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  • 文藝春秋 (2019年6月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163910345

作品紹介・あらすじ

――怖がるなとは言わない。だが、恐怖を他人に感染させるな。

消防学校時代の担任教官が、たった一度だけ口にしたそんな言葉がいまでも忘れられない。(「白雲の敗北」より)。





ベストセラー『教場』『傍聞き』の短篇の名手が贈る、心震える9つのミステリ短篇。



人を救うことはできるのか――

和佐見消防署消防官たちの9つの物語。



雨の翌日、消防司令の今垣は川べりを歩く女性と出会う(「石を拾う女」)。

新米の土屋と大杉は「無敗コンビ」だった(「白雲の敗北」)。

女性レスキュー隊員の志賀野が休暇中に火事を発見(「反省室」)。

西部分署副所長の吉国は殉職した息子のお別れ会で思い出を語るが……(「逆縁の午後」)ほか5篇

みんなの感想まとめ

消防官たちの厳しい日常と人間ドラマを描いた短編集で、感動的な救助物語とは異なり、ミステリー要素が強い作品です。舞台は漆間分署で、消防士たちの生死にかかわる緊迫感が伝わってきます。各短編は彼らの観察眼や...

感想・レビュー・書評

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  • 教場のイメージが強過ぎてどうしても比較してしまうます。
    警官が消防士に変わっただけみたいに思います。
    違いは風間教官のような人が居ないと言う事かな。
    これはこれで充分面白いと思いますね。

  • 和佐見消防署の消防官たちを描く連作短編集。


    『教場』に始まる風間教官のシリーズが一区切りついて、次は消防官か!
    舞台が舞台なだけに、生死にかかわる緊迫感があった。それも、むしろ火災の現場から離れた日常で、彼らの骨身に染み付いた観察眼や生い立ち、性格が謎を呼び、謎を解く面白さ。


    どれも面白かったけれど、苦い後味のものが多め。
    特に後半、『フェイス・コントロール』『逆縁の午後』は苦かった。
    時に命を預け合う信頼で結ばれた仲間が犯した罪や後悔を、読み取ってしまう。そこには高揚感はない。
    帯にあるように、“消防官は、ヒーローではない”のだ。

    ところで、たまたま少し前に、江戸の火消が活躍するシリーズ『火喰鳥』を読んでいた。こちらも、人々は悩み苦しみ、脇役も善人ばかりでもないのに、読後はどこかカラッと明るかった。
    短編では、笑いを誘う隙がないからかな。

  • 長岡弘樹さんの本は読みやすい。
    ブクログが 私におすすめしてくれた本だから?サラッと読めた。

    警察関係の本って色々あるけど消防関係ってあまりないから新鮮だった。

  • 読んで面白いところもあったが、なぜだか気が滅入る終わり方が多かったような…。自分の命をかけて人を助ける仕事をする消防士さんに合掌の思いだった。

  • いつも通り予想とは違うことになる話の連作。変わらず巧いなと思う。消防士さんのことを少し知れたと思うのも良かった。

  • 「消防士」という、ある種「男の子の夢」のひとつでもあろう職業をテーマとした作品です。
    …とはいえ、進学校の男子校だと、あまり消防官を目指している、ということは聞かず、体力への自信のなさや、TVでの扱い(警察や医者はドラマになっても、消防士はドラマになることがすくない?)なども関係しているのでは、とも思います。

    ある消防署に勤務する消防士たち、一人ひとりの物語をまとめた短編集です。おおまかな時系列で短編が並んでいますが、一つひとつの物語が関連しているわけではなく、それこそ一話完結のドラマを見ているような感覚です。
    登場人物の個性も特徴がありますし、それぞれの物語には「どんでん返し」とでも言えるような「謎解き」の要素もあり、気軽に読み進めることができると思います。

    一方で、それぞれの物語について、動機が不明瞭であったり、事件の「現実感」がなかったりする、といった部分もあるように感じました。個々のストーリーを読み終えて、「感動」とまではいわなくとも確かにしみじみさせられる感覚があったり、「消防士」も一人にの人間であって弱い部分があるということを改めて気づかせてくれたりするなど、楽しめる要素もあったので、全体を通して「中途半端」な読後感となってしまったのが少し残念です。全9編の短編が収録されていますが、本数を減らして(とりあげる事件を減らして)、一つひとつの事件についてより深い作品になればもっと面白かったのかな、とも感じます。

