- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163910697
作品紹介・あらすじ
「世界のホンダ」と称されるカリスマ演出家の新作公演直前、若き主演ダンサーが失踪を遂げた。鍵を握るのはカリスマ演出家と因縁の弟。芸術の神に魅入られた美しき男達の許されざる罪とは。
感想・レビュー・書評
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新しいものを読んでみようと、はじめての作家を選んだ。
本屋大賞ノミネートと書いてあったので、外れはないかと思いながら、表紙とタイトルのカインを見てある程度予測する。
「カインとアベルは、旧約聖書『創世記』第4章に登場する兄弟のこと。アダムとイヴの息子たちで兄がカイン、弟がアベルである。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの神話において人類最初の殺人の加害者・被害者とされている。(Wikipedia より)」
つまり、本作は、アベル役の藤谷豪がカイン役・藤谷誠に殺されるとすると物語として面白みがない、おそらく豪は、最後に亡くなりそうだが、きっと何か仕掛けがあるのだろうと考えながら読んでいたので、最後の結末を読んで、ああやっぱりと作者の気持ちが理解できた気になった。
そのため、「世界の誉田」と崇められるカリスマ芸術監督・誉田規一のパワハラのような言動にも意味があるのではと思いながら読んでいたため、元HHカンパニーダンサーの江澤智輝が「誉田規一は、作品と現実とリンクすることで話題になることに味をしめたのではないか」と言っている言葉が最後まで引っかかった。その推測もあり、最後に藤谷誠が亡くなった豪のことで誉田に電話した時、一番に駆けつけてきたのを知って、やっぱりと思うと、同時に、なぜ、彼が代役として尾上和馬を選んだのかも、説明の前にわかってしまった。全ては今まで積み上げてきた成果、舞台成功のため、それが芸術家の魂のように感じる。
そして、芸術という世界の中での作品の表現に魂を捧げている人たちの思考、精神に異様と言える空気が本作から感じるが故に、現実でもそうなのであろうかと考えると、彼らの作品を見て(鑑賞して)、「よかった」とか、「感動した」という言葉でしか伝えることができない自分が、彼らに対して申し訳なく思う一方で、彼らの住む世界に虚しさも感じた。
また、あれほど誉田に萎縮していた尾上が誉田の真意を理解する。このプロローグがあることで、悪を悪として終わらすこともなく、納得した結末にしており、作品としての読後の後味がよい。
最後に、今回、ストーリー展開の推測が容易で、読みやすかったのは、たまたまなのか、作者の意図するところが私の思考と合致していいたのか、何冊か読んでみようと思う。
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今年4冊目の芦沢央さん。「火のないところに煙は」が本屋大賞ノミネート作品だったこともあり、最近よく読んでいる作家さん。
新作の舞台はコンテンポラリーダンスの世界、ということで、「芸術の秋」だし、バレエ・ファンの僕としては、かなり盛り上がって買った。
「世界のホンダ」誉田規一率いるHHカンパニーの「カイン」公演直前に、主演に大抜擢されていたダンサー藤谷誠が姿を消す。〈カインに出られなくなった〉とメッセージを残して。バレエに人生の全てを捧げてきた誠の身に何が起きたのか?
そして、誠の弟で「カイン」の舞台芸術を担当する画家の豪。誠と豪の間には静かな葛藤の過去がある。
誉田・誠・豪のパ・ド・トロワのごとく、因縁が渦巻くストーリー。カインはいったい何を言わなかったのか?
…という話。
華やかな世界の裏側がドロドロと描かれていてイイ。
タイトルが秀逸だし、終わり方もとても良いです。
評価は限りなく4点に近い3点。 -
帯に書いてあった『狂おしいほどに選ばれたい』と言うキャッチコピーはまさにそれと思った。
血のにじむ様な努力をしてトップダンサーに上り詰め、そこからたった1人の主役に選ばれるまでの運と実力。
ライバルであり仲間を蹴落として主役の座に付いたはずのダンサーが公演直前に姿を消す。
一体何が?
と、思いつつ読み始めるけれども、この本の本当に驚くべき所はその姿を消した主役を追い求めるミステリーにはない別の所が本質だと思った。
アートと言う正解のない中もがき苦しんで、その先に見た景色の答えがこの本のラストに書かれていた。
最後の展開には思わず声が漏れる程に驚いた。 -
読むのにすごく力を必要とした作品。芸術の世界ってこんなにも精神力を必要とするのかと感じるし、人生を賭けてても結果に見合わない人なんてたくさんいるんだろうなと。
最終的に救われた人とそうでない人がキッパリ分かれたような結末。 -
前から読んでみたかったので、購入。
今回は、バレエ界の話。バレエ公演に向けて、様々な人たちが翻弄されていきます。
読んでいて、頭に浮かんだのは、映画「ブラックスワン」でした。主人公のバレリーナが、主役に抜擢されるが、そのプレッシャーや役にのめり込むうちに精神が崩壊されていく話です。
この本も登場人物の精神が崩壊されていく描写があります。
緊張の糸がピンと張り詰めるかのように読み手側もそれが伝わり、グイグイと物語の世界にひきこまれました。
作中、段々と「誰かが誰かを殺したい」という憎悪の塊を持つようになる人が何人か登場します。それまでに至る過程が色んな人物の視点を通じて、わかってきます。
そして、最後の部分で、本当の真相がわかった瞬間、ガラリと雰囲気が変わりました。ものの視点が変わることで、それまでのイメージが変わることに面白さを感じました。
精神的に追い詰められると、人間はどんな行動するのか。様々な人が、追い詰めた先の末路が描かれていて、人間としての怖さが如実に表れていました。
バレエ界ではありませんが、精神的に追い詰めるという意味では、演劇界では蜷川幸雄さん、映画界では中島哲也監督が有名かと思います。明確に指導するのではないので、答えがわからないまま、出口の見えない闇へと進みます。
経験したことがある人にしかわからない心情が文章に表れていて、未知の領域の世界に踏み込んでいる雰囲気を醸し出していました。
冒頭と最後には、ある評論家の公演に対するレビューが書かれています。最後のレビューでは一筋の光が感じ取れましたし、読み終わった後にもう一度冒頭を読むと、最初に読んだ雰囲気とは違った味わい方がありました。
一つのバレエ公演が、こうも様々な人間に影響を与えるとは。改めて奥深さを味わいました。
言葉のキャッチボールは、重要であると真摯に感じました。
演出家の視点も個人的には、入れてほしかったです。演出家の内面の部分も見ることで、この場面はどう思っていたのか気になります。 -
どこへ向かっているのか予想がつかず、ずっとドキドキしながら追い立てられるようにラストまで走った感じ。
芸術の極みを求める人たちを中心に、様々な立場の人たちの感情が蠢いていてどこを読んでも苦しかった。でも最後まで読んで、良かった、と思えるラストでした。 -
今年のマイベスト3間違いなさそう。
『許されようとは思いません』を読んで気にしつつも他作品を読もうかどうか迷っていた芦沢央さんでしたが(かつ、読むならデビュー作からと思っていたのですが)、いくつかのレビューを目にして俄然読みたくなった本作。
圧倒的に張り詰めた空気を保ちつつ進むストーリー、読みやすくも舞台や絵が思い浮かぶ描写、読んで良かった。
再読必至だし、やっぱり他作品も読んでみよう。 -
引き込まれやるせない思いだったが、登場人物の何人もが最後には浮かばれた、解放されたように感じた(数名は、疑っていなかった自分の立ち位置を見失ったようやけど…)。読み応えがあり、繰り返し頭に入れたい文章がいくつもあった。また読みたい。
著者プロフィール
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