ストーカーとの七〇〇日戦争

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 562
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910284

作品紹介・あらすじ

ネットで知り合った男性との交際から8カ月。ありふれた別れ話から、恋人は突然ストーカーに豹変した――執拗なメール、ネットでの誹謗中傷……「週刊文春」連載時に大反響を呼んだ、戦慄のリアルドキュメント。誰にでも起こり得る、SNS時代特有のストーカー犯罪の実体験がここに。【本文より】Aは「俺をストーカー呼ばわりしたことは許せない」と言い募り、失うものはなにもないから、知り合いのライターに頼んでこれまでの交際を曝露してやると言いはじめた。さらにフェイスブックの中の友人にいいね!をつけていることから私がその男性と浮気をしていると決めつけた。(中略)鬱病になったのも私から暗い愚痴ばかり聞かされたからであり、損害賠償で訴えてやるとも。どうしよう。完全に正気じゃなくなってしまった。――「1 別れ話」【ストーカー規制法が定める「つきまとい等」の行為】・あなたを尾行し、つきまとう。・あなたの行動先(通勤途中、外出先等)で待ち伏せする。・面会や交際、復縁等義務のないことをあなたに求める。・あなたが拒否しているにもかかわらず、携帯電話や会社、自宅に何度も電話をかけてくる…etc別れ話がこじれて元恋人が「ストーカー化」した分かれ道とはストーカー被害にあったらまずどこに相談に行けばいいのかまだ傷害事件にはなっていない場合、警察はどこまで動いてくれるのか警察に被害届を出したらその後どういうプロセスを踏むのか示談交渉に持ち込まれたさいの様々な落とし穴ネットでの誹謗中傷の書き込みは消せるのか加害者の起訴・逮捕後に被害者がしなければならないことストーカー行為は医学的な治療でやめさせることができるのか?ストーカー対策の海外での先進的な実例知らないことだらけのストーカー被害の全容と問題の本質が理解できる、かつてない異色のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • いや、ちょっと本当に怖かった。

    ストーカーなんて若い人の話だろう…と思っていた。
    著者の内澤旬子さんが、被害にあったのは今の自分と同じくらいの年齢の時だ。
    ストーカー被害は、独身の人に限った話でも、恋愛関係のもつれだけに限った話ではないようだが、ネット社会の拡大によって、多くは水面下で増長しているものだろう。

    内澤さんは、お上品な見た感じと破天荒な行動のギャップ、その語り口(文章)がとても魅力的で、前作の「漂うままに島に着き」も楽しく読んだが、その裏でこんな壮絶な日々を送られていたとは…。

    雑誌連載の書籍化のためか、同じような内容が繰り返されるようなところがあり、重い内容なだけに読んでいて辛かった。星は付けられない。2020.7.29

  • 週刊文春に昨年5月から12月まで連載されたもの。
    著者内澤旬子さんがネットで知り合い8か月付き合った男性にストーカーされた時のこと。

    私は、そういうのは10代20代の女の子の話であって、大阪万博の前に生まれた40代半ばをこえた人がこういう被害にあったということに、まず驚きました。

    ただそれ故に、10代の女の子ではどうすることもできないまま惨殺されてしまうストーカー事件、文筆家の内澤旬子さんが週刊文春に書いてくださったことでこの問題の解決に少しでもむかっていけると思うので、良かったと思います。

    もちろん内澤さんは大変だったでしょう。
    それに今後ストーカーAが何もしないという保証はないわけだし。
    勇気を出して書いてくださり、ありがとうございます。

    小早川明子さんの『ストーカー』『ストーカーは何を考えているか』はすでに読んでいて、けっこうストーカーには詳しい私。
    でもこの本のように当事者が書き綴ったものは初めてだし、ヤフーパートナー、2チャンネル、イマドコサーチなどのことがいろいろ詳しくわかったのも良かったです。

    ここだけの話ですが、私も一昨々年1月に初めて話した男(むこうはもっと前から私を知っていたのかも)が怖くて。
    3年以上ですね。「私に話しかけないで」と言った後やたら黙って近くにいたり視界にいたり。
    考えすぎと言われるかもしれないけど、いつ豹変するかと思うと自分の身は自分で守らなくちゃと悩んでいました。
    今年の春で終了しました(と思います)。

  • 別れ話がちょっともつれただけ。ありふれた話だ。
    相手の男が別れを受け入れられず、何度も何時間も電話をかけてくる。「これ以上しつこくするなら警察に相談…」と送った途端、逆上。
    執拗なメール、ネットでの誹謗中傷。
    男は、ストーカーと化した。

