神様の暇つぶし

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 389
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910598

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの読書に、楽しみにしていた1冊を。

    父をなくしたばかりの大学生の藤子に、父の古い友人で有名写真家の全さん。
    けしてきれいではないふたりの性(生)が、なんだかものすごく美しい。
    写真がすべての全さんにとって、藤子は、FUJIKOでしかなかったんだろうな。

    黒い物体がふたりの間にでてきてからは、あの写真家さんのモノクローム写真のイメージで場面を切り撮りながら読みすすめてました。よかった。

  • 父親が亡くなり、空っぽの日々を送っている藤子。ある時父親の友人(父親より年上)に心惹かれてしまいます。ワイルドで小汚くて、細やかでガサツな有名カメラマン。彼の出現によって父親の隙間が埋まっていきますが、それ以上の感情が藤子の体からあふれてしまいます。
    当然男は死んだ友人の娘としてしか見ていません。高まっていく思いを押さえつけられなくなっていく藤子の姿が見ものです。
    大柄で女らしさにかける藤子がムードもへったくれもない店で、毎日毎日大盛りの食事をがっついている姿がとてもいい。それを見守る男もすごくいい。
    こういうワイルドで一見こわもてで笑顔が少年のようなおっさん、僕自身の近辺でも思い当たる節があるのですが、年関係なく滅法もてるんですよ。こんなにもてるの?って思うかもしれませんが、実際に居ますこういう人。自分自身でいること自体で人が引き寄せられるという事は、男からも人気が出るし、女性も引き寄せられます。何しろ厄介な男であります。
    生々しい表現頻出ですが、生命力に溢れていていやらしさではなく命という意味でのエロスを感じます。若くて命そのものの藤子と峠を越えて下ってくだけの男。求めあう事に年なんて関係ないよなあ、と納得させるパワーがある小説です。
    この男、映画なら誰がこの役嵌るかなあなあ、と想像させる魅力が有ります。僕なら誰を配役するか・・・。
    あと5年経っていれば内野聖陽、今なら佐藤浩市、渡部篤郎もありだな。演技的には渡部さんが嵌る気がする。

  • ヒリヒリする恋の話。

    父親を亡くした女子大学生。
    残された時間の少ない、父の友人であるカメラマンの男。

    女子大生は次第にこの男に惹かれ、のめり込んでいく。

    二人が伴にした時間は、とても短く、濃密。その分会えなくなってしまったあと、もがき苦しむ。

    でも、かわいそうか?と言われたらやはりそれは違うのかなと思う。

    出てくる食べ物がおいしそう。

  • 何で表紙の写真は桃じゃなくて林檎なんだろう…トマトでもなく…アダムとイブ…?何でだろう…桃だとセンスなさすぎる?何でだろう。誰かに解説してほしい…
    久しぶりに真っ直ぐな純愛小説を読んだ。
    喪うものが多すぎて辛いけれど、最後は一瞬先の光が確かに見えた。良かった。
    映画化してほしい。

  • 初出 「別冊文藝春秋」329号〜338号

    今年読んだ中で一番の作品。

    藤子は父親を交通事故で亡くしたばかりの20才の大学生。中学の時に母親は家を出ていて、身長が高く人付き合いが下手なために、静かに沈んでいきつつあったところに現れたのが、近所の廃業した写真館の息子で、亡父より年上の写真家の全さん。

    藤子は破天荒な芸術家に反発しながら惹かれていく。そのこころの揺らぎの描写がいい。映画にして欲しいと思った。
    藤子は写真家の助手から近づきすぎないように警告されていたが、体を重ね続けて全さんが全てになってしまう。全さんは藤子を撮り始め、そして突然彼は消えて、藤子は世界の意味を失う。

    藤子は大学を卒業してから、全さんの妻から遺作として藤子の写真集を出版する承諾を求められて驚く。彼は末期癌の最後の時期に、自分と藤子の時間を切り取って残していた。藤子は写真集に「全さんが見つけた神さまが、重く、烈しく、醜いまま、息づいていた」のを見つける。

    藤子の生々しいエネルギーの発露がいい。写真を撮りたくなるのがよくわかる。

  • ランチを食べたインドカレー屋で隣に座り話しかけてきた男は「食べることに目がない、と聞いていましたから。柏木藤子さん、ですよね」編集者だという男は「先生の最後の写真集」だと分厚い本を出したー

    ◆背が高くて「可愛い女子」ではないコンプレックスの藤子。父の四十九日のあと久しぶりにあらわれた廣瀬写真館の不良息子、今は有名な写真家の廣瀬全。一生で1番ビールを呑んだうだるような夏。大人の性愛を気持ち悪いと塞いでた藤子が見る承認欲求の果て。全さんはそこまでわかってての「ひどいこと」だけどー…嫉妬も渇望もやむなし…

    正直、里見くんのことが辛いわー。彼の過去にあったこともそれからも。ずっとずっと「嫌いじゃない」ままいて欲しかった。「みんな自分の恋愛だけがきれいなんだよ。不倫してようが、歳の差があろうが、略奪しようが、自分たちの恋愛だけが正しくて、あとは汚くて、気持ちが悪い」ホントそれ。「正直すぎて、まいるわ」全さん、あんたもや。あーーー。肘まで果汁滴らせて桃かぶりつきたい!

  • 真夏の太陽と空気 生と死 濃密なエロス 好き
    妄想キャスティング
    全さん:豊川悦司
    藤子:うーん難しい 門脇麦?もっと若い方がいいかも

  • 大恋愛ですね。
    こんな恋愛はちょっと大変だな。
    主人公の周りの人が亡くなっていくので孤独。
    ごはんを美味しく食べられているのが強くて良い。

  • この小説を読んで、
    猛烈に鴨南蛮蕎麦を食べたくなった私です。

  • *夏の夜に出会った父より年上の男は私を見て「でかくなったなあ」と笑った。女に刺された腕から血を流しながら。―あのひとを知らなかった日々にはもう戻れない*

    痛々しい。その一言に尽きます。
    若さゆえの潔癖さ、頑なさ、傲慢さ、自意識過剰さ。
    今から芽吹き花開く命と、消えゆく命の対比。

    ‘‘みんな自分の恋愛だけがきれいなんだよ。不倫してようが、歳の差があろうが、略奪しようが、自分たちの恋愛だけが正しくて、あとは汚くて、気持ちが悪い‘‘
    本当にそれを体現したような物語。
    素晴らしい筆力とは思うけど・・・‘気持ちが悪い‘に軍配が上がってしまい、残念。生々し過ぎるのかな・・・

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2019年 『夜に啼く鳥は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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