オーガ(ニ)ズム

著者 :
  • 文藝春秋
3.87
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本棚登録 : 115
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (861ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910970

作品紹介・あらすじ

舞台の書き割りのように嘘っぽく、突き破って奥へ進んでもまた別の書き割りが現れるこの世界で、翻弄される人間たちもまた、その書き割りの一部のように描いた。作り物に徹するその絵には乾きのおかしみがあり、胸に深く迫ってくるのだ。本作は高度に複雑化し、現実より「作られた現実」の出来事が強い力を持つ社会を生きる現代人の感覚を強く意識する。(「読売新聞」5月28日、文芸月評より)※※※※※現実が終わり、伝説も終わる――作家・阿部和重の東京の自宅に、ある夜、招かざる客が瀕死の状態で転がり込んできた。その男・ラリーの正体は、CIAケースオフィサー。目的は、地下爆発で国会議事堂が崩落したことにより首都機能が移転され、新都となった神町に古くから住まう菖蒲家の内偵。新都・神町にはまもなく、アメリカ大統領オバマが来訪することになっていた。迫りくる核テロの危機。新都・神町に向かったCIAケースオフィサーと、幼い息子を連れた作家は、世界を破滅させる陰謀を阻止できるのか。『シンセミア』『ピストルズ』からつづく神町トリロジー完結篇。作家、3歳児、CIAケースオフィサーによる破格のロードノベル!

感想・レビュー・書評

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  • 860ページの長編、最初は正直、永遠に読み終わる気がしなくてどうなることかと思ったけれど、200ページを過ぎた頃だろうか、オバマとゴルフクラブのくだりあたりからじわじわ面白くなってきた。というか、楽しみ方がわかってきて、無事に最後まで読めました。以下、感想を備忘録的に。

    *『シンセミア』未読、『ピストルズ』面白かったけど内容全部忘れた状態で読みました。なまじ『ピストルズ』を読んでいただけに「ああこの人物いたな。でもよく思い出せない」というモヤモヤが序盤の停滞の原因となった気がする。でも、思い出すのを潔く諦めてからは流れに楽しく乗れるようになった。楽しみ方としては、ひたすら台詞の応酬が続くタランティーノの映画とか、黒沢監督でいうと『ドッペルゲンガー』や『セブンスコード』、あと、今年読んだピンチョンの『LAヴァイス』に近いのかな。
    *愛してやまない『ミステリアスセッティング』と少しだけつながっているおかげで挫けずにいられた。
    *独特の文体は最初「うーん、ちょっと滑ってる?」と感じてしまったんだけど、だんだん憎めなくなってきた。例えば、英語の小説なんかでは普通にある、固有名詞や代名詞ではなく「四五歳の小説家」といった説明的な表現を主語にあてる手法。最初はちょっとうざかったのだが、執拗に繰り返されると「許せる」を通り越して「好きかもしれない」とすら思えてくるというか。
    *アヤメメソッドの特性上、どこまでが幻でどこからが現実なのかよくわからない。慣れてくると「ああ、これは幻覚なのだな」とわかってくるのだが、ちょっと油断するとすぐ騙される(笑)。この仕組みは面白かった。あと小刻みに時系列が戻ったりするのも。
    *これだけ育児に積極的な父であっても、「父と子」と「母と子」のつながりってのは種類が違うんだなあ、と妙に感心してしまう部分多々あり。きのこ頭の映記くんの脳内キャストは『シャイニング』のダニー坊やで。
    *数々の引用の何割くらいを理解できたのかはわからないけど、知ってるの出てくると嬉しくなりますね。とりわけ、最後に引用された詩人。これを数年前に訳した本を通して知っていたことは、長い物語を読み通したごほうびのように感じました。知らない固有名詞は基本読み流したのだけれど、けものの勘で唯一ググった「アッシュ・ケッチャム」はググってよかった。

    ちょうど文芸誌の書評が出そろうタイミングで読み終えられたので、近々で図書館に行って各誌読み散らかしてこようと思う。

  • 「シンセミア」「ピストルズ」に続く神町トリロジー最終作。阿部和重は神町を書くのはこれで最後だとあとがきで述べている。本当に最後なんだな...と思わせる大作である。
    阿部和重作品を初めて読んだのは、本作品でも散々言及される「スパイ養成所出身者の日記という設定」の「インディヴジュアル・プロジェクション」であるが、それ以前の阿部和重作品はよくも悪くも形式的な文章に拘っているように読め、(全く内容が思い出せない)「ABC戦争」始め、「とにかくなにがなんだかよくわからず、情報が絡まって複雑極まりないが、力業で押し切って読ませてしまう」文体だった。当時高校生だった私の脳は爆発寸前であった。
    これまた本書に言及がある「ニッポニアニッポン」、すなわち「シンセミア」以降の阿部和重は情報量をそのままに文体を変化させている。それは純文学の論理の中にエンタメを巧みに組み込んで大風呂敷を広げまくる作品であり、広げ切った風呂敷をそれでも(広げる前のようにはいかないが)畳むことのできる稀有な作家となった、ように思う。
    やっと本作「オーガ(二)ズム」の話に移ると、主人公は「テロリズム、インターネット、ロリコンといった現代的なトピックを散りばめつつ、物語の形式性をつよく意識した作品を多数発表している」作家・阿部和重である。自己を投影した主人公の紹介がWikipediaからの引用である点がまず興味深い。彼の家に血塗れの外国人が転がり込んでくるところから物語は始まり、「シンセミア」「ピストルズ」のみならず「ニッポニアニッポン」「ミステリアスセッティング」などの著作を巻き込みながら物語はどんどん広がってゆき、そして「神町」に収斂する。
    兎にも角にもまずはこの小説の情報量である。ニュースからの引用を巧みに構成した物語世界は、明らかにぶっ飛んでいるのにリアルである。この構成力には舌を巻くほかない。そして、情報の細かさ。とにかく商品名から何から何まで具体的名称に拘った表記。読みながら何度かGoogleのお世話になった。
    そして極上のエンタメ、ロードノベル感を提供しながら圧倒的に描かれるのがこの日本の形。CIAにひたすらこき使われる阿部和重(彼が「アッシュ・ケッチャム」の渾名を付けられるのはさすがに調べて笑ってしまった)、本人も「属国人」と名乗る日米関係。そしてその裏で暗躍するものの「望み」。広げに広げた風呂敷を大団円で畳まず、26年後に飛ばして見せる日本の形。
    そして私もすっかり忘れていた「アヤメメソッド」。この力の強大さが物語に「信頼できない語り手」を頻出させ、物語が複雑化する。と同時に「人の心を操る」とは何なのか、人心とは何なのかを昨今の社会情勢とともに考えずには居られない。
    「神町サーガ」のなかでもとりわけ読みやすいこの作品は、齋藤環の指摘もあるように伊坂幸太郎との共著「キャプテンサンダーボルト」を想起させる。リーダビリティも人への薦めやすさもトリロジー中いちばんだ(「シンセミア」は表立って人に薦めにくかった...)。トリロジーを全部読むのが厳しいと思っても、この1冊から遡っても全く問題ないので、是非この大きな偽史物語を読んでいただきたく思う。

