黄色い実 紅雲町珈琲屋こよみ

  • 文藝春秋 (2019年6月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784163910420

感想・レビュー・書評

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  • 紅雲町珈琲屋こよみ、第7作。
    自分が好きな物を集めた小さな店をやっている、お草さんが探偵役のシリーズです。

    若い店員の久実は元気で明るく、働き者。
    店に来た山男・一ノ瀬とふとしたきっかけで親しくなります。微笑ましく見守る草だったが…
    一ノ瀬も、意外と訳あり?

    店の常連になった一人に、かってアイドルだった女性がいました。今は目立たないように暮らしている様子。
    一方、地元の名士の妻も常連で、息子が帰郷するために地元の仕事の口利きを頼まれます。
    まさかそれが…

    思わぬ事件が久実にふりかかり、正義感の強い草としては犯人を突き出したい。
    だが性犯罪の場合、二次被害も大きくなって深く傷つく可能性があります。
    なんでこんなことに、とシリーズを長く読んできて久実さんは身近に感じられるだけに、こちらも重い気持ちになりました。

    地元に密着した暮らしの中で起こる、日常の謎系のシリーズですが、甘くもゆるくもない。
    けれども、久実さんは健全で強い!
    悲しみを奥に秘め、老いを見据えて覚悟ある生活を送るお草さんが築き上げた穏やかな生活も、その強さの、確かな支えの一つですよね。

  • 紅雲町珈琲屋こよみシリーズ最新作。
    このシリーズは探偵役がおばあちゃんなのに全然枯れてない、日常系なのにホノボノしてないのが特徴なのだが、今回は特に読んでいて辛かった。

    店員の久実に遅い春が来たかと思いきや、そのお相手には色々訳ありで、更にその久実に思いもかけぬ事件が起こる。
    何故久実にこんな試練を与えるのか、そして何故草はその久実に追い討ちを掛けるのか。そして何故他人はこれほど無責任に人のことを喋り撒き散らせるのか。
    こんなに長いシリーズになると知らずお付き合いしているのに今さらだが、やはり草さんは好きになれない。

    少し前に流行したある運動をテーマにしたかったようだが、それにしても読んでいて辛い。
    決して他人事ではない、遠い世界の話ではないと言いたいのだろうが、それにしてもこんな試練を与えなくても良いじゃないかと思う。
    更にこの一方的な被害者の二次被害には唖然とする。しかし一方で、もしこれが冤罪だったら…という場合も考えたりしてゾッとする。

    苦しみ抜く久実と正義と正論を押し付ける草、別世界で気楽に見守る由紀乃。三者の描かれ方が興味深い。
    最近放送されている経理部を舞台にしたドラマで『正しいことは良いこととは限らない』というようなセリフがあったが、草のやっていることは正にそうだ。
    正しい、正義であることは分かる。だがそれが良いことであるとは限らない。正しいことなのに何故これほど久実を苦しめるのか。何故そんなことになってしまうのか。

    ここまで来ると久実と草の関係は破綻するしかないだろうと絶望的な思いで読んでいたが、最後に意外な展開があった。
    久実の人柄に改めて感心する。あと密かに良いのは配送運転手の寺田。
    久実の将来に幸あれ。

  • このシリーズは久しぶりに読みました。
    今回は従業員の久実ちゃんやお客さんの元アイドルの女性が性被害にあう…というなかなかに重い内容。

    警察に届けるか?届けないか?葛藤に振り回される主人公の草さん。
    一番悪いのは加害者なのに泣き寝入りをするしかない被害者…。たとえ通報しても世間の声は厳しく誘うようなフリをしたのだろう…と言われてしまう。おかしい世の中だ!
    ここで犯人を捕まえないと更に被害者が出てしまう…。だけど…。

    こういう問題は本当にデリケート。草さんや久実ちゃんと一緒に悩んでしまいました。

  • シリーズ7
    小蔵屋の第二駐車場で強姦事件が!
    被害者は元アイドル歌手オリエこと平緒里江
    「私は佐野元にレイプされた。隠す気はありません」
    「私、負けない。恥ずかしいことは何もしてないもの」
    敢然と立ち向かう緒里江

    しかし、世間の好奇の目は容赦ない。相手が大学教授の息子なら尚更
    自分から誘ったのでは?
    話題作りにして芸能界復帰を狙っている?

