闇の脳科学 「完全な人間」をつくる

  • 文藝春秋 (2020年10月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784163912752

作品紹介・あらすじ

「人間とは何か? 精神を操るとはどういうことか? ミステリーのような科学ノンフィクション。読まねば損な一冊だ」 仲野徹氏(大阪大学大学院医学系研究科教授・HONZ書評家)絶賛!

「脳に電気ショックを与えて、『完璧な人間』へとつくり変える」

現在の米脳科学界における一大トレンドであり、DARPA(米国防高等研究計画局)も莫大な予算のもと参戦する「脳深部刺激療法」。「サイコパス」「依存症」「うつ病」「てんかん」「パーキンソン病」、そして「小児性愛」「性犯罪者」さえも矯正可能であるという夢のような治療法だ。軍事転用すれば、冷酷な兵士を人工的に生み出せる。

しかし、闇に葬り去ったはずの禁断の治療法がふたたび甦ってしまった、と戦慄する人も多い。というのも1950〜60年代、マッドサイエンティスト疑惑のある天才脳神経外科医が、倫理観の希薄な南部(ニューオリンズ)の大学で、思う存分に人体実験を敢行していたからだ。患者の頭蓋骨に穴を空け、電極を差し込むことによって。しかも彼は、人類の進歩に貢献する英雄として、もてはやされていたのだという。

恐るべきことに彼は、同性愛者を異性愛者へつくり変えることに成功。暴力行為が一瞬で消えた患者、上限のない幸福感に満たされる患者、メンタル疾患が消えた患者なども。過激化する人体実験。その一方で、手術失敗で発生した廃人たちを隠し切れなくなりーー。人間の本質=「脳」という臓器に変更を加えることは許されるのか?

みんなの感想まとめ

人間の精神を操る可能性を探求する本書は、脳深部刺激療法という最先端の技術を通じて、精神疾患の治療や人間の性質の変容について考察します。著者は、過去の人体実験や倫理的な問題を掘り下げながら、脳に電気を流...

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    かつて「マッドサイエンティスト」と糾弾され、医学の表舞台から姿を消した医者がいた。その医者の名は『ロバート・ヒース』であり、彼を主人公として本書は展開していく。

    ヒースが施した治療のもっとも有名なものが、同性愛者を異性愛者に矯正するための電気治療である。被験者の脳の快楽中枢に電極をつなぎ、娼婦にお誘いを受けながら同時に脳内に電流を流していく。これまで女性に欲情を抱かなかった患者は娼婦との「セッション」のあいだに初めてオーガズムに達し、実験は大成功に終わった。

    現代の視点からすれば、こうした治療はまさに「闇の脳科学」に見えるだろう。実際、彼が活躍した1950年代当時でも、こうした「性愛の強引な矯正」は倫理に反するとの声が挙がった。ただし、当時は現代よりももっと過激な治療が行われていたのも事実だ。PTSDを治療するために前頭葉を切除する「ロボトミー手術」が普通に行われ、精神科医による治療も電気ショックを使ったものが一般的だった。また、「同性愛」は病気だと考えられていた。

    その後、ロバート・ヒースは医学界やその他の業界から批判を受けたり、ドラマチックないざこざに巻き込まれたりして、表舞台から姿を消してしまう。50年後の現代では、神経外科医のほとんどの人間はヒースの名前すら聞いたことがないありさまだ。
    しかしながら、本書の筆者であるローン・フランクはこうした「ロバート・ヒース評」を再考しようとしている。というのも、現在の脳治療をめぐる状況は、ロバート・ヒースがやっていたことと似たプロセス、ないしはそれ以上の危険性を帯びているからだ。しかも、今度は倫理観について糾弾する人がいないままに。

    その最たる例が、アメリカ国防総省国防高等研究計画局(DARPA)による脳深部刺激の自動制御装置の開発である。
    イラク戦争やアフガニスタン戦争で外傷性脳損傷(TBI)を負った兵士に対し、DARPAは、小脳に埋め込むことのできる小さな電気系統装置を開発し、装着させようとしている。TBIとは、爆発やその他の打撃によって頭部に繰り返し外傷を負った結果、脳組織が損傷し、攻撃性、鬱状態、不安感、記憶障害、人格変化など、予測不可能なさまざまな症状が現れる病気である。2000年以来、三十万人近いアメリカ兵が外傷性脳損傷を被り、二百万人以上の帰還兵が神経疾患や精神疾患に苦しんでいる。
    そのため、脳の状態を常時読み取ってそれを修正し、特定の感情や特定の種類の行動が最初から起きないようにする装置を開発している、というわけだ。