    誰にでも起こりうる。
    誰もが被害者に、そして加害者にもなりうる。
    それもある日、突然に。

    印象に残っている2点。

    まず、①ストーカーは「病気」であるということ。

    ストーカーのうちの大半は、警告を受ければ我にかえり大人しく行為をやめる。が、一部のストーカーは、自分がストーカーであるという認識がなく全く自制が利かず、警察などに注意されたことでむしろ逆上し違法行為に突き進んでいってしまう。この種の者は、行動制御能力に障害をきたす精神疾患であり、治療が必要となる。

    ストーカー治療には、認知行動療法と条件反射制御法の2つがあり、どちらも明らかな効果が証明されているにもかかわらず、世間はもちろん警察や検察、弁護士すらも、ストーカーは病気であり治療で治るのだということを誰も知らないというのが日本の現状だ。(私も知らなかった)

    処罰しかできない現行法では、被害者は一生安心して暮らせないだろう。
    なぜなら、未治療のストーカーは、出所したらまっすぐターゲットのところへ攻撃に行く可能性があるからだ。
    ーーこれが何を意味するか? 
    想像するだけで背筋が凍る。

    ②つめは、一度ストーカー被害に遭ったら、警察や検察など組織、法律、制度など全てが、場合によっては自分の安全を保証してくれるものではなくなる、ということ。

    内澤さん自身、ストーカーは殺傷事件が起きているくらいの社会問題であるから、いざ被害に遭ったとしてもそれなりの機関にたどり着けば、しかるべき解決方法がきちんと用意されているものだとぼんやり思っていたとおっしゃっている。
    が、期待はことごとく裏切られる。

    ストーカー規制法は、時代の変遷に追いつかない不備が多々あった。(内澤さんが被害に遭われた2016年にはまだ、FacebookなどのSNSは処罰の対象ではなかった)
    加害者と示談を成立させて不起訴、釈放となった後、示談を破ってまた加害者が嫌がらせをしてきた時は、助けを求めたにもかかわらず誰一人動いてくれなかった。
    この辺の記述は、著者の無念さと怒りが伝わってきて、読む進めるのもツラかった。

    ストーカー被害者は、住み慣れた町や職場を変え、家族を持つことも諦め、息を潜めて隠れるように生きている。
    加害者が住所を突き止めてやってきやしないかと毎日怯え、郵便や宅配も直接来ないようにし、友人がSNSにあげる写真に顔が映らないよう極力注意し、毎年住民票の閲覧制限の更新の煩雑な手続きをしなくてはならない。
    接触しないとしても、誰もが目にするSNS上でありもしないことを書かれ、LINEや電話で酷い言葉を浴びせられているうちに、恐怖で判断力も思考力も理性も人間としての尊厳さえも どんどん失われていく。……


    どう考えても、おかしい。
    画期的な治療方法はある。
    解決策はそこにある。
    ないのは、法だけ……。


    日本もストーカー対策先進国のイギリスの取り組みを見習い、一日も早く司法と医療が連携し加害者をスムースに治療につなげ、被害者に平穏な生活を取り戻してあげて欲しい。
    これ以上被害が増えてからでは遅すぎる。

  • ストーカー事件を扱ったノンフィクション/フィクションの多くは、第三者が取材・調査に基づいて書いたものだ。
    それに対し、本書は被害者が優れた文筆家であったという偶然――著者にとっては不幸な偶然――が生んだ、当事者の視点から書かれた稀有なノンフィクションである。

    ストーキング被害者の苦しさを生々しく伝えるノンフィクションとしても、サスペンスフルな読み物としても一級品だ。
    そして同時に、「ストーカー被害者になると、警察や弁護士とのやりとり、裁判所でこんな目に遭う!」が詳細にわかる、ある種の実用書としても優れている。

    著者の被害ケース以後にストーカー対策法が改正されたこともあり、いまの警察対応は本書とは少しく異なっている(たとえば、当時はSNS上の書き込みは対策法の対象外だったが、いまは違う)。

    そうした微妙な違いはあれど、いまも十分実用書として役立つはず。
    とくに、〝ストーカーになりそうな人間が、いま周囲にいる〟というボヤ段階に置かれている人にとっては、それを大火事にしないための対策が、本書を読むとわかるだろう。

