【第163回 直木賞受賞作】少年と犬

著者 :
  • 文藝春秋
4.07
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  • (7)
本棚登録 : 3698
レビュー : 333
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163912042

作品紹介・あらすじ

傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!

感想・レビュー・書評

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  • 最終話を読んでいたら、直木賞受賞の速報が入ってきました。受賞おめでとうございます。

    作者の馳さんの犬のお話は拝読するのが3作目で、私が言うのもおこがましいですが、着実に腕を上げられていて、受賞にふさわしいと思いました。

    物語は、東日本大震災後、半年の仙台から始まります。
    母と姉と暮らす青年、中垣和正が駐車場の隅で見つけたシェパードに似た牡犬の多聞という名札をつけた犬。
    認知症の和正の母が、昔飼っていた犬のカイトと間違えて、「カイトかい」と多聞と一緒に過ごすのをものすごく喜ぶようになり、和正も姉とともに幸せを感じるようになりますが、和正は震災で職がなく、悪い仲間に唆されて、悪事に手を染めていきますが…。

    一方多聞は和正の仕事仲間のペルシャ人のミゲルの手に渡り新潟へ。
    多聞はいつも南の方を向いています。「南に誰かいるのか」と飼い主は尋ねますが…。

    多聞は、富山、大津、島根と、その時々に出会った人々に愛され、皆に色々な名前で呼ばれながら、震災から5年後の熊本で一人の少年と出会います。

    そして、奇跡が起こったのです。
    涙なしには読めないけれど、最高の1冊でした。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューでまた涙が…!

      私もなぜに南を目指したのか…わかった時には犬の、動物のチカラを感じました♪...
      まことさん♪こんばんは♪

      まことさんのレビューでまた涙が…!

      私もなぜに南を目指したのか…わかった時には犬の、動物のチカラを感じました♪

      馳さんも多聞にありがとう、の気持ちでいっぱいかも…なんて思いました( ˊᵕˋ* )
      2020/07/15
    • まことさん
      くるたんさん♪

      動物、特に犬は凄い秘めた力をもっていますよね!

      最後の終わらせ方がまた、馳さん素晴らしいなあ!と感動の嵐でした。...
      くるたんさん♪

      動物、特に犬は凄い秘めた力をもっていますよね!

      最後の終わらせ方がまた、馳さん素晴らしいなあ!と感動の嵐でした。

      馳さんも、きっと、多聞みたいな犬を飼われていたのでしょうね。
      2020/07/15
  • 東日本大震災後、飼い主とはぐれたらしい迷い犬『多聞』の旅。
    経済的困窮の為に裏仕事を請け負う男、一稼ぎして国に帰ろうとする泥棒、関係が破綻仕掛けている夫婦、何かから逃げている娼婦、癌で余命わずかな老猟師、そして…。

    いずれも出会った時はガリガリに痩せ毛はボロボロ、更には大怪我をしていることもある。それでも目だけは意志の強さを反映してか力強い。落ち着きがあり人慣れしていてすぐに新しい飼い主たちに馴染むものの、どこか別の場所へ行こうとするかのように遠くを見つめている。

    新しい飼い主たちには何かしらの傷があり苦しみがあり足掻いている。そして彼らの結末は苦い。
    『多聞』がこの結末を引き寄せているのか。いや、「老人と犬」で老猟師が気付いたように、『多聞』は多分そうした人々を見付ける能力があり、彼らのその結末までの僅かな間彼らを見守り寄り添うために傍にいる。
    『多聞』は人の罪や過ちを咎めないし、心の傷や孤独を癒すこともしない。ただ傍にいるだけだ。だがそれで人は自らを省みて変わりたい、踏み出したいと思い始める。実に不思議な犬だ。

