こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911014

作品紹介・あらすじ

主演にカトリーヌ・ドヌーヴを迎え、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークら錚々たるキャストが出演する、是枝裕和監督の最新映画『真実』。監督初の国際共同製作作品として、全編フランスで撮影され、2019年10月11日に日本公開される。是枝監督自身が、制作日誌、画コンテ、自身が撮影した写真とともに、映画『真実』をめぐるいくつかのことへの想いを綴る――。フランス、映画監督として、『万引き家族』、カトリーヌ・ドヌーヴ……。「真実」にたどり着く8年間の物語。第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品『真実』2019年10月11日全国ロードショー主演 カトリーヌ・ドヌーヴジュリエット・ビノシュイーサン・ホーク

感想・レビュー・書評

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  • 映画「真実」のメイキングを是枝監督の日記調、ときにグラビア、絵コンテや制作のための表入り。是枝監督ファンで、どのように製作しているかもっと知りたいという者には、垂涎の作品。

  • 「こんな雨の日に」是枝裕和 ドヌーヴ、ビノシュ、イーサンホークとのフランスでの映画作りの日々を是枝監督が綴った日記風のエッセイ。まさかこの本でカトリーヌ・ドヌーヴのファンになるとは思わなかった! 大物女優らしいワガママもお茶目に見えるくらい自分に素直で自由気まま。それでいてここぞという時に最高の芝居をキメるかっこ良さには鼻血が出そうになります。他にも、素顔のイーサン・ホークがどれだけいいヤツかとか、カメラの向こうのビノシュの物言わぬ演技の凄みとか、各シーンや台詞を磨き上げる根気強い正解探しの道のりだとか、そういうものが実際の細かいエピソードで描かれるので、まるで現場で見てきたような体温を感じながら読み進められます。是枝さんの物事を見る目が優しいからなんだろうな。映画好きならきっと楽しく読める素敵な一冊です。

  • 映画を作るってなんと大勢にスタッフがいろんな分野でプロ意識を持って作っているのかと改めて感じた。
    それが異国で言葉の通じない世界的に有名な俳優さんたちとくれば、尚更だろう。
    事のはじめはジュリエット・ビノシュと監督の間で何か一緒に作りましょうってことだったよう。
    カトリーヌ・ドヌーヴのヘビーどころかチェーンスモーカーぶりもすごい。
    近くに子どもがいようが車の中だろうがお構いなしだったらしい。肺は大丈夫か。
    イーサン・ホーク、”いまをいきる”のあの自殺しちゃう役が決まってたらしい。でも、変更になったとか。
    私、ずっとあの自殺しちゃう生徒がイーサン・ホークだと思って観てたんだよね。(最初、観たとき)
    いろいろ、裏話しが知れて読んでて面白かった。
    是枝監督の字って可愛いし、絵も上手。

  • 是枝監督の「真実」制作の日誌。ひとつの映画が撮了するまでにこれほどまでに緻密で執拗な作業が繰り返されるのかと驚く。これは映画の必然なのか、是枝監督のこだわりなのか。脚本が何度も精緻化されていく過程、ロケーションが二転三転する下りや、プロデューサーとのちょっとしたズレなど生々しくも興味深い。ロケ地となった一軒家にひとり泊まって、セリフを口にしてみるなど、知られざる映画製作の現場を知ることができる興味深い1冊。以下、見てみたい映画。
    ・6才のぼくが大人になるまで
    ・終電車 トリュフォー
    ・クリスマス・ストーリー デプレシャン
    ・キングス&クイーン デプレシャン
    ・ザ・ロイヤル・テネンバウムス ウェス・アンダーソン
    ・肉屋 シャブロル
    ・欲望という名の電車
    ・Wの悲劇
    ・ローラ ジャック・ドゥミ
    ・遊星からの物体X
    ・月に囚われた男
    ・柔らかい肌 トリュフォー

  • 778.2

  • 「真実」は鑑賞済み。
    「真実」も、カトリーヌ・ドヌーヴが彼女自身を想起させる大女優役で、更に作中で映画を撮るのだけどその内容と物語が交錯するため、現実、フィクション、フィクションの中のフィクションという三つの世界の境目が曖昧になっていくのだけど、撮影時のことを書いたこの本でも、俳優は本名で書かれたり役名で書かれたり、現実とフィクションが更に入り混じっていくようだった。
    テーマの一つである「記憶」は、現実とフィクションの間にあるのだなぁとしみじみ思う。
    ラスト、樹木希林さんについてさりげなく書かれた部分には思わず涙した。

  • 【最終レビュー】

    図書館貸出・ノンフィクション。

    〈映画:真実(10月下旬…映画館鑑賞済・日仏合作)〉

    ネット・TVの空間のみだけで、決して、伺いしることはできない

    世界各国(=各地の映画祭)を縦横無尽に掛けていくかのような

    [振り幅の広さ・深く、緻密な見識…]

