ファーストクラッシュ

  • 文藝春秋 (2019年10月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784163911168

作品紹介・あらすじ

初恋、それは身も心も砕くもの。



母を亡くし、高見澤家で暮らすことになった少年に、三姉妹はそれぞれに心を奪われていく。

プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の欠片たち。

現代最高の女性作家が紡ぎだす、芳醇な恋愛小説。

みんなの感想まとめ

初恋の甘酸っぱさと複雑な人間関係が描かれた物語が展開されます。裕福な高見澤家に父の愛人の子、新堂力が同居することになり、三姉妹はそれぞれの性格を持ちながらも彼に惹かれていく様子が瑞々しく描かれています...

感想・レビュー・書評

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  • 父の愛人の子(リキ)と一緒に暮らすことになった高見澤家。3姉妹、母親お手伝いさんまで心を掴んでゆくリキ。3姉妹の初恋・ファーストクラッシュの相手は揃ってリキだった、そのことを思い出しながら語る。
    ひゃー女たちの戦い。そして、年齢関係なく虜にしてしまうリキもすごい男の子だなって思った。3姉妹のそれぞれ実にストレートに瑞々しく描かれていて登場人物みんな素敵でした。姉はお嬢様風、次女は読書が好きで、ひねくれ者、三女はリキと犬のようにジャレあう明るい無垢な女の子。それぞれがそれぞれの方法でリキと接して引かれていくところ読んでで飲まれましたなあ。こんな風な初恋は私は残念ながら経験せず、いいね3姉妹。

  • 長女麗子、次女咲也、三女薫子の三姉妹の暮らす裕福な高見澤家に、父の愛人の連れ子である新堂力(リキ)が同居することになる。三姉妹はリキを見下し叩き壊したいと思いながらも惹かれてゆき、逆に粉々にクラッシュされる。更にリキは愛人の子を憎む母親の心までも溶かしてしまう。 

    突然、母がいきり立ったように叫んだ。
    「あなた、最初から大人だったわ。いっぱしにみんなの心をざわつかせて、ほんとに 嫌な大人子供! おばさん可哀相とか言って、私、忘れないわよ」「何よ何よ、みじめな子と思って同情してやってたらいい気になって......」
    昔の怒りを自ら蒸し返して腹を立てている母は、とてつもなく憐れに見えた。

  • 父の愛人の息子の新堂力が母親の死をきっかけに引き取られる事になった。裕福で優雅な高見澤家にとって関西から来た“異物”な彼にお姫様気質の麗子·斜に構えた咲也·ストレートな薫子と性格の違う三姉妹がどうしようもなく惹かれていく“初恋=ファーストクラッシュ”についてそれぞれの視点から語られる。愛人の息子に対する屈折を母からぶつけられるとか環境から大人にならざるを得なかった力から垣間見える魅力が絶妙で、思春期のエゴ満開な三姉妹が心掴まれる、或いは砕かれる瞬間が美しい。家政婦含め高見澤家の女達を翻弄してきた力の初恋の相手は…やはりあの人なんでしょうねー。

  • こんな終わり方になるとは全く思わず読んでいた。実際に相手をするのはうんざりだが、裕福な家の面倒くさいお嬢さまの話しは好み。どろどろにならなかったのも良い。お医者さまのお嬢さまだった私の知り合いの薫子さんも結婚は遅かったが、これもまたもともと私の知り合いだった奥さま思いの旦那さまと仲良く暮らしています。読み終わっていまとても心が暖かです。

  • 姉妹の書き分け、その心理の微妙な機微、純文学だなぁと思いました。
    すごく山田詠美さんだなぁという作品。

    誰に共感しやすいか、というよりも誰にも共感しにくい話なのではないでしょうか。
    でもこういう特殊な状況や生い立ちは珍しくても心理としてはある、と思います。
    羨望や嫉妬や屈辱をぶつける対象であるとか、プライドを満たすための道具であるとか。
    それを表現するためのの仕掛けとしてこういう家族を作り出したのはさすがだなと思います。

    でもラスト、「そうくるのか」と思いましたね。それは想定外だった。誰かも書いてた気がしますが自分もちょっとがっかりでした。

  • 山田詠美さんらしいなぁ。ファーストクラッシュっていうんだ、初恋。ラブだと思ってたけど、クラッシュっていわれれば納得。孤児がやってきて、みんなそれぞれの姿で翻弄されてくさまが面白かった。

