Iの悲劇

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 245
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

作品紹介・あらすじ

一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。山あいの小さな集落、簑石。六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香(かんざん・ゆか)。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和(まんがんじ・くにかず)。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣(にしの・ひでつぐ)。彼らが向き合うことになったのは、一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった-–。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。『満願』『王とサーカス』で史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した最注目の著者による、ミステリ悲喜劇!

感想・レビュー・書評

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  • 過疎化により一度消滅した村。市はその村を再生させようと好条件で移住者を募った。「甦り課」の万願寺は、やる気のない課長・西野と、新人・観山でIターン者の支援をするが、不可解な事件が頻発する。観山はトラブルに奔走、村をよみがえらせることができるのか。
    地方の現実、困難なこと、生々しく反映されいるのではないでしょうか。読んで虚しさを覚えました。個々の公務員がいくら頑張っても視聴一つで変わってしまう。誰のための行政なのかなあと。一つ一つの章は大体こんな感じかなと予測できる感じでしたが、最後でこんな着地なのねと全てのものを解決して終わって、楽しめました。今度は、切れ物という課長の活躍のお話読んでみたいねえ。

  • 作者のこれまでの作品から来るあっと言うミステリー感への期待が大きく、ドキドキしながら読むが、過疎地に新たな住居者の移住を進める市の役所の担当チームと移住者らのやりとりが意外と淡々と進む。しかしながら、全体に流れる違和感や奇妙な雰囲気が拭えない中、物語は最終章まで進んでいく。最後は、なるほどそうだったかと唸らされる結末。作者の地方財政の在り方に対しての一石投じた内容が重い。

  • 住民が居なくなってしまった廃村に、都会からの移住者を募って復活させる。
    その計画を担当する市役所職員が主人公なのだが、初めこれのどこがミステリなの?となかなか入り込めなかった。
    移住して来た住人にはそれぞれ事情があって、他の住人とのトラブルから次々と出て行ってしまうのだが、米澤さんらしい仄暗いじめっとした雰囲気。

    普段全く仕事をしない上司が最後解決に乗り出すので、新しい形の名探偵???と戸惑っていた。
    それ自体が大きな仕掛けになっていて、最後驚かされたが、読後感はあまり良くない。

  • これはやっぱりミステリーなんだろな。幾つかのトリックは使われているし、解かれるべき謎はちゃんとあった。過疎問題や市の財政の問題など出てくるし、市役所のお仕事も出てくる。しかし、すべて話を作るために使われている感が強い。勿論、どんな小説だってすべては題材なんだろうが、それにしてもだ。要するにイヤミスなんだね。最初から、不穏な空気が漂っていて、上手くいきっこないと感じてしまう。それでもどんどん読まされてしまうんだね。やれやれだぜ。

    • やまさん
      goya626さん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      『左近 浪華の事件帖』シリーズは、3冊で終わりです。
      来年の1月に4冊...
      goya626さん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      『左近 浪華の事件帖』シリーズは、3冊で終わりです。
      来年の1月に4冊目が出る予定です。
      楽しみにしていてください。
      やま
      2019/12/05
  • 市長直属の甦り課と、Iターン支援プロジェクトの顛末を描く、連作短編集。

    タイトルといい、ラスト1行といい、ミステリ好きがにやりとする作品。

    Iターン企画でやってくる、さまざまな人間たち。
    そこで巻き起こるトラブルは、まさに社会の縮図で、「あるある」とおもうものばかり。

    公務員らしからぬ軽さの新人・観山と、やる気に欠ける課長の西野。
    いきおい、万願寺が孤軍奮闘するはめに。

    全編を通して、公務員の悲哀とブラックユーモアがただよう。

  • 〉残念だが、スタッフジャンパーを着てお客さん扱いされる場所は、この世のどこにもないのだ。どこにも。

    という米澤穂信最新作。
    住人がゼロになってしまった山間の小集落「簑石」に新たな住人を招致して復興しよう、という市役所「甦り課」のプロジェクトに抜擢されてしまった公務員の話。移住してきた住民たちは様々な理由でトラブルを起こし、櫛の歯が欠けるように去っていく…。

