パチンコ 上

  • 文藝春秋 (2020年7月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784163912257

作品紹介・あらすじ

全米図書賞、最終候補作。
四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いて全世界で共感を呼んだ大作、ついに日本版刊行成る!

日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。見知らぬ都会の匂いのするハンスと恋に落ち、やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいいることを知らされる。許されぬ妊娠を恥じ、苦悩するソンジャに手を差し伸べたのは若き牧師イサク。彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡ることになった……

1910年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へ――。小説というものの圧倒的な力をあらためて悟らせてくれる壮大な物語。構想から30年、世界中の読者を感動させ、アメリカ最大の文学賞・全米図書賞の最終候補作となった韓国系アメリカ人作家の渾身の大作。


アメリカで100万部突破。オバマ前大統領、推薦。

感想・レビュー・書評

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  • 韓国系アメリカ人作家による在日コリアン4世代の物語。第1部は、1910〜33年の釜山と猪飼野(大阪コリアタウン)、第2部は1939〜62年の猪飼野での、日本人に差別されながらも懸命に生きていくコリアンの人々が描かれている。上巻だけではタイトルの「パチンコ」の意味は不明。全米図書賞最終候補。
    上巻は大韓帝国併合(1910)から終戦、朝鮮戦争(1950〜53)の間の物語で、知らなかったことも多く、衝撃的でした。下巻も楽しみです。

  • myjstyleさんのレビューに興味を持って。
    上巻は展開のはやさもあって一気に読み終えた。のめり込みすぎて、頭がくらくらする。


    〈歴史が私たちを見捨てようと、関係ない。〉

    物語がはじまる一行目。まずこの一文に対するインパクトが大きかった。
    この言葉はどういう意味なんだろう。
    孤独な人物の呟きなのだろうか。それとも人を寄せつけない冷淡な人物の胸の内だろうか。これからどれほど重たい物語がはじまるのかと覚悟する。
    だけどそれは全く見当違いだった。いや、歴史はどこまでも彼らの物語に重くのしかかるのだけれど、それでも彼らは決してわたしの想像したような人たちではなかった。

    〈私たち〉である彼ら、老年期を迎えた漁師夫婦は、わたしの描いたイメージとは真逆の人物たちだった。
    朝鮮半島、釜山沖の影島(ヨンド)。家に下宿人を置いて稼ぎの足しにする夫婦には、日本が大韓帝国を併合しようとも関係がない。彼らには、今日、明日を生きること、生活できること、息子フニの将来の方がいちばん大切なのだ。
    倹約家で辛抱強い働き者の漁師夫婦には、運命を憂えるゆとりはなかった。

    それは息子の代になっても同じことだった。
    キム・フニとキム・ヤンジンの夫婦にとっても、娘 キム・ソンジャの成長が何より大切で、懸命に働き、人に優しく、真摯に生きることが彼らの全てだった。

    そして今。夫婦の娘 ソンジャも自分の人生と苦闘しながら生きている。
    ただ1日1日を全力で生きること、家族の幸せのために無我夢中で働くこと、それが彼女の全てだった。

    物語が代々受け継がれていくなかで、彼らの生きる場所も変わっていく。
    舞台は朝鮮半島から、日本の大阪へ。
    大阪にはソンジャと結婚したパク・イサクの次兄夫婦 パク・ヨセプとパク・キョンヒが住んでいる。イサクが大阪で副牧師の仕事を得たことによって、ソンジャとイサクは次兄夫婦の元へと海を渡るのだ。

    上巻で印象深かった展開の1つは、ソンジャとコ・ハンスとの出会い、恋、そして別れ。
    ソンジャが下宿屋で母親と働いていた16歳の頃、日本との貿易を生業とするハンスと出会う。
    女性にとって危険な匂いのする男 ハンスに近づいてはいけないとわかってるのに、次第に彼のことしか考えられなくなっていくソンジャ。
    初恋を知った少女の初々しさと危うさ。
    ハンスに会えるときめきと、得たいの知れない怖さが翳りとなって、まるでドラマを観てるかのように映像が浮かんではドキドキした。