    こうして、言葉で書くことは、簡単であるけれど

    『想像を遙かに越えた、作品の裏側で展開されていた「数え切れない世界観」』

    単なる映画…一言、二言で、決して、こうこうとは言い切れやしない

    『本来、監督が持ち合わせている「有機的かつ、独特の、綿密なクオリティの高さ」』

    凝縮感が存分に溢れた内容。

    私的の視点を通して、このように感じ取っていった。

    『映画に国境線は決してない!』

    ということ…改めて、強く認識度を高められたといってもいい。

    監督の女房役・女性プロデューサー並びに、現地の女性プロデューサー。

    こういった、女性達の視点を通しての

    『決して、目にはできない「陰の見解」』

    『上記を、しっかり、汲み取りながら、作品の中に上手く挿入し、客層にも反映させる姿勢…』

    『未知の映画作品の数々…新しい発見も数知れず』

    まだまだ、程遠い。と痛感したともいえる。

    ただ、実際、映画館鑑賞したからこそ

    『ああ、あのシーンか、このワンシーン…』だったり

    自分の中で頷きながら、こうして読み進められたのは、何より一番の収穫だったこと。これだけはキッパリと言い切れる。

    ラスト、長くなりますが、印象的だったポイントの数々…ピックアップしながら、レビューを終えます。

    『この長い旅路に、心を込めて乾杯!』

    *カンヌ映画祭:海街diary上映の裏側

    *フランス:現地女性プロデューサー・初稿に対する

    [緻密、理性的、建設的レビュー]

    [脚本全般・セリフ・丁寧に掘り下げた人物像・弱点]

    *監督の女房役…分福(監督中心の制作集団):女性プロデューサー・福間さん

    [短絡的とは、かなり程遠い、TV・ネットで、決して伺いしれない『数々の生身のエピソード』]

    [ルーブル美術館・現地の館内…鑑賞する『監督の後ろ姿の様相』]

    *キャスト陣…度胸と愛嬌

    *1日8時間・土日休みの撮影プランの徹底による

    『丁寧に掘り起こしていく撮影』

    『余分なコスト削減!』

    『オンとオフのライフスタイルの徹底』

    *侃々諤々・重層的・シニカルに

    *対談の為…『直筆準備ノート』

    *経験したこと=変身させるメゾット!

    *野田秀樹さんの作品観劇…パリにて

    *日本の撮影…残業代のコスト(食事代等)に対する憤り

    [際立った『文化先進国』の『お国柄(パリにて)』]

    [明るい資質・緊張感・言葉遣い]

    [肌感覚の…ひとつひとつの『蓄積あるからこそ!』]

    [人が好きでないなら、人の気持ちなんて分からないわ!…メインキャストの某女優さん]

    [日常(現実)に、虚構が、染み出す!]

    [一旦、断絶した感情に、数分で戻す…某女優さんの、際立った演技力]

    *監督と福山雅治さん in パリ

    〈映画・マチネの終わりの撮影…本作撮影真っ只中:二人の再会を通しての、親交の裏側〉

    〈福山さん…日本でのメディアでは、決して、表沙汰にせず、目にすることは全くできない『一歩引いた、謙虚な姿勢』〉

    〈映画・そして父になる…〉

    [作品を介して『二人の周囲を取り巻いていた「海外の方々」の「決して、ブレない、作品ファーストの視点!」』]

  • 映画と旅、美しいテーマのドキュメント。
    筆致が日誌調で、プロデューサー福間氏のパート含めて手に汗握る。グラビア写真の美しさはなんだろう。スケッチのようでもあり、映画の場面写真のようでもある。ビノシュのフィルムテストのドキュメント的でもありフィクション的でもある美しさ。
    パリのプルガステルのクレープ食べたい。監督のケータリングへのこだわりや、撮影監督エリックゴーティエの職人感、そして外国人キャストやスタッフにも直筆の手紙書きがちに筆圧感じた。インタビュー前に出演作や参加作を具に見たりする姿勢は、芸術家だからとたかをくくらずに全力を尽くす妥協なきドキュメント畑出身の取材肌を感じた。

    ただ1人迫力を感じたのは、フランス人プロデューサー・ミュリエルへの惜しげもない反感。発言の内容で納得させるのではなく、立場を理由に持論を振りかざし、スタッフを首にしたりするなど、ネガエピソードに監督の怒りあらわ。

  • 『真実』見たわけでないし、是枝監督の作品はスカッとするエンタメ好きからするとモヤッと考えさせられて見る力がいるため、なかなか見ないのですが。
    裏話?というか日記面白かったです。
    カトリーヌドヌーブさん、わがままでザ・大女優でチャーミング。

  • 是枝監督がフランスで撮影した「真実」のメイキング本。

    勝手の違う異国の地で映画を作り上げていく様は、ハラハラする瞬間もあればのんびりした旅行記的な趣きもあったりで、とても面白かった。

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著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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