  • ガッツリ系のお仕事小説を期待していたが、消防士を主人公にした短編ミステリー。
    どこか一筋縄ではいかない作風は著者の良いところだけど、「教場」シリーズと普段の短編ミステリーのいいとこどりをした感じで、ファンからすると、どっちつかずなところが微妙でがっかり…

  • 和佐見市の消防署を舞台に、そこで働く消防官たちを主人公にした9つ連作短編。119というタイトルを見たとき、「あ~、また消防士ものね!」と「傍聞き」の二番煎じ的な仕事への矜持を描く短編と思いきや、今回はちょっと違う。

    「消防官は誰もみな、いつ顔を出すかわからない闇を抱えたまま、それをぎりぎり押さえつけている危うい存在だ。」

    警察官と並んで、自殺者が多いという消防官。現場では日々、生と死を分ける場面に直面し、救えなかった命を前に自らの中に闇を抱えていく。
    彼らはただのヒーローじゃなく、ギリギリのところでそれに応えているんだなぁ~。
    彼らの抱える様々な問題を描く9つの物語はいつものような爽やかさはないけれど、かっこいいだけじゃない姿もまた真実なのかな・・・

    ひとつひとつの短編はひねりがあり、ちょっとした伏線があとで効いてくる展開は長岡さんの真骨頂で、予想できた時はスッキリ!、ハズレたときでもそうきたか!とどちらも楽しめました。

  • 消防士の葛藤や活躍を描いた短編集です。
    いわゆるヒーローものでなく、生々しい精神的な痛みが書かれており、読んでいて深く考えさせられます。
    ちょっとしたtipsが散りばめられており、小ネタを手に入れられるのがお得。

  • 和佐見消防署消防官たちの9話短編ミステリ。しっかりとしたミステリに消防士の仕事とを描いていく。どの作品も伏線の回収がしっかりとされていて長岡さんらしい作品でした。消防士は、死と向き合いながらのお仕事なんだと、改めて感謝です。

  • 闇の部分はどの業界にもありますね。

  • 誰の視点なのかわかりにくくて。
    ただ何げなく置かれたペットボトルや濡れたティッシュと一緒に捨てられた乾燥剤が火災の原因になるとか、闇の中は予測不可能な危険が紛れてる。

  • 消防士が主役の連作短編集。長岡さんの作品にはためになる情報が必ずある。この本にも食品に付いてる乾燥剤の危険な捨て方や、火事の際、火のてから身を守る方法が書いてあった。固定電話をプッシュホンを押さず声でかけられるのには驚いた。どの作品にも人情や哀愁がある。そして時々、あっと驚く真実も。どの作品もわりと短めだがメリハリがあって面白かった。

  • どの話も短くて読みやすかったが、テーマのほとんどが自殺になっていて読んでいて重い気持ちになってしまった。
    印象に残ったのは「救済の枷」。読んでいて痛くなってしまった。

  • 和佐見消防署消防官たちの9つの物語

    消防官は人を助けるヒーローではない。彼らは誰もみな、いつ顔をだすか分からない闇を抱え、ぎりぎりのところを押さえつけている危うい存在。

    恐怖は他人に感染していく。迫り来る危機...

    9つの話は、微かに交わり、見えにくい。
    消防官として入官し、時が流れ、退官まで。

    最後に残るのは、苦い記憶と、微かな思い出だけ。

  • 消防士だけどテイストは「教場」

  • なかなか複雑…。

  • 消防官たちの仕事を描いたミステリ短編集。火災、救急、救助といったそれぞれの現場での彼らの活躍、そしてそこにある謎。事件ばかりではなく、各々の人物の心情に関わる謎も多くて、考えさせられます。いざという時に役に立つかもしれない消防の知識がいろいろ記されているのも読みどころ。特にあんなものが火災の原因になるってのは知らなかったので……気を付けなければ。
    お気に入りは「フェイス・コントロール」と「逆縁の午後」。どちらもなかなかにつらい真相を扱った、読み心地が良いとは言えない物語なのだけれど。後味はそれほど悪くなく、救いが感じさせられるところがいいなあ。