  • みにくさと美しさと愛らしさって共存するなぁとエイミーの小説を読むと思う。
    それにしても力の深さが恐ろしい…力目線で心の内を覗いてみたかった。

  • 山田詠美らしいちゃめっけ(死語だな)と毒のある文章にニヤニヤしながら読んでいたら、やられた。力のファーストクラッシュが、一番胸に刺さるじゃないか。

  • 足のあちこちの皮膚が引っ張られる本

    履き慣れていないヒールにしがみつき、ズタボロになる様に見え透いた嘘をつき続けている。

    男との関係が軋むとことばの大切さを思い出す。
    言葉にならなかったものは、言葉によって思い出される。幾度となく思い出させられる場面。丁寧に見繕い連ねた言葉は、彼の中で散り散りになった布巾のごとく扱われた。投げ帰ってくる言葉が、私たちの関係にとどめをさした。
    人の心を痛めつけると、自分の心も痛めつけられて当然のものに成り下がる。冷たい言葉を選び人に送る。悲しみは、人の感情の動きの中で1番簡単に見ることが出来る。傷つけない様にしても見えないところで人は傷つくから、傷つける自覚を持って痛めつけてしまうのか。小学生が好きな子の事をイジメるかの様に、否定的で突っかかりのある言葉を選ぶ私がいる。
    名前を呼ばれるだけで身体中がスポンジの様に柔らかくなって、温かい水が染み込んでいく。そんな人達を私は見てきた。そうなりたい。私の中で固く結ばれた感情が解け、受け入れる。まだ出会えてないだけ、そう思いたい。
    人を憐れむことができるって自分の幸せの証明。

    形が崩れるほど履き潰す。
    私が先に折れるか、ヒールが折れるか。

  • 片思いの基本は自己完結、そして自己自賛の為。
    そう思える相手がいるだけで実らなくても充分羨ましい

  • 読み終わったら、鳥肌がたちました。
    同情というスパイスで思春期の女を惑わせずとも惑わされてしまう力の魅力とは。

  • 高見澤三姉妹のファーストクラッシュ(初恋)は、父親の愛人の子、力だった。
    愛人が亡くなったため、父親は力を引き取って育てることにした。三姉妹は力をいじめたり、子分扱いしたり、犬のようにじゃれ合ったりして、それぞれのやり方で恋していく。
    いつの間にか三姉妹のみならず、母親もお手伝いさんもみんな力に惹かれていた。
    三姉妹が四十代になっても、初恋の思い出は消えない。

    ---------------------------------------

    登場する女性たちは皆、力(りき)にメロメロ。少年誌に載ってるラブコメ漫画か、ギャルゲーみたいな設定。
    大人になった三女は今も力を想い続けていて、力もそれに応えるというラスト。なんだかとても感動してしまった。

    物語の冒頭、次女のモノローグに強く強く共感した。

    ”前向きに生きよう。未来を見詰めよう。きっと素晴らしいことが待っている。若い頃は、その種の明るい言葉に洗脳されがちだけど、そんなのは嘘っぱちだ。
    人間のすべては、過去にある。そして、過去が刻み続けて来た現在で、その人の歴史は止まっているのだ。そう思い始めてから、私は、後ろ向きで生きることに決めた。”(P10より引用)

    人は過去の積み重ねで出来ている。どれだけ未来を見ても、その人のことも、自分のことも見えるわけがない。過去だけが真実。
    過去に生きる毎日も、初恋を想う人生も、全然わるいものじゃない。

  • おー、これはまさに”嵐が丘”の設定ではないか!
    父親が連れてきたみなし子、新堂力。
    薄汚れた外見とは裏腹に女性を惹き付ける顔と性格。
    関西弁というのも魅力的。
    そのリッキーを(関心ある故に)いじめ抜く母親と三姉妹。
    長女、麗子は下僕のように扱い、次女、咲也は調子に乗らないよういつも監視し、冷たい態度と暴言でいじめ、三女の薫子はその無邪気さ故に自覚なく失礼なことを言ったり…。
    どんなラストになるのだろうとワクワクしながら読んだ。
    認知症になって施設に入った義母に力が寺山修司の詩を読んであげるシーンが美しかった。
    カオの初恋が中年になって実ってめでたしで良かったよ〜。
    タイトルのファースト・クラッシュとは初恋の意。

  • ラストが、これまでの山田詠美の展開とは違った感じ。
    次女パートはまさにエイミー、悪く言えば新鮮味がない。
    長女パートは少し現実的じゃなかったかな?
    三女パートは良かった。犬仲間、いいねえ。そして驚愕(ではない)ラスト。

    それにしても山田詠美の描く中間子は、まさに私のようで、恥ずかしい。
    いやエイミーを読んで育ったから、こうなってしまったのか?

