黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 94
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911083

作品紹介・あらすじ

80年代、90年代、低迷する日本映画界で一人気を吐いたスタープロデューサー、奥山和由。名監督、名優たちとの秘話を語り下ろす!80年代~90年代、低迷していた日本映画界にひとりのスタープロデューサーが登場した。奥山和由だ。若くして『丑三つの村』や『海燕ジョーの奇跡』など破滅的な男の姿を描いた衝撃作で鮮烈に登場すると、一転、のちにハリウッドでリメイクされる『ハチ公物語』というハートウォーミングな大ヒット作を飛ばす。その後も快進撃は続き、五社英雄監督と組んだ大作『226』、ビートたけしを監督に抜擢した『その男、凶暴につき』、竹中直人の初監督作『無能の人』、監督と対立し、自らもメガホンをとった『RAMPO』、佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平が共演した男くさいバイオレンスアクション『GONIN』、今村昌平に2度目のカンヌグランプリをもたらした『うなぎ』など話題作、ヒット作を飛ばし続けた。35歳で松竹の取締役になるなどわが世の春を謳歌するが、突然のクーデターで松竹を追われ……と波乱万丈、毀誉褒貶相半ばの映画人生を送る奥山が自らの作品のすべてを語る。信じられないトラブルの数々、名監督との作品制作裏話、俳優たちの秘話などを語り下ろす。聴き手は『あかんやつら』『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』の春日太一。人並外れた熱量を武器に映画界をのし上がり、90年代の邦画をたったひとりで盛り上げ、日本に映画プロデューサーという職業を認知させた男の最初で最後の語りおろし一代記。

感想・レビュー・書評

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  • 映画プロデューサーの奥山和由さんに春日太一さんが取材し、まとめた本。春日さんが、あくまで聞き手・構成となっているようにインタビューというよりは、奥山さんが語ったことを書き取り、補足的に状況を入れているようなスタイルで、まさに扉裏の「語り尽くす」という感じになっている。
    章の中では、その時期に製作した映画とその話のことが多く、映画タイトルのところに宣伝フレーズが入っているのが、懐かしいのもあれば、こんな風につけるのかというのもあって結構楽しい。
    イメージとして、「いつかギラギラする日」や「GONIN」などのバイオレンス系の人というのがあったが、「ハチ公物語」や「マリリンに会いたい」とかも、この人かと、改めて作った数と幅広さにビックリした。「REX恐竜物語」も角川のイメージだったが、制作に入っていた。
    「RAMPO」のとりなおし話や松竹追放など、実際に大きな話題となり、キャラクターが形作られる事件にも触れているが、全体通して見た時に、日本映画をなんとかしたいという思いが感じられる。新しい監督を、時には異業種から持ってくる、新しい役者を使うなど、広げていく気持ちが見える。「地雷を踏んだらサヨウナラ」を作り、その家族にもこだわっていくところは、ひかれたからという理由であれ、こだわっていく人間性が見えた。
    映画ファンドは製作委員会の元となった。良し悪しはあれど、映画を作りやすい環境を作ろうと奮闘していた姿は、興味深くおもしろく一気に読めた。そして巻末の作品一覧を見て、幅広さに改めて驚くとともに、後書きの木村洋さんとの話と、どの映画があったことも知らず、驚かされた。

  • 日本映画が一番元気の無かった時代、邦画を観るのがダサいなんて思ってた時に、奥山さんが日本映画を復興し良い作品を作ろうと闘っていたとは知らなかった。映画会社が自分の劇場で上映する映画を作ってチケットの売上で興行を上げようとする時代。読んでいて懐かしさを感じながらも、松竹のカラーに合わないと自分の会社の出資を得られず、他で資金集めに奔走する様は、大変な時代だったんだなあと思った。自社の改革に奮闘しながら作った作品は、当たるのもあればそうでないのもあって、最期は松竹を追い出されてしまう。奥山さんがいなければ、監督北野武も生まれなかったのに。「その男、凶暴につき」の製作エピソードは非常に興味深かった。僕は、北野武も、深作欣二も、野沢尚も好きなので、フライデー事件を挟みながら、作品がどんどん当初のものと変わっていく様は、映画ファンとして読んでいて感無量だった。その後に傑作「ソナチネ」を一緒に作りながらも、北野武と齟齬が生まれて離れてしまう無念な想いは哀しかった。才能に惚れた監督に尽くそうという想いと、作品への情熱で良い方にコントロールしたいという想いと、「RAMPO」を再度作り直してしまったように、映画にのめり込んでいく想いを疑似体験しているような気分になった。「GONIN」や「うなぎ」など、好きな作品のエピソードも読めて楽しかった。

  • 奥山和由がプロデューサーとして活動していた90年代、ぼくはほとんど映画を見ていなかった。それでも彼の名前は悪い印象とともに知っているのだから、当時、相当ネガティブな報道がされていたのだろう。2002年に高田馬場の名画座「早稲田松竹」が閉館したとき、早稲田の学生の間で「あれは奥山のせいだ」という噂がたったこともあったなあ。そういう色眼鏡のもと読み始めたら、奥山和由の映画やクリエイティブにかける思いがとても熱くピュアで驚いた。印象が180度変わったと言ってもいい。

    中で出てくるエピソードが、どれも濃い。特に深作欣二や北野武とのエピソードは、それ自体が映画になるような内容だった。「ハチ公物語」を撮るために、東映の岡田茂や東急電鉄の五島会長に会いに行く様子は、月村了衛の傑作小説『悪の五輪』を彷彿とさせる。吉本興業・大崎会長との因縁も興味深いが、意外とあっさりめ。ここはかなり抑えめに書いたのかな。

    早稲田松竹の件への記述がなかったが(もとはあやしい噂だし、当然だよね)、この本を読んでいると、彼が手掛けた映画を見たくなってくる、邦画に興味がある人は必読!

  • 飛ぶ鳥を落とす勢いだった奥山氏が松竹を追われた理由。片方の言い分だけでは何とも言えないが、当時の松竹の体質は相当古かったのだなと思う。巻末の作品リストによれば、私が観たのは「ハチ公物語」だけだった。

  • さすがの春日太一仕事!
    前半は笑えて驚かされるようなエピソード達が並ぶも中盤からは奥山さんが作りたい仕事から立場と共にお金の為であったり、社内での立場が弱くなり追放されてからは関わる作品もかつての勢いが弱く見えた。ただ奥山和由という人のこれまで持っていた敏腕映画プロデューサーにして鼻持ちならない人、というイメージは拭い去る事になった

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