  •  警察学校を舞台とした『教場』シリーズで知られる長岡弘樹さん。新刊の舞台は消防署である。警察官同様に、死と隣り合わせの任務に当たる消防士たち。

     「石を拾う女」。研修帰りの消防士が見かけた、女性の仕草とは。消火だけではない消防士の任務。一般人なら気に留めないだろう。「白雲の敗北」。命を救えなかった現場で、救ったものとは。そんな特技があったために、回りくどく利用されたねえ。

     「反省室」。数少ない女性消防士。熱意に冷や水を浴びせる上司の意図とは。酷い事件だが、それは消防士の管轄外では…。「灰色の手土産」。皮肉な巡り合わせ。事実であれば消防士としてあるまじき行為だが…あくまで上司の想像でしかない。

     「山羊の童話」。友人宅で火災に出くわした消防士。原因は…。おいおいおいおい、消防士のモラルとして、そんなショック療法ありなのかよ。「命の数字」。語り部は消防士の父。これはびっくり、知らなかった。現場にそれがあってよかったねえ。

     「救済の枷」。指導者としてコロンビアに来ていた消防士の体験。そんな技を使う機会には陥りたくない。彼は前を向けるか。「フェイス・コントロール」。こういうニュースはよく聞く。たまたま機会が訪れたとはいえ、消防士としてそれは…。

     「逆縁の午後」。消防士の行動に突っ込みたくなる本作だが、最後の最後に最大の突っ込みどころが用意されていた。あまりにも浮かばれない…。

     相変わらず、1編当たりは短いにも関わらず濃密で、長岡ミステリーらしい着眼点に脱帽するが…この分署の管内には住みたくないなあ。『教場』シリーズにも、警察官としてどうかと思う人間は登場したけどさ。

     百歩譲って、『教場』に登場したのは警察官の卵だが、本作に登場する消防士は現場経験を積んだプロである。プロの行動としては正直引っかかりを覚えたのだった。

  • 警察官同様に、消防隊員も、人の生死に 係わる仕事を担っている。

    9話からなる。

    最初から、自分の大切なもの 10を書き出す事から始まっている。

    何が大切か!
    これが「生きる」ということ!
    人が死んで行くというのは、ひとつずつ 大切なものを失って行く過程だと………
    なるほど!
    今まで、考えてなかった事だった。

    「山羊の童話」では、ペットボトルの収斂火災では……との見方。
    しかし、乾燥剤と水との反応での発熱が原因であった。
    どちらも、最近、ゴミの捨て方を注意事項を、確認する内容である。

    「命の数字」は、読んでいて、凄い!!
    と、思ってしまった。合図に、697ヘルツや852、1209ヘルツの音を調整して、出せるなんて!
    9は1209ヘルツ。

    そして、父親は、以前から息子のいうとおり、この事件から、防災用品リストを……きっと、携帯電話も忘れずに身につけているだろう。

    「救済の枷」
    私事だが、昔、商社マンの父に、海外派遣の話が来たが、父は、子供たちの学校問題や治安の問題で、拒否した。
    今のように帰国子女待遇など、殆ど無い。
    海外での災害などの保険も、充実していない。などなどで……

    この小説で、コロンビアが、舞台だが、やはり、人気の無い所では、こういう事が、起こりえるかも……
    アメリカでさえ、学校の送迎は、親の眼が、必要である。
    誘拐犯がいるから。

    しかし、自分の手を壊さないと、手錠が外れない、逃げられない、……
    怖い話であった。

    「フェイス・コントロール」
    どこの社会にも、パラハラがいる!

    私は、駅近く図書館の裏側にある 消防署で、火災の訓練を 受けている消防士達を、見ていたとき、上司らしい人が、少し遅れを取っている隊員に、「誰かのお母さんか?、見ているぞ!しっかりして、動け!」と……

    その後に、そこの消防署から、小火が出た。
    虐めにあった隊員が、火をつけたらしいと、新聞まで、掲載された。

    厳しい訓練の中、虐めもあるのだと……
    心折れる隊員もいると思う。

    最後の「逆縁の午後」は、辛い。
    好きになった女性が、父と息子どちらも一緒だった事。
    事故死に見えたのが、そうでなかった。
    自殺だったと、父親一人が、気づく。
    女性も亡くなり、いっぺんに、愛すべき2人を亡くしてしまう。

    悲しいが、優しい友が居る事に気付いて欲しいと、思いながらも、自分だったら、生きて行くだろうか?とも………、本を閉じた。


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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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