Iの悲劇

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910963

感想・レビュー・書評

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  • 地方自治の難しさが伝わってきました。
    万願寺さんはこれからどうするのでしょう。
    序章が”Iの悲劇”で終章が”Iの喜劇”なのはさすがです。

  • 地方の人がいなくなった集落にIターンプロジェクトが発足し、とぼけた2人の市役所職員が振り回されるブラックコメディ、
    かと思いきや、最後に少しのどんでん返しがある。

    地方自治の矛盾や難しさを感じてしまった。

  • 地方行政を舞台にしたミステリ。 タイトルは言わずと知れたクイーンの名作から。 Iターンを積極導入する地方で、住民間でありえない事件が頻発する。読み進めるうちに、読者も真相に気付くことになる。 やや突飛な内容ではあるが、地方行政問題を取り扱った珍しい作品。

  • 序章の「Iの悲劇」は山深い山村が100歳の女性が息を引き取ったことで次々村人が出てゆき遂に無人となってしまったことが描かれる。悲劇とあるからにはおどろおどろしい惨劇が起こるのか?と思いきや、読み始めると、その無人となった蓑石村の廃屋に都会の人を呼び込もう、というIターン事業をする市役所の職員とIターン者たちのエピソードが描かれる。

    これは「Iターン村おこし顛末記」としてもいいのでは?と思いながら読んで、どこか篠田節子を思わせる雰囲気だなと思ったが、終章の「Iの喜劇」にきて、こう来るか!とまたしても米澤さんの発想力にはやられました。

    廃村にまつわる悲劇であり喜劇であり、陰謀であり、やはり悲劇なのかなあ。Iターン担当の若い市役所職員の仕事ぶりが実にリアルな筆致で、米澤氏は誰か知り合いに実情を聞いたのかな。別のサイトの感想で実際にIターンして生活している人がちょっと不愉快だとした感想を載せていた。確かに真面目に取り組んでいる人はそういう感想を持つかも。

    それに場所はなんとなく米澤氏の出身の高山市のはずれのどこか、なんて想像をしながら読んだ。合併で端っこになった雪深い山村の様子もリアル。次に借りてきている「クドリャフカの順番」の著者紹介に、1978年、鉱山街に生まれる。とあった。う~むこれは、と思い出身、鉱山街で検索をかけると、飛騨市神岡町生まれ、中学の時、高山市に移った、とあった。そうか、あのカミオカンデのある町。どうりで端っこになった山村の描写がリアルなわけだ。

    この本でも「犬はどこだ」でも山間部の小さな町で図書館で気軽に調べ物をする主人公たちが出てくる。米澤氏自身の経験なのか。検索では神岡町は昭和53年に独立した町立図書館ができて岐阜県内では先駆的だったとある。高山市図書館も戦前から図書館があって先駆的だったようだ。米澤氏の育った80~90年代では全国で図書館ができていた時代だったともいえるのか。

    序章「Iの悲劇」
    「軽い雨」(オール推理2010)
    「浅い池」
    「重い本」(オール讀物2015.11月号)
    「黒い網」(オール讀物2013.11月号)
    「深い沼」
    「白い仏」(オール讀物2019.6月号)
    終章「Iの喜劇」



    2019.9.25第1刷 図書館

  • 人が住まなくなってしまった忘れ去られた村、簑石。そこへ地方移住者を募り、再生させようというプロジェクトが持ち上がる。
    出世を望んでいた万願寺は、そのプロジェクトに関わるうち、なぜか何度も移住者がそこを去る事件へ遭遇することとなる。
    それは偶然なのか、祟りなのか、果たして。

    これは新しい形の、そして誰もいなくなっただわ。
    公務員というお仕事ドラマでありながら、ミステリを絡ませた米澤さんらしいお話。
    読了して頭をよぎったのは、正義の反対はまた別の正義、という言葉でした。

  • 日常系ミステリを読みたいなーと思って読んで、想定通り。安心して読めました。オチまでだいたい想定の範囲内でした。【2021年6月20日読了】

  • 地方自治体の過疎化の苦悩をIターンした住民と役所の職員を通して、ミステリータッチに描いた作品。土地が広くても、産業もなく人口が減っていく地方自治体は、日本にたくさんあるんでしょうね。

  • 「Iの悲劇」というからエラリー・クィーンの「Y(X・Z)の悲劇」や夏樹静子の「Wの悲劇」のような本格的ミステリーかと思いきや「Iの悲劇」の「I」はIターン(移住)の「I」だった。
    六年前に滅びた山あいの小さな集落簑石に人を呼び戻すため、市長肝いりでIターン支援プロジェクトが実施されることになる。
    業務にあたるのは簑石地区を擁する、南はかま市「甦り課」。実際申込み者が多く、10世帯が移住してくる。
    短編各章でその移住者たちに、ちょっとした事件(だから最初はだるいが、でも一つ一つがちょっとした謎解き風)が起こり、その世帯は次々と出ていってしまう。
    最後の章の「Iの悲劇」でその事件の真相が明かされる大団円的どんでん返し。そして最後のフレーズが「そして、誰もいなくなってしまった」。殺人事件のような大事件ではないが、立派なミステリーでした。

  • 王とサーカスよりも、上手く印象深い。
    伏線の回収が見事。

  • 図書館で借りた本。
    人が住まなくなった地区に人を招き入れ、市を活性化させる計画が立ち上がり、市役所の中に「甦り課」が設置され、万願寺は配属された。いよいよ最初の住民が移り住み始め、うまく行くかに思われたIターン計画だったが、住民同士の諍いがあったり、事故が起こったり、なかなかうまくは進まなかった。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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