きなテーマとなる、〝ストーカーは依存性の精神疾患であり、治療可能。犯人に治療を受けさせることが、被害者の安全を守る重要な対策になる〟という話も、広く周知されるべきだ。

    何より、著者の文章がうまい。
    そのうまさは第一に、込み入った出来事を手際よく整理して伝える〝説明力〟の高さである。

    また、ストーカーの恐怖を的確に伝えながらも、一方では軽妙なユーモアをちりばめ、リーダブルで面白い読み物に仕上げている点も、抜群のうまさだ。

    全体として、社会的意義の高い一冊。

  • 週刊文春に昨年5月から12月まで連載されたもの。
    著者内澤旬子さんがネットで知り合い8か月付き合った男性にストーカーされた時のこと。

    私は、そういうのは10代20代の女の子の話であって、大阪万博の前に生まれた40代半ばをこえた人がこういう被害にあったということに、まず驚きました。

    ただそれ故に、10代の女の子ではどうすることもできないまま惨殺されてしまうストーカー事件、文筆家の内澤旬子さんが週刊文春に書いてくださったことでこの問題の解決に少しでもむかっていけると思うので、良かったと思います。

    もちろん内澤さんは大変だったでしょう。
    それに今後ストーカーAが何もしないという保証はないわけだし。
    勇気を出して書いてくださり、ありがとうございます。

    小早川明子さんの『ストーカー』『ストーカーは何を考えているか』はすでに読んでいて、けっこうストーカーには詳しい私。
    でもこの本のように当事者が書き綴ったものは初めてだし、ヤフーパートナー、2チャンネル、イマドコサーチなどのことがいろいろ詳しくわかったのも良かったです。

    ここだけの話ですが、私も一昨々年1月に初めて話した男(むこうはもっと前から私を知っていたのかも)が怖くて。
    3年以上ですね。「私に話しかけないで」と言った後やたら黙って近くにいたり視界にいたり。
    考えすぎと言われるかもしれないけど、いつ豹変するかと思うと自分の身は自分で守らなくちゃと悩んでいました。
    今年の春で終了しました(と思います)。

  • 怖い、、、ストーカーに狙われてしまった恐怖感が
    ヒタヒタと迫ってきて身震いしてしまう。
    ストーカーを扱った本は以前にも読んだことがあるけれど
    ストーキングされた本人が書いたものを読むのは初めてでした。
    文章を『書く』という作業は、当たり前だけれど何度も何度も自分の書いた物を読み返さなくてはならない。
    思い出すのも怖い出来事を、無理にでも掘り起こさなければならなかった著者の苦しさを想像すると
    この本を書いてくれたことに頭が下がる思いだ。
    ストーカーの被害者側であるはずなのに、それを訴えるだけでどうしてこんなに我慢やさらなる痛手を負わなくてはいけないのか。
    警察や弁護士やストーカー事件に携わる可能性のある人たちが、ひとりでも多くこの本を読んでくれることを望みます。

  • 恐怖が人間をいかに思考停止させるか、といった過程を追体験できる良書。
    加害者の男性の粘着気質は中々で、ゲスな行為の数々に怒り心頭する様子はよくわかる。がしかし、凄惨な暴力等を行使した訳ではないので、読者によっては「頭の弱い小悪党」という印象を抱いてしまう可能性は否めない。加えて、著者にもいくつかの落ち度があり、それらを赤裸々に書いてしまっているため、「頭の弱い小悪党と隙だらけの中年女性の残念な恋愛事情」と勝手にカテゴライズし、上から目線で断罪しているレビューがちらほら散見されて非常に残念に思う。
    それなりの社会経験を積んだ著者が、怒りと恐怖と疲労から思考力を徐々に失い、うかつな失敗を頻発した結果、さらに事態が悪化していく過程は筆舌に尽くしがたいほどのリアリティを帯びている。私たちの日常に大悪党はいない。小さな悪意と小さな失敗がちょっと続くだけで、あっというまに負のスパイラルを生み出すことを私たちは経験的に知っている。そして、加害者の男性のような残念な人間が少なくないことも知っている。したがって、私たちが著者のような不幸に巻き込まれる可能性は日常に潜んでいる。
    本文中に何度もあるが、自分の愚行をさらけ出すのは死ぬほど恥ずかしい行為だろう(まさに闇歴史)。しかしながら、その過程を詳細に、綿密に描写してくれたことで、私たちは同じ過ちに備えることができる。負のスパイラルに飲み込まれないよう対策をねることができる。著者の勇気に敬意を表したい。
    最後になるが、「私はそんなことしない」「私は違う」といった幼い全能感から本書の事件を対岸の火事ととらえ、上から目線の説教臭いレビューをあげている方々は、加害者の男性同様、「他者への想像力が欠如した認知能力」の持ち主であるという自覚を持った方が良い。

