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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784163912271
作品紹介・あらすじ
第56回谷崎潤一郎賞受賞作!
「文學界」連載中より話題を呼んだ、芥川賞作家・磯﨑憲一郎の3年振りとなる長篇小説。
「もちろんこの頃既に、人々は同質性と浅ましさに蝕まれつつはあったが、後の時代ほど絶望的に愚かではなかった」――大阪万博、三島由紀夫の自決、日本で初めての五つ子の誕生、ロッキード事件、グリコ・森永事件、日航ジャンボ機墜落事故……この国の戦後史を賑やかした大小さまざまな事件を扱いながら、作家は自由自在に語り手を乗り換えて、どこまでも遠くに語りを滑らせていく。誘拐された製菓会社の社長、キャバレー通いが趣味である小柄な政治家、五つ子の父親となったNHK局員、太陽の搭の「黄金の顔」に立てこもってしまう目玉男、グアム島の洞窟に28年間身を潜めていた元日本兵……一瞬は「時の人」に押し出されたこともある彼ら多くの語り部を通して描かれるのは、1965年生まれの作者にとっても切実な時代の、ノスタルジーによる美化を排した淡々としながらも緻密な細部である。そうして、彼等、語り手から「世の中の興味関心が薄れ、忘れ去られた後でも、虚構ではない人生は途切れることなく続いている」のだ。
――思い出してみればみるほど、じっさい酷い時代だったのだ、この時代の人々が果報に恵まれていたなどというのも、本当かどうか怪しいものだ(中略)我々は滅びゆく国に生きている、そしていつでも我々は、その渦中にあるときには何が起こっているかを知らず、過ぎ去った後になって初めてその出来事の意味を知る――
あの「蒙昧」の時代の生々しい空気と、そこに無数に鏤められた細やかだが「虚構ではない人生」を浮かび上がらせるとともに、文体の超絶技巧で高度な純文学的達成をも果たした野心作。
感想・レビュー・書評
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なんの本を読んでるのかわからない、途中であれ?あの話どこ行った、というところがまた戻って来る。グリコ森永事件、五つ子ちゃん、万博の会場誘致と立退、目玉男、そして終盤は横井庄一さんの帰還してからの余生、あらすじもない、まさに蒙昧とした昭和の話。
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昭和40年生まれの著者が、少年時代から青年時代にかけて起きた社会的な出来事をまとめたドキュメンタリーノベル(?)。同じ時代を生きた者として興味深く読んだ。帰還兵・横井さん、鹿児島の五つ子ちゃん、グリコ森永事件など、マスコミの功罪を考えた。大阪万博の裏事情はまったく知らなかったのでおもしろかった。いい時代だったとは思わないが、令和の現在も本質は変わらない気がする。
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いやはや凄い著述。1970年、80年代の出来事(登場順に、グリコ森永事件・豊田商事会長殺傷・日航機墜落事故・角福戦争・五つ子騒動・大阪万博土地収容問題・太陽の塔占拠目玉男・三島由紀夫自決・浅間山荘事件・横井さん帰還等)について、まるでその場に居合せたかの様な詳細な記述が延々と続く。それも「…であった、…していた、…した、…だった、…」と、普通なら句点で切るところを読点で延々繋いでいくという独特な語り口。最初は戸惑うも、次第にそれを良い勢いに感じる様になって読み進みました。
あの当時は「我々はじゅうぶんに無知で、蒙昧ではあったが、自分たちの理解を超える事象に対してまで恥ずかし気もなく知ったか振りをするほどは、傲慢ではなかった」「当時の世の中はまだまともだった」という気は確かにする。 -
史実に沿った部分と、作者が創造した物語が自然にリンクしていてとても読みやすかったし感情移入して一気に読んでしまいました。
話題が転々とするので内容がどんどん後ろ後ろへと消えていくが、昭和の時代に起きた出来事たちを追体験しているような(昭和は全く知らない)感覚でした。 -
面白かったし,この話のモデルはこの人なのだな,という類想もできた。でも文章がいかにも日本の古いタイプの男性としてのステレオタイプで、あまり好きにはなれなかった。
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読んで面白かった記憶はあるのにブクログになんで記録がないのか。家の本棚にモノはあるから確かに読んだはず。
続編を書店で見かけて買ってきたので記録しておく。 -
まさに帯分通り「語りの魔術」
昭和の時代に実際に起きた出来事が神の視点で語られていく。
タイトルも改行の少なさもあって苦戦するだろうと思っていたが、語り手さんの話を聞くような感覚でするすると読めてしまった。
実際にその時代のことはあまり知らないのでどこまでがフィクションなのかはわからないが、当時を知らない人の方が面白く読めるのかもしれない。
確か、文學界で続編が掲載されていた気がするので
そちらも単行本化することを期待。
あと梨ちゃんが言っていた通り、カバーの手触りが最高。 -
ルポルタージュ的にエピソードをつなぎ合わせ、時代をあぶり出す意図か。下手な伏線の回収など期待するほうが愚昧。
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平成生まれだけど、戦後の昭和の空気感が生々しく伝わってきた。たぶんそれはフィクションだけど、その当時世間を騒がせた実在の人物たちの視点で語られているから。
また読み返したい。
印象に残ったのはp83。 -
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事前に設計図をつくらず、冒頭の一文を決めて「場当たり的に書き進める」、著者の磯崎健一郎さんのインタビュー記事を読んで知った、磯崎憲一郎さん独自の創作手法。
その技術の凄さに圧倒されたし、こういった歴史的な出来事を題材とした小説をあまり読んでこなかったにも関わらず、こんなにも勢いよく滑るように読めてしまったのは、その滑らかな文章技術にあるのだろう。
冒頭のグリコ・森永事件から、日航ジャンボ機墜落事故、大阪万博開幕から太陽の塔の目玉男事件、日本初の五つ子誕生、ロッキード事件、グアム島の密林に二十八年間身を潜めた元日本兵等、昭和の20年間を虚構を交えて綴られた小説。
神の視点で、語り手を自在に換えつつ、固有名を伏せた状態で語られている。改行も殆どなく、本来ならば句点がくるであろう部分に読点が用いられ、流れるように話が進んでいく。
この小説の中には、心にグッときて、読んだ後も頭の中でぐるぐるしている言葉が多くあるので、いくつか引用して残しておこうと思う。
「我々はじゅうぶんに無知で、蒙昧ではあったが、自分たちの理解を超える事象に対してまで恥ずかし気もなく知ったか振りをするほどは、傲慢ではなかったということなのか?」(P,169)
「金という権威に負けて、服従させられている!本来的には延々と続く労働から人間を解放する機能を担っていたはずの貨幣が、逆に人間を束縛している!これはまったく信じ難い事態だった。」(P,230)
「私がどうしても受け容れることができないのは、世の中のありとあらゆる価値が、金額で、数の多少で推し量られるようになってしまったという愚かさ、馬鹿さ加減、ただその一点であります」(P,234)
「世の中の興味関心が薄れ、忘れ去られた後でも、虚構ではない現実の人生は途切れることなく続いている、この日の出来事はその証明に他ならなかった。」(P,244)
等々、挙げたらきりがない!
特に、「幸福の只中にいる人間がけっしてそのことに気づかないのと同様、一国の歴史の中で、その国民がもっとも果報に恵まれていた時代も、知らぬ間に過ぎ去っている」という言葉は、読む前と読んだ後では心にくるものが違った。
主題とは関係ないが、とにかく活字不足で活字が読みたい!というときについ手に取ってしまうような、改めて文章を読む楽しさを味わえた一冊でもあった。
第2部が載っている文學界の10月号、買っておけばよかった〜( ; ; ) -
2020I002 2020I012 913.6/I
配架場所:A1 東工大の先生の本 -
グリコ森永誘拐事件、五つ子ちゃん誕生、大阪万博、目玉男、ジャングルに潜伏し続けた元日本兵。それらの人物や出来事を通して、昭和の今から振り返れば幸せな時代を、磯崎氏独特な文体で語られる。語りを楽しむ作家の一人が磯崎憲一郎氏だ。
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この本すごい。好き。私的に今年No.1の本。知性にも感性にも響く。20世紀後半のこんな語り方があるなんて。
最初に読んだ磯崎さんの作品が『終の住処』だったのですが、これが読んだ当時の私にはあんまり合わなかったので、以後、手に取る機会がなかったのだけれど、改めて他の作品も読んでみます! -
鶯茶色のすっきりした表紙がしっくりくるような内容で,読むほどに面白く他にもいろんなニュースがあったはずだが,選ばれたニュースで時代の雰囲気とか実は知らなかったこととか,忘れていたことを思い出したりした.そして今現在に続く例えばマスコミのあり方や人々の節操のなさ,交通事故の多さに注目しているのも我が意を得たりという気がした.たくさんの人に読んで欲しい本です.
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フィクションといわれても、同時代人にとっては、あぁーあれね、あの人ね、てな感じで記憶をくすぐられる。面白くて一気に読んでしまった。
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まことしやか。
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面白い。ふわふわした史実を淡々と述べる語りが、作家の自殺によって文学史的にも刻印される。
著者プロフィール
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