- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163910598
感想・レビュー・書評
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とても生々しい描写で空気が重く、終始セピア色のような恋愛小説。二十歳の女子大生が初老のカメラマンと恋に落ちる。芸術に純粋で少年のような男。こんな男に恋をした女性は100%不幸だろうなと思う。女は芸の肥やしではないけれど、女性を愛するのではなく、芸の為に女が必要。こういう屑な男ほど、ほっとけない女っているんだよな。ただ、劣等感を持った女子大生の藤子が、初めての恋愛に溺れている間、現実を忘れ現実を捨て、ただただ男と一緒にいる事だけが生きがいとなってる場面はすごく生命力にあふれていた。激しく痛々しい、うだるようなひと夏の暑さの描写も相まって気だるい恋愛のお話でした。
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わあああああああ(叫
これはねーこれはねー好みが極端に割れるやつだよ。で、好きいいいい!って人は(俺のことだ)もう極限までハマっちゃうのよ。
で、しばらく抜け出せなくなるの。
全さんみたいなヤヴァイ男って稀にいるんだよね。遭遇したらそれはもう運が尽きた(あるいは幸運)と思って諦めるしかない。
終わらせることすらしない男って、ほんとうに罪だよね。だからこそ抗えなく惹かれるのだが。
願わくば生涯こんなものに出会いたくない。
でも出会ってしまったら骨も残らない覚悟で自分を差し出すしかないんだろうな。
誰にも薦められない。でも、わたしは藤子のことも全のこともみんな大好きよ。忘れない。
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猛暑の夏。
ものを食べる。
人を好きになる。
すごい熱量を感じた本。
「あの人を知らなかった日々にはもう戻れない」
そして優しかった里美くんの言葉が心に残る。
「みんな自分の恋愛だけがきれいなんだよ。…あとは汚くて、気持ちが悪い。」
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父親が亡くなり、空っぽの日々を送っている藤子。ある時父親の友人(父親より年上)に心惹かれてしまいます。ワイルドで小汚くて、細やかでガサツな有名カメラマン。彼の出現によって父親の隙間が埋まっていきますが、それ以上の感情が藤子の体からあふれてしまいます。
当然男は死んだ友人の娘としてしか見ていません。高まっていく思いを押さえつけられなくなっていく藤子の姿が見ものです。
大柄で女らしさにかける藤子がムードもへったくれもない店で、毎日毎日大盛りの食事をがっついている姿がとてもいい。それを見守る男もすごくいい。
こういうワイルドで一見こわもてで笑顔が少年のようなおっさん、僕自身の近辺でも思い当たる節があるのですが、年関係なく滅法もてるんですよ。こんなにもてるの?って思うかもしれませんが、実際に居ますこういう人。自分自身でいること自体で人が引き寄せられるという事は、男からも人気が出るし、女性も引き寄せられます。何しろ厄介な男であります。
生々しい表現頻出ですが、生命力に溢れていていやらしさではなく命という意味でのエロスを感じます。若くて命そのものの藤子と峠を越えて下ってくだけの男。求めあう事に年なんて関係ないよなあ、と納得させるパワーがある小説です。
この男、映画なら誰がこの役嵌るかなあなあ、と想像させる魅力が有ります。僕なら誰を配役するか・・・。
あと5年経っていれば内野聖陽、今なら佐藤浩市、渡部篤郎もありだな。演技的には渡部さんが嵌る気がする。 -
この季節に読んでちょうどよかった。
若くて劣等感でいっぱいで上手く生きられないけれど生命力に溢れている主人公と、才能があって大勢の女に注目されながらも思い通りにならないことから逃げている余命短い男の物語。
現代パートがなかったら悲しいだけの一方通行だったかもしれないけど、写真集を開いてくれたことで違う方向に進んでいってよかったと思った。
それと、初めて読んだ作家なのに、情景や食べ物の描写がみずみずしく思い起こされる不思議な感覚があった。
他の作品も読んでみたい。
著者プロフィール
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