  • 役所の紋切型の対応が、とにかく歯痒い。
    著者の熱量に追いつけず、所々飛ばし読みしてしまったが、ホント酷い話。

    ストーカーは病気であって治療で治るとの話には
    驚いた。個人的には、依存性は何でかんでも病気だという
    見方については、事実としても納得いかないが、被害者や
    本人にとっては重要なことだと思う。
    この加害者は治療なんて受けないだろうけど。

  • 怖すぎて一気読み。警察も裁判所も弁護士もそれなりに真摯だが、結局は被害者が不利益を背負う。懲罰ではなく治療を課す難しさ。対応機関の未整備。日本の後進性。ホラーだこれ…

  • Twitterで文春の連載が面白いというツイートを見かけてから、文春の連載を読んでみたら引き込まれた。
    筆者の恐怖を追体験しながら被害者の置かれる理不尽さ、法律の限界などが伝わる。
    自分が同じ立場に置かれたら、ここまで行動できないだろう。思い出すのも辛いだろうに、ここまで各方面に配慮しながら描くのは、ご本人のリハビリとともに、加害者の治療により被害者も救われるという事実を世に広めるためとのこと。
    殺人事件など痛ましい事件が起こってから改善されるのではなく、未然に防ぐことへ向けて法整備が進みますように。

  • 文体が無理だった。

  • 内澤氏らしい体験ノンフィクション。非常に大変で辛い思いをされたであろうことをひしひしと感じました。この短い人生の中で何故私が、と思うような負の出来事に巻き込まれてしまった時にでも、それを振り返ってかつ反省するだけでなく、現状の法整備や環境面を勉強され、被害者の立場から提言されている、その姿勢に圧倒的なものを感じました。「世界屠畜紀行」でも感じましたが、体験談を面白おかしく書くことだけではなく、そこからの勉強や考察の視点が内澤氏は素晴らしい。今度は出来るだけご自身にとって不幸ではない体験談を上梓していただきたいものです。

  • たまに見る内澤さんのツイッターには、ヤギのカヨの写真がたくさんあって楽しかった。「本の雑誌」の連載(「着せる女」というタイトルで本になった)も本当に楽しくていつも真っ先に読んでた。それと同時にこんなことが起こっていたなんて…。言葉を失ってしまう。

    私は高野秀行さんの大ファンで、高野さんが取り上げる本も良く読む。どれも面白いものばかりだ。だがしかし!この本ばかりは高野さんのように「むちゃくちゃ面白い」とはよういわん。もちろん高野さんは「つらくて深刻な内容」であることを理解した上で、「誤解をおぞれずに言えば」というまえがき付きで言っているわけだけど、どう考えても「面白い」という表現が私にはできない。

    ストーカー被害の当事者がここまで事の経緯を詳細に書いたものって他にあるのだろうか。いや、あるのかもしれないが、こんなにリアルにその恐怖や理不尽さ、自分の生活から何から根こそぎ変えられてしまう絶望感がひしひしと伝わるものは、まずないように思う。内澤さんの文章の力で、彼女の日々を(おこがましい言い方ではあるが)追体験させられて、心の底から震え上がってしまった。

    何が恐ろしいといって、この被害には「終わり」がないことだ。加害者は逮捕・収監されてもまた出てくる。被害者の方が住所を変え仕事を変えるのが当たり前という現実。今この時にも、著者の心には恐怖が居座っているだろうし、そういう人が他にもどれだけいるかと思うと、もういたたまれない気持ちになって、暴れ出したくなる。著者は冷静に加害者教育の必要性まで説いているが(ほんとに立派だと思う)、心の狭い私など、日頃の「厳罰化は犯罪抑止力になどならない」という持論をかなぐり捨てて「ストーカーは終身刑。強姦犯は○○!」と叫びたくなるのだった。

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著者プロフィール

1967年、東京生まれ。ルポライター、イラストレーター。著書に『身体のいいなり』『世界屠畜紀行』、共著に『印刷に恋して』『「本」に恋して』(共に文・松田哲夫)、『東方見便録』(文・斉藤政喜)などがある。

「2017年 『片づけたい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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