    本書終盤の大きなテーマとなる、〝ストーカーは依存性の精神疾患であり、治療可能。犯人に治療を受けさせることが、被害者の安全を守る重要な対策になる〟という話も、広く周知されるべきだ。

    何より、著者の文章がうまい。
    そのうまさは第一に、込み入った出来事を手際よく整理して伝える〝説明力〟の高さである。

    また、ストーカーの恐怖を的確に伝えながらも、一方では軽妙なユーモアをちりばめ、リーダブルで面白い読み物に仕上げている点も、抜群のうまさだ。

    全体として、社会的意義の高い一冊。

  • たまに見る内澤さんのツイッターには、ヤギのカヨの写真がたくさんあって楽しかった。「本の雑誌」の連載(「着せる女」というタイトルで本になった)も本当に楽しくていつも真っ先に読んでた。それと同時にこんなことが起こっていたなんて…。言葉を失ってしまう。

    私は高野秀行さんの大ファンで、高野さんが取り上げる本も良く読む。どれも面白いものばかりだ。だがしかし!この本ばかりは高野さんのように「むちゃくちゃ面白い」とはよういわん。もちろん高野さんは「つらくて深刻な内容」であることを理解した上で、「誤解をおぞれずに言えば」というまえがき付きで言っているわけだけど、どう考えても「面白い」という表現が私にはできない。

    ストーカー被害の当事者がここまで事の経緯を詳細に書いたものって他にあるのだろうか。いや、あるのかもしれないが、こんなにリアルにその恐怖や理不尽さ、自分の生活から何から根こそぎ変えられてしまう絶望感がひしひしと伝わるものは、まずないように思う。内澤さんの文章の力で、彼女の日々を(おこがましい言い方ではあるが)追体験させられて、心の底から震え上がってしまった。

    何が恐ろしいといって、この被害には「終わり」がないことだ。加害者は逮捕・収監されてもまた出てくる。被害者の方が住所を変え仕事を変えるのが当たり前という現実。今この時にも、著者の心には恐怖が居座っているだろうし、そういう人が他にもどれだけいるかと思うと、もういたたまれない気持ちになって、暴れ出したくなる。著者は冷静に加害者教育の必要性まで説いているが(ほんとに立派だと思う)、心の狭い私など、日頃の「厳罰化は犯罪抑止力になどならない」という持論をかなぐり捨てて「ストーカーは終身刑。強姦犯は○○!」と叫びたくなるのだった。

  • 怖い、、、ストーカーに狙われてしまった恐怖感が
    ヒタヒタと迫ってきて身震いしてしまう。
    ストーカーを扱った本は以前にも読んだことがあるけれど
    ストーキングされた本人が書いたものを読むのは初めてでした。
    文章を『書く』という作業は、当たり前だけれど何度も何度も自分の書いた物を読み返さなくてはならない。
    思い出すのも怖い出来事を、無理にでも掘り起こさなければならなかった著者の苦しさを想像すると
    この本を書いてくれたことに頭が下がる思いだ。
    ストーカーの被害者側であるはずなのに、それを訴えるだけでどうしてこんなに我慢やさらなる痛手を負わなくてはいけないのか。
    警察や弁護士やストーカー事件に携わる可能性のある人たちが、ひとりでも多くこの本を読んでくれることを望みます。

  • 書いてくださってありがとうという気持ち。
    今のところ今年読んだノンフィクションでナンバーワン。ちなみに去年のナンバーワンは角幡さんのツァンポー渓谷の本。柳広司さんの「太平洋食堂」も捨てがたいか。
    まさか自分がストーカー被害に遭うなんて。そしてそれに対して何ができるのか、どんな実害があり、絶望があり、手間と労力がかかり、失うものがあり、得るものが少ないのか。体験談でもあり、ガイドブックともなるドキュメンタリー。
    書かずに済むなら書きたくない、忘れられるなら忘れたい。一方で、黙って泣き寝入りなんてしていられない、自分だけの問題ではなく、多くの被害者のためにもなる、と筆を運んだ筆者。
    本書により、過去の被害者のほんのわずかでも救済と、未来の被害者を生み出さない結果に繋がることを願う。
    そこそこ分厚い本で、読み切れるかなと思ったけれど、一気読み。プロの文章は本当に読みやすく、文章の書き方指南としても参考になるのでは。
    自分もいつ、被害者にも加害者にもなるかもわからない。その視点を持ち、覚悟すること。それがストーカー被害を減らす、なくしていく一歩になる。
    読めてよかった。内澤旬子さん、ありがとうございました。