    小蔵屋の試飲コーナーでも無責任な声が飛び交う
    同じ女性なのに、どうしてそんなことが言えるの?
    耳を覆いたくなる

    さらに、事態は深刻に
    小蔵屋の看板娘ともいうべき右腕の久実ちゃんまでが
    被害に遭っていた!
    緒里江とは対照的に、家族や恋人に降りかかる好奇の目を恐れるあまりひたすら隠し平静を装う久実

    事実を隠すことで第三の被害者が出るとは分かっていても、誰が久実の態度を責められよう

    いつもと変わらぬ笑顔で接客する久実に胸を痛める草
    他の被害者には悪いが、久実の事件が未遂だったことでどれだけ救われたことか。久実ちゃんがそれを望んでいるなら、このまま放置したい

    自分は何の権利があって、久実に無理を強いているのだろう、何と傲慢なことか
    親でもないし、この良い関係を壊しなくもない、もめたくもない
    しかし、このままでは次の被害者が出るだろう
    そうなれば、久実はもっと苦しまなくてはいけない
    それを思うとお草さんは黙っていられない

    「他の人がどうにかしてくれるのを待って、待って、ずっーと待って、結局何も変わらない息苦しい世の中を生きるのも、何もしなかった自分だよ」

    それぞれの葛藤が読者にまで伝わり、胸が苦しくなる

    私は被害者なのに・・・私はどうして・・・いつから・・・加害者になったんだろう・・・」
    ぽたぽたと涙をこぼす久実ちゃんにもらい泣きしてしまった

    これからの久実ちゃんと一ノ瀬さんの、そして小蔵屋の未来を象徴しているかのような、『船出』と名付けられた食器セット、私も欲しい

    最後に著者から
    2017年の法改正により、強制性交等罪は、非報告罪
    (被害者の告訴なしでも起訴可能)となるなど大幅に変わりました (後略)
    との付記があった





  • 「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第7弾。
    今回は"#Me Too"がテーマの、重いかもしれない長編。
    どうしてそれが久実ちゃんに起きるの?!と読者は思う(私も思った)かもしれないが、「あなたの身近な人にこんな事が起きたらどうしますか?」という問いかけなのだろう。

    性犯罪に巻き込まれた女性は、周りの反応が怖かったり、あるいは傷つきすぎて思い出したくない…といった理由で、言い出せない、警察に届けられないということが多い。
    犯人は野放しで、犯行を繰り返すこともある。
    そして、こんなに何もかも近代化された世の中でも、人間の野次馬根性はまったく変わらず、一度被害を受けた人は二次被害にも苦しむ。

    素敵な小蔵屋の話でこんな話題は嫌だな、と思う方もいるかもしれないが、お草さん曰く、
    「苦い話からしか得られないこともあるはず」

    口直しか、落ち着いたあとの小蔵屋の描写が、いつもより丁寧で長い気がする。
    新しい船出はあり?
    次回も期待したい。

  • 今回は辛く、胸が痛む話だった(>_<")恋の予感に少しほんわか(*´∇`*)としていただけに、事件が起こって血の気がひいた(´д`|||)そんななか、ちょいちょい登場する由紀乃さんの存在は心強く感じられた(^^)あと、「小蔵屋」の雇用条件って凄く良いわ~( ・∇・)羨ましい(^.^)

  • 小蔵屋お草さんシリーズ第7作。

    あらすじ
     ひょんなことがきっかけkで、店を訪れた山男一ノ瀬と従業員久美は距離が近くなる。店の常連には、元アイドルで今は派遣社員の女性が来ていた。草は客の一人で、大学教授の妻から、息子の就職の斡旋を頼まれ、息子は町に戻ってくる。しかし、その息子は元アイドルを暴行し、久美にも暴行未遂をしていた。さらに一ノ瀬は地元企業の一族であり、亡くなった弟の妻とも関係があったことがわかる。

