雲を紡ぐ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911311

感想・レビュー・書評

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  • 心を繋いで行くのを、羊毛を紡ぐのに例え、それをテンポ良く読みやくす興味深く描かれているように思いました。白くてフワフワした羊毛が雲みたいで、このタイトルにされているのが素敵だなと感じました。
    また盛岡の街並みが描かれていて、盛岡の街をぶらぶらしたことのある私は、その時の街の風景や岩出山を思い出し、読んでいて凄く楽しかった。もう一度盛岡に行って、じゃじゃ麺を食べたくなりました!

  • 祖父母の手仕事、ホームスパンの赤いショールを美緒は幼い頃から肌身離さず愛用している。最高の技術で作られた本物も、長年使われ続ける事でモノとしての命を全うするような気がする。言葉足らずで解決の道がない親子関係も絡まった糸の塊のよう。美緒が見習いとしてホームスパンにのめり込んで行く事で、その塊が解れていくようで、終始なみだ目で読んだ。本物を愛用してきたからこそわかる、祖父母の技術を、感覚で習得していけるんだろうと思う。爺ちゃんのセンスと眼差しがホントに素晴らししかった。

  • ★4.5
    分かり合えない母と娘、とにかく美緒の母・真紀が嫌で嫌でしょうがなかった。黙っている=何も考えていないのではなく、言いたいことが言葉にならないことがどうして分からないんだろう?と、不思議に思うばかり。ただ、話が進むにつれて、真紀に対しての見方が少しずつ変わっていくと同時に、父・広志と真紀、広志と祖父・紘治郎の関係も、ゆっくりと解れ、紡がれていく。そして、美緒が夢中になるホームスパンが魅力的で、盛岡の自然の中に入り込みたい!と思った。紘治郎の行く末は予想がついたものの、美緒への優しさにただ癒された。

  • 伊吹さん、やっぱりいい!

    美緒の年齢にも母の年齢にも
    父であっても誰にでもいつの時でも
    その時その時で辛い現実というのは
    何処にもいかずそこにある。

    しんどかったり辛かったりすることに
    優しいばかりではない強い優しさが心に沁みる作品だった。

    布を織るという作業は機織りのイメージだったが
    羊毛を洗うことから始まる。
    洗って乾かして、紡いで染める。
    織って布にして縫製をする。

    職人の動きを見るのが大好きなのでその工程はどの部分でも
    一日中見てられるなと思う。

    ホームスパンのショール、お目にかかってみたい一品だな。
    この物語と同じくらい優しい肌触りなんだろう。

    盛岡の地元の風景と色鮮やかな織物も魅力的な話だった。
    盛岡ならほぼ必ずでてくる宮沢賢治もやっぱりいいよなぁと思うし
    ウィリアムモリスの壁紙の美しさ
    清川あさみの美しい刺繍(ご本人も美しい)
    絵本の中の庭をイメージした祖父の家。
    どれも、読んでて視覚を刺激された。行きたいなぁ

    終始、無口だけれどカッコイイ祖父(脳内は草刈正雄)の
    「子どもといっしょに暮らした日々は案外、短かったな。」
    ということば。
    「そうなんだぁ、そんなものかね」と思うのではなく
    「うんうん、そうだぁ」と思う立場になった自分がいた。

    3人で暮らした家に娘と夫が家をでて一人で暮らす。
    でも、1人じゃない。家族とは誠に不思議なものだ。

  • いじめが原因で高校に行けなくなった美緒。
    彼女を守ってくれる物。
    それは、祖父母から贈られたホームスパンの赤いショール。
    ホームスパンとは、羊毛から糸を紡ぎ、染めや機織りまで全て手作業で行った布のこと。
    美緒は、自分の手でホームスパンを作ってみたいと考えるようになる。
    優しく寄り添うのは祖父の絋治郎。
    あたたかくてほっとする存在。
    ホームスパンを制作する美緒のワクワクする気持ちが伝わり、読んでいて楽しかった。

  • ステイホーム中、ゆっくり読書の時間を堪能できた。

    岩手の情景、羊毛の肌触り、そして祖父・祖母・父・母・娘、親子・夫婦の心情を思いながら読み進めました。

    久しぶりにオススメしたくなる本に出会いました。

  • ホームスパンという高級な羊毛の織物のことをこの本で初めて知った。 代々受け継ぐくらいの服になるという、大量生産、大量消費の現代とはかなりかけ離れたもの。でも、品質は一級品。これからはこういったものがもっと注目されていくと思った。
    美織が本当の自分とやりたいことか見つけられてまわりも変わっていく。もの作りに心惹かれる。

  • 盛岡の街の描写がリアルで懐かしい。
    ホームスパンをつくっていく過程が面白く、お仕事小説としても◎。
    職人気質だけど芸術家肌でもある祖父の存在感がありすぎて、帯にある「分かりあえない母と娘」というテーマにあまり目が向かない。むしろ祖父と祖母の惹かれ合い対立しあった職人・アーティストとしての関係性が興味深かった。

  • 伊吹有喜さんの新作は壊れかけた家族の再生物語、前作「彼方の友へ」が最高だったのでかなりハードル高めで読んだのだが、それを軽ーく超えてきて今作も読む手が止まらず一気読み。祖父母がくれた赤いホームスパンのショールを巡り家族と衝突した高校生の美緒は、岩手県盛岡市の祖父の元へ家出する。繊細であるがゆえに生き辛い美緒は、職人である祖父の元で働くうちに、職人の思いを知り、家族との関係もしだいに変化していく。武骨な職人である祖父の言葉は名言・金言の嵐でかっこいい、こういう作品に直木賞・本屋大賞取ってほしいと思う。

  • ホームスパン、家で紡ぐ。
    羊毛を洗い、紡ぎ、染め、そして織る。そのひとつひとつを手作業で行う工房。
    学校でいじめられ、母親とも分かり合えず父親はいてもいなくても変わらないような存在。そんななかで心のよりどころだった祖父母の手織りのホームスパンの赤いショール。
    美緒をずっと包み込み癒してきた赤い布。その存在と、それを作り上げた祖父母の存在。
    盛岡にある祖父の工房に家出していった美緒の幸福を思う。両親よりも一歩距離のある祖父との生活。そして父の従妹やその息子とのやりとりでこんがらがり切れ切れになっていた家族の糸が再び縒り合されていく幸福を思う。
    思っているよりはるかに短い家族の時間。その終わりを受け入れる覚悟、決意。盛岡の町がささえるその変化を思う存分味わってほしい。温かくて愛しいこの物語、2020年、すでに自分の中でベスト級。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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