    岩手から熊本まで五年かけてやって来た『多聞』が行き着いたのは、東日本大震災で被災し熊本に移住してきた家族。一人息子は震災の影響で話さず、一切の感情を失っていた。
    これまでの話の流れだとこの少年も…?と不安になるのだが、その展開は思いもしないものだった。
    少々ファンタジーになってる感もなくはないが、『多聞』は持って生まれた本能と意志の強さでここまで旅をしてきた。その終着点の話としては良かったと思う。

    改めて直木賞受賞、おめでとうございます。

  • 犬は、人間でいうと2歳〜3歳程度の知能を持ち、170くらいの前後の単語やジェスチャーを理解できると言われている。
    また、人間が出す命令の9割以上は理解しているようであるが、それにしても、本作の主役犬・多聞は、とてつもなく賢い犬であった。

    賢いから不思議な力を持っているというわけではないのだが、本作は東日本大震災で飼い主を亡くした犬・多聞が、飼い主以外で一番好きだった子供・光を捜して放浪の旅に出る。そして、はるか熊本で、光と再会する。

    このストーリーに似たような実話をテレビで見たことがあり、小説の中だけの奇跡としてでなく、動物の持つ不思議な力として、その奇跡を納得してしまう。
    しかも多聞の場合は光が九州に居るとわかっているように、常に光がいる方向を見ていた。

    「傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。

    2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……

    犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!(文藝春秋より)」

    最後の「犬と少年」の章に到達するまでに、つまり、光と再開するまでに男、泥棒、夫婦、娼婦、老人としばらく共に暮らしている。
    そしてその誰もが多聞に癒され、多聞を残してこの世を去って行く。まるで多聞は傷付いている彼らの心を治癒するがごとく寄り添い、彼らの生を肯定するために現れているように感じる。
    悩める人、傷ついている人がわかるかのごとく、そしてそんな人の前に現れ最後をめとる。それも多聞の持つ不思議な力のように思う。

    七福神の一尊に数えられる福の神・毘沙門天はまたの名「多聞天」から転じた多聞の名前。
    その名の通り、人々の沢山の心の声を聞くことができる奇跡の犬である。

    作者は、犬好きなんだろうなぁというのがよくわかる一冊であり、犬好きの方もそうでない方もジーンと訴えてくる一冊である。


    犬と男
    震災から半年後の仙台で多聞と出会う中垣和正。痴呆の母とその介護をする姉への仕送りのために盗品の販売の配達から、強盗に共謀し、中垣が亡くなら直前、強盗犯の1人、ミゼルが多聞を連れて逃げる。

    泥棒と犬
    強盗犯・ミゲルと共に逃げた多聞。貧しかったミゲルの少年時代にであった犬・ショーグンを思い出す。自分の最後を感じたミゲルは多聞を自由にする。

    夫婦と犬
    登山道でのトレイルランニング中の中山大貴の前に現れた多聞。熊との遭遇のタイミングをずらして中山を救う。結婚後も自分勝手な中山と妻・紗英の中は冷めており、紗英の心を多聞が癒す。中山は、多聞をトンバと呼び、紗英はクリントと呼ぶ。トンバとの練習中にバランスを崩し崖から滑落し亡くなる。

    娼婦と犬
    美和の前に現れた多聞。身体を売ってまで、貢いでいた男に裏切れ、男を殺す。どん底の人生に束の間ではあるが安らぎを与える。

    老人と犬
    老猟師・弥一が膵臓癌で亡くなる前に庭に迷い込んで来た多聞。まるで弥一の余命をしっているかのようである。最終的には弥一の死は病気ではなく、事故であったであるが、多聞にとってはそれも想定内のことであったのだろうか。

    少年と犬
    とうとう光と巡り合えた多聞。震災後、言葉を失った光は、多聞との再会で奇跡がおこる。ラストシーンは、多聞の光への奇跡であるかのようだ。

  • 多聞はシェパードの入ったミックス。
    5年かけて東日本大震災の震災地・仙台から熊本まで移動する。名前をいくつも得ながら。その道中で交わった人たちの人生模様を描く連作短編集。