     今作も甘くないわー。現代はご都合主義のものが、小説も映画も漫画もたくさんあるなかで、なかなかないよ、この甘みの少なさ。今回は女性暴行事件ということで、さらにひやひやした。被害者への世間の風当たりも、昨今の現実社会の様子が反映されているようでちょっとつからかった。久美の苦悩なんか、本当にありそう。それでも人生は続いていくし、周りに人がいるんだということが実感できた。久美の前向きさも好きだ。このシリーズ読んでると、年とるのも悪くないないと思える。

  • 紅雲町珈琲屋こよみシリーズ…長いな、お草さんシリーズの最新作。もう7作目になるのか。1作目読んだときは「おかんみたいな人がやってる雑貨屋」のシリーズやと思ってたのに、今では「もうすぐ俺たち世代がやりそうな」に変わってきてるもんなぁ。時の流れの残酷さよ…。

    本作では、性犯罪…いわゆるレイプ犯罪をとりあげている。結論ははっきりしている、暴力を振るった側(多くの場合、そしてこの作品でも男)が悪いのだ。なのにそう単純にいかないのが、性犯罪。被害者の側も「汚れた」だの「油断があった」だの「誘った」だの、はては「売名行為」「被害者面した仕返し」…なんとも無茶苦茶な評価をするものである、世間ってのは。

    「私は何も悪いことはしていない」と敢然と立ちあがれば、世間にさんざこづきまわされる。それを見た他の被害者が「私は普通に生きていたいだけ」と声をあげなければ、第一の被害者から加害者に加担する側と誤解される…。まったくなんて世の中なんだか。

    幸い自分が加害者でも被害者でもその身内でもないのであれば、そのバカげた世の中とやらの片棒を担がないこと。くだらない週刊誌やワイドショーには背を向け、陰湿な噂話で盛り上がる知り合いとは距離を置くこと。まずはそういうことから始めていかないと…。

    とはいうものの、例えばこの本だって文藝春秋社から刊行されていて、あの出版社の稼ぎもとに「習慣文春」があったりするんやもんなぁ。文春砲で儲かったお金を(全部ではないにせよ)投資して、この本が刊行されている、ってことを考えると複雑な思いである。

  • 【収録作品】第一章 小春日和/第二章 颪の夜/第三章 宿り木/第四章 帽子と嵐/第五章 黄色い実
     加害者側も被害者側も一括りにはならない。最も不快なのは無責任な第三者たちのしたり顔。
     付記もあわせて、作者の覚悟に共感。
     自分が加害者側あるいは被害者側に立つことがあるのではないかという想像力があれば、「第三者」として噂話に興じることはできない。

  • すごかった。
    とにかくすごかった。

    それまで順調に読み進めていたのに、お草さんの想像、いや確信があることに及んだ時点で心臓が凍るような思いをした。
    いったんページを捲る手を止めて、深呼吸しなければならないくらい。

    思えばシリーズの最初からずーっと追いかけてきて、コーヒーの匂いさえ嗅ぎ慣れたもののように感じている、慣れ親しんだ世界だからこそ、さらに辛い。

    綺麗に現実は割り切れるものではない。
    そのこときょこうのせかいでもきちんと描く作者には、信頼感を持つ。

  • 紅雲町珈琲屋こよみ7作目。今回の事件は複雑すぎずに分かりやすかった。しかし、傷付いた人がたくさんいる事件。出過ぎず、それでも自分のぶれない想いをまっすぐ持って、周りの大切な人を支えるお草さんは素敵だった。

  • シリーズ一気読みしたら、これは未読であった。
    今回も、というか今回は特にしんどい試練の連続。
    出てくるみんなが強くたくましい。
    自分に一番近いのは、哀しいけれど
    無頓着に噂する客のような気がしてならなかった。
    人として正しいことと身内を想うそれぞれの気持ちの狭間で一緒になってもがき苦しんだ。
    次を早く読みたい。
    そこで笑顔で働くみんなに逢いたい。
    [図書館·初読·5月22日読了]

