汚れた手をそこで拭かない

著者 :
  • 文藝春秋
3.59
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  • (31)
  • (9)
本棚登録 : 2499
感想 : 271
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163912608

作品紹介・あらすじ

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。
元不倫相手を見返したい料理研究家……始まりは、ささやかな秘密。
気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、
見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。

取り扱い注意! 研ぎ澄まされたミステリ5篇からなる、傑作独立短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集のイメージがかなり定着してきた芦沢央。短編嫌いな私ですが、彼女の作るショートストーリーは斬新で結構好みの類である。
    五作からなる個々の物語はどれも銭をからませたブラックユーモア溢れる小気味よい作風であり、なるほど自身の人格破綻をしみじみ感じる事が出来た。

    お気に入りは「埋め合わせ」
    同作者 許されようとは思いません の中にある「目撃者はいなかった」に酷似した内容とはなるが、責任逃れを正当化する姑息な主人公があれよあれよと自滅する様は滑稽且つ痛快だ。
    失敗は恥じても隠すことなかれ。保身は時に自身を傷つける凶器へと変わってしまうらしい。銃刀法違反だ。素直になろう。

    どれも金がテーマのありそうでありそうな話だ。第三者として覗き見るのは堪らないが、自分には絶対起きて欲しくない事案。
    そう、己の俗悪さに抗うこと無く読むことが出来ればエンタメとして楽しい作品だろう。
    個人的には、その後に教訓として何かを感じる所まで到達して欲しいが...それは各々の楽しみ方である。なので恒例のミッフィーを憑依(・×・)スッ

    トリとなる「ミモザ」は泥沼恋愛土台のあのベタな雰囲気を纏いながらも顕著に芦沢節が炸裂していたように感じる。
    サイコパスホラーを彷彿とさせる鳥肌仕様ではあったが、女性目線でこれはかなり為になる話だった。
    過去の男が目の前に現れてそれはもう自信満々な顔をしていたら、本当に意識していなくてもわざわざ「あnt!!!....XXXX!!!!」と中指立ててしまいそうだもの。(注 比喩表現)
    だがそれをした主人公みーこの末路はおぞましいものである。ダメだみーこ。その中指で鼻フックしたろかくらいの強い意志を持つのだみーこ。
    (´ρ`*)コホンコホン

    個人的に過去のメンズに後ろ髪ひかれた経験は悲しきかな、悲しきかな皆無なので感情移入は出来なかったのだが、女性の意固地で見栄っぱりな部分と、故の守りの弱さを正確に、そして斬新な切り口で見せ付けてくれたのは有難かった。
    ーーーーーーーーーー

    どの作品も、金がテーマとは言うが本当のスポットは「人間が持つ深淵の闇 Lv1」と言った所だろうか。反面教師として読者が成長できる自己啓発本だ。...言い過ぎだろうか。

    「芦沢央の長編作品に痺れたい願望メーター」が振り切りそうだったのだが、この作品を手に取ってその欲は幾分か鎮静された。
    何より「汚れた手をそこで拭かない」このタイトルが秀逸だ。人間誰しも手が汚れることがある。それをテーブルクロスやら隠れた場所で拭いて後からオカンにドヤされた経験は誰にでもあるだろう。
    果たしてそのシミは簡単に取れるものですか?

    ずば抜けて面白かったオンリーワンだ!
    とはやはり言えないなんともむず痒い立ち位置なのは変わらないのだが、つまらない要素も見当たらない。この安定さが芦沢央のベースなのかもしれない。気長に追い続けたいと思います。

  • ごく僅かな判断間違いで、最悪の結果が待ち受ける恐怖! きっとあなたも… #汚れた手をそこで拭かない

    作者お得意のイヤミス短編集全5編。
    倒叙形式でストーリーが進むものが多く、主人公がひた隠しにしたい秘め事が徐々明るみになり、ついには追い詰められていくところが鬼怖いっ ひえぇぇ

    芦沢央さんの作品はいくつか読ませていただいていますが、なかでも本作は日本語がとても綺麗! さらに文章構成もとても上手で、和の美しさがにじみ出ていますね。それでいてライトに読ませるところは、テンポも小気味よいです。
    単なるイヤな気分になるミステリーでなく、芸術性や文学性も高いと思いました。

