Iの悲劇

  • 文藝春秋 (2019年9月26日発売)
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  • 本 ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

作品紹介・あらすじ

一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。





山あいの小さな集落、簑石。

六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、

Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。



業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。



人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香(かんざん・ゆか)。

出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和(まんがんじ・くにかず)。

とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣(にしの・ひでつぐ)。



彼らが向き合うことになったのは、

一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった-–。



徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!

そして静かに待ち受ける「衝撃」。



『満願』『王とサーカス』で

史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した

最注目の著者による、ミステリ悲喜劇!

感想・レビュー・書評

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  • 米澤穂信さん著「Iの悲劇」
    著者の「王とサーカス」に魅せられてからというもの米澤作品を立て続けに読んでいる。

    物語は過疎化し廃村された村に新たに住民を募り村を復興させていくという行政のプロジェクト内で起こる人間ドラマが描かれている。
    しっかりとした舞台背景があるため巻き起こる移住者同士のトラブルがとてもリアルに感じられる。そのどれもが物語として面白かった。

    終章でこの物語の最終的な種明かしがあるため連作短編集としてミステリー作品としてしっかりとした形にはなっているのだが、その最終的な行政主導の目論見は自分の望むものではなかったため残念感が強く残ってしまった。

    東京生まれ東京育ちで人口が少なく不便な土地や村で暮らした事がないため軽々しく語ることはできないけれど、この作品の移住者達の様に都会の生活に嫌気がさし、そういう村や集落の生活に憧れを抱く人々は少なからずかなり存在するはずだ。
    そういう夢や希望や理想の延長線上で生活をしてもこの作品のように住民トラブルは確実に起こり得ると思える。その夢や理想が大きければ大きい程トラブルも多くその根は深いものになりやすいだろう。
    結局は場所や土地云々というより「住みやすさ」とは己も含めてその近隣の人々の人間性によって左右されるものだろうという結論に至ってしまう。

    そしてその「住みやすさ」とは集団性という暮らしの中にある性質の一部なのだが、個人が重視される世の中だからそうした性質の一部分がクローズアップされ違和感や不信感がさらに際立つのだろうと思った。



  • 六年前に無人になった村。
    南はかま市蓑石に再生プロジェクトがもちあがり甦り課が創設されます。
    メンバーは課長の西野、万願寺、観山遊香の三人です。

    そして、開村式前に久野さんと安久津さんが移住するも火災が原因で安久津さんが夜逃げ同然に蓑石を去り、久野さんも出て行きます。
    開村式後の五月、事業を興そうとして最初の一歩でつまずいた牧野さんも引き上げます。
    七月には立石家の未就学児が迷子になり、久保寺さん宅の地下で動けなくなっているのが見つかります。久保寺さんはその子供の命を危険にさらしたことに責任を感じ、立石さんもにわかに蓑石の救急体制に不安を覚えてそれぞれ蓑石の生活をあきらめます。
    そして十月、秋祭りの際に食中毒事件が発生し、キノコを提供した上谷さんと食中毒に遭った河崎さんは引っ越していきます。

    というように、どんどん人が出て行ってしまいIターンの止まらない蓑石。
    これは最後に何かある。何かないと収まらない。
    一体何があるんだろうと思いました。
    何もなければこの話がどうして、そんなに面白いのかわからなかったし。

    やっぱりありました。最後に『Iの喜劇』が。
    もの凄いどんでん返しという程ではなかったように感じられたので、星の数は一つ減らしました。

  • 題名から面白そうと読んだけど、自分が思っていたようなミステリーではなかった。

    米澤さんなので話の中に引き込まれていくけど、移住者たちのトラブルが結構地味。

    これは最後に何かあるよねと期待したけど、伏線回収というほど驚くものではなく、そうだよねという感じだった。
    つまらない訳ではないけど物足りない、テーマも自分には合わなかった。
    Audibleにて。

  • 連作短編集。限界集落をめぐる住民達の騒動とフォローに奮闘する公務員達。主人公が成長するいいお話系?と思いきやほろ苦い結末。イヤミスほど嫌悪感なくちょっとお笑いもあり、米澤さんらしいバランスのとれた話だった。

  • コロナ禍と働き方改革の影響でリモートワークを行う人が増え、地方へ移住する人も増えたようだ。そして、移住したもののその土地での生活に順応出来ず離脱する人が後を絶たないという話もこれまたよく聞く。
    最初はこの作品もそういう田舎暮らしに憧れて移住してきたが、離れざるを得なくなるちょっとした小ネタのミステリかと思って読んでいた。ところが最後のオチにはびっくり。久しぶりにほぉ〜、さすが米澤穂信だ、やるなぁと感心した。
    世の中、何事も表と裏がある。それを改めて考えさせられる作品だ。秀作。

  • IというのがIターンのことで、誰も住まなくなった過疎地に移住者を呼び込むというもの。そこから地域創生、発展を期待して…といった、よくある話や…と思っていたら、1人、また1人と悲劇が起こって立ち去っていく。
    架空ではあるけど、日本の過疎地で起こっていることなのでは?と思って読み進めていたら最後にどんでん返しで、なるほど〜と思ってしまった。
    本だからできるオチ。現実には一度進んだら後には引けない。
    自治体はこの本読んで、始める前によく考えたほうがいいと思った。

  • 一度死んだ村蓑石に人を呼び戻し定住させる。
    その為に設立された「甦り課」。
    メンバーは学生っぽさの抜けない観山、やる気の薄い西野課長、公務員らしい公務員の万願寺の3人。彼らはプロジェクトを成功させる事ができるのか…

    「何かあったら…なんでも相談に乗りますから」万願寺は住民に声をかける。
    だけど実際は何も出来ない。公務員は人間関係に介入する術がない、何より予算がないのだ!