    もう1つは、ソンジャとイサクが大阪でヨセプ夫婦の元で暮らすようになってからのこと。
    ある事情で、ソンジャは以前ハンスから貰った高級な懐中時計を質屋で売ることになる。そのときのソンジャが質屋と交渉する場面は、手に汗握る展開だった。
    かつての弱々しくて寡黙な少女は影を潜め、そこに存在したのは、逞しく堂々と人生を歩むソンジャという1人の女性。その姿にハッとする。

    ちょっと気になったのは彼らの内面。
    イサクは息子ノアの顔を見て、愛情以外の感情が芽生えたことはないのだろうか。
    ソンジャは成長するノアに、ハンスを思い出すことはなかったのだろうか。
    突然のハンスとの再会を経て、ソンジャは怒りや戸惑い以外に、また心が揺れ動くことはなかったのだろうか。
    外で働くことも近所の人たちと話すことも、夫のヨセプから禁止されていたキョンヒが、キム・チャンホの焼肉屋で働くことになって、彼女は何か変わったのだろうか。
    チャンホと買い出しにも行くようになって、キョンヒはチャンホのことをどう思っていたのだろう。チャンホの気持ち(読んでる方からしたらバレバレ)に気づいているのだろうか……
    ふふふ。いつものごとく気になるのは愛情の面ばかりだな。

    この物語は、そういうリリカルな面は読む側に任せてまでも、もっと違う部分に重きをおいてるのだろう。
    なぜ作者は4世代に渡る年代記を書いたのか。
    生まれた国から移ってきたものたち。
    移ってきた国で生まれたものたち。
    血は繋がっていても、時が経つほどに同じではいられなくなる。
    1世代、2世代、3世代。そうやって区切りをつけると、叙情的な部分を描きながらどこででも物語を終えることはできただろう。
    それでも4世代まで突っ走ったところに、作者が伝えたいこの物語の核心部分があるのではないか、そう思うと下巻がより一層楽しみになってくる。

    〈祖国のために、あるいはそれ以上に大きな理想のために命を投げ出す心理は、ヨセプには理解しがたい。しかし生き残ること、家族を守ることなら理解できる。〉
    ヨセプのこの思いには深く共感。

    歴史が彼らを見捨てようとも、彼らは自分の愛するものを決して見捨てなかったのだ。

    • myjstyleさん
      地球っ子さん おはようございます。

      共読本が、またひとつ増えました♪
      なかなか感性の鋭いコメント!
      質屋の場面は描写が巧みで、本当...
      地球っ子さん おはようございます。

      共読本が、またひとつ増えました♪
      なかなか感性の鋭いコメント!
      質屋の場面は描写が巧みで、本当、ハラハラしどうしでしたね。(笑)
      下巻はおそらくもっと一気読みになりますよ。
      全体を通したレビューを楽しみにしています。
      2021/05/21
    • 地球っこさん
      myjstyleさん、こんにちはー♪

      またまたmyjstyleさんのレビューから読みたい本を見つけてしまいました。
      いつもありがとう...
      myjstyleさん、こんにちはー♪

      またまたmyjstyleさんのレビューから読みたい本を見つけてしまいました。
      いつもありがとうございます(*^^*)

      質屋の場面は本当ハラハラしました。

      myjstyleさんの下巻のレビュー読んじゃいましたが、かなりのジェットコースター感みたいですね。
      下巻でも、あの質屋のハラハラ感みたいなものを味わいたいんだけどな……
      さて、どうだろう。

      タイトルの「パチンコ」の意味もわかりそうで楽しみ~

      下巻は週末に読むつもりでーす(*^^*)
      2021/05/21
  • The New York Times の The 100 best books of the 21st Century の15位に選ばれていた本著。
    日本に併合された韓国。釜山の南にある小さな島に生まれたソンジャは一回り上のハンスと恋に落ち、子供を身ごもる。しかし彼にはすでに大阪に妻と子がいた。副牧師になるために大阪に赴くイサクに手を差し伸べられ、イサクと結婚するが、大阪での暮らしは苦しく…
    働き者のソンジャ。偏見と貧困を乗り越えていきます。イサクの優しさと宗教心や、イサクの兄の家長としての立場、ハンスの処世術など、当時の人々の考え方やフラストレーションが描かれていて、ページをめくる手が止まりません。
    今のところ『パチンコ』要素ゼロです。下巻が楽しみです。