    これは「ただの治療だ」と言い切ることも可能である。だが、そのテクノロジーが社会に与えることのできるインパクトは計り知れない。ひとたび技術が開発され実用段階に入れば、それはさまざまに転用することができ、例えば兵士をタフな、つまり戦闘に耐えられる人間にしてから戦場に送り出すようなこともできてしまうからだ。

    こうした「マインドコントロール」の類は、突き詰めればロバート・ヒースがやっていた類の実験と何ら変わることがない。それどころか、より危険である。ヒースの行いは「治療」であるが、DARPAの行いは「強化」だ。それは人間にとって神聖で不可侵だと思われている「脳」と「自我」の範囲を平然と超えていく行為であり、その先には「どこまでが人間で、どこからがロボットと言えるのか?」という問題が付きまとう。
    この現状を踏まえて筆者は、「ヒースの時代から何も変わらないまま、倫理的に許される範疇を議論することなく、同じ行動を繰り返しているのは正しいのか?」という問題を提起している。ヒースは叩かれたが、彼は彼なりの倫理観にもとづいて患者を治療していた。しかし世間はヒースを忘れたまま、ヒースと同じことをしようとしている。今の脳科学はもしかしたら、まだ彼に追いついていないのかもしれない。

    「脳にどれだけ変更を加えることが許されるのだろうか」という深淵なテーマを「ロバート・ヒース」という稀代の研究者の実績を交えながら考察していく一冊。科学ノンフィクションとして重厚なテーマでありながら、非常に読みやすく面白い本だった。

    ――――――――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    0 まえがき
    脳に電極を差し込んで刺激する脳深部刺激療法は、精神医学界の新たな大いなる希望だと言われている。強迫神経症、トゥレット症候群、鬱病、自閉症、拒食症など、およそ「ペースメーカー」で治療できるとは想像もつかないようなありとあらゆる症状について、実験的に電極治療が試みられ、おびただしい数のレポートが発表されている。ヘロイン中毒やアルコール依存症、過食症までもが電極治療の対象になっている。薬が効かなくなってきた場合や、そもそも効かない場合には必ず、患者も医師も脳深部刺激療法を検討する。
    研究には多額のカネが注ぎ込まれている。市場アナリストは、2019年までには世界の脳深部刺激療法の市場は100億ドルになるだろうと予測している。さらに、アメリカ国防総省国防高等研究計画局(DARPA)もこの分野に参入してきた。

    しかし、脳という人間の根幹をなす部位にどれだけ変更を加えることが許されるのだろうか?そして、テクノロジーが許される「限界」は存在するのだろうか?


    1 ロバート・ヒース
    ヒースは1950年以来、20年以上に渡って数十名の患者の脳深部に電極を埋め込み、統合失調症から鬱病に至るまでの様々な精神疾患の治療を試みてきた。
    彼が最初に注目したのは統合失調症患者だ。かつての医学界は戦場で深刻な心理的ダメージを負った帰還兵にロボトミー手術(前頭葉切除)を行っていたが、脳に深刻なダメージを受ける確率が高かった。
    従来の精神外科手術が脳の特定部分を不可逆的に破壊してしまうのに対して、ヒースは、脳のさまざまな領域を一時的に操作し、その結果を確かめながら治療法を開発していこうと考えた。彼が治療のために利用しようと考えたのは脳自身の原動力、つまり脳の電気活動だった。ポジティプな感情が宿る脳内領域を電気的に刺激することによって、失快感症を起こした統合失調症患者の脳に喜びや快感を呼び覚ますことができるかもしれない、と彼は考えた。