  • 加害者を治療に結びつけるというところはいいのだが、無駄に長い。著者が治療にあたった心理士と一緒に出演していたラジオ番組で、事件のあらましと治療に関する話を聞いている方が面白かった。

  • ネットで知り合った男性との交際から8カ月―ありふれた別れ話から、恋人はストーカーに豹変した。
    誰にでも起こり得る、SNS時代のストーカー犯罪の実体験がここに。

    すげえ、どこにでもあるハナシ。
    日本のどこかで今日も間違いなく、起こっているであろうありふれたハナシ。

    しかも、別段、ストーカ-に何かをされたわけじゃないし。
    別れる時にちょっとごねて、しつこくメールしちゃうなんていうのは本当によくある話だし。
    相手がストーカー化するようなダメ人間であるならば別れ方を考えなきゃいけないのに、下手過ぎる。恋愛初心者か。

    掲示板にあることないこと書かれたのはさすがに可哀想だけれども、それは相手の行動がエスカレートした果てのことで、初手か二手目くらいまでで修正できていればそこまでいくことも無かったのに。

    しつっこいくらいに怖い怖い言ってるし折り畳みナイフまで装備して対策しているけど、アンタ、実際は何もされていないよね。暴力の「ぼ」の字も無かったよね?

    ……と、読んでいて思った。

    僕がそう思うこと自体がこの「ストーカー問題」の本質であるような気がする。
    その行為を「ストーキング」であるかどうかを認定するのはストーキングする側の人間ではなく、被害者であるべきだろう。
    ヒドイことをされたと思うか、そんなのたいしたことないじゃんと思うかは、周りではなく、被害者が決めること。
    被害者が怖いと思ったら、それは怖いのだ。

    それを「たいしたことないじゃん」と思ってしまったらストーカー被害はなくならない。
    それを強く思った。

  • 恐怖が人間をいかに思考停止させるか、といった過程を追体験できる良書。
    加害者の男性の粘着気質は中々で、ゲスな行為の数々に怒り心頭する様子はよくわかる。がしかし、凄惨な暴力等を行使した訳ではないので、読者によっては「頭の弱い小悪党」という印象を抱いてしまう可能性は否めない。加えて、著者にもいくつかの落ち度があり、それらを赤裸々に書いてしまっているため、「頭の弱い小悪党と隙だらけの中年女性の残念な恋愛事情」と勝手にカテゴライズし、上から目線で断罪しているレビューがちらほら散見されて非常に残念に思う。
    それなりの社会経験を積んだ著者が、怒りと恐怖と疲労から思考力を徐々に失い、うかつな失敗を頻発した結果、さらに事態が悪化していく過程は筆舌に尽くしがたいほどのリアリティを帯びている。私たちの日常に大悪党はいない。小さな悪意と小さな失敗がちょっと続くだけで、あっというまに負のスパイラルを生み出すことを私たちは経験的に知っている。そして、加害者の男性のような残念な人間が少なくないことも知っている。したがって、私たちが著者のような不幸に巻き込まれる可能性は日常に潜んでいる。
    本文中に何度もあるが、自分の愚行をさらけ出すのは死ぬほど恥ずかしい行為だろう(まさに闇歴史)。しかしながら、その過程を詳細に、綿密に描写してくれたことで、私たちは同じ過ちに備えることができる。負のスパイラルに飲み込まれないよう対策をねることができる。著者の勇気に敬意を表したい。
    最後になるが、「私はそんなことしない」「私は違う」といった幼い全能感から本書の事件を対岸の火事ととらえ、上から目線の説教臭いレビューをあげている方々は、加害者の男性同様、「他者への想像力が欠如した認知能力」の持ち主であるという自覚を持った方が良い。

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著者プロフィール

1967年生まれ。神奈川県出身。文筆家、イラストレーター。緻密な画風と旺盛な行動力を持つ。異文化、建築、書籍、屠畜などをテーマに、日本各地・世界各国の図書館、印刷所、トイレなどのさまざまな「現場」を取材し、イラストと文章で見せる手法に独自の観察眼が光る。2011年、『身体のいいなり』(朝日新聞出版社、のち朝日文庫)で第27回講談社エッセイ賞を受賞。他に『世界屠畜紀行』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文藝春秋)、『着せる女』(本の雑誌社)など多数。

「2021年 『飼い喰い 三匹の豚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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