- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163910963
作品紹介・あらすじ
一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。山あいの小さな集落、簑石。六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香(かんざん・ゆか)。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和(まんがんじ・くにかず)。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣(にしの・ひでつぐ)。彼らが向き合うことになったのは、一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった-–。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。『満願』『王とサーカス』で史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した最注目の著者による、ミステリ悲喜劇!
感想・レビュー・書評
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六年前に無人になった村。
南はかま市蓑石に再生プロジェクトがもちあがり甦り課が創設されます。
メンバーは課長の西野、万願寺、観山遊香の三人です。
そして、開村式前に久野さんと安久津さんが移住するも火災が原因で安久津さんが夜逃げ同然に蓑石を去り、久野さんも出て行きます。
開村式後の五月、事業を興そうとして最初の一歩でつまずいた牧野さんも引き上げます。
七月には立石家の未就学児が迷子になり、久保寺さん宅の地下で動けなくなっているのが見つかります。久保寺さんはその子供の命を危険にさらしたことに責任を感じ、立石さんもにわかに蓑石の救急体制に不安を覚えてそれぞれ蓑石の生活をあきらめます。
そして十月、秋祭りの際に食中毒事件が発生し、キノコを提供した上谷さんと食中毒に遭った河崎さんは引っ越していきます。
というように、どんどん人が出て行ってしまいIターンの止まらない蓑石。
これは最後に何かある。何かないと収まらない。
一体何があるんだろうと思いました。
何もなければこの話がどうして、そんなに面白いのかわからなかったし。
やっぱりありました。最後に『Iの喜劇』が。
もの凄いどんでん返しという程ではなかったように感じられたので、星の数は一つ減らしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
連作短編集。限界集落をめぐる住民達の騒動とフォローに奮闘する公務員達。主人公が成長するいいお話系?と思いきやほろ苦い結末。イヤミスほど嫌悪感なくちょっとお笑いもあり、米澤さんらしいバランスのとれた話だった。
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過疎化により一度消滅した村。市はその村を再生させようと好条件で移住者を募った。「甦り課」の万願寺は、やる気のない課長・西野と、新人・観山でIターン者の支援をするが、不可解な事件が頻発する。観山はトラブルに奔走、村をよみがえらせることができるのか。
地方の現実、困難なこと、生々しく反映されいるのではないでしょうか。読んで虚しさを覚えました。個々の公務員がいくら頑張っても視聴一つで変わってしまう。誰のための行政なのかなあと。一つ一つの章は大体こんな感じかなと予測できる感じでしたが、最後でこんな着地なのねと全てのものを解決して終わって、楽しめました。今度は、切れ物という課長の活躍のお話読んでみたいねえ。 -
産業が衰退し予算に悩む地方都市南はかま市で立ち上げられた市の外れの蓑石村復興プロジェクト。その担当部所「蘇り課」の万願寺はマイペースな後輩観山とやる気ゼロの西山課長と共に一度住人がゼロになった村への移住者の定着に向けて東奔西走するが、小さな事件が次々起き、その度に人は去っていく。よくありそうな騒音問題「軽い雨」や思想の差異によるご近所トラブル「黒い網」の解決では堅実な日常の謎が楽しめる。読み進めていくとじわじわ黒い違和感が滲んできて「白い仏」で最高潮に達した時点で次の最終章、全てを繋げる真相が明かされる構成が上手い。何が正解か。色々ぐるぐる考えさせられる。
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これはやっぱりミステリーなんだろな。幾つかのトリックは使われているし、解かれるべき謎はちゃんとあった。過疎問題や市の財政の問題など出てくるし、市役所のお仕事も出てくる。しかし、すべて話を作るために使われている感が強い。勿論、どんな小説だってすべては題材なんだろうが、それにしてもだ。要するにイヤミスなんだね。最初から、不穏な空気が漂っていて、上手くいきっこないと感じてしまう。それでもどんどん読まされてしまうんだね。やれやれだぜ。
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goya626さん
こんばんは。
いいね!有難う御座います。
『左近 浪華の事件帖』シリーズは、3冊で終わりです。
来年の1月に4冊...goya626さん
こんばんは。
いいね!有難う御座います。
『左近 浪華の事件帖』シリーズは、3冊で終わりです。
来年の1月に4冊目が出る予定です。
楽しみにしていてください。
やま2019/12/05
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作者のこれまでの作品から来るあっと言うミステリー感への期待が大きく、ドキドキしながら読むが、過疎地に新たな住居者の移住を進める市の役所の担当チームと移住者らのやりとりが意外と淡々と進む。しかしながら、全体に流れる違和感や奇妙な雰囲気が拭えない中、物語は最終章まで進んでいく。最後は、なるほどそうだったかと唸らされる結末。作者の地方財政の在り方に対しての一石投じた内容が重い。
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市長直属の甦り課と、Iターン支援プロジェクトの顛末を描く、連作短編集。
タイトルといい、ラスト1行といい、ミステリ好きがにやりとする作品。
Iターン企画でやってくる、さまざまな人間たち。
そこで巻き起こるトラブルは、まさに社会の縮図で、「あるある」とおもうものばかり。
公務員らしからぬ軽さの新人・観山と、やる気に欠ける課長の西野。
いきおい、万願寺が孤軍奮闘するはめに。
全編を通して、公務員の悲哀とブラックユーモアがただよう。 -
初読みの作家さんで、他の作品も2、3冊チャレンジしてやっと最後まで読了した1冊。しかし4章と6章は飛ばしている。2章の『浅い池』は夫の元同僚の話を思い出した。退職後に山の麓を安くで購入し、掘った池にニジマスを飼い、周囲にネットを張りめぐらしたものの、上に張るのを忘れ全部鳥に食われちゃったよと、笑いながら語ってくれた。彼ら夫婦は、田舎暮らしは実際にやってみないと分からないことばかりと言いながら、今年で10年を迎える。
序章と終章が『そして誰もいなくなった』のフレーズで共に結ばれている。序章を読んですぐ血なまぐさい事件が頻発する展開が予想され、読むのをよそうかと思った。最終章を読み終え、各章ごとの腑に落ちなかった謎は解き明かされたが、後味の悪さは更に増した。懸念した陰惨な事件こそ起きなかったが、市長肝いりのIターンプロジェクト”甦り課”に与えられた使命はそれ以上に酷い。公務員の悲哀を感じる。 -
住民が居なくなってしまった廃村に、都会からの移住者を募って復活させる。
その計画を担当する市役所職員が主人公なのだが、初めこれのどこがミステリなの?となかなか入り込めなかった。
移住して来た住人にはそれぞれ事情があって、他の住人とのトラブルから次々と出て行ってしまうのだが、米澤さんらしい仄暗いじめっとした雰囲気。
普段全く仕事をしない上司が最後解決に乗り出すので、新しい形の名探偵???と戸惑っていた。
それ自体が大きな仕掛けになっていて、最後驚かされたが、読後感はあまり良くない。
著者プロフィール
米澤穂信の作品






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