    ヒースがターゲットとしたのは中隔野である。中隔野は、感情を司る脳領域の多くが位置する扁桃体と密接につながっている。さらに、中隔野は視床下部と直接的なつながりがある。視床下部を刺激すると、感情を司る脳領域の多くが活性化し、それと同時にストレスホルモンなどあらゆる種類のホルモンが分泌される。
    ヒースは外科医とともに、22名の患者に手術をおこない、患者の脳を刺激した。結果は「まちまち」といったところだった。2名の患者は治療後顕著に回復し、明るく活発になった。4名は変化がなく、1名は憎悪が見られた。患者によって治療に対する反応が異なる理由は分からなかった。

    彼を一躍有名にしたのは、同性愛者を異性愛者に矯正するための電気治療だ。被験者のB-19は、生まれながらのゲイであり、自分自身に嫌悪感を抱いていた。ヒースは彼の快楽中枢に電極をつなぎ、娼婦をあてがい、電流を流しながらセックスさせるという「実験」を試みた。結果、B-19は産まれて初めて、女性とセックスしてオーガズムに達した。その後も娼婦と楽しげに会話しており、実験は成功に終わった。


    2 50年後、ヒースは忘れられた
    50年後の現在、脳深部刺激療法は神経外科の最先端技術になっている。刺激療法の対象は統合失調症だけではなく、パーキンソン病、過食症、拒食症、ヘロイン依存症にも拡大した。しかしながら、急成長中のこの分野に、なぜか精神科医が参加していないのだ。ヒースの実験と現代の実験を比較してみると、非常に近いアプローチを取っているにもかかわらず、神経外科医のほとんどの人間は、ヒースの名前すら聞いたことがなかった。

    過去数十年の間に「精神」という概念は、漠然としてつかみどころのないものから、脳の灰白質という実体を持った物質的なものへと変化した。以前は環境や生育条件やその他の外的要因のせいだと信じられていた精神疾患は脳内部の問題とされるようになり、それを治すには脳を治療することが必要だと考えられるようになった。
    また、「脳とは、化学物質のスープである」という考え方は捨て去られ、「脳とは、相互接続された電気回路のネットワークである」という考え方が主流となった。以前は、神経疾患や精神疾患はドーパミンやセロトニンといった脳内神経伝達物質のパランスの異常として捉えられていたが、現在では、こうした疾患は「回路の病気」として記述されることのほうが多くなっている。加えて、電極は薬剤よりもはるかに正確に作用することが判明している。

    脳深部刺激療法は、病気の治療以外にもう一つ、脳への重要な変質をもたらす可能性がある。それは「自我の操作」だ。脳の一部分に電極を刺すことで、患者の性格や趣向すら違うものに変えることができる。例えばそれをサイコパス治療に役立てるのは、果たして善なのだろうか、それとも悪なのだろうか?


    3 幸福度に上限を設けるべきか
    精神障害を負った患者への治療について、「治療によって目指すべき幸福度」とはどの程度の幸福度のことなのか、それを超える幸福度を求めることにリスクやデメリットがあるのか、これらを考えてみるべきときが来ている。

    とあるドイツ人の患者は思い強迫性障害と全般性不安障害に長年苦しめられていた。彼は数年前に側坐核に電極を埋め込む手術を受けていたのだが、電池を交換する時期が来ていた。神経科医のマティス・シノフィックは交換のために刺激装置の設定値の調整を行っていく。
    シノフッィクは患者に感想を聞きながら、1ボルトから5ボルトまで段階的に設定値を上げていった。設定値を変更するたび、シノフッィクは患者に幸福感と不安感と緊張感の度合いを尋ねた。患者は1から10までの数字でそれらを表現した。3ボルトまで上げると、幸福度は「3」に上がり、不安度は「6」に下がった。上がったとはいえ、それは取り立てて言うほどの変化ではなかった。ところが、4ボルトまで上げると状況は一変した。幸福度が最大値の「10」に上がり、不安感がまったくなくなったのだ。シノフツィクが実験のために電圧をもう1ボルト上げて5ボルトにしたところ、患者は「すばらしい気分だけど、ちょっとやりすぎな感じ」と言った。患者は自分ではどうしようもないほどのエクスタシーを感じ、そのために不安度が「7」にまで上昇してしまった。
    刺激装置の設定値を「3ボルト」、つまり幸福度も不安度もノーマルな点にすることで合意したのだが、退院する間際になって、患者は「もう少し幸福度を上げたい」気もすると言った。シノフィックは常時この上なく幸福な状態でいることが健康的とは言えない理由を話し、患者の申し出を断った。

