雲を紡ぐ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 668
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911311

作品紹介・あらすじ

「分かり合えない母と娘」壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、『雲を紡ぐ』を書きました」と著者が語る今作は、読む人の心を優しく綴んでくれる一冊になりました。

感想・レビュー・書評

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  • 「分かり合えない母と娘」
    壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?
    羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる
    親子三代の「心の糸」の物語。

    いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、
    祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。
    ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、
    少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
    美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、
    、職人たちの思いの尊さを知る。
    一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。
    実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。


    母親と母方の祖母二人とも共に元教師と現役の教師。
    至極真っ当な言葉を振りかざして美緒を追い詰める。
    二人の姿はとても嫌な感じでした。
    会ったこともない父の故郷に暮らす、ホームスパンの職人の
    祖父の所に家出した美緒。
    おじいちゃんがとても素晴らしい。
    言葉の一つ一つが心に沁みた。
    澪が逃げた先に素晴らしい御祖父ちゃんや裕子さんや太一が居て良かった。
    ホームスパンって布地がある事も初めて知ったし、
    行程もとても興味深かったです。

    美緒の成長物語が中心として描かれていますが、
    家族の姿。
    母と娘・父と娘・祖父と父…。お互いに伝えたいけど伝わらない想いが
    それぞれの気持ちのすれ違いが、とても切なかった。
    家族の物語として心に響きました。

    上手く言葉に出来なくて呑み込んでしまう気持ち。
    共感する力が強くて、相手のちょっとした表情から自分への
    ネガティブな気持ちをすぐに拾ってしまう所。
    わかるなぁって感じた。

    言はで思ふぞ、言ふにまされる
    とても素敵言葉を知りました。
    盛岡の街並みも丁寧に描かれて目に浮かぶ様。
    一度行ってみたくなりました。遠いなぁ。
    時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。
    一枚ショールが欲しいなぁ。
    伊吹さんらしい心が温かくなるお話でした。

  • ホームスパンの手仕事の素晴らしさにため息…
    原毛洗い、糸紡ぎ、染め、織り。すべての行程が細かく描かれていて魅力的。
    職人気質でありながら、お洒落で知的なおじいちゃんが登場して魅力的でない訳がない。
    そのおじいちゃん、イギリスの絵本やファンタジーにも造詣が深いのだから。
    手仕事が人の心に働き掛け、生きる力を与えるなんて話、読む前から惹かれてしまう。

    いじめから登校拒否になった美緒が盛岡の祖父の所へ家出をする。
    学校での出来事はきっかけだろう。母から離れなくては、と美緒の心の奥の声に突き動かされたような気がする。
    親から離れた先に、こんな素敵な人たちがいた。美緒を受け入れ、理解し、決断を急かさず見守って待ってくれる人たち。出来過ぎ感はあるけれど、救いの手は必ずあると希望を持てる話はいい。
    自分のいやなところなら、いくらでもあげられるという美緒に、祖父は、
    「自分はどんな『好き』でできているのか探して、身体の中も外もそれで満たしてみろ」と言う。
    なんて素敵なおじいちゃん。
    子育てに失敗したという嫁には、こんな言葉を投げかける。
    「子どもの頃に読んだ絵本を見て、美緒は『なんて、きれい』と繰り返し言っていた。そして、そこから何かを得ようとしている。美に感応できる素直な心はなにものにもかえがたい。蒔かれた種は今、豊かに芽吹こうとしている。どこを指して失敗というんだ。見事だ。見事に育てなさった」
    こんなこと言われたら、ぜったいに泣いてしまう。

    話は、美緒の視点と父の視点で描かれている。
    父も自分の父親との確執を抱えて疎遠になっていた。
    美緒と母親、その母親も仲良し親子のような自分の母とまた。親子はなんて難しいのだろう…。

    ホームスパンの魅力だけでなく、宮沢賢治の話や盛岡の街の素敵な場所、美味しいものがたくさん登場する。盛岡に行きたい、そう思う人がたくさんいるだろう。ご当地小説でもあるのだろうか?
    盛岡、訪ねたいです。