  • ミン・ジン・リーのパチンコの上を読んだ。
    在日朝鮮人が1910年から四代にわたる生涯を描いた作品であまりかでアメリカ最大の文学賞・全米図書賞の最終候補作にもなっている。
    朝鮮人は身近に居ないので、高校の時に電車の中でチマ・チョゴリの制服を見るぐらいだった。
    在日朝鮮人がどんな扱いを受けたかは今までの情報や本である程度は知っているが、興味深くて一気に上巻を読んでしまった。
    下巻であと二世代がどんな風に描かれていくのか楽しみだ。

  • 上巻は韓国併合から終戦後まで。時代の激流を生き抜く韓国人一族の物語。いわゆる恨を煽る書きぶりはありません。登場人物には豊かな個性があって、作り物ではない存在感があります。併合当時の韓国は貧しくて識字率が低いが、働き者ですね。高級時計をめぐる質屋での駆け引きは臨場感がありました。男尊女卑は強烈です。大阪の鶴橋や猪飼野の雰囲気、戦後の都市部を韓国人が支配していく様子などよく調べています。一方、日本人の嫌らしさの描写は抑えた筆致です。歯切れのいい文体でドラチックに展開し、エンターテイメントとしての満足度が高い。下巻が楽しみです。日本人作家もこのレベルで、戦時中を全財産を没収され収容所で過ごした日系家族のサーガが書ければいいのに。

  • 1910年〜1930年、日韓併合後、朝鮮半島では数々の変化があったであろうが、釜山 影島(ヨンド)の住民にとっては日々の暮らしに追われるばかり
    しかし、貧しい暮らしの中でも、妻は夫を敬い支え、夫は妻子を宝物のように愛し慈しみ、精一杯の愛情を注ぐ家族のあり方にまず心を打たれた

    両親の惜しみない愛を受けて健康で働き者に育ったソンジャは愛する人の子を身籠りながらも、毅然として愛人として生きる道を拒否する

    生まれてくる子に氏を与えてくれるというイサクと新たな人生を歩もうと大阪にやってきたソンジャ
    猪飼野の朝鮮人街の劣悪な環境、
    「日本人が朝鮮をどう思おうと放っておけばいい。そんなこと気にせず生き延びて成功すればいい」と言い放つ義兄ヨセプの言葉に朝鮮人の置かれた環境の厳しさが伝わってくると同時にそんな中でも生き抜こうとする朝鮮人としてのプライドと逞しさを感じる

    必死に働き、家族を守り生きていくソンジャとヨセブキョンヒ一家

    話は、戦中、戦後、ノアとモーゼスが誕生、成長し
    三代めへと移っていく
    在日2世の子供たちにも日本人の冷酷な差別が待ち受ける

  • 在日コリアンの4世代にわたる物語がテーマである長編小説を、いくつかの異国の血を引く外国人の友人から強く推薦され手に取った。
    上下巻合わせて4800円という、小説にしては相当な金額、「パチンコ」というタイトル、そして上下巻という長さにたじろぎながらも、信頼する人からのおすすめということもあり読み始めた。結果、読めたことにすごく感謝している。今まで考えたこともなかったような感覚や感情、葛藤をしった。それは日本で生まれ日本で育ったわたしには到底知り得ない、移民としていきることの難しさと問題だった。

    この小説はアメリカで大ベストセラーとなり、多くの人に読まれ、非常に話題になったそうだ。しかしその本が日本であまり読まれていない現状は、手に取る前は少し不思議だった。ただ、読んでみてその理由が少しわかったような気がした。

    アメリカは、先住民を除いてほぼ全ての人が移民だ。自分の親族を遡れば、必ず移民として祖国を離れた人がいて、2世、3世と続いてゆく。この小説では1世、2世、3世…と、それぞれの世代が異国で生きることの葛藤と苦しみが描かれる。日本で生まれたのに日本のパスポートが持てない。1世は、自分達が選んで移住することを決めたからその土地で生きる上での差別を受けることや、過酷な状況への覚悟がある。しかし、2世は親を選べたわけでも、住む場所を選べたわけでもない。日本で生まれ、日本語しか話せないのに「朝鮮人だ」といわれ残酷な差別を受ける。その苦しさを考えると、国際結婚とは、移住とは、1世当人たちだけの気持ちで決めるにせよ、その子供たちの生活のこともとことん考えなくてはいけないと感じさせられる