    2003年5月13日、アメリカの神経科医ヘレン・メイバーグとカナダの外科医アンドレス・ロザーノは、重篤な慢性的鬱病患者の治療に脳深部刺激療法を試みた。
    彼らはまず、最深部に位置している接点から0.5ミリ浅い位置に6ボルトの電流を流した。患者が突然話し始めた。「今、何かしましたか?」「なぜそう思うのですか?感じたことを話してください」「突然、とても、とても穏やかな感じがしました「隠やかな、というのはどういう意味ですか?」「表現しづらいです。〈微笑む〉と〈笑う〉の違いを表現するような感じです。突然、気分が上向いたような感じがしました。軽くなったような。冬の間ずっと寒い日が続いていて、もう寒いのはたくさんだと思いながら外に出てみたら、新芽が出てきていた。それを見て、ああやっと春が来るくんだと感じたときみたいな、そんな感じです」
    その反応は他の患者たちも同様であり、「気分が上向く」のを感じていた。この効果は、多幸感や幸福感とは別物で、ネガティブな感情を取り除いたような感覚だった。

    メイバーグの意見はロバート・ヒースとは正反対である。ヒースにとっては快感はそれ自体が治療、もしくは治療への鍵だったが、メイバーグは快感の効果に懐疑的であり、治療とは「不幸を無くす」ことと捉えている。


    4 狂っているのは患者じゃない、医者のほうだ
    1972年、人権派の若者たちがニューオーリンズに集まり、学会が開かれているホテルの前でデモを行う。攻撃対象はロバート・ヒースであり、彼が行った同性愛者を異性愛者に矯正するための電気治療計画を糾弾するためだった。
    デモの翌年、ヒースは首都ワシントンに呼び出され、公聴会での証言を求められた。精神医学そのものが全米で厳しい調査の対象となり、ロバート・ヒースが関わっている分野は特に非難の矢面に立たされた。
    公聴会のメンバーの関心事は、ヒースの実験の倫理的側面、つまり彼のやったことが「人間の行動を恣意的にコントロールする」ことに当てはまるのではないかという懸念だった。当時の社会は、ヒースが科学的・倫理的基準を逸脱する実験を繰り返したことに拒否反応を示したのだ。

    ヒース自身は、なぜ批判されるのか理解できず、それがきわめて合理的で優れた実験的治療であると考えていた。事実、ヒースが繰り返し実験を行っていた1950年当時は、ロボトミー手術による前頭葉の切除も当たり前だったし、ゲイを治療するための電気ショック治療も普通に行われていた。彼の患者は苦痛を訴えており、治療のための承認もきちんと取っていた。


    5 DARPAも参戦
    外傷性脳損傷(TBI)は、イラク戦争やアフガニスタン戦争に「特徴的な外傷」だと言われてきた。爆発やその他の打撃によって頭部に繰り返し外傷を負った結果、脳組織が損傷し、攻撃性、鬱状態、不安感、記憶障害、人格変化など、予測不可能なさまざまな症状が現れる。2000年以来、三十万人近いアメリカ兵が外傷性脳損傷を被り、二百万人以上の帰還兵が神経疾患や精神疾患に苦しんでいる。この状況を見てアメリカ軍も脳研究に乗り出さざるを得なくなった。
    DARPAは、小脳に埋め込むことのできる小さな電気系統装置――一種の電子超自我――を開発しようとしていた。DARPAがほしがっているのは、特定の強度で特定の脳細胞を刺激するだけの装置ではなく、脳の状態を常時読み取ってそれを修正し、特定の感情や特定の種類の行動が最初から起きないようにする装置だった。
    例えば、心的外傷後ストレス障害の患者に対して、発作が起きるサインを捉えて千分の一秒以内に反応し、信号が意識に侵入するのを妨害することのできる、埋込式の自動制御装置である。