  • 由紀乃さんがいてくれて、本当に良かったと思える巻。
    書き下ろしなので、佐野教授父子は例の農水次官父子の事件とは関係ないか。何か髣髴とさせるが。
    「どうかしていますよね、被害者が何もかも失うなんて」
    そんな世の中にしてはいけないんだ。山口敬之を支持するネトウヨども、心せよ。
    お草さん、いずれ糸屋を買ったりして。そこに第二小蔵屋を開いて、久実と一ノ瀬に任せるとか。
    子供達全員を自分の会社に入れたがるなんて、変な親。四人もいるんだから、一人や二人畑違いの好きなことさせればいいのに。家業を継いだ兄達の嫉妬があったのかな。

  • これまでシリーズで楽しく読んできましたが、今回は、辛かったなぁ。
    題材が絵のタッチより大分重めなのは、いつも通り分かっていたのですが、久美ちゃんを巻き込む展開だし、ちと辛いなぁ。前のカレーやさんみたいな人を登場させるのでもよかったのでは?
    そして母子がおかしいのに放置ってのは怖い。そういえば、このシリーズは事を荒立てないように、って事件を隠す人が多いですね。

    最後、110番しつつだけど、久美ちゃんを犯人がいる外に出すって⁉お草さん!それはひどい、と思いました。

  • このシリーズは優しい気持ちになれたり、ハッとさせられたり…
    今回もスーっとしましま。

  • 今までも結構な重いの多かったけど、
    今回は最も辛かったぁ。

    表紙のほのぼのしたイラストとまったく違った。

    お草さんがまた春を迎えられるのは良しだけど、
    黒ーいシミが心にが残る話だった。

    だからこそ、いいのかなぁ。
    いやぁ、もうちょっとハッピーであってほしかった。

  • #紅雲町珈琲屋こよみ
    このシリーズがコージーミステリって言ったのは誰!?
    酷い流血沙汰こそないけども、時流も取り入れたなんか辛い、しんどい展開ばかりで、でも読むのがリタイア出来ない
    そんなシリーズです。

  • 紅雲町シリーズ。コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の草が、身近に起きた事件を解いていく。
    今作は小蔵屋の客が強姦事件に遭うという辛いもので、しかも小蔵屋の店員であり、草の歳下の友人とも言える久美も被害に遭っていた。加害者も小蔵屋に客として来たことがある男で、草は苦しむことになる。
    嫌な事件だから読後感は爽やかとはいかないけど、それも乗り越えていくしたたかさが草らしい。

  • 自分のための勇気、他人のための勇気。いろいろな勇気が試されている。

  • 紅雲町でコーヒー豆と和食器のお店、小蔵屋と営むお草さん。

    常連さんの付き合いで物件を見に行って出会ったのは風変わりだけど力になる一ノ瀬で
    小蔵屋の従業員の久美とはいい関係になっていった。

    同じくお店の常連の百合子から、息子の就職先を頼まれ、
    うまい具合に円滑に物事を進めるお草さん。

    そんな矢先に小蔵屋の第二駐車場で起きた、
    常連客の織里江さんが暴行を受けたという話を聞き、他人事ではないと心配する中で

    久美の様子がおかしいことに気づいたお草さんの疑問と葛藤。

    ネタバレ。
    就職先を紹介した客の息子の佐野は前の職場でも女性を暴行しており、今回も織里江や久美は未遂に終わったものの罪を重ねていた。

    警察に届ける勇気、被害者にすらも周囲の遠慮のない噂、
    そういったものから守るお草さんや一ノ瀬たちの気遣い。

    今も昔も性暴力の被害に遭う人はいつだっているのが現状で、
    こんなことを思うのは不謹慎かもしれないけれど、
    きっと未来すらもまだ解決できない問題の一つになるのかもしれない。

    戦争が現代にもあるのと同じように。

    最初は些細でも、そういった小さな出来事から歪みが出てくるのかもしれないなあ、と思った。

    だから私たちは声を上げ続けなければならない。

    お草さんの久美ちゃんを思う気持ちと、
    久美ちゃんの葛藤も十分胸に染みて、もどかしくも未来が明るい方向に進んでくれてよかった。

    って色々考えさせられる今回のお話だった。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉永南央の作品

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