    そもそも私を含め日本に住む日本人は、移民であることを経験している人が少ない。この本がなかなか日本で広まらない理由かもしれない。生まれ育った地を離れ別の国で暮らすこと、生まれた国と国籍が違うという経験をする人が稀なこと、また、戦争での苦しい経験もしたことがなく、この本の中に出てくる登場人物たちの微妙な感情の揺れや葛藤、悩みになかなか共感しにくい、というところもあるのかもしれない。そして何より日本人がこう(全員をではないが一部であっても)悪く言われるような苦い描写を読むのは、なかなかに居心地が悪いのかもしれない。

    それでも、この本にはとても価値があると思うし、教科書で習わないリアルな日本の歴史を知るという意味で素晴らしい資料だ。読書体験というのは、自分が直に知れないことを疑似体験し、登場人物たちのその感情を一緒に共有できることが、なによりも価値あることだと感じる。

    移民である、その国の国籍でない、在日である、というだけで、仕事が制限され、住む場所が制限され、付き合う人結婚する人関わる人が制限される。パチンコ店経営が在日コリアンの主な仕事となっていることをこの本から知り、そうだ、確かに私が知り合った「在日コリアン3世」だといったあの人も、親はパチンコ経営をしていると言った。あまり親のことを話したがらなかった。あの頃私は、何も知らなかった。在日だ、と聞いても「ふうん」としか思ってなかったし、留学生とか帰国子女みたいなものだと思っていた。周りの人たちが「親はヤクザと繋がってるからやばいらしいよ」と言っていた。なんだそれと聞き流していたけど。2010代の話だ。
    この本の中で出てくる時代の日本人と変わらないことを言っている人が、今もまだいる。

    3世であるあの人は、この本の中の3世や4世と同じような感覚を持っていたのだろうか。何を考えていただろう。

    過去を変えることはできない。でも、過去に日本でこんなことが起こっていたんだと知ることは、無意識の差別をなくす一歩になるだろうと思う。この本を読んでいると、何気なく使う言葉や表現で、彼らを傷つけてしまうことがあるのだとどきりとさせられる。彼らの葛藤や苦しさを知っているのと知らないのとでは、接し方もかける言葉も態度も変わるだろう。みんな、人間じゃないか、って。本当に行き着く先はシンプルなんだけど、そう思える優しさを持てるように。

  • 最初は韓流歴史ドラマの文字起こしかと思いながら(だからそれだけでも面白いのだが)読み始めた。しかし徐々に、本の見た目としてのボリュームだけではない、ずしりとした重みを感じ始めた。ページをめくる手が止まらなかった。作者の魂の声が聞こえる物語であった。上下巻計約700ページ、上下巻計4800円(税抜)以上の値打ち。生きること。愛すること。ゆるすこと。ゆるすこと(大事だから2回)。すっかり引き込まれた。きれいごとだけじゃない、親子4世代と、彼らをめぐる人々の壮大な物語に、自分も入れてもらえたことへの喜びと、感謝。在日コリアンの歴史を知れたことも、ほんとうに良かった。しばらくは彼らは私のなかで生き続け、事あるごとに想い出すであろう。

  • 『パチンコ』最初にこのタイトルを見て、読んでみたい!と思ったわけではなかった。が、手にとり読み始めたら、とてつもなくスケールの大きな話だった。

    山崎豊子さんの『二つの祖国』を彷彿させる在日コリアンの物語。なぜ日本に渡ったのか?戦争、差別。当時の様子がよく分かる。これらは、今でも続く普遍的なテーマだと思う。

    苦しさの中に、凛とした強さを放つ主人公と義姉。家族をなによりも大事にする気持ちは、どの国も民族も変わらない。下巻も期待したい。

  • 在日コリアンの苦難を描く『パチンコ』を、「反日ドラマ」と切り捨てていいのか|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
    https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2022/05/3-323.php

    在日コリアン4世代の激動の人生描く『パチンコ』 不寛容な社会で我々はどう生きるか?|Real Sound|リアルサウンド ブック(2020.9.22)
    https://realsound.jp/book/2020/09/post-623245.html

    ベテラン翻訳編集者がやっと出会った、超ド級の物語【編集者通信】|本の話|note(2020年8月21日)
    https://note.com/hon_web/n/nf92c2812163d

    『パチンコ 上』ミン・ジン・リー 池田真紀子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912257

  • 面白い!とある男性との出会いをきっかけに大きく人生が動いていく少女の物語。主人公は必ずしも少女一人ではなく彼女を取り巻く周囲の人物も魅力的。この時代の在日コリアンについて正直全く知識が無かったため最後まで読み通せるか自身がなかったが、純粋に話が面白くページを捲る手が止まらなかった。下巻は少女の息子たちが中心になりそうな予感。早く読みたい!