    最後に明かされる謎。そして、再びー

    人は犬に救われる。
    ということを馳さんは描きたかったのだそうだ。

    シェパードは知的で忠誠心と服従心に富み、訓練を好む性格から種々な作業犬として訓練され、災害救助犬・軍用犬・警察犬・麻薬探知犬など特殊訓練を必要とする作業犬として活用されている、とウィキに書いてあった。
    人に寄り添う多聞の姿が美しい。そして、そばにいて見守られる心強さと温かさは誰もが求めるものではないかな。

    読み終わって、うちのチビ犬がますます愛おしくなりましたよ。



    そういえば、村上龍さんも「MISSING」で「シェパードしか飼わない」と書いていた。犬を棄ててたけど笑

  • 岩手、宮城、福島、富山、滋賀、島根そして熊本。
    5年もの歳月を経て、大好きな少年と再会するために旅を続ける一匹の犬・多聞。
    その道中で出逢った孤独な人々に寄り添いながら、ひたすらに少年の住む地を目指す物語。

    様々な事情で悩み傷つく人々の生きざまを最後まで静かに見守る多聞。
    異なる呼び名で呼ばれても素直に受け止める度量の大きさ。
    打算のない深い愛情。
    そして何があっても目的地を見失わない強い信念。
    多聞という名の救いの神は、罪を背負う人々を許すと共に、温かな喜びをもたらすのだった。

    犬の行動は猫とはかなり違うもの。
    普段猫の出てくる作品を多く読む"猫派"の私にはちょっと新鮮な物語だった。

  • 一匹の犬(多聞)が旅するうちに出会う人々。人間に寄り添い、人間の運命を多聞が見届ける。
    家族のために犯罪に手を染める震災で職を失った男。
    仲間割れを起こした窃盗団の男。
    壊れかけている夫婦。
    男に貢ぐ娼婦。
    死を迎える老猟師。
    震災のショックで心を閉ざした少年。
    ノワール物ではない、犬! 犬が主人公のお話。人間の愚かさが浮き出て、多聞の温もり優しさ、忠実さが際立ちます。多聞が出会う人みんな、多聞によって光をもらえたと思います。特に最後の少年とは強い絆で結ばれていて(本当かいなと思える内容でしたが、互いの愛情にジーンときました)。犬は寄り添う生き物なんですね。多聞が神のように思えました。

  • “ありがとう”の一冊。

    馳さんの描く犬の物語はやっぱり良いな。

    犬の眼差し、ちょっとしたしぐさに静かに心を傾けられる時間が好き。

    犬 多聞と6つの出会いと別れ。誰もがこの多聞から必ず何かを得る、喜びや愛を知るところには哀しみはあるけれどそれ以上に読み手の心に温かさを届けてくれた。

    なぜに多聞は南の方角を目指すのか…最後の章は一番涙が止まらなかった。

    馳さんの“あの時”を忘れない、忘れてはならない思いもヒシヒシと感じる。

    守護天使 多聞に“ありがとう”の言葉を添えて読了。

    • まことさん
      くるたんさん♪こんばんは。

      馳さん、受賞されましたね!
      ちょうど、最後の章を読んでいたら、NHKのニュースで知りびっくりでした。
      ...
      くるたんさん♪こんばんは。

      馳さん、受賞されましたね!
      ちょうど、最後の章を読んでいたら、NHKのニュースで知りびっくりでした。
      私は、馳さんの作品は犬以外は読んだことがないのですが、すごくあたたかいいいお話でしたね。
      本当に、ありがとうの一冊でしたね。
      まだ、読み終えたばかりなので、感動がさめやりません(*^^*)
      2020/07/15
    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      わ♡ナイスタイミングだったんですね( ˊᵕˋ* )

      読んだ作品が受賞するとうれしさ倍増ですよね〜♪

      最終章は...
      まことさん♪こんばんは♪

      わ♡ナイスタイミングだったんですね( ˊᵕˋ* )

      読んだ作品が受賞するとうれしさ倍増ですよね〜♪

      最終章は涙、涙だったんでは⁇
      思いっきり余韻に浸ってくださいね\(´ω` )/
      2020/07/15
  •  小説を読んで涙が止まらなくなったのはいつ以来だろう?