    ひとたび技術が開発され実用段階に入れば、それはさまざまに転用することができる。脳内に埋め込んだチップが心的外傷後ストレス反応を緩和できるなら、おそらくそれは、戦場での恐ろしい体験が心的外傷を残すことも防げるだろう。さらに、それを使って兵士をタフな、つまり戦闘に耐えられる人間にしてから戦場に送り出すようなことも考えられるだろう。

    しかし、このような状況にありながらも、1970年代に起きたような「マインドコントロール」を危惧する声は、現在あまり聞こえてこない。

    脳深部刺激療法にも、ロボトミーや精神外科一般を襲ったような反動が待っているのだろうか。原則的にはその可能性はあるが筆者としては、脳深部刺激療法が実験的治療法からふつうの治療法になる可能性があると考えている。それは、技術や機器が以前よりも進歩したからだけでなく、時代精神が完全に変化したからでもある。「自分とは何か」という我々の感覚が変化し、自我は、もはや捉えどころのない不可解な現象ではなくなり、脳内の一状態として理解されるようになった。
    現代人は人間を精神医学的見地から捉えるようになった、とも言えるかもしれない。病気と健康の境目が鮮明でなくなり、さまざまな精神疾患が範囲の問題と捉えられるようになった。その結果、病的なあるいは少なくとも不適当とみなされる行動が以前よりも増えた。これは、自分の行動を修正もしくは最適化するための機会が増えたことをも意味する。

    2015年に、「ニューサイエンティスト」誌は「世界を救うためには、人間の倫理観を操作する必要があるのではないだろうか」と問いかけている。また、イェーテボリ大学の哲学者イングマール・ペルソンとオックスフォード大学の哲学者ジュリアン・サビュレスキューは、「世の中がうまくいくためには人間の脳を操作する必要がある」という立場から、生物医学的ドラッグの仕様に賛成している。

    今やあらゆるところで、ロバート・ヒースの声がこだましている。

  • 岡田斗司夫のYouTubeでおすすめされていたので読んでみた。

    非常に面白かった。

    脳に電気を流すことで、精神疾患を治療することができる。

    それらの技術は、軍事転用よっては恐怖心を感じないロボット兵士を作れる可能性もあるらしく、アメリカの国防関連のシンクタンクも研究費を大幅にとっているのだとか。


  • 2025年1月10日、グラビティの読書の星で紹介してる人がいた。

  • くそおもろ
    天才っているんだ
    快感と苦痛は紙一重
    どちらもスイッチひとつで生み出せる
    人間をどんな用途のための道具に造りかえることも可能だし、感情や倫理観はどうにでも変えられる
    形成外科▶︎美容整形
    神経外科▶︎脳深部刺激
    倫理警察うっせーわ
    ロバート・ガルブレイス・ヒース

  • 脳をコントロールする実験
    ロバート・ヒース医師の物語だ
    忘れられた医師の活躍をよく掘り返して取材している

    1950年から行われた実験 は精神疾患者の治療だった
    1972年に論文が発表されている
    倫理的なのか冒涜なのか
    マッドサイエンティストなのか

    1980年代からはドーパミンやセロトニンが発見されて投薬治療が進んでいるが、
    それでも脳内深部刺激療法はパーキンソン病では現在も使われている
    脳に電極を入れる治療法は今も続いているのだ
    そして電極治療はロボトミー手術として、色々実験されてきたと言うことだ

    ヒースも、統合失調症患者の脳に電極を埋め込み実験は成功した
    数ヶ月ぶりに患者は医師たちの質問に答える事ができたのだった
    キリスト教の倫理観の主流の社会の中で先例の無い取り組みは拒否反応も強かったようだ

    1950年代以降とは第二次対戦後の帰還兵への対応で神経外科医のニーズも高まっていた事が背景にある
    その後もベトナム戦争へと向かい、今なおロシアが戦争をしている
    サイエンティストを責めるべきではない
    戦争がもたらす悲劇が危険すぎるのだ

    ヒースが忘れられて、改めて今最先端の治療法として取り組まれているようだ
    アルコール依存症、拒食症、過食症などに改善が見られる治療法としても有効らしい

    ここで 脳を操作することは 私 を操作する事だと倫理的側面に話しが進む
    人格に影響を与えるのだ 別人になる
    ヒースの研究は非倫理的だったとも評価される