    • えぐにまきさん
      こんにちは。
      丁度気になって、出だしを図書館で読み始めた作品の感想がトップに出てきたので、「次はこれを読め!」というお告げだと思うことにしま...
      こんにちは。
      丁度気になって、出だしを図書館で読み始めた作品の感想がトップに出てきたので、「次はこれを読め!」というお告げだと思うことにしました
      2020/06/27
    • koringoさん
      えぐにまきさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      きっとご縁がある本なのですね。
      レビュー楽しみにしています。
      Kor...
      えぐにまきさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      きっとご縁がある本なのですね。
      レビュー楽しみにしています。
      Koringo
      2020/06/28
  • テレビドラマ『あまちゃん』を思い出しました。
    あきちゃんも学校でイジメにあって
    岩手のおばあちゃんちに行って。
    「じゃじゃじゃ」って、きっと「じぇじぇじぇ」のことなんですね。
    「ӕ」なんだ!

    さて本題に入りますと、一人っ子の美緒ちゃんのことを大事に思い心配する父母と(母方の)祖母なんだけど、どうにもうまくいかない。
    こういう家庭って世の中にいっぱいあるのではないでしょうか。
    そんなときに遠くにいる(父方の)祖父の存在ってとても良いですね。

    〈「手のかかるうちは助けて、あとは見守る。
    それがジジババの役目ではないですか。」
    と祖父。〉

    良かったね、美緒ちゃん。
    こういうおじいちゃんがいて。

  •  引き込まれる文章で、一気に読んでしまった。面白かったです。
     少女の再生の物語、よくある話かな?と読み進めると、良い意味で、裏切られた。親子、夫婦、地方と都会、教育など、いろんな問題が、盛り込まれてる。
     ほろ苦いが、最後はちゃんと収まるので安心して読めます。
     具体的な店の名前とか、グランクラスとか出すぎで、ちょっと白けるかな。

  • 高校二年生の山崎美緒(やまざき みお)は、些細なことがきっかけで変なあだ名をつけられイジられるようになり、学校に行けなくなってしまった。
    お宮参りの時に、父方の祖父母が作って持ってきてくれた赤いショールを被って引き篭もる。
    17年たっても少しも色褪せないそれは、美緒の宝物であり、心の拠り所だった。
    それには「山崎工藝舎」というタグが付いていた。
    母親と対立し、大切なショールを捨てられたと思った美緒は、無口で何を考えているか分からない父や、高圧的で口やかましい母方の祖母からも逃れるように、「山崎工藝舎」のある盛岡を目指して家を飛び出す。

    岩手県の伝統工芸である「ホームスパン」のお話と、家族の向き合い方が語られる。

    職人さんの手作りのことは、偶然、この前に読んだ本で考えるようになったばかり。
    『丁寧な仕事』『暮らしに役立つモノづくり』は、美緒の曽祖父の口癖であった。
    伝えていきたいものはあるけれど、後継者を育てることが問題であり、合理的で手っ取り早い他の物で置き換えられていくことで、次々と失われて行くのである。

    美緒の父親・広志(ひろし)は、「山崎工藝舎」の主宰である高名な染織家の父・紘治郎(こうじろう)と折り合いが悪く、家業を継がずに、電気メーカーに就職した。
    しかし、広志は『暮らしに役立つモノづくり』の精神は、しっかりと受け継ぎ、誇りを持って仕事をしてきた。

    対して、美緒の母親・真紀(まき)は、母親べったりで、何もかもいいなり。
    おそろしく幼稚な印象を受ける。
    中学の英語の教師だというが、ナメられるのも仕方ないと思ってしまう。
    その、真紀の母親も、元は中学の教師。
    自分が100パーセント正しいと信じて疑わず、上から目線で何でも決定してくる。キョーレツ。

    美緒と両親、広志と父親、真紀と母親、それぞれが親子の関係を修復して行く物語でもある。

    それとはまた別に、美緒の祖父・紘治郎(こうじろう)と亡くなった妻の物語もある。
    師と職人の結婚、昔堅気の工房のやりかた、仕事上の対立から妻は家を出て、亡くなる。
    老いた紘治郎の後悔と、悲しみは、孫の美緒とかかわることで癒されて行く。

    この、美緒の祖父・紘治郎さんがカッコいい。
    そして、初めて知った「いわて銀河鉄道」は、なんて美しい名前の路線なんだろう。
    岩手に行きたくなりました。