    力くんが、どの女性とも何かしら繋がりめいたものを結べるのは、母親に似ているのか。
    ではなく、環境からの学習よなあ。
    そうしなきゃ生きていけないものね。
    でもあなたには犬仲間がいるじゃない、いいねえ。

    (面白く読んだけれど、この薄さで1500円は高くない?)

  • 山田詠美はいつも男と女がプリミティブに違うことに気づかせてくれる。幼くても男は男で女は女ということを教えてくれる。男女同権と声高に叫ぶ時流とは別次元の世界。今まで身につけてきた価値観やいつの間にか貼り付けていた仮面を打ち壊し、その下にあるもっと本能的な部分をさらけ出されるような彼女達の初恋。確かに初恋は甘美なだけではなく、いろんなものを奪ったり壊したりする一面があるのかも。高見澤家の女性達とそこに引き取られた少年リキとのそれぞれの時間はどこか官能的で、秘め事をそっと覗いているような楽しさがあった

  • 読みやすさ★★★★★
    学べる★
    紹介したい★★★
    一気読み★★★★
    読み返したい★★★

    さすが山田詠美、中二病の心理描写がエグい。
    思春期独特のヒロイニズムや過度な自意識が少なからず理解できてしまい、刺さる。
    派手なストーリー展開は無いのに、先が気になり一気読み。
    エンディングは、まぁ意外だったかな。

    女ばかりの裕福な家庭に突如やって来た天涯孤独な男の子、「可哀想なリキ」。
    花園のような家に紛れ込んだ異物。
    リキは高慢な女たちの興味とマウンティングに晒されるが、その実、リキに絡めば絡むほど、女たちは自分達の「幸せな家族」像が虚ろであることに気付く。

    リキを関西弁に設定した辺り、絶妙。
    切り込み方(論破?)が『僕は勉強ができない』の秀美君を彷彿とさせる。小気味が良い。

    見栄、嫉妬、甘え、憐れみ、嫌がらせ。
    登場人物は人のいやらしい側面を見せてばかりだが、その、けれども憎めない人間臭さが山田詠美作品の特徴だ。

    愛しい、困った人たち。と言ったところか。

  • 出版区を見て気になって
    初、山田詠美。

    最初こそのーーーんびりな進行に
    これは飽きるかも~と思ったものの
    3人の視点で初恋への心の移り変わりが
    丁寧に描かれていて2-3部は
    一気に読んでしまった、

    繊細で柔らかくて丁寧で泣けた、
    印象に残ったのは姉麗子の
    「結婚は相手のために自分の心を砕けるか」
    しかし力、なんていい男なんだ…


    他の本も読んでみたい!

  • 母を亡くし高見澤家に引き取られた一人の少年。彼を巡る高見澤家三姉妹のファーストクラッシュ(初恋)。幼さゆえに恋だと気づかずにから回ったり、変な理屈で自分自身を納得させたりイライラすることもあったけれど最後は良かった。

  • 初恋の事をファーストクラッシュとは言い得て妙。

    初恋は実らないと言うから、それを思えば粉々をイメージするクラッシュとぴったりマッチする。

    インパクトのある装丁、一筋縄では行かないだろうと覚悟と期待を持ちながら読みだすと良い意味での軽やかさを感じる。

    裕福な高見澤家で暮らす事になった少年・力(リキ)とその少年に心を奪われる三姉妹のエピソードが三部構成で綴られているが二部の麗子の章では何度も笑いをかみ殺した。

    初恋は幼いゆえに真剣で時に滑稽で純粋さを持っている。

    力に翻弄される女性達を描いたちょっとひねくれた恋愛小説。

  • 裕福な高見澤家に、母親を亡くしたみなしごの少年が引き取られてきた。
    高見澤家の三姉妹は、それぞれに関心をもち、彼と関わっていく。

    初恋をファーストクラッシュというのは初めて知ったけど、確かにファーストラブよりもそう呼ぶのに相応しい初恋は世の中にたくさんありそうだなと思った。
    まだたいして物を知らないけれど、その狭い世界をそうとは知らず必死に生き、輝いているキャラクターたちがなんとも良かった。
    それにしても、この父の罪作りなこと。

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で文藝賞を受賞、作家デビュー。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、2001年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』『賢者の愛』『珠玉の短編』ほか著書多数。

「2025年 『Amy's Kitchen 山田詠美文学のレシピ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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