  • 静かで激しく、素晴らしい本でした。
    在日コリアン、と呼ばれる方たちに自分がどのように感じていたかを炙り出されるような、苦しくも充実した読書体験でした。
    書いてくださってありがとうございました。

  • 数年会っていなかったけれど、同じ戦いを生き抜いてきたことだけは確かに知っている友人と飲み交わす、木製の器に注ぐマッコリ。

    乳酸菌の口当たりのまろやかさ、下に微細に響く炭酸のこそばゆさ、若干喉に残る独特のねばりの感覚、飲み干した後の満足感。

    そして気づいたら1リットルくらいはゆうに飲めてしまっている

    壮大な大河ドラマ、そして朝ドラ。
    「死の棘」以来の衝撃。人生の妙。

    一見そんなドラマ的なものに見えて、
    だけど奥には深い深いふかい社会と歴史のからくりが潜んでいる。

    でも、登場人物たちには、そんなの知ったこっちゃないのである。人生とは、たいがいそんなものかもしれない。

    ボレロのように、寄せては返す波のように、
    淡々と繰り返すように見えつつも、
    しかし確実に変化し前に進んでいて

    知らないところで指揮者の指示のままに進んでいる

    そんな音楽みたいな物語。

    まさかのラスト。何てことないのに、どすんと落とされる。

    前半までに感じていたマッコリのような
    どこか粘っこい甘さのある、
    だけど飲み口さわやかな感じはそのままで、

    しかし同時にああ、ダシと唐辛子の効いた
    実に手のこんだ、少し味濃い煮物みたいなものを
    自らの酔いに気づかぬままに
    箸を運び続けていただんだなと

    最後になって気づく感じ。

    ベネディクト・アンダーソンを引く小説だよ。

    移民体験、異「民族」、被支配、同化政策、ナショナリズム、全ての節に、章に明記されている時代、
    明確に言及されない何か

    その全てに触れるのはあまりにも刺激が強すぎるけど、
    透けて見えざるを得ない所は、まさにマッコリのかすかな微炭酸のよう。

    その緩やかな、しかし確かな鼓動とともに紡がれる物語に、
    抽象的な表現とともに思いをはせよう。

    https://youtu.be/n7FfCXW-LuM

  • 生まれのことが気になる年頃。それはつまりルーツを辿るということなので、伝聞するしかないわけで。両親や親戚に聞くのもいいけど、近さを感じる人の文章を読むのも良いかなと。部分的には泣きそうになったり感情が動くが、なぜ在日というものが生まれたのかというところが詳しくわかり、とても学びのあるものだった。

  • 朝鮮・大阪を舞台にした『風と共に去りぬ』を思い出す戦禍を生き抜く女性の物語。

    口唇裂・内反足で生まれ、苦労しながらも優れた人格で周囲からも家族からも尊敬され慈しまれた父。子を甘やかすなという考え方が普通の時代に、主人公は父母から愛され大事にされた幼少時から自己肯定感と神の愛を強く内にもち、戦禍を耐え家族を大切に生き抜いたように思う。

    戦時下・戦後の混乱を知らず、日本に生まれ育った自分は、在日2世3世の友人のことを深く知らず過ごしてきた。まず当たり前のように戦時中に日本が周囲の国にしてきたことを一歩深く気づき、韓国系アメリカ人から描かれた本書を手に取れて良かった。

    疾患障害、国の違い、生まれの違い、考え方の違いを それだけに焦点を当てるのではなく、どの場所でも自分を見失わずできることを地道にするという1人の女性の生き方を通して、自然に越えたり受け入れていくような物語に、ところどころ、うーーーんと考え込みながらのめり込んだ。