    なにより登場人物の心理描写、会話が丁寧に練りこまれていて、読み手に本を離させません。さすがですね! 以下短編ごとの一言コメント。

    ■ただ、運が悪かっただけ
    理不尽な中、重いものを背負ってしまいましたね。
    あと少しの人生、安らかに過ごしてほしい。

    ■埋め合わせ
    怖いよー。なんなの、攻めてこないで。
    といった恐怖を味わいたい人に、ぜひ読んでほしい。

    ■忘却
    老後は夫婦二人で静かに過ごしたい。
    そんな優しさ溢れる世界に、卑しさと切なさのナイフを突き刺してくる作品。

    ■お蔵入り
    自分都合でしか考えられない大人たちの失敗。
    少しずつ不安を煽ってくる手法と結末が怖いっ

    ■ミモザ
    クズ男と甘えた女。
    こういう男は大っ嫌いなので、知恵と経験と人脈を使って戦わないとダメですよ。相手は逃げる人を追い詰めるのは得意なんですから。
    小説にマジレスをしてしまった。

    全作品通して思ったことは、やっぱり一番最初の判断が間違っているんですよ。まず事実をしっかりみて、客観的に判断しましょうよっ
    と、偉そうなこと言っても、私も自信ないです。ごめんなさい…

    前5編、比較的短いお話ばかりですが、読み応えバッチリの短編集です。欲としてはもう少しボリュームや、真相に深みがあってもよかったかなーくらい。

    芦沢央さんの作品の中でも一番好きで、ほぼ★5です。特にイヤミス好きにはおすすめできる傑作でした!

  • 芦沢央さん、何冊目なんだろう?と確認したら7冊目。タイトルどおり、汚れの拡大、すなわち自分の立場を徐々に悪化させていく。自分の中ではパニックストーリーとして楽しめた。特に「ミモザ」が一番のパニック。料理研究家の美紀子がかつて付き合っていた瀬部と自分のサイン会で出会い、金を貸す。瀬部は美紀子に付きまとい、最後には瀬部が自宅に来て、美紀子、旦那の3者の修羅場。美紀子のプライドの高さと尊厳欲求の強さが、瀬部にタカラレるという結末に至ってしまったのかな?と思う。美紀子の堕ちていく様が見ものであり、ゾワゾワした!

  • バレたくないことを隠す
    実際より よく思われたい
    そんな 些細な虚栄心が
    どんどん 坂道を転がるように
    悪い方向へ導いていくさまが
    怖いんです

    だって そんな気持ち
    誰にでもあるでしょ

    だから読後感が
    気まずかったです
    心に残るんだけど ちくちく痛い
    人間 正直に生きなあかんね

  • ストンと腑に落ちる一冊。

    読んだ人だけがストンと腑に落ちるこのタイトル、実に巧い。

    アリ地獄に落ちるかのように次第に窮地に陥っていく出来事はもちろん、巧みな人間心理と揺れまくる心情描写は読み手をガッツリ離さない。

    降り積もる嘘、優しさ、罪悪感、哀れみに占められていた心が最後に知る真実。

    待ち受けているのは人のほくそ笑みか…それはまるで人が心に秘めるブラックボックスを覗き見たような瞬間。

    嫌悪感とザラザラ感、ヒンヤリ感の絶妙なミックスを心に注がれるような五編。
    中でも余韻を残す「忘却」「ミモザ」が印象的。

  • 芦沢央さんのタイトルに惹かれるシリーズ!