    個性的な住人たちのご近所トラブルは何ひとつ解決出来ず、蓑石にはずっと不穏な空気が漂っている。
    何故トラブルばかり続くのか…夢と希望を抱いて移住してきた人たちたちはひとりまたひとり去っていく。

    今まで市の予算について真面目に考えた事がなかった。
    色んな事にお金はかかる。何を切り捨て何を優先させるのか。公務員って大変なんだよ。

    最終章では蓑石でのこれまでをみんなで振り返る。裏話にゾワゾワする。
    「いつの事だか思い出してごらん〜あんな事こんな事あったでしょう〜♪」が頭に浮かんできて、切なくなった。

    • くるたんさん
      こちらでもこんにちは♪

      この作品、図書館予約してるけど半年はかかりそう。
      米澤作品らしいテイストなのかな?
      考えさせられるって…ちょっと心...
      こちらでもこんにちは♪

      この作品、図書館予約してるけど半年はかかりそう。
      米澤作品らしいテイストなのかな?
      考えさせられるって…ちょっと心して読もう(´□`; 三 ;´□`)
      公務員って大変、にチカラ入ってる( ´ω`)و グッ!
      2019/10/28
    • あいさん
      くるたん♪

      こちらでもこんにちは(^-^)/
      半年⁉︎ さすが米澤穂信人気だわ!
      この作品、Amazonで凄く評価よくて、思わず...
      くるたん♪

      こちらでもこんにちは(^-^)/
      半年⁉︎ さすが米澤穂信人気だわ!
      この作品、Amazonで凄く評価よくて、思わず購入しちゃった(笑)
      でも、図書館でいいわ(*≧艸≦)
      米澤穂信テイスト…後味の悪さは彼らしいけど、ちょっと控えめかな。
      私はやっぱり「儚い羊たちの祝宴」が好きだわ。
      考えさせられるのは予算の事だから大丈夫よ(。•̀ᴗ-)و ✧
      税金って大事なんだね。
      公務員、ふふふ、応援しなくちゃ!
      2019/10/28
  • 産業が衰退し予算に悩む地方都市南はかま市で立ち上げられた市の外れの蓑石村復興プロジェクト。その担当部所「蘇り課」の万願寺はマイペースな後輩観山とやる気ゼロの西山課長と共に一度住人がゼロになった村への移住者の定着に向けて東奔西走するが、小さな事件が次々起き、その度に人は去っていく。よくありそうな騒音問題「軽い雨」や思想の差異によるご近所トラブル「黒い網」の解決では堅実な日常の謎が楽しめる。読み進めていくとじわじわ黒い違和感が滲んできて「白い仏」で最高潮に達した時点で次の最終章、全てを繋げる真相が明かされる構成が上手い。何が正解か。色々ぐるぐる考えさせられる。

  • 過疎化により一度消滅した村。市はその村を再生させようと好条件で移住者を募った。「甦り課」の万願寺は、やる気のない課長・西野と、新人・観山でIターン者の支援をするが、不可解な事件が頻発する。観山はトラブルに奔走、村をよみがえらせることができるのか。
    地方の現実、困難なこと、生々しく反映されいるのではないでしょうか。読んで虚しさを覚えました。個々の公務員がいくら頑張っても視聴一つで変わってしまう。誰のための行政なのかなあと。一つ一つの章は大体こんな感じかなと予測できる感じでしたが、最後でこんな着地なのねと全てのものを解決して終わって、楽しめました。今度は、切れ物という課長の活躍のお話読んでみたいねえ。

  • さすが米澤穂信という感じ。
    一気に読んでしまった。
    最後のオチを知ってから再読したら、所々でニヤリとしてしまうんだろうな。

    地方創生って言葉は良いけど、現実はどうなんだろうね?って話。
    政治と行政、選挙と公約、壮大な撤退戦を闘う行政の現場は大変なんだろうと思う。
    まあ、だから公務員としての身分も保証されているんだろうけど。

    ミステリ悲喜劇とは、よく言ったもんだと思った。

    Amazonより--------------------
    一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。

    山あいの小さな集落、簑石。
    六年前に滅びたこの場所に人を呼び戻すため、
    Iターン支援プロジェクトが実施されることになった。

    業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」の三人。

    人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香(かんざん・ゆか)。
    出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和(まんがんじ・くにかず)。
    とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣(にしの・ひでつぐ)。

    彼らが向き合うことになったのは、
    一癖ある「移住者」たちと、彼らの間で次々と発生する「謎」だった-–。

    徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!
    そして静かに待ち受ける「衝撃」。

    『満願』『王とサーカス』で
    史上初の二年連続ミステリランキング三冠を達成した
    最注目の著者による、ミステリ悲喜劇!

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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