    家族の各人物が人間的魅力をもって描かれているが、
    個人的にどうしてもハンスを完全悪人とは思えない、今後も登場を待ってしまう。

  • 一気に読んだ。ミン・ジン・リーの小説の書き方は時代背景が緻密で、訳者の表現力も素晴らしい。ある家族を含む物語ではあるが、当時似たような経験をしてしてきてる人がいるのだろう。ソンジャの父親と母親と関係はお互いを大切に思っていることがわかる情景がえがかれていて、特に親が子を宝として捉えてるため、ソンジャと母親の別れと再会の描写は感動した。どんどん話が展開する中で、不吉な言動が登場人物から感じられるところがあり次が気になる。ソンジャの父親の教えを思い出して大阪で交渉する場面はこの時代で強い女性だと思う。登場する人々はみな人格が素晴らしいところがありつつ、別の面をもっている人間らしさも現実味があり引き込まれる。

  • 在日コリアン一家、四世代の辛苦の人生を描いた話題作。
    話の始まりは1910年の韓国・釜山近くの漁村、働き者の父から生まれたソンジャが、日本で商売に成功するハンスと恋仲になり子を設けるも、ハンスは既婚者であり、ソンジャには結婚でなく愛人となることを求めた。それを拒絶し、絶望するソンジャはふと現れた病弱な牧師、イサクと結婚し、ともに日本に渡ることを決心する。
    大阪に渡り、イサクの兄ヨセプとその美しい妻キョンヒと同居生活を始め、1933年長男・ノアが生まれたところで第一部は終わる。
    第二部ではそこから八年がたち、貧しく差別の目を向けられながらも、愛情を受けノアは元気育つ。そして弟のモーザスも生まれる。しかしある日、イサクは政治犯として捕まり、投獄される。
    ソンジャはキムチ売りをしながら、夫の帰りを待つも、帰ってきた夫はひどく疲弊し、ほどなく息を引き取る。そしていよいよ戦争が深刻化、そしてハンスとの思わぬ再会をする。ハンスの手助けによりソンジャと家族は疎開、長崎に行ったヨセプは原爆投下による被曝を受ける。そして戦争が終わり、大阪に戻ったところで上巻は終わる。

    貧困、差別、戦争に苦しむ中で息子2人を抱え、逞しく生きるソンジャが上巻の主人公。日本への批判というよりか、もっとシンプルに庶民の抱えた渇いた寒々しさを感じる。 戦後を生きる息子たちはどうなっていくのか。入り込んでしまう作品。

  • 上巻は、過酷な朝ドラという印象。
    少女時代を過ごしたみずみずしい田舎の島の描写から、日本へ渡って直面する差別と貧困と戦争。
    流れは王道の朝ドラだが、性描写や差別等を含んだPG12やR15指定版って感じ。

    登場人物が多くなると外国の人名は覚えにくくなるが、アジア作品にも関わらずアメリカでも本作が読まれたのは、欧米で馴染みのある聖書から名付けられた人名が多いのも要因かなと思った。
    (「ヨセフ」が「ヨセプ」となってるのは、韓国人はハ行が苦手でパ行で発音してしまうため?)

    4世代に渡る在日コリアン家族の様々な人生を、韓国系アメリカ人の著者が、日本人も在日コリアンの方々が読んでも違和感なく描き切ったことに感銘を受けた。センシティブな題材にも関わらず、両方の読者の共感を得られるって、凄い事だ。

  • 在日コリアンの4世代に渡る苦難を描いた物語。
    ノンフィクションのようなリアルな情景描写、人々の微妙な感情描写によって作品に惹き込まれた。
    次々に降りかかる苦難、出自を理由とする差別と苦悩。思いがけない何かに翻弄され続けながらも、流れついた場所で懸命に生きていく姿に感動を覚えた。
    一方で立派な職を得ようと必死に努力しても、結局パチンコ業界(作品内で蔑まされている)にたどり着いてしまう描写に対しては、差別の根深さを感じたし、やるせない気持ちを抱いた。

  •  ライターは在日だよね、最初の出版ががアメリカなのが驚きだし、この小説の内容がアメリカ人に受けるのがなんとなく不思議。
     そういえば村上春樹が言っていた。小説をまずは英語で書いて日本語に直すと贅肉の落ちたスッキリした文になると。読みやすいのはそのせいか?

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