    「悪いものが、来ませんように」「許されようとは思いません」からのこちら「汚れた手をそこでふかない」。

    5編の短編集。

    ただ、運が悪かっただけ
    埋め合わせ
    忘却
    お蔵入り
    ミモザ

    短編集を読んで全部面白かったと思えるのがおそらく初めて。順番も良かったし、嫌〜な感じに終始ドキドキ。
    特に埋め合わせはなんとも言えない〜っ!
    やばい、なんとか誤魔化せる?いや、だめだ。謝ろう。この心理状態に陥った経験あります。
    この謝ろうが時と場合によっては難しかったりするんですよね(^_^;)
    ミスは潔く認めるのがいちばん、変に誤魔化そうとして、手を汚さないようにしましょう。でないと、もしかしたらもっと大変なことに…なるかも…。あたりまえのことをしっかり心に刻み込みました。

    ミモザを読む頃には、帯の通り「もうやめて」と主人公と一緒に頭を掻きむしりたくなりました。

    次の芦沢さんは「火のないところに煙は」読みたいです。

    • shintak5555さん
      やばい、なんとか誤魔化せる?いや、だめだ。謝ろう。この心理状態に陥った経験あります。

      めっちゃあるあるです。笑
      やばい、なんとか誤魔化せる?いや、だめだ。謝ろう。この心理状態に陥った経験あります。

      めっちゃあるあるです。笑
      2022/04/10
    • あささん
      shintak5555さん

      めっちゃあるあるですよね。笑笑
      shintak5555さん

      めっちゃあるあるですよね。笑笑
      2022/04/10
  • ある罪をちょっとした嘘で誤魔化したと思っていたら…後味の悪さが待っていると想像出来るけど読み進めてしまう短篇5編。最初の人を殺めてしまったかもしれない過去に苦しむ夫に別の視点を示唆する「ただ、運が悪かっただけ」は黒さより切なさが勝つが後になればなるほど胸くそ悪いざらつきが心に残る。どの話も誤魔化そうとする思考が感情移入しやすく、破綻へのラストに近づくにつれ一緒にドキドキしてしまった。嘘にしっぺ返しされる展開としてはプールの水問題の「埋め合わせ」が、ドキドキ度は主演俳優の罪がとんでもない展開になる「お蔵入り」が(これは出だしの一文が秀逸だと思う)、嘘に絡め取られる気持ち悪さでは過去の男に付き纏われる料理研究家の「ミモザ」が好み。

  • 芦沢さんの描くイヤミスはいつも、人間なら誰しも経験したことのある「とんでもないミスをした時に内臓が冷たくなってグルグル落ちていく」感覚を思い出させることに長けてます。
    本作でいえば「埋め合わせ」や「ミモザ」。散乱する思考や瞬時に正解をとったつもりが破綻していく論理…いわば人生においてあんまりあって欲しくないハプニングの擬似体験として、ある意味おすすめです。
    「ただ、運が悪かっただけ」と「忘却」は短編ミステリー。謎解きだけでなく、心にちょっとしたしこりを残してくれる"100%ハッピーエンドにならない"ところが好きです。

    芦沢さんのホラー作「火のないところに煙は」ぐらいのガツリ感を求めてしまったせいで個人的には消化不良でしたが、全体的に面白く1日で読み終わってしまいました。

  • なんとも後味の悪い終わり...ザワザワ感が未だに残っています。
    ウソにウソを重ねて抜け出せなくなってしまう。正直に話せばいいのに...とこちらは、思ってしまうのだけど実際その立場になったら自分もどうなるかわからない。そんなことを考えるとゾクゾクが止まりませんでした。

  • 短編五話ともお金がテーマ、先が気になりサクサク読みました。
    ですが読み終わって、かなり疲れた〜
    最後のお話(9年前に別れた年上の男と再会したら、とんでもなく最低)が、予想通りの展開なのに後味が悪過ぎて、胸がモヤモヤしてます。
    当分、お金で揉める話は読みたくない…

    改めて感じたのは、
    ①嘘はバレるから、つかないのが一番。
    ②いじってもいい人なんて、居ない。傷付ける。
    ③お金貸してと言われたら、距離を置く。

    疲労で眉間の奥が痛い、次は温かいストーリーを…
    (´;ω;`)…

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著者プロフィール

芦沢央(あしざわ・よう)
1984年東京都生まれ。2012年『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。主な著書に『許されようとは思いません』『火のないところに煙は』『僕の神さま』など。最新刊は『汚れた手をそこで拭かない』が第164回直木三十五賞候補作となる。

「2021年 『非日常の謎 ミステリアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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