    ーーーーーーーーーーーーー
    もう一度読んでみたい、と思い出したのは、
    「イギリス海岸」木村紅美
    岩手のお話。

  • これはまた手紡ぎのウール ホームスパン(家庭で紡いだ糸)と言うディープな世界を舞台に、不登校の女子高生と彼女を取り巻く家族がまさに織り成す優しい物語ですね。衝動的に家出して疎遠な祖父の暮らす岩手 盛岡に着いた美緒が、知らず知らずに祖父の生業 手紡ぎウールの世界に興味を持ち始めるところから作品が展開して行く。こんな丁寧で静かで優しい作品に仕上げた作者の本領がよく発揮されている♪行ったことのない岩手 盛岡の素晴らしさがよく伝わってきて、是非とも一度行ってみたくなります。女性にはとりわけ共感 興味の持てる佳作でしょう。

  • 学校へ行かれなくなり、親からも理解されず、疎遠だった盛岡の祖父のところにたどり着く。
    そこで羊毛を洗い、糸を紡ぎ、織るというホームスパンに惹かれていく。
    家族の中の思いの強さが家族をバラバラにすることもあるけれど、糸を紡ぐように繋がっているのも家族なのだろう。
    盛岡という街に行ってみたくなるような一冊。

  • 学校でいじめに遭い、家にも居所を無くした高校生の美緒が逃げだした先は、岩手でホームスパンの工房を営む祖父の所だった。これまでほとんど付き合いの無かった祖父の元で、美緒は羊毛に触れ、糸を紡ぎ、布を織る事に強く惹かれて行く。
    祖父と父、祖母と母、夫と妻、そして娘。どこかすれ違い続けた家族再生の物語です。
    一言でいえば、心が温かくなる良い話です。
    自分に自信が無く、誰からも良く思われたくて「顔に笑いが貼り付いて」しまった結果いじめに遇った娘は自分の進む道を見出し、父と母も自分を見直し、新たな関係を作って行きます。爽やかな読後感が残ります。
    バックにイギリスの絵本『のばらの村のものがたり』『ナルニア国物語』や宮沢賢治の世界が有ります。私はこの領域に全く無知なのでついて行けないのですが、好きな人には堪らないのでしょうね。

    ここから先は、読まなくても・・・・
    『カンパニー』の感想に「読み進めながら『入り込めないな~』と『没入した~』が入り混じり、ちょっと不思議な感覚を覚えた」と書いていました。この作品も似た感じが有ります。登場人物はみんな思慮深い善人です。ですからそもそも最初の「掛け違い」の状況に陥っていること自体が不自然です。さらにそれが改善するきっかけも弱く、どこか「作られた物語」という感じがします。会話もそうで、こんなに重く的確な言葉が即時に出て来たりしないないでしょうし、主人公の美緒のリアクションが時折不自然に幼くなるのも気になります。但しこうした事は、私の中に伊吹さんに対して軽い警戒感が有って、アラ探し的な目付きで読んでしまうから余計感じるのでしょう。普通に読めば気にならないのかなと思います。

  • 東京で不登校になってしまった女子高生の美緒が、自宅を飛び出し、父の故郷である盛岡でホームスパンをやり始める。
    家族でも分かち合えない、言いたいことが言えなくて言葉が出てこない…家族関係に歪みができていたことが、途切れた一本の糸を紡ぐかのように少しずつ修復されていく。盛岡の風景や空気感がとてもきれいで、文章から滲み出ていて心が洗われるよう。

    父、母の名称が多くて、誰の視点の話なのか迷うときはあったけど、素敵な物語でした。

  • 噛み合わない3世代の母と娘。
    登校拒否の高校生美緒が羊毛から糸を紡ぎ、ホームスパンを織り上げていく物語。
    読み始めから7割以上は仲の悪い母と娘、祖母と母、父と母の話し。
    読んでいて暗くなる。美緒が縦糸と横糸をだんだんと上手く織り上げていくように、それぞれの仲が噛み合っていく。
    いろいろあって家族だなぁと思える小説でした。
    印象に残った文章
    ⒈ 美緒とはすなわち美しい糸、美しい命という意味だ。
    ⒉ 言はで思ふぞ、言ふにまされる。
    ⒊ 「寒くないよね、おじいちゃん」赤いショールで、美緒は骨箱を包み込む。

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著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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