     シェパードと和犬の雑種の多聞。多聞は色々な人たちと出会い、一緒に生活をしていく。でも、多聞は誰といてもいつだって南へと意識が向いている。南に何があるのか。

     次々と出会う人たちと生活をしながらも、多聞は徐々に南へ向かう。多聞がたどり着いた南、その訳を知った時に大きな感動に包まれることとなる。そして、最後の光の言葉に涙が溢れて止まらなかった。

     多聞の人生は一体なんだったんだろう?と思うと苦しくて胸が痛くなる。でも、多くの人たちの心に寄り添って、支え、それが多聞の生き方だったのかもしれないなとも思える。

     犬には信じられない力(能力)があると思う。以前飼っていた犬の話。私たち家族が近所の人を連れて潮干狩りに行った時のこと。高速道路で初めて死を覚悟した瞬間があり、後から考えてもよく事故に遭わずに済んだなと思うくらい危なかったのだが、家に帰ると飼い犬が亡くなっていた。今でもあの時は犬が守ってくれたんだと信じている。

     私の人生ずっと犬がいる生活を送ってきた。今も2匹の犬と暮らしている。朝は起こされるし、散歩も連れて行かなければならないけれど、本当に愛しい宝物だ。これからも犬がいない生活は考えられない。

    • しのさん
      コメントありがとうございました。本当に素晴らしい本でしたね(〃'▽'〃) 私は馳さんの本を初めて読みましたが、犬への愛をとても感じました♪犬...
      コメントありがとうございました。本当に素晴らしい本でしたね(〃'▽'〃) 私は馳さんの本を初めて読みましたが、犬への愛をとても感じました♪犬の能力って本当に素晴らしいですよね~ラストが悲しかった…少年と一緒に幸せに暮らして欲しかったなぁ。
      2020/11/07
  • 飼い主からはぐれたと思われるシェパードの雑種犬が様々な人々と交流しながら目的の場所へ向かう物語を短編形式で綴った作品。犬と交流する人々は皆何かしら悲しい運命を背負っており、そんな人たちが犬との交流によりひと時の心の救いを得られる。そして訪れる悲しい別れを繰り返しながら犬は南へ南へと向かう。

    シンプルで淡々とした描写が運命に翻弄される人達の人生をよりくっきりと際立たせていた。犬は本当に人間の唯一の友人なんだなとつくづく思った。

    読み終わった後巻末の各ストーリーの初出誌の順番を見て驚愕すると共に大いに納得した。これから読む人は楽しみにしてもらいたい。

  • 一匹の犬多聞を巡る物語。
    「そばにいるだけで、人に勇気と愛を与えてくれる」「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない」「人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ」
    犬を賛美する言葉が宝石のように全編に散りばめられている。
    人の笑顔を引き出し、孤独を癒し、優しい気持ちにさせ、幸せな時間を与えてくれ、時には善悪の判断を促す。
    6話どれもが、胸を打つ。

    老人が「孤独と死の匂いを嗅ぎ取ったから。
    孤独を癒し、掛けられない死を迎えるその時のために、家族探しを中断してそばにいるのではないか」と語る。
    そう思う。多聞が経験したことを考えると、きっとそうなのだろう。
    最後はもう…
    電車の中で読んでなくて良かった。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。編集者、フリーライターを経て、96年『不夜城』で小説家デビュー。97年、同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年『鎮魂歌 不夜城II』で第51回日本推理作家協会賞、99年『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年『少年と犬』で第163回直木賞受賞。ノワール小説だけに留まらず、さまざまなジャンルの作品を執筆、高い評価を得る。近著に『蒼き山嶺』『雨降る森の犬』『ゴールデン街コーリング』『四神の旗』などがある。

「2020年 『文庫 神の涙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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