    ヒースは薬の投与実験もしている
    快楽物質の投与がもたらす成果を確認している

    著者自身が 鬱病で、セロトニンの投与をして実感していると言う
    快楽を含め、幸福とは何だろうと考えることになる
    薬の投与や医師による電極装置の目盛りで幸せが操作される事をどう考えるのか
    幸せを感じる事と、幸せな状態にある事とは別物と皆実感があるのではないだろうか

    苦痛を取り除くのは医師や薬の役割かもしれないが、幸せを求めて生きるのはひとりひとりの役割になるはずだろう

  • 物凄い本だった。本書タイトルとあらすじは「タブー」と「マッド・サイエンティスト」的な所に思い切りフックのあるものになっていますが、本書を完読するとそういった単純さとはかけ離れた内容に驚嘆してしまいます。しかしタイトル・あらすじは本文の片面として確実に含まれており、その反対側の面(これはユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」まっしぐらの、人類永遠の課題かもしれません。)を熟慮するためには一冊分の内容が必要であるため、本書はこの引っ張りでこそ正しいのだと思います。

    ある人物・ある分野を批判・否定する際に、その否定する理由が主に直感・感情・倫理である場合、完膚なきまでに完全に完璧に100%否定しきると、歴史が完全に断絶され、その人物・分野に含まれていた部分を再評価する動きが出来ていた時に、その分野が何故否定されていたのかすら分からなくなってしまうというこれ以上無い証拠を突きつけられた気分でした。

    例えば私は、
    長期に安定した実績のある「アルツハイマーを完全に克服する脳手術」があるとしたら、その誘惑に勝てる気がしない。

    例えば私は、
    双極性障害だが、私が初めて診断を受けた十三年前のその日に「実はこれを完治する安定的な脳手術があり、保険適用です。」と言われたら、どうしていたのだろうか?

  • 1章

    同性愛者を脳の我的刺激により、治療する。

    衝撃的な実験内容。3ページ食い入るように見てしまいました。
    倫理・人間の進歩のためにするのか等面白いテーマで構成されていました。

  • ロボトミーの開発者ロバート・ヒース。脳深部刺激療法の開発。

  • #科学道100冊/脳とココロ

    金沢大学附属図書館所在情報
    ▼▼▼▼▼
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BC03001992?caller=xc-search

  • 科学道100冊 2021 テーマ「脳とココロ」
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 493.72||FR
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/457701

  • 面白い。やはりパイオニアには批判はつきもの。

  • 脳深部刺激療法(DBS)に取り組んだ研究者ロバート・ヒースの生涯とともに、現代の同技術をめぐる趨勢を紹介する科学ノンフィクション。

    DBSは、脳に直接電気刺激を加える治療法。ヒースは米国南部にあるテュレーン大学の精神医学研究者であり、1950年頃から20年以上、統合失調症やてんかん等の新たな治療法を研究してきた。
    特にセンセーショナルだったのは、1972年に発表された実験。同性愛の「治療」のため、電極で脳を刺激しながら性行為を行わせ、その間の脳波を記録するというものだ。
    確かにショックな話だし、大規模な反対運動等も起きたという。が、背景にあった考え方を知ると、理論としては腑に落ちる。ヒースは、快感つまりポジティブな感情のコントロールを重視していた。重い鬱症状や、問題行動への嗜癖は、ポジティブな感情の生成や紐づけに問題が生じているための現象で、刺激を与えることで治療できるという考え方は非常に明快だ。
    本書の著者は、少なくとも現代の同趣旨の実験と同じ程度に、1972年の実験には倫理面で問題はなかったとしている。性的指向というデリケートな問題だから特に受け入れがたいのだが、実験当時、同性愛は公式に疾患と見なされていた。むしろこのエピソードから読み取れるのは、治療すべき「疾患」の定義は時代によって変わるということだ。

    第8章では、脳深部刺激療法の最新の(執筆当時)情勢が紹介される。著者の指摘するように、現代では、脳は器官の一つであって、瞑想や薬物等の手段により性能をコントロールできるという考え方が受け入れられやすくなってきている。
    DARPAは2013年に、小脳に埋め込んで特定の感情や行動を事前に防げる装置の開発プロジェクトへの資金提供を発表した。5年間で臨床試験まで行う計画だったそうだ。現在はどういう状況なのだろう。

