菊花の仇討ち

  • 文藝春秋 (2019年9月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163910987

作品紹介・あらすじ

花に殉じる覚悟を持った男が踏み外した道とは――



変化朝顔の栽培が生きがいの同心・中根興三郎は、菊作りで糊口をしのぐ御家人・中江惣三郎と知り合う。だが帰り路、興三郎は中江と間違えられて、謎の侍たちに襲われかける。じつは中江は金のために菊を使って悪事を重ね、恨みを買っていたという。興三郎は憤りつつ、中江のしていることに疑問を抱く……。



花を愛する人びとが織りなす江戸の人間模様を描く佳品。

ほかに「くだりの小袖」「鳴けぬ鶯」「禅の糸車」「花ぬすびと」「わりなき日影」収録。



松本清張賞受賞作『一朝の夢』、続編『夢の花、咲く』に続く〝朝顔同心〟シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 朝顔同心シリーズ第三作。
    名簿作成役という完全デスクワークの傍ら、変化朝顔の栽培に夢中な同心・中根興三郎。
    彼が朝顔や懇意にしている植木屋の親子との関わりの中で、様々な事件に遭遇する。

    普段は同じ北町奉行所の同心や与力にも存在を忘れられるほど影が薄いものの、変化朝顔の話になると熱くなる。
    興三郎の朝顔への情熱は単なる趣味や金儲けや功名心などではなく、純粋な朝顔への興味と愛情と夢があるのが良い。

    朝顔は計算通りには出来ないように、人の世界もままならぬもの。
    安政の大地震から一年以上が経った頃という設定のため、地震により暮らしや人生が一変した人々が出てくる。
    現代でも災害から立ち直るのは大変なことだが、当時のはもっとだろう。
    弱い立場の者は搾取され、立ち直るためにはより強かに生きるしかない。
    一方で手を差しのべる人々も出てくる。植木屋の娘おみねもそうだし、おみねの友達お徳と寄り添うおそめもそう。

    変化朝顔作りは金子ではない、その作り手の思いきや努力や長い年月をかける忍耐力などを量れる者だけがその儚い命の価値を分かる者でもある。
    同様に、罪を犯した者のその思いも掬い取らねば本当の再生には繋がらない。

    幸いにもこの作品には思いを掬い取れば再生出来る者が沢山いた。
    普段は朝顔のことばかりで身近にいる藤吉のこともなかなか気付けなかった興三郎が、きちんと人の思いを掬い取れる者で良かった。

    何かと絡んでくる三好なる謎の用人が何者なのか、これから興三郎とどう関わるのか気になる。
    ということは、このシリーズはまだ続くということか。

  • 興三郎が相変わらずほわんとしていて優しい。
    罪を犯した人への対処もそれでいいのかというくらいの甘さ。
    でもそのため物語り全体が柔らかくて読みやすいです。

  • アサガオの変異は奥深くて,2020年度の大学入試センター試験に出たほど!?
    江戸時代の系統の多くは失われたみたいですが(そもそも”出物”は,この本にある通り種子ができないし),明治以降もブームはあって,その一部は現在九州大学で保存されているそうです.http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/
    2014年には基礎生物学研究所が"「幻のアサガオ」といわれる黄色いアサガオを再現”
    https://www.nibb.ac.jp/press/2014/10/10.html
    とプレスリリースしましたが,キンギョソウの遺伝子を導入した遺伝子操作植物でした.
    ほんとに夢の花なのですね.

    ところで,今作は前作の「夢の花、咲く」の時代,安政の大地震(安政2年,1855)から1年あまり後のお話.第1作の「一朝の夢」は桜田門外の変(安政7年)の頃の話だったので,4年ほど遡っているんですね.よく覚えていませんが,今作の謎の人物は第1作にすでに登場していたりして...

  • 興三郎さん、なんと長らくお待ちしたことか。前作から8年ですよ。当時、あなたから変化朝顔を学び、どうしても咲かせてみたくて国立民族博物館にお願いして種を譲っていただいたんです。ありがたくも数種類の種をいただき、今年も花を咲かせておりました。一番のお気に入りは青打込堺渦柳葉白撫子采咲ですが、どうやら自然交配したらしく姿は変じております。興三郎さんの登場がない間、同じ匂いのする御薬園同心の水上草介さんを贔屓にしておりました。どうか閑職同心として、朝顔の蔓のごとく細く長くご活躍願います。

  • 初出 2017〜19年「オール讀物」。朝顔同心シリーズ第3作。

    北町奉行所の名簿役という閑職の同心中根興三郎は、丹精込めて変化朝顔を育てていて、人見知りで口下手なのに朝顔を語ると止まらなくなる変わり者。下谷の植木屋留次郎と親交があり、その娘みねからも慕われているが、色々頼まれもする。
    おみねから行方不明になった幼なじみのお徳を探すよう頼まれるが、お徳は安政の大地震で孤児になった子供達をまとめてかっぱらい集団を作っていて捕らえられる。そのきっかけになったのはお徳が忍び込んで手に入れた変化朝顔の小袖が古着屋に売られたことで、受取人の盲目の娘が死んだことが分かってお徳は後悔する「くだりの小袖」が出色。
    ほかに、中根家の下男で父や兄が常町廻りだった時の小者の藤吉が騙され、芸者小梅の盗みの隠れ蓑にされた「鳴けぬ鶯」、興三郎が時々講義する星陵塾で学ぶ腰越順平の長屋の世話好きおそめが、お徳に小間物の店を持たせるが、寂しさを抱えていてお徳と親子になる「善の糸車」、菊作りの名手中江があちこちで詐欺まがいで儲けているのをやめさせる表題作、品評会の招待作が盗まれた「花ぬすびと」、震災で生き別れた姉を吉原から見つけ出し、朝顔の種で身請けする「わりなき日陰」。

    三好という謎の剣の遣い手が折々興三郎に接近してくるのだが、連載が半年ごとなので正体が分かるのは3年後?

  • オール讀物2017年2月号:くだりの小袖、6月号:鳴けぬ鶯、2017年12月号:善の糸車、2018年6月号:菊花の仇討ち、12月号:花ぬすびと、2019年6月号:わりなき日影、の7篇を 2019年9月文藝春秋から刊行。朝顔同心シリーズ3作目。今回も、登場人物が楽しい。うまい展開だと思います。

  • 名簿を作成する仕事をする同心、興三郎は、朝顔を育てるのが好きであり、もう一つの仕事でもある。ただの朝顔ではなく、変化朝顔で、様々な形や色で、好事家達に喜ばれている。夢は黄色い花を咲かせる事だ。
    そんな興三郎が、様々な事件に会い、解決する物語。
    この頃の朝顔栽培の熱狂ぶりは凄かったらしい。一鉢何両もして、コンテストも開催されるほどだったとか。
    そんな朝顔栽培をする同心とその周りの人達が描かれている。

  • 【人気シリーズ「朝顔同心」の第三弾!】朝顔栽培に熱を上げる北町同心・中根興三郎は姪のおみねから家出した友人を探してほしいと頼まれる(くだりの小紋)。ほか五編収録。

  • 朝顔好き同心。探偵まがい。

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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