  • 読了できず

  • 売れない作家の阿部和重がCIAのケースオフィサーのラリーさんと組んで?テロ防止に活躍する。オバマのくだりは どこまでがフィクションなのか?OSANAGI-YAMAの謎は?菖蒲(あやめ)家は何を目指してたのか?
    とにかくボリュームが多く、神町3部作の最初の2作を未読のため、作者の世界観に慣れずに読み疲れてしまった。 
    最も印象深かったのはエピローグの日本が米港51番目の州になるくだり。人の心を思いのままに操る影の一派が、数年で世論をころっと様変わりさせてしまうという逸話は、ノンフィクションでは?と思えてしまう。小池知事を祭り上げた世論が あっという間に冷めたり、森友・加計・桜を見る会で最大限の痛手を受けたと思われた安倍政権が崩れなかったり、憲法改正も数年で当たり前になるかも。菖蒲みずきは実在するのでは?と薄気味悪さが残る。

  • ★ギャップ萌えの冒険譚★著者の本はあまり読んでいないが、勢いと粘りのある文体で冒険がどんどん進んでいく。首都移転したとする山形の片田舎を舞台に、オバマ大統領まで登場してCIAが暴れまわる。そこにアヤメメソッドという一種の催眠術が加わり、サブカルと世界陰謀史が交わるギャップが面白い。これだけの舞台を設定し、理解しきれない引用を交えて物語を展開するのは、壮大なほら話を読んでいて爽快。著者の名前と設定を借りた主人公が事件に巻き込まれておたおたするのは、3人称だが1人称っぽくみえて興味深い。さすがに最後になるとちょっと飽きてくる。

    ただ、カギを握る少年や人を操れるアヤメメソッドの継承者の部分について、隠して隠したうえでちらりと見せた部分がとってつけたような感じがする。神秘さが中途半端に思えた。題名の意味が残念ながら分からなかった。

  • 『シンセミア』『ピストルズ』から20年の完結。感慨深いものがある。
    しかも、主人公のひとりは、ドナルド・トランプではなく第44代前アメリカ大統領バラク・オバマ。彼を磁場として、猛烈な勢いで前2作の出来事の意味が吸い寄せられていく。

    これまでに制作された映画はもちろん、音楽からの引用もかなり意識的になされていて、阿部和重版USJ的テーマパークにでも迷い込んだかのような、知的快感にあおられっぱなしだった。

    なんと阿部和重当人も、CIAの捜査員ラリー・タイテルバウムの補佐役として主役格で登場し、かなり手の込んだフィクションであるにもかかわらず、私小説への目配せも怠らない。

    どこまで意識的で戦略的な作家なんだろうと、なんとなく嘆息すれば、ああ、だからCIAなのかと、また発見するしまつ。阿部和重にとって、無意識とはなんなのか。

  • 読んでる間は夢中でしたが、結局よくわからない、これ自体がアヤメメソッドに囚われてるような。もろもろ投げ出されっぱなしのような。いかがわしさ横溢で宙ぶらりんにもかかわらず混乱させるためにかあえてリアルな固有名詞をたくさん使っているので、物語中で虚実入り混じるような、なんだかヘンな感触でした。

  • 神町トリロジーの最終作。オバマ大統領来日に迫る核テロの危機に立ち向かうCIAケースオフィサーと作家 阿部和重と息子。フェイクとリアルを織り交ぜながら進むメタフィクションに圧倒される。膨大な情報量と映画的展開。久々に良質な大きな物語を読んだ。‬

  • 【『シンセミア』『ピストルズ』に続く神町シリーズ最終章!】ある夜、阿部和重邸に、アメリカから瀕死の諜報部員が転がり込んだ。時空を超えた壮大な旅が始まる。日米を股にかけた大巨編の誕生。

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著者プロフィール

1968年生まれ。『アメリカの夜』で第37回群像新人賞を受賞し作家デビュー。’99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年に『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞、’05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、’10年本作で第46回谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書『クエーサーと13番目の柱』『IP/NN 阿部和重傑作集』『ミステリアスセッティング』ABC 阿部和重初期作品集』対談集『和子の部屋』他多数。

「2013年 『ピストルズ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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