    とはいえ、やはり人間の心と行動への直接操作は現代でも基本的にタブーである。かろうじて許されるのは、それが苦しんでいる人を助けるための治療として行われるからだが、さきのエピソードから分かるとおり、何が治療されるべき疾患かという定義は不変ではない。治療と機能改善の境目は曖昧だ。ネガティブ思考はそれ自体が治療されるべきなのか?人は常に幸せな気持ちでいるべきなのか?それを決めていいのは誰か?第4章で投げかけられる「幸福感に上限を設けるべきか」という問いが示している。

    それにしても、豊富なインタビューや資料により紹介されるヒースの軌跡を見ていくと、この人物に強烈な魅力があったことが分かる。カリスマがあり、アイディア豊富で、たぶんものすごく頭が良い。だからこそ反対運動の標的にもなったのだろう。
    そのような人物が、現在では所属大学の図書館からも資料がほとんどないと言われるような状態になっている。著者はその原因を、存在しない原因物質への固執による研究者としての凋落だとする。この過程で、生化学者でもなんでもない詐欺師がプレイヤーとして関わっていたという話も印象的だ。本書では脇道に過ぎないが、この部分だけでも映画になりそう。

  • 面白くはあったが、筆者もまたヒースを「不遇の天才」としてのイメージに囚われ、ヒーロー化しすぎてるようにも感じる。才気あふれる人物であることは間違いないのだろうが、過去にその思いつきがあったとしても、それを学問として他の科学者にも再現できてその業績を引き継がれるようにしなければ、評価されないのもある意味当然と思う。

    それと最近のニューロエンハンスへの一部の肯定的な論調を意図的に混同してヒースの業績を素晴らしいものだと見せようとしてるのでは、と思わざるを得なかった。

    アメリカの精神医学をめぐる時代性は興味深く読んだ。何を疾患とするか、に社会や時代が大きく関わるのが精神科の特異な点である。しかし同性愛がDSMに記載れていたとしても、それを外科的に治療することが倫理的にどう評価されるかは別問題であるし、だからこそ糾弾されたのだろう。現代でも自閉症に投薬することはあっても、脳深部刺激で治療することには抵抗の強い人が大半だと思う。

  • 科学(医学)の最先端を戦うと言うことはこう言うことなのかということを少しながら感じ取れた。今の時代なら素晴らしい業績とみなされて然るべきものが、時代の状況によっては酷い扱いを受けるものだと教えてくれる。ヒース博士が実際にはどのような人だったかは結論づけられないだろうが、とてもドラマティックに記述されていて一気に読み進められた。

  • タイトルや表紙からは、1950-60年代のことであろうか、非倫理的な脳外科手術とそれを糾弾するような内容を想像していたが、いい意味で裏切られた。
    脳に電気的な刺激を与えて機能の正常化を図ろうとする嚆矢となった、本書の主人公でもあるヒース氏、現在の脳刺激治療・研究の最前線、まるで小説のような思わぬ顛末。それらが折り重なって巧みに綴られている。
    脳への電気刺激によって人格までもが変わり得るとう驚くような最新の脳科学、読み物としての秀逸さ、素晴らしい書に出会った。

  • 岡田斗司夫ゼミで紹介。

  • 著者が言う「脳の状態」を石川九楊〈いしかわ・きゅうよう〉風に表現すれば「スタイル」となる(『書く 言葉・文字・書』石川九楊)。つまり我々は自分が好む反応を定式化することで「自己」という産物を創造しているのだろう。それは文字通り「型」(スタイル)といってよい。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/01/blog-post_46.html

  • ロボトミー手術の悪印象が強いとはいえ、読み進めていくうちにこれだけ印象が変わる本も珍しい。倫理とは何か分からなくなった。脳は人間が踏み込んでいけない領域と思っていたが、倫理の方が変わっていく恐れもある。脳深部刺激療法を一概に否定できない自分に驚いている。

  • 忘れられた天災、ロバート・ヒース。
    今でいう脳深部刺激療法を50年前に独自に開発して統合失調症を治療していた。

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