    いや〜…、まことに米澤穂信!って感じでございました。地方都市を舞台にするのが好きですね、米澤先生。

    六つの短編を一冊にした連作短篇集で、四篇が雑誌掲載、一篇は伏線の為のお話でとくに謎解きは無しという構成。
    はじめの掲載が2010年なんだけど、そこから書き下ろしのオチまで構想してたのかな…。気が長い。

    出世コースから外れたと、やややる気を無くしている主人公が、それはそれとして公務員としての気概・プライドを持って仕事している姿が好きです。観山のお馬鹿そうに見せて賢いキャラクターも好み。

    いつも丁寧な作劇だなーと思います。

    ところで富士山の絵は伏線じゃなかったのか…。なんも意味無かったのかな?

  • 著者得意の日常系の推理小説であるが、余りにも冗長な片田舎で起こる事件に途中退屈になったが、最後は一応どんでん返しが仕掛けられてあった。しかしそんな持って回ったことするか、命に関わるようなこともあったじゃないか。蓑石村のIターン事業に従事する甦り課でまともに働いているのは万願寺だけ課長の西野も後輩の観山もやる気なし、そりゃ目的が違うんだもの。いずれにしても廃村の再生事業なんてこの本の趣旨のとおり全く予算の無駄遣いだ、今だに過疎の村で行われている土木事業は全く税金の無駄遣いとしか思えないものが多いのは確かだ。

  • 市長のアイディアで始まった、『Iターン支援プロジェクト』。
    それは、高齢化で無人となった山間の集落に、都会からの移住希望者を募り、定住化させることで集落を甦らせようという計画。
    この事業の担当になった万願寺は、出世のためにこの事業を成功させようとするが、同じ「甦り課」に配属されてきたのは、フレンドリーすぎて公務員の自覚が薄そうな若い女性職員・観山と、やる気ゼロ、定時に帰る事だけに熱心な西野課長。

    移住してきた移住者が次々にトラブルを起こし、その度に振り回される万願寺。
    奮闘むなしく、だんだん移住者がいなくなって…


    『そして誰もいなくなった』で終わらない。
    何か変だとは、思っていたけれど…

    合理主義者のつもりでクールになりきれない万願寺が、冷たい真実を知っている側であった西野課長や観山に、ひとり踊らされていたことに、軽く落ち込む。
    肩を叩いて慰めたいけれど、何と言ってやれば良いのかわからない感じ。

    そして、現実にまわりでぶち上げられている○○プロジェクトだの○○推進支援だの、さも素晴らしいことのような顔をした、その実どこかの誰かのくだらない思惑を満たすためだけの胡散臭い浪費を、見抜けない小市民じゃマズいぞ!

    ちょっとした笑いをたくさんまぶしてあるけれど、かなり苦味の強い…リアルな悲劇でした。


    かなり前に読み終わったのに、感想を書きかけて中断してました。
    いま、感染症対策やらなんやらで、国も自治体もてんやわんや。
    実はそれも、信じられないような誰かの…

  • タイトルはエラリー・クイーンっぽいが、中身はクリスティの「そして誰もいなくなった」を思わせる筋立て。

    廃村を再生させるべくIターン事業に乗り出した、とある地方自治体の通称「甦り課」。奮闘の末、12世帯を迎え入れることになったが、なぜか次々と事件が起こり、一世帯、また一世帯と村を去っていく……。

    ごく普通だけどちゃんと仕事に熱意と誇りをもつ主人公、調子のいい後輩、昼行灯のようで要所で鋭さを見せる上司。甦り課のこの3人のバランスがいい。事件そのものは小粒で、人が死ぬわけでもなく、随所にクスっと笑えるような描写もあって楽しく読める。続編あるのかな、またこのトリオの活躍が見たいな……などと思って最終章まで行くと、そこにどんでん返しが。

    不穏な空気は最初からあったけど、こんなブラックな落ちが待っていたとは。地方都市の抱える病巣を目の前に突きつけられて、なんだか暗澹とした気分になってしまった。

  • 移住してくる人たちが(さすが選ばれただけあって!)とても面白く、楽しく読みました。
    そして最終章が「Iの喜劇」とあったので、自分なりに想像していたのですが、全く考えもしなかった結果。
    これからも米澤穂信さんの本を読みたい。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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