げいさい

著者 :
  • 文藝春秋
3.41
  • (7)
  • (26)
  • (22)
  • (4)
  • (5)
本棚登録 : 267
感想 : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163912424

作品紹介・あらすじ

まさに鬼才。過激に、独創的に、第一線を走り続けてきた現代美術家、会田誠。その活躍は、いまホットな美術界だけにとどまりません。「とにかく信じられないくらい文章がうまい。ほれぼれしちゃう」と、吉本ばななに言わしめたエッセイ。高橋源一郎、斎藤美奈子らが激賞した処女小説『青春と変態』。そんな会田誠が、最初の構想より30年以上、執筆に4年の歳月を費やした長編小説です。1986年11月。新潟・佐渡の田舎から上京してきた美術予備校生の主人公は、多摩美術大学の学園祭(通称「げいさい」)に出かけ、そこで濃密な一夜を体験します。昭和終盤、主人公らが目指す東京芸大入試はまさに最難関かつ過激、でした。当時を、当事者である筆者が小説の形式で描いた本作は、そのまま現代日本美術界への真摯な問いををはらんでいる、とも思われます。この4年間、フォロー数約10万のツイッターでも、たびたび本作については言及されてきました。そんなファンだけでなく、各界の著名人も待ちわびた待望、渾身の一作です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 身内やまわりに芸術系の大学だった人が多く、その受験たるものや、「自由に」との葛藤などのリアルな部分が気になって図書館より拝借。会田氏の芸術作品から考えるとちょっと意外というか、人物や背景が非常に素直に描かれていたような気がします。自分も教育関連職に携わっているだけに、評価とは何かを考え問い直すことは、芸術系大学入試だけにかかわらず、常に意識すべき課題だと思います。

  • あー青春。若いね。

  • 現代美術家・会田誠による小説。

    本業では、過激と見られる作品も多く、何かと物議を醸してもいる。かなり尖った印象である。
    個人的には美術家としての著者を本当に理解できるのか心許ないのだが、何となく気にはなっていた。小説なら若干取っつきやすいかと読んでみた。

    語り手は「本間二朗」。今ではそれなりに名が通った美術家である。
    その彼が、青春時代のある一夜の思い出を軸に、美術家としてのスタート地点を振り返る体裁。
    舞台は1986年11月2日から3日にかけて。
    その頃、二朗は東京藝大を目指す二浪目の浪人生で、その夜は多摩美術大の芸術祭の夜だった。
    多摩美大には友人や喧嘩別れしたままの恋人が進学しており、彼らのパフォーマンスや作品を見に来た。
    パフォーマンスを見て、その後、お決まりの飲み会になる。一浪時代の友人や美大の講師・教授陣、謎の大男を交えての論戦や乱痴気騒ぎ、合間には二朗の回想も交え、異様な盛り上がりを見せる一夜の果てに彼が見るものは。

    ひとことで言ってしまえば、「あの頃」の香りがする青春群像劇である。
    主人公の設定は若干、著者を思わせる部分もあるが、もちろん架空の人物というか、自身や友人を継ぎ接ぎしたような存在である。
    熱量があり、進路に迷い、恋愛に悩み、時代の空気に翻弄されながら、突っ走る青春。そういう意味では、これは普遍的な物語でもあって、美術に特に関心がある読者でも受け入れやすい作品だろう。

    一方で、これはやはりただの青春小説というだけには終わらない。
    背景には、受験美術に対する苛立ちや憤りというのがおそらくあって、その大元を辿ると日本の美術教育の成り立ちに行きつくということなのだろう。
    「美術系受験生あるある」と思われるネタ話もおもしろいが、1つの山になっているのは、回想シーンでの、東京藝大の伝説の出題「自由に絵を描きなさい」である。
    「自由に」「絵を」「描く」とはどういうことなのか。
    おそらく考えすぎてしまった二朗は定石から大きく踏み外す。
    一方で、二朗とは一種のライバル関係にあった小早川はスマートに切り抜ける。
    この小早川が後で二朗に掛ける言葉がよい。かっこいいな、小早川君。
    ・・・とはいえ、このスマートすぎる人物が美術家として成功するかといえばそうではないところが美術界のおもしろさ、難しさなのであるのかもしれない。

    これを読んだからといって、著者の美術作品の理解につながるかといえば相変わらず心許ないのだが、なかなかおもしろく読んだ。

  • 「天才でごめんなさい」と言われても、「本当に天才だから、仕方ないよなあ、そうだよなあ」と思ってしまう現代芸術家、会田誠が数年の構想と執筆期間を経て完成させた長編小説。若き自身を主人公とした青春小説の体を取りながら、本作の素晴らしさは日本の芸術大学に潜む受験システムへの批評として成立している点にある。

    主人公は、新潟の佐渡から状況して東京芸大を受験するも失敗し、芸大予備校に通う若き会田誠。二浪に突入した彼が、おなじ予備校出身で多摩美大に進学した仲間たちに会いに訪れた1986年11月の学園祭の3日間を舞台に、バブル崩壊前夜の若き芸術家たちの姿が描かれる。芸術大学の学園祭といいうはちゃめちゃなやり取りと並んで、主人公が芸大予備校で過ごした日々が回想されていく。そのパラレルな語りを通じて、実はこの作品のメインテーマが「日本の芸大受験はお決まりのルールがあり、そのルールをひたすら予備校で修得することで、かえって作家としての大事な魂を削いでしまう」という受験システム、ひいては日本の美術界が明治以来に抱えてきた問題への告発にあるということを知る。

    会田誠の文章は非常にクリアでかつリズムに富んでおり、極めて巧みである点にも驚かされた。会田誠に興味がなくても、日本の美術界に興味がある人であればぜひ読んでいただきたい傑作。

  • 「美術」は「art」の完全な和訳ではないというところが面白かったです。
    受験絵画の弊害と、その理由が、採点がしやすいという選ぶ側の都合であるところが、実に日本らしいなと思いました。

    美大生、美大を志す人たちの様子はなかなか知ることが出来ないので、とても興味深かったです。

  • カリコリせんとや〜
    が面白かったので続けて2冊目。
    ノンフィクションのようなフィクション。
    今のキャリアを築くまでの経緯への問いに対しての答えだと冒頭で語られる。
    それに対して〇〇だったのかとういう答えはない。
    表現することに対しての戸惑い、藝大受験という特殊な世界、、、
    独特の温度感がある文章で惹きつけられていく。

  • ヨーゼフ・ボイス、ローリー・アンダーソン、タルコフスキーと80年代アートっぽい名前がぞくぞく出てくる。懐かしくちょっと気恥ずかしい。
    登場人物の造形は典型的で、同じ予備校に通う技術的に完璧だが「絵心のない」友人など、よくある設定は漫画のようであるが、おおむねたのしく読めた。小説の締めを、「妊娠小説」にしてしまったのが残念。日本文学の伝統に倣ったわけでもなかろうに、生臭くなった。

  • 署名本だから買ったが…やたら胴体の長い尻切れ蜻蛉という印象。

  • 芸大受験に失敗して2浪中の主人公が、美術予備校の友人の学園祭に行った1日のことだが、過去の思い出として1浪目の話が書かれていて、実質的には1年半の話になっている。自分のめざす絵を描くために、美術学校に行く。そのためには受験のための絵を描かなくてはならないというジレンマ。大学生になって、芸術論を語りたがる先生や先輩に感化されたり、逆に受験で燃え尽きてしまったりする、同級生たちの様子が描かれていて、芸術系に限らず、そういうことってあったなぁと懐かしく感じた。

  • 強烈

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

会田誠(あいだ まこと)
1965年、新潟県生まれの現代美術家。東京芸術大学油画専攻卒業、東京芸術大学大学院美術研究科修了。美術史への深い造詣をもとに、生と死、エログロ、ロリコン、戦争、暴力など、社会通念や道徳に関わる現代的テーマに取り組み、問題提起的な作品を次々と発表している。展示や発言に関するトラブルもあるが、海外でも評価を受ける機会は増えており、日本を代表する現代芸術家の一人とされる。
著作・写真集も多い。代表作に『青春と変態』、『孤独な惑星』、『MONUMENT FOR NOTHING』など。

会田誠の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
凪良 ゆう
ヴィクトール・E...
恩田 陸
カズオ・イシグロ
リンダ グラット...
宇佐見りん